ブエルタ・ア・エスパーニャ2019 第17ステージ総合争いのシャッフルを呼んだ休息日明けの大波乱 ジルベールが今大会2勝目

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 スペインで開催中のグランツール、ブエルタ・ア・エスパーニャは現地時間9月11日から第3週がスタートした。休息日明けで迎えた第17ステージは、強い風を味方につけた30人以上の選手がレースを先行して逃げ切り、フィリップ・ジルベール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)が第12ステージに続く今大会2勝目を挙げた。また、逃げ切ったグループには総合上位の数選手も加わり、ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)が4つランクを上げて個人総合2位に浮上するなど、順位に大幅な変動が発生した。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2019第17ステージ、大人数の逃げによるステージ優勝争いを制したのはフィリップ・ジルベールだった Photo: Yuzuru SUNADA

追い風に乗って大人数が逃げ

 この日は今大会最長にして、唯一の200km超えステージ。アランダ・デ・ドゥエロからグアダラハラまでの219.6kmは、カテゴリー山岳が設定されていおらず、主催者発表でも平坦にカテゴライズされる。とはいいつつも、終始細かなアップダウンをクリアしていくコースプロフィールで、決して難易度が低いとは言い切れない。スプリンターを擁するチームがコントロールするのか、逃げを狙う選手たちが優位に展開するのか、レースの流れに注目が集まった。

 しかし、実際はその予想をはるかに上回る大波乱のステージとなる。総合を争う上位勢にとっては、盤石の個人総合首位を走るプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)までを脅かす展開が起きた。

レース序盤に形成された先頭グループ。ナイロ・キンタナ(右端)が牽引する Photo: Yuzuru SUNADA

 スタート時点から西からの強い風が吹き、これを利用しようと約50人が一斉に動き出した。3kmほど進んだところで35人に減るが、その中には個人総合6位でスタートしたキンタナ、同8位のウィルコ・ケルデルマン(オランダ、チーム サンウェブ)、同11位ジェームス・ノックス(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ)がアシストを引き連れ乗り込んだほか、この動きに同調した選手などが次々とジョイン。総合系ライダーを抱えるチームはエースの順位上昇を、その他選手は逃げのチャンスと、互いの利害を一致させて突き進んでいく。

大人数の逃げを追う形になったメイン集団 Photo: Yuzuru SUNADA

 一方で個人総合トップ5、ログリッチェ、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)、タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAE・チームエミレーツ)、ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ プロチーム)、ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)は、メイン集団に待機。このうち、チームメートのキンタナを前方に送り出したバルベルデは状況を静観する構えで、主にログリッチェ擁するユンボ・ヴィスマとUAE・チームエミレーツ、アスタナ プロチームが集団のペーシングを担うことになった。

 だが、それぞれのねらいが明確になっている先頭グループの勢いが増す一方。メイン集団とのタイム差を2分、3分…と広げていき、フィニッシュまで残り100kmとなったところでは5分16秒差。さらに15kmほど進んだところで、この日最大の約6分差にまで拡大。追い風に乗った精鋭たちは、距離を経るごとに上りで脱落者を出すものの、大人数を保って形勢有利な状態のまま進んでいく。

メイン集団を牽引するセップ・クス。先頭グループとのタイム差を縮められないままレースは進んでいった Photo: Yuzuru SUNADA

 追走態勢を整えたいメイン集団だが、牽引役が数チームに限定されていることもあり、思うように前方との差を縮められない。そうこうしているうちに、ユンボ・ヴィスマやUAE・チームエミレーツはアシスト陣が力尽き、エースのもとから離れてしまう。アスタナ プロチームに加えて、ボーラ・ハンスグローエもスピードアップを狙うが、やがて先頭グループよりも人数が少ない情勢に陥ってしまう。レースリーダーのログリッチェは他チームの引きを利用しながら、バルベルデら総合争いのライバルたちを押さえながらレースを進めた。

終盤の駆け引きをモノにしたジルベール

 数的有利になった先頭グループは残り80km以降、マイヨロホグループに対して5分前後のタイム差をキープし続けることに。残り30kmを迎える時点で生き残った27人が、そのままステージ優勝争いへと移っていった。

