ブエルタ・ア・エスパーニャ2019 第21ステージ最終日恒例のマドリード決戦はヤコブセン勝利 29歳ログリッチェがブエルタ初制覇

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 スペインをめぐった3週間の戦い「ブエルタ・ア・エスパーニャ」は、現地時間9月15日に行われた第21ステージで閉幕。最終日はブエルタ恒例のマドリード市街地サーキットでのスプリント決戦となり、ファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ)が優勝。今大会2勝目を挙げた。総合成績は前日までに実質決まっており、個人総合首位のマイヨロホを着たプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)が危なげない走りでフィニッシュラインを通過。晴れて、初となるブエルタ個人総合優勝を決めた。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2019総合表彰台。個人総合上位3選手の表彰。左から2位アレハンドロ・バルベルデ、1位プリモシュ・ログリッチェ、3位タデイ・ポガチャル Photo: Yuzuru SUNADA

首都マドリードへの凱旋パレード

 8月24日にサリーナス・デ・トレビエハで開幕した今年のブエルタは、おおよそ反時計回りをする形でスペイン東部、北部、そして中部とを進行。途中フランスに入国をしながら、3週間をかけて走り続けてきた。

集団の中でレースを進めるマイヨロホのプリモシュ・ログリッチェ Photo: Yuzuru SUNADA

 今大会の総距離3272.2kmのうち、最後の106.6km。今年のグランツール全体を締めくくる1日は、首都マドリード郊外のフエンラブラダを出発し、最終目的地のマドリードへと向かう。例年、ブエルタの最終ステージは、ツール・ド・フランスのそれと同様にパレード走行の趣きとなるのが慣例。総合成績は基本的に前日までに争いが終わり、マドリードで競われるのはステージ優勝をかけた勝負だけとなる。

 総合成績は、マイヨロホとポイント賞のプントスでログリッチェが、山岳賞のモンターニャでジョフリー・ブシャール(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール)、新人賞のマイヨブランコでタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAE・チームエミレーツ)がそれぞれ首位に立ち、あとはこの日のフィニッシュラインを通過できれば確定。実質第20ステージで各賞の獲得を決め、最終日のスタートラインへはリラックスムードでやってきた。

最終ステージを走る新城幸也 Photo: Yuzuru SUNADA

 そうして迎えたレーススタート。プロトン全体がサイクリングペースで進み、選手同士でここまでの労をねぎらう様子や、各賞リーダーを擁するチームはメンバーをそろえての記念撮影、なかにはヘスス・エスケラ(スペイン、ブルゴス・BH)のようにチームカーにゲスト乗車したフィアンセにプロポーズをするといったドラマティックな瞬間も。完走を濃厚にした選手たちは、思い思いにマドリードまでの道を進んだ。

 ステージ行程の半分を過ぎると、いよいよマドリード市内へ。5.8kmの市街地サーキットを9周回する“レース”は、リーダーチームのユンボ・ヴィスマを先頭に火蓋が切られた。

ヤコブセンがマドリード市街地で完勝

 3カ所のヘアピンカーブと2カ所の鋭角コーナーが特徴的なマドリード市街地のコース。しばらくはアタックの応酬となったが、2周目に入ってダニエル・マルティネス(コロンビア、EFエデュケーションファースト)とディエゴ・ルビオ(スペイン、ブルゴス・BH)が逃げを打ち、メイン集団に対しリードを奪う。その後ヨナタン・ラストラ(スペイン、カハルラル・セグロスエレヘアー)も飛び出して2人を追うが、これは実らず集団へと戻される。

山岳賞確定に向けてフィニッシュを目指すジョフリー・ブシャール Photo: Yuzuru SUNADA

 2人が先頭をゆく流れはしばらく続き、メイン集団とは20秒前後のタイム差で進行。集団はスプリントを狙うドゥクーニンク・クイックステップがコントロールを担い、逃げメンバーを常に射程圏内にとどめる。残り2周からはUAE・チームエミレーツやボーラ・ハンスグローエも集団のペーシングに加勢。あっという間にマルティネスとルビオの背中が大きくなり、最終周回に入る直前の残り7kmでキャッチした。

 最終周回に突入してもドゥクーニンク・クイックステップが主導権を握ったまま。強固なスプリントトレインが前方に位置し、ライバルチームに対してポジションを譲らない。最終局面を前に、ボーラ・ハンスグローエやトレック・セガフレードの隊列も上がってくるが、ドゥクーニンク・クイックステップがベストポジションをキープして最後の直線を迎えた。

 マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、ドゥクーニンク・クイックステップ)からの発射で飛び出したのはヤコブセン。番手につけたサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)がタイミングを合わせるが、四方を囲まれ加速が遅れてしまう。好況を味方につけたヤコブセンは、ベネットの追い上げにあいながらもトップを守り切ってステージ優勝のフィニッシュ。グランツール初出場の23歳が、華であるマドリードステージを制して今大会2勝目を挙げた。

