ブエルタ・ア・エスパーニャ2019 第18ステージ下りから独走に持ち込んだイギータがグランツール初勝利 首位ログリッチェは総合リード広げる

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 スペインで行われているブエルタ・ア・エスパーニャは、現地時間9月12日に第18ステージを実施。4つの1級山岳を越える難易度の高い1日を、セルジオ・イギータ(コロンビア、EFエデュケーションファースト)が独走で制し、グランツール初勝利を挙げた。個人総合争いでは、首位のマイヨロホを着るプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)がステージ2位争いのスプリントを制して、ボーナスタイム6秒を獲得。ライバルたちに対して総合リードを広げている。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2019第18ステージ。レース後半に独走に持ち込んだセルジオ・イギータがステージ優勝 Photo: Yuzuru SUNADA

新城がアタックも逃げには至らず

 大会第3週に入り、最終目的地の首都・マドリードが見えてきている。残る上級山岳ステージは2つ。そのうちの1つが、この日行われた第18ステージだ。

レース序盤には逃げにトライした新城幸也 Photo: Yuzuru SUNADA

 コムニダ・デ・マドリードからベセリル・デラ・シエラまでの177.5kmは、マドリードの北にそびえるグアダラマ山脈をめぐるルートセッティング。4つの1級山岳待ち受けるが、前半2カ所と後半2カ所とでコースを往復するイメージ。最後の1級山岳ポイントからフィニッシュまでは約25km残されているが、その間にはわずかながらの平坦区間やテクニカルなダウンヒル、そしてフィニッシュ前4kmにわたる緩斜面の上りが控える。

 前日の第17ステージでは、平坦ステージにカテゴライズされながらも強い風によって総合争いの大きな変化が起きた。ログリッチェがマイヨロホを守ったものの、終始先頭グループでレースを進めたナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)が個人総合2位に浮上し、首位との差を一気に縮めるなど、予想だにしない波乱の1日となった。続く第18ステージ、スタート前の緊張感に、前日のレースが影響していることは明白だった。

逃げが決まるきっかけを作ったワウト・プールス Photo: Yuzuru SUNADA

 アクチュアルスタートと同時に、プロトンをまとめたのはトニー・マルティン(ドイツ、ユンボ・ヴィスマ)。マイヨロホのログリッチェを擁するリーダーチームが早々からコントロールし、危険な逃げを許さない構えを見せる。実際、入れ替わり立ち替わり逃げを狙う選手がアタックを繰り出すが、決定打には至らない。特に、総合上位の選手を抱えるチームの動きは完全にチェックされる。そうしたなか、数人のアタックに合わせて動いた新城幸也(バーレーン・メリダ)もレースをリードしようと試みるが、これも決まらず。

 レースの方向性が見えてきたのが、1つ目の1級山岳プエルト・デ・ナバセラダ(登坂距離11.8km、平均勾配6.3%)に入ってからのこと。ワウト・プールス(オランダ、チーム イネオス)が1人で抜け出すと、少しずつ追う姿勢の選手が現れる。この上りは形勢そのままに頂上を迎え、プールスが1位で通過すると、山岳賞ジャージのモンターニャを着るジョフリー・ブシャール(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール)が2位通過。その後の下りで、ブシャールら6人がプールスに合流。さらには6人が後追いで加わり、総勢13人の先頭グループがまとまった。

山岳ポイントを加算させたジョフリー・ブシャール(中央) Photo: Yuzuru SUNADA

 2つ目の1級山岳プエルト・デ・ラ・モルケラ(登坂距離13.2km、平均勾配5%)の上りが始まると、メイン集団ではロベルト・ヘーシンク(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)がコントロールを開始。レース序盤からのハイペースで後方へと下がっていたアシスト陣も集団復帰し、ユンボ・ヴィスマが主導権を確保した。

