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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<310>ニバリ、ベルナルら大物集結! “落ち葉のクラシック”イル・ロンバルディア展望

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 1月に開幕し、各地で熱戦が展開されてきた2019年のロードレースシーズン。ヨーロッパのレースシーンは最終週に突入し、10月12、13日に行われるレースをもって事実上のシーズン終了。アジアをはじめ、他大陸ではまだまだレースが行われるが、本場ヨーロッパでの戦いはひとまず終了。毎年、ヨーロッパにおけるレースシーンのフィナーレを飾るのが、“落ち葉のクラシック”とも称されるイタリアのビッグレース「イル・ロンバルディア」である。10月12日に行われる今回も、例年同様ビッグネームが多数参戦表明。そこで、楽しみ満載の秋の伝統レースを展望。コースや出場予定選手について、深く掘り下げてみよう。

2019年シーズンは大詰め。“落ち葉のクラシック”イル・ロンバルディアが10月12日に開催される(写真は2018年大会) Photo: Yuzuru SUNADA

優勝争いを左右する要所が復活

 1906年に初開催され、今年で113回目を迎えるイル・ロンバルディア。その名の通り、イタリア北部のロンバルディア州が舞台となるワンデーレースで、秋深まる時期の開催でシーズンの終了を実感させてくれる一戦だ。それゆえ、別名「落ち葉のクラシック」とも呼ばれる。

イル・ロンバルディア2019コースプロフィール ©︎RCS

 数あるクラシックレースの中でも、とりわけ古い歴史を持つ「モニュメント」の1つに位置付けられ、ミラノ~サンレモ、ツール・デ・フランドル、パリ~ルーベ、リエージュ~バストーニュ~リエージュとならんで、伝統と高い格式を誇る。なお、イル・ロンバルディアを主催するのは、ジロ・デ・イタリアやティレーノ~アドリアティコなどと同じく、イタリアのスポーツイベント運営会社であるRCSスポルト社だ。

 世界のサイクルファンにおなじみのコモ湖近くをベースとしたコース設定は今年も変わらない。毎年マイナーチェンジは施されているものの、登坂力とスピードを必要とするコースセッティングは変わらず、今年もベルガモをスタートして、コモにフィニッシュする243kmで争われる。

 レース距離の長さや上りのハードさから、ワンデーの戦いに長けるクラシックハンターのみならず、山岳を得意とするクライマーやグランツールレーサーにもチャンスがめぐってくるのが特徴。その中でも、243kmの行程において重要な局面となる登坂区間が5カ所設けられている。

55.1km地点 コッレ・ガッロ 登坂距離7.4km、平均勾配6%、最大勾配10%
178.9km地点 マドンナ・デル・ギザッロ 登坂距離8.6km、平均勾配6.2%、最大勾配14%
192.4km地点 コルマ・ディ・ソルマーノ(ソルマーノの壁) 登坂距離1.9km、平均勾配15.8%、最大勾配27%
226.2km地点 チヴィリオ 登坂距離4.2km、平均勾配9.7km、最大勾配14%
237.7km地点 サンフェルモ・デッラ・バッターリア 登坂距離2.7km、平均勾配7.2%、最大勾配10%

 特筆すべきは、昨年はカットされていたサンフェルモ・デッラ・バッターリアの復活だ。2年ぶりにコースに採用されることとなるが、この頂上がフィニッシュ前約4km。頂上手前で最大勾配10%ととなり、この局面でアタックを成功させてコモのフィニッシュまで一気に駆け下る展開も想定される。ちなみに、2年前の覇者ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)は、その手前のチヴィリオの下りから独走に持ち込み、サンフェルモ・デッラ・バッターリアを前に勝負を決めるという伝説的な勝ち方を見せている。

2018年大会の優勝争い。優勝したティボー・ピノ(左)と2位のヴィンチェンツォ・ニバリがチヴィリオで激闘を演じた =2018年10月13日 Photo: Yuzuru SUNADA