マドリード市街地サーキットでのスプリント勝負はファビオ・ヤコブセン(先頭左)が制した Photo: Yuzuru SUNADA

ログリッチェがついにグランツール王者に

 マイヨロホをまとってマドリード市街地を駆けたログリッチェも、チームメートに囲まれるようにしてフィニッシュへとやってきた。最後はアシスト陣と手を取り、勝利の喜びに浸った。

プリモシュ・ログリッチェ(中央)を中心に祝杯をあげるユンボ・ヴィスマの選手・スタッフ Photo: Yuzuru SUNADA

 その後行われた総合表彰式では、2019年大会の覇者として改めてマイヨロホに袖を通し、初のグランツール王座を戴冠した。

 この大会を制したプリモシュ・ログリッチェは、スロベニア中東部の街・トルボブイエ出身の29歳。同国の国技でもあるノルディックスキー・ジャンプ競技の選手として、2007年の世界ジュニア選手権・団体で優勝。しかし、同年に競技中の転倒で負傷し、それがきっかけで2011年に引退。リハビリを兼ねて乗り始めたマウンテンバイクからサイクリングへとシフトし、2013年にロードレーサーとしてデビュー。2016年に現チーム(当時ロットNL・ユンボ)でトップシーンへと躍り出て、初のグランツールだった同年のジロ・デ・イタリアでは、個人タイムトライアルで争われた第9ステージで勝利した。

 以降は長短問わずステージレースを得意とし、昨年はツールで個人総合4位。今年はジロで同3位となり、総合優勝候補筆頭の呼び声高く臨んだ今回のブエルタでついにグランツールの頂点に立った。

 ジャンパーとしての名残でもあるポディウムでのテレマークポーズを封印し、総合表彰台では笑顔を振りまいた新王者。個人総合3位には同国のポガチャルが続いたことにも触れ、「歴史が書き加えられた」と喜ぶ。何より、このところはグランツールを王座が近いと言われ続けていた中での勝利とあり、「本当に素晴らしい成果を挙げられた」と胸を張った。

初のグランツール制覇を果たしたプリモシュ・ログリッチェ Photo: Yuzuru SUNADA

 個人総合では、ログリッチェに続いて世界王者の証であるマイヨアルカンシエルを着るアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)が39歳にして2位となる殊勲。3位には20歳のポガチャルが入り、同時に新人賞のマイヨブランコも確定。

 その他各賞にも変動はなく、ポイント賞のプントスをログリッチェ、山岳賞のモンターニャをブシャールが獲得。チーム総合はモビスター チーム、総合敢闘賞にはミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ プロチーム)が選出された。

 また、日本勢では唯一の参戦となった新城幸也(バーレーン・メリダ)は、個人総合110位で12回目のグランツールも完走。最終日はスプリントにも参戦し、16位でフィニッシュした。

 これで2019年シーズンのグランツールはすべて終了。いずれの大会も新王者が輩出され、歴史的なシーズンとなった。そして、シーズン終盤戦にはビッグイベントが目白押し。UCIロード世界選手権やイル・ロンバルディアといった格式あるレースでは、ビッグネームを中心に熱き戦いが繰り広げられることになる。

第21ステージ結果
1 ファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ) 2時間48分20秒
2 サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) +0秒
3 シュモン・サイノク(ポーランド、CCCチーム)
4 ヨン・アベラストゥリ(スペイン、カハルラル・セグロスエレヘアー)
5 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)
6 エドワード・トゥーンス(ベルギー、トレック・セガフレード)
7 トッシュ・ファンデルサンド(ベルギー、ロット・スーダル)
8 クレマン・ヴァントゥリーニ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール)
9 マルク・サロー(フランス、グルパマ・エフデジ)
10 ディオン・スミス(ニュージーランド、ミッチェルトン・スコット)
16 新城幸也(日本、バーレーン・メリダ)

個人総合(マイヨロホ)
1 プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) 83時間7分31秒
2 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム) +2分16秒
3 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAE・チームエミレーツ) +2分38秒
4 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム) +3分29秒
5 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ プロチーム) +4分31秒
6 ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) +7分16秒
7 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、チーム サンウェブ) +9分47秒
8 カールフレドリク・ハーゲン(ノルウェー、ロット・スーダル) +12分54秒
9 マルク・ソレル(スペイン、モビスター チーム) +22分10秒
10 ミケル・ニエベ(スペイン、ミッチェルトン・スコット) +22分17秒
110 新城幸也(日本、バーレーン・メリダ) +4時間13分1秒

ポイント賞(プントス)
1 プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) 155 pts
2 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAE・チームエミレーツ) 136 pts
3 サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) 134 pts

山岳賞(モンターニャ)
1 ジョフリー・ブシャール(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール) 76 pts
2 アンヘル・マドラソ(スペイン、ブルゴス・BH) 44 pts
3 セルジオ・サミティエル(スペイン、エウスカディ・ムリアス) 42 pts

新人賞(マイヨブランコ)
1 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAE・チームエミレーツ) 83時間10分9秒
2 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ プロチーム) +1分53秒
3 ジェームス・ノックス(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ) +20分14秒

チーム総合
1 モビスター チーム 248時間26分24秒
2 アスタナ プロチーム +51分38秒
3 ユンボ・ヴィスマ +2時間4分33秒

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