 一方、先頭グループには、ニールソン・ポーレス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)、ネルソン・オリヴェイラ(ポルトガル、モビスター チーム)、オマール・フライレ(スペイン、アスタナ プロチーム)と、エースを総合上位に送り込むチームのアシストが乗り込み、それぞれの思惑のもとレースを構築。5分近いタイム差を確保し、先行を続ける。この間、1級の山頂を迎え、山岳賞争いでトップに立つブシャールが狙い通りで1位通過している。

下りで勢いに乗ったイギータが独走に持ち込む

 中間地点を過ぎ、迎えるは3つ目の1級山岳プエルト・デ・ラ・モルケラ(登坂距離10.4km、平均勾配6.7%)。前半通過時とは逆走になるこの上りで、レース全体に動きが見られた。

メイン集団のコントロールを担ったセップ・クス Photo: Yuzuru SUNADA

 まず、メイン集団から飛び出したのは、個人総合5位でスタートしたミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ プロチーム)。ここは総合上位陣が無理に追いかけることはせず、セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)が牽引役を担ってロペスとの差を一定に保ちつつ進む。

 その前方でも変化が起きつつあり、プールスのペースアップにイギータやルイス・メインチェス(南アフリカ、ディメンションデータ)らが反応。のちに先頭グループは1つにまとまるが、活性化している様子。この状況を冷静に対処したブシャールは、三たび頂上を1位通過し、山岳ポイントを加算している。

下りを利用して独走体制を固めたセルジオ・イギータ Photo: Yuzuru SUNADA

 先頭をゆくメンバーの争いを決定づけたのは、頂上通過後の下りだった。勢いに乗ったイギータが他の選手たちを引き離し、徐々にリードを広げていく。早々と独走に持ち込むと、この日最後の1級山岳であるプエルト・デ・コトス(登坂距離13.9km、平均勾配4.8%)を上り始める頃には、1分以上の差を得ていた。

 タイミングを同じくしてメイン集団では、長時間ペーシングを務めてきたクスと先頭グループから降りていたポーレスのユンボ・ヴィスマ勢によって、先行していたロペスを引き戻すことに成功。全体のペースが上がったことから、イギータの飛び出しを許した逃げのメンバーたちもキャッチ。この段階で、メイン集団の前を走るのはイギータのみとなった。

ログリッチェが区間2位でボーナスタイム獲得

 プエルト・デ・コトスを上る間に、総合上位陣の動きがメイン集団の焦点に。その中で、この日最も攻撃的であったのはロペスだった。

人数が絞られたグループを率いるマイヨロホのプリモシュ・ログリッチェ Photo: Yuzuru SUNADA

 残り30kmで再度のアタックを打つと、反応できたのはレースリーダーのログリッチェ、個人総合3位でスタートしたアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)、同7位のラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)だけ。同2位のキンタナ、同4位で新人賞のマイヨブランコを着るタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAE・チームエミレーツ)は対応しきれず、ロペスらを追う格好となる。

 こうなると、総合順位のアップとマイヨブランコの奪還がかかるロペスは先を急ぐことにシフト。マイヨロホを守ることに集中するログリッチェ、チームメートであり個人総合では上位のキンタナを待つ理由があるバルベルデはほぼ付き位置をキープ。順位上昇がかかるマイカが時折牽引を手伝うが、それよりはるかにロペスの引く時間が長くなっていった。

 精鋭たちの争いをよそに、イギータは頂上をトップで通過し、下りでもスピードに乗って逃げ続ける。少しずつマイヨロホグループとの差が小さくなっていったが、ステージをモノにするには十分なリードを確保していた。最終盤の緩斜面もしっかり上りきり、1人でフィニッシュへとやってきた。最後はコース脇を固めたコロンビア人応援団が見守る中、高々と両手を掲げてウイニングポーズ。今大会の注目株となっていた22歳が、初のグランツールで大きな勝利を手にした。

