ニノ・シューターも認める高い難易度東京五輪MTBコースはまるで日本庭園 世界最高峰のタフさと共存するジャパネスク

by 大澤昌弘 / Masahiro OSAWA
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 東京オリンピック・マウンテンバイククロスカントリーが行われる伊豆MTBコースは驚きの連続だ。誰もがコースのタフさや難易度の高さを認め、かつアートの要素も取り込りこまれたものだったからだ。まるで日本庭園でMTBレースが行われたかのような感覚だ。テストイベントを制した世界王者のニノ・シューター(スイス)のコースインプレッションなどに加え、伊豆MTBコースの魅力、今後をお伝えする。

「天城越え」と呼ばれるセクション。オフロードレースに芝生? 意外だらけのコースだった伊豆MTB Photo: Kenta SAWANO

世界最高クラスの難易度の高さ

 東京五輪のMTBクロスカントリーの舞台となるのが、日本サイクルスポーツセンターのコース内側に作られた伊豆MTBコースだ。五輪大会本番でもテストイベントと同じコースが使われる。

全長約4km、高低差約160mとなる伊豆MTBコース図 画像提供:Tokyo 2020

 コースは全長約4km、高低差160m。テストイベントで男子は6周、女子は5周回で競われた。数値の捉え方には個人差が出そうだが、選手は一様に難易度の高さを指摘する。テストイベントで勝利したUCIランク1位のニノ・シューター(スイス)も「フィジカル、テクニカルともに求められるコースだ」とコメントした。

レース後サインにも応じていた世界王者のニノ・シューター Photo: Kenta SAWANO
日本人で唯一完走した山本幸平 Photo: Kenta SAWANO

 日本人で唯一完走した山本幸平も「五輪には3回出たが、そのなかでもかなり難しいコース。上りもかなり勾配が急。凄くタフなコース。ある程度、集中しないとワンミスで大転倒してしまう。大きな岩を組んでコースが作られていて、見た目は怖いけれど、間違いないコースを走れば無難に行ける。でもタイヤ1本分ずれただけでタイヤが(溝に)はまってしまい、落車につながる」と述べていた。

 山本はかつて「(アジアでクロスカントリーワールドカップが開催されたことがなく)誰も本物のサーキットを知らない」と語っていたが、その山本もタフさは認めており、世界最高水準の難易度のコースが日本に誕生したことになる。まさに金メダルを争うのに適した舞台だと言えるだろう。

ジャパネスクなコース

 注目すべきは難易度ばかりではない。まるで日本庭園内にMTBコースを作ったかのようなデザイン性の高さにも触れずにはいられない。「誰が?」「どう考えて?」という疑問が即座に浮かんでくるが、残念ながら契約上、名前は非公表とされる。

「伊豆半島」と命名されたセクション。地元への感謝の気持ちをこの景観に込めたという

 片山右京スポーツマネージャーによるとコースデザインを担当したのは南アフリカ人の男性で、「ロンドン、リオ(五輪)のコースも設計した人物」だと明かす。同氏はさらに「ロックセクションでも、選手が滝をくだるように、流れるように走ってほしいと思いを込めて作ったと聞いている。アーティストだと感じた」とも述べている。コースデザインに際して、大会組織委員からテーマやオーダーを出したわけでもなく、設計担当の発想で出来上がったようだ。

岩場で日本庭園を表現した「枯山水」と表現された岩場の下りセクション Photo: Masahiro OSAWA

 コースには各セクションごとに伊豆の名所や日本らしさを表現した「天城越え」「浄蓮の滝」「箸」「散り桜」「わさび」「踊り子歩道」「枯山水」「伊豆半島」といった名前が付けられたエリアがある。名称は地元から募集したというのは意外だったが、コースには明らかに何らかのコンセプトがあることは誰の目にも明白だ。

 出来上がったコースを見る限り、まさに庭石が多数置かれた日本庭園である。外国人が捉えた日本のイメージが入り込んでおり、言葉にすれば「ジャパネスク」とも呼びたくなる。この感覚は日本人から見ても新鮮で面白い。大会当日は全世界にこのコースの映像が届けられ、外国人ウケもよさそうだ。

 テストイベントで勝利したニノ・シューターも「どのセクションにも日本らしさを感じた。特に終盤の花畑は満開で、(観客も入っていなかった)静けさもあって、とても日本らしいと思った」と語っており、選手からも評判はいいようだ。

スタート直後の上りは「天城越え」と命名 Photo: Masahiro OSAWA
天城越えをクリアして橋を渡ると別セクションへ Photo: Kenta SAWANO
二本の丸太で表現した「箸」 Photo: Kenta SAWANO
分岐ラインに配置された岩にも景観美を感じさせる Photo: Kenta SAWANO

伊豆MTBで走行できる日は来るのか

 五輪本番もテストイベントと同じコースが使われる。タフすぎる上りをこなし、まるでダウンヒルレースを観ているかのような、急勾配の下り。そして、ジャパネスクなデザインに、約2000人の観戦者も感じるものがあったはずだ。

ダウンヒルレースを観ているかのような急勾配を下る選手たち Photo: Masahiro OSAWA
激坂を下った直後には急勾配が出現 Photo: Masahiro OSAWA

 残念だったのは、周回コースをくまなく観戦できるわけではなく、観戦エリアが限定されていたこと。大会組織委員会は「観客の導線はリバイスする。どうすれば動きやすく、観やすく、見所がきれいにみえるかを追求していきたい」と述べており、期待したいところだ。

 さらに、テストイベントではなかった大型モニターの設置や賑やかしも加わる。最大収容人数は11500人。世界各国から観客・メディアがやってくる。とんでもない熱気に包まれることは確実だ。また、大会終了後は、東京五輪のレガシーとして残されることが決まっている。上級者ばかりではなく、初心者でも走れるように一部に手を加えるという。世界トップが競う伊豆MTBで走れる日が来ることを今から楽しみにしておきたい。

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2020東京五輪 MTBレース

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