 サンフェルモ・デッラ・バッターリアの有無にかかわらず共通しているのは、チヴィリオを前に有力チームの準エースクラスや実力派アシスト陣がアタックやペースアップを仕掛け、レースを活性化させる点。ライバルチームの出方をうかがったり、集団の人数を絞り込むような駆け引きが見られるだろう。

 また、チヴィリオからサンフェルモ・デッラ・バッターリアまでが約10kmという距離感もポイントになるかもしれない。チヴィリオで優勝候補が動くとして、これで後手に回るような状況になると、次の要所であるサンフェルモ・デッラ・バッターリアまでに再合流するのは困難を極める可能性も高い。各チームのエースクラスが、どこで勝負をかけるかも大いに見ものだ。

 コモのフィニッシュへの到達は、ここ2年間で見られたような独走劇か、はたまた小集団での勝負となるか。いずれにせよ、劇的な幕切れによってイル・ロンバルディアの本質を観る者に実感させてくれることだろう。

例年以上に充実した顔ぶれがスタートラインへ

 シーズン終盤であることから、選手たちのコンディションはさまざまだが、今年はいつもに増してこの大会に高い意欲で臨む選手が多くなりそうだ。

ツール・ド・フランス以降はレース数を絞っているヴィンチェンツォ・ニバリ。イル・ロンバルディアに合わせての調整は成功するか =ツール・ド・フランス2019第20ステージ、2019年7月27日 Photo: Yuzuru SUNADA

 前回覇者のティボー・ピノ(フランス、グルパマ・エフデジ)は、ツール・ド・フランスでの負傷が癒えておらず欠場するが、前々回を制したニバリは参戦する見通しだ。個人総合2位となったジロ・デ・イタリア、ステージ1勝を挙げたツールを終えてからはレース数を絞り、世界選手権も「ベストコンディションとは程遠い」として回避したが、イル・ロンバルディアへは“予定通り”参戦。イタリア国内で開催されるワンデーレース数戦を走り、トラブルなく完走できている状況。迫る本番にピークを持ってくることができるか。

シーズンを通して好調をキープしたフィリップ・ジルベールは9年ぶりのイル・ロンバルディア制覇を目指す =ブエルタ・ア・エスパーニャ2019第17ステージ、2019年9月11日 Photo: Yuzuru SUNADA

 冷雨に泣かされた世界選手権だったが、すぐに気持ちを切り替えてイタリアへと乗り込むのはフィリップ・ジルベール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)。ツールでのマイヨジョーヌ着用によって堂々の主役を演じた姿が印象的だが、今年は悲願のパリ~ルーベ優勝。ブエルタ・ア・エスパーニャではステージ2勝と、シーズンを通して好走を続けてきた。この大会では、2009年と2010年に2連覇。今回は9年ぶりの優勝に照準を定めてスタートラインにつく。チームはジュリアン・アラフィリップ(フランス)の欠場がこのほど決まったが、展開次第では優勝も狙えるボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク)も控えており、チーム戦からライバルに差をつけたい。

今シーズン絶好調のアスタナ プロチームはヤコブ・フルサングが中心となる =リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ2019、2019年4月28日 Photo: STIEHL / SUNADA

 今シーズン、勢いがとどまることなくこの時期までやってきた印象のアスタナ プロチームとユンボ・ヴィスマも軸となる選手が控え、上位入りが有望視される。アスタナはやはりエースのヤコブ・フルサング(デンマーク)に期待。4月にはリエージュ~バストーニュ~リエージュを制するなど、34歳となった今こそ戦い方に磨きがかかっている。独走力の高さも武器で、早めの仕掛けから逃げ切りに持ち込みたいところ。

前哨戦ジロ・デル・エミーリアを制したプリモシュ・ログリッチェ。イル・ロンバルディアの有力候補に名乗りを挙げた =2019年10月5日 Photo: Yuzuru SUNADA