コロンビア応援団の大歓声を背にステージ優勝を挙げたセルジオ・イギータが通り過ぎていく Photo: Yuzuru SUNADA

 イギータの歓喜から15秒、第2集団のマイヨロホグループがやってきた。4選手によるステージ2位争いのスプリントとなり、マイヨロホのログリッチェが先頭を確保。これによって、ボーナスタイム6秒を得ることとなった。バルベルデはステージ3位で、こちらもボーナスタイム4秒獲得。以下、マイカ、ロペスと続いた。

ステージ2位争いのスプリントはマイヨロホのプリモシュ・ログリッチェ(右)が制してボーナスタイム6秒を獲得 Photo: Yuzuru SUNADA

 さらに遅れること1分1秒。キンタナとポガチャルが位置した第3グループがフィニッシュへ。総合上位戦線に位置するカールフレドリク・ハーゲン(ノルウェー、ロット・スーダル)から、メインチェス、キンタナ、ポガチャルの順だった。

 この結果、個人総合でバルベルデが2位に再浮上。トップのログリッチェとの総合タイム差は2分50秒。キンタナは1つ順位を落とし、3分31秒差の3位に。ロペスがポガチャルをかわして4位に上がり、同時にマイヨブランコを取り返している。このステージで健闘したマイカ、ハーゲンはそれぞれ順位を1つ上げて6位、8位としている。そして何より、ログリッチェが総合2位以下との差を再び広げ、マイヨロホの座をしっかりと固めている。

 そのほか、レース序盤でチャレンジ姿勢を見せた新城は149位でステージを終えている。

マイヨロホを堅守したプリモシュ・ログリッチェ Photo: Yuzuru SUNADA

 翌13日に実施する第19ステージは、アヴィラからトレドまでの165.2km。序盤の3級山岳以降は下りと平坦基調で構成され、定石であればスプリンター有利の1日。とはいえ、第17ステージで波乱を呼び込んだように、風などの気象条件がレース展開を左右する可能性もある。各チームとも、集中して挑む必要に迫られている。

第18ステージ結果
1 セルジオ・イギータ(コロンビア、EFエデュケーションファースト) 4時間33分9秒
2 プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) +15秒
3 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)
4 ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)
5 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ プロチーム) +17秒
6 カールフレドリク・ハーゲン(ノルウェー、ロット・スーダル) +1分16秒
7 ルイス・メインチェス(南アフリカ、ディメンションデータ)
8 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)
9 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAE・チームエミレーツ)
10 オスカル・ロドリゲス(スペイン、エウスカディ・ムリアス) +3分47秒
149 新城幸也(日本、バーレーン・メリダ) +27分37秒

個人総合(マイヨロホ)
1 プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) 71時間16分54秒
2 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム) +2分50秒
3 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム) +3分31秒
4 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ プロチーム) +4分17秒
5 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAE・チームエミレーツ) +4分49秒
6 ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) +7分46秒
7 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、チーム サンウェブ) +9分46秒
8 カールフレドリク・ハーゲン(ノルウェー、ロット・スーダル) +11分50秒
9 ジェームス・ノックス(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ) +12分44秒
10 マルク・ソレル(スペイン、モビスター チーム) +21分9秒
133 新城幸也(日本、バーレーン・メリダ) +3時間55分7秒

ポイント賞(プントス)
1 プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) 137 pts
2 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAE・チームエミレーツ) 99 pts
3 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム) 98 pts

山岳賞(モンターニャ)
1 ジョフリー・ブシャール(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール) 76 pts
2 アンヘル・マドラソ(スペイン、ブルゴス・BH) 44 pts
3 タオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チーム イネオス) 35 pts

新人賞(マイヨブランコ)
1 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ プロチーム) 71時間21分11秒
2 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAE・チームエミレーツ) +32秒
3 ジェームス・ノックス(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ) +8分27秒

チーム総合
1 モビスター チーム 212時間54分0秒
2 アスタナ プロチーム +46分3秒
3 ユンボ・ヴィスマ +1時間31分58秒

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