 時速50kmを超えようかというスピードの中で協調体制を維持してきた先頭のメンバーたちだったが、勝負をかけてその口火を切ったのが、残り2kmでのゼネク・スティバル(チェコ、ドゥクーニンク・クイックステップ)のアタックだった。これによって、人数をそろえていたドゥクーニンク・クイックステップ勢が動きを止め、グループ内は牽制気味に。残り1kmのフラムルージュを前にチーム サンウェブ勢がスティバルとの間隔を縮めようと動くが、他選手との足並みがそろわず再びお見合いになる。

勝利を喜ぶフィリップ・ジルベール(右)とジェームス・ノックス Photo: Yuzuru SUNADA

 膠着状態を打ち破るべく、残り550mでアタックしたのはスプリンターのサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)。定石であれば集団内で圧倒的有利だった今大会好調のベネットだったが、前方との差が縮まらないこともあってやむなく早掛け。スティバルをパスするところまでは狙い通りだったが、数の利を生かしたドゥクーニンク・クイックステップはジルベールがすかさずベネットをチェックして背後につく。

 完全に想定していたとも思える抜群のチームワークを見せたドゥクーニンク・クイックステップ勢。ジルベールは残り300mでベネットをかわすと、それまでともに逃げ続けてきた選手たちとの差は十分。上り基調だった最終局面での駆け引きを制して、今大会2勝目を挙げた。

 以下、逃げ切った選手たちが数秒単位でなだれ込むようにフィニッシュへ。総合順位のアップがかかっているケルデルマンは5位、ノックスは10位、キンタナは14位で終え、マイヨロホグループの到着を待つことになった。

メイン集団の先頭でフィニッシュしたミゲルアンヘル・ロペス Photo: Yuzuru SUNADA

 レースリーダーのログリッチェを含んだグループはレース後半、先頭グループとのタイム差拡大を防ぐので精一杯。最後はロペスがアタックして、バルベルデ、ログリッチェ、ポガチャル、マイカが追従。フィニッシュライン通過は、ジルベールから5分29秒後のことだった。

 これらの結果により、個人総合順位に大シャッフルが発生した。ログリッチェのマイヨロホは堅かったが、キンタナが総合タイム差2分24秒差の2位に浮上。バルベルデ、ポガチャル、ロペスが1ランクダウンでそれぞれ3位から5位へ。また、ケルデルマンが6位に浮上。先頭でのチーム戦にも貢献したノックスも8位までアップさせている。

 なお、思わぬ苦戦を強いられたログリッチェはレース後、逃げが決まったレース序盤での集団内ポジショニングにミスがあったことを認め、「前方に位置するべきだった」と反省のコメント。懸命に働いたアシスト陣に感謝するとともに、「今日のレースには敗れたが、ブエルタそのものが失われた感覚はまったくなかった」と揺るがぬ自信を示している。

マイヨロホを守ったプリモシュ・ログリッチェ Photo: Yuzuru SUNADA

 驚きのレースにあって、この日スタートラインについた158選手全員が次のステージへと駒を進めている。日本勢唯一で唯一参戦している新城幸也(バーレーン・メリダ)も136位で終えている。

 翌12日に行う第18ステージは、コムニダ・デ・マドリードからベセリル・デラ・シエラまでの177.5km。首都マドリードの北にそびえるグアダラマ山脈をめぐるルートで、4つの1級山岳を越える。前半2つと後半2つで逆ルートを上り下りする格好となり、最後はフィニッシュまで4kmの緩斜面を駆け上がる。総合成績に直結する激しい攻撃戦となることが期待される。

第17ステージ結果
1 フィリップ・ジルベール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ) 4時間20分15秒
2 サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) +2秒
3 レミ・カヴァニャ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)
4 ディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・メリダ)
5 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、チーム サンウェブ)
6 ヨーナス・コッホ(ドイツ、CCCチーム)
7 ローソン・クラドック(アメリカ、EFエデュケーションファースト)
8 ティム・デクレルク(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)
9 シルヴァン・ディリエ(スイス、アージェードゥーゼール ラモンディアール)
10 ジェームス・ノックス(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ) +6秒
136 新城幸也(日