 ユンボ・ヴィスマはプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア)、ジョージ・ベネット(ニュージーランド)、ステフェン・クライスヴァイク(オランダ)の3枚看板がそろい踏みで、さながらグランツールの赴き。なかでもログリッチェは頂点を極めたブエルタ・ア・エスパーニャ以降も好調を持続。前哨戦のジロ・デル・エミーリア(10月5日、UCIヨーロッパツアー1.HC)でも独走勝利を挙げるなど、勢いはニバリやアラフィリップを凌駕する。もちろん、展開次第ではベネットやクライスヴァイクに託すことも考えられるうえ、何よりローレンス・デプルス(ベルギー)やロベルト・ヘーシンク(オランダ)などレース構築の巧いアシスト陣もメンバー入りする公算が高い。プロトン全体の主導権を握って、レースを進めていく可能性も大いにある。

9月中旬以降、イタリアでレース活動を行ってきたエガン・ベルナルもイル・ロンバルディアに参戦する見通しだ =GPベゲッリ、2019年10月6日 Photo: Yuzuru SUNADA

 さらには、チーム イネオスからはツール王者のエガン・ベルナル(コロンビア)がメンバー入りする見込みだ。こちらもニバリ同様にツール以降の調整不足から世界選手権は回避したが、9月中旬以降はイタリアでのワンデーレースを転戦。2位入賞を含むトップ10入り2回と、決して状態が悪いわけではない。イル・ロンバルディアは一昨年13位、昨年12位と上々の走り。もっとも、前回はけが明けでのリザルトとあり、コンディションを整えて臨むことができれば、より上位が狙えるはず。

 これらの顔ぶれに加え、ツール個人総合4位のエマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)、ツール・デ・フランドル優勝のアルベルト・ベッティオール(イタリア、EFエデュケーションファースト)、ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)、バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)といった実力者も上位戦線をにぎわせる力は十分。ロンバルディアのタイトルにはいまだ手が届いていないアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)や、3年前の優勝者であるエステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット)も押さえておきたい。

今週の爆走ライダー−クリスティアン・クネース(ドイツ、チーム イネオス)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 シーズン終盤戦のレースもさることながら、トップライダーたちが現在所属するチームに残留するのか、はたまた移籍を決断するのか、そんな動向も気になる時期である。

チーム イネオスとの契約延長に合意したクリスティアン・クネース。来季で現チームでの10年目を迎える =ジロ・デ・イタリア2019第17ステージ、2019年5月29日 Photo: Yuzuru SUNADA

 そんな中、先ごろチーム イネオスで走るベテランのクリスティアン・クネースの契約延長が発表された。チーム最年長の38歳は、新たな1年契約に合意した。

 彼にとって、2020年シーズンは現チームと出会って10年目となる。この間、ツールでは2度、エースの個人総合優勝の瞬間に立ち会い、2017年のブエルタと2018年のジロではクリストファー・フルーム(イギリス)のタイトル獲得にも貢献。脚質的にはクライマーではないが、平地を中心に集団コントロールのテクニックに長け、レースの組み立てを完ぺきにこなす名アシスト。派手さはなくとも長くプロトンで走り続ける術は誰にも負けていない。

 新契約にサインするにあたり、「10年間もこのチームで走ることができるとは思っていなかった」とコメント。思えば、現チームに加入した2011年は、当初合流予定だったチームの活動が立ち消えとなり、危うく路頭に迷うところだった。滑り込みでこのチームに加わったことを考えると、これだけの年数をビッグチームの一員であることに自身が一番驚くのも無理はない。

 もちろん、走りで結果を残すだけが自らに課された仕事だとは思っていない。「若い選手たちにアドバイスを求められれば助けたいし、グランツールで何をすべきかを伝えることに誇りを持っている」。ここまで20回を数えるグランツール出場経験を、将来のロードレース界を担う若い選手たちへ落とし込んでいくことにも注力する。

 とはいえ、やっぱり選手であるうちは華やかな舞台に立ちたいというのが正直な思い。「若い選手たちが私にモチベーションを与えてくれる」と言うように、まだまだチーム内競争に挑む意欲十分。来シーズン、ビッグレースを走る姿が見られれば、それは彼がまだまだ健在であることの証明でもある。

チーム最年長の38歳。若い選手たちとのチーム内競争にまだまだ挑み続ける心づもりだ =ジロ・デ・イタリア2019第15ステージ、2019年5月26日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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