title banner

安井行生流ロードバイクの選び方<7>ロードバイクの機材選びの本質と「わざと間違えてみる」のススメ

by 安井行生 / Yukio YASUI
  • 一覧

 さて、「安井行生流ロードバイクの選び方」連載の最終回です。ここまでさんざんモノの選び方について書いときながらこんなことを言うのもちょっと気が引けるんですが、ときには「あえて間違えてみる」こともお勧めしたいんです。

かつて所有していたピナレロの初代プリンス。メインフレームはアルミなのに、しなやかで奥深い走りに驚かされた。「乗り味」「気持ちよさ」を重視するきっかけとなった一台 Photo: Yukio YASUI

 「見た目に惚れた」とか「行きつけのショップで安くなってた」とか「知り合いが譲ってくれる」とかで、今まで自分の選択肢には入らなかったような、好みから外れているはずのモノを、ついうっかり買ってみる。そして、それを乗りこなそうと、セッティングを出そうと、試行錯誤してみる。

 それがなぜダメなのか、どうダメなのか、よくなる可能性はあるのか、どうすればよくなるのか…そういうことを、パーツを換えながら、バイクと対話をしながら、右往左往しながら、乗って乗って乗りまくって、探っていくんです。そうして徐々に自分好みの走りに近づけていく。すると自転車の新たな世界が開けるかもしれません。

試行錯誤で得た知見

 実は僕もついこないだそれをやりました。全く好みじゃないはずの某社のエアロロード。知り合いが買ったはいいものの、諸事情により手放すというので、思いっきり安く買いたたきました。

 これがもう見事に自分の好みじゃない。硬すぎるしハンドリングもバランスに欠ける。まったくもって予想通り(笑)。

 でも、買ってからの数カ月は、それをどう走らせようかと、そればっかり考えてました。それがめちゃめちゃ楽しかった。一度は78デュラで組み、9000デュラに組み替えてみて、フレームの性格と合わなかったので、結局カンパで組み直しました。

 これをイジるために圧入BB用の工具一式を買って、BBも自分で触って、いろんなクランクを付けて走ってみました。

 その結果、フレームとコンポの相性、フレームとホイールの相性において、新たな見識を得ることができました。ジオメトリとハンドリングの関連性についても考えましたし、BBをイジっているうちにプレスフィット系BBのシェルの材質(アルミか樹脂か)がフレームの剛性感に影響を与えていることにも気付きました。

 それは自分の自転車人生において貴重な知見となります。どんな本にも書いてない。ネットにも落ちてない。自分だけの知識。それは何物にも換えがたいものです。

筆者が考える機材選びの本質

 評判のいい完成車ばかりを乗り継ぐのも一つの手です。というか、一般的にはそれが一番正しいやり方でしょう。でも、自転車乗りとしてどちらが深みをたたえているかといえば、「評判のいいバイクに乗ってきただけの人」より、僕は「失敗を繰り返してきた人」「愛車をどうにかいい走りに仕上げようと四苦八苦してきた人」だと思います。

今も所有するタイムのVXRS。歴代タイムには、「ペダリングしやすく一体感がある」という共通点があり、乗り味を重視する筆者は何台もタイムを乗り継いできた Photo: Yukio YASUI

 機材遊びとは、「考察とプロセスと結果」を積み上げて、自分だけのロジックを立体的に組み上げていくものだと僕は思います。「○年モデルの○のフレーム重量は○gだ」とか「○は柔らかい」とか「○は空力が最高だ」とか、そんな断片的な情報のカケラをただ集めるなんてつまらない。自転車に関する本当の知識とは、そんな簡単には得られません。

ビギナーだからと遠慮はしなくてもいい

 では、最後にこの連載のまとめを。

 ときどきヘンな遠慮をする人がいますね。「ビギナーだからエントリーモデルで十分」とか、「自分は貧脚だからボーラなんか……」とか、「スーパーレコードなんてとんでもない」とか。そんなもん全然関係ないです。好きなものに乗るべきです。自分みたいな人生を完全に踏み外した人間はともかく、普通は死ぬまでに何十台も買えません。他人に迷惑をかけない範囲で、自分が本当に乗りたいモノに乗ればいい。そして、そのバイクに相応しい自転車乗りになるべく努力をすればいいんです。

 「本当に乗りたいモノ」にどうたどり着くか。それがこの連載のテーマでした。

 フレーム選び、ホイール選び、コンポ選びの全てに言えることですが、よくないのは流行とか数字に惑わされて、本当は「欲しくない・必要ない」のに、「欲しい・必要なはず」と錯覚してしまうこと。流行とかプロレースで何が使われているかとか、あの有名人が何に乗っているかとか、そんなもの自分の自転車人生にはなんの関係ありません。

愛車のルック・785ヒュエズRS。合わせたコンポーネントはフレーム剛性を考えてカンパニョーロに。様々なコンポ、パーツを組み合わせることで自分なりの機材選びの答えがでてくるはず Photo: Yukio YASUI

 結局、自分の中で自転車選びに関する基準を確立できるかどうか。そこにかかっているんです。それは一朝一夕にできあがるものではありません。自転車をよく理解し、自転車を機械として冷静に眺め、同時に生涯の相棒として深く愛し、そして自分と自転車の関わり合い方を俯瞰することで、徐々に確立されていくものだと思います。

 最後はなんだかボンヤリした話になってしまって申し訳ないですが、自転車の機材選びはそこにつきるのではないかと思います。

安井行生
インプレッションライダー・安井行生(やすい・ゆきお)

大学在学中にメッセンジャーになり、都内で4年間の配送生活を送る。ひょんなことから自転車ライターへと転身し、現在は様々な媒体でニューモデルの試乗記事、自転車関連の技術解説、自転車に関するエッセイなどを執筆する。今まで稼いだ原稿料の大半をロードバイクにつぎ込んできた自転車大好き人間。

この記事のコメント

利用規約順守の上ご投稿ください。

関連記事

この記事のタグ

ロードバイク 安井行生流ロードバイクの選び方

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

e-BIKE最新特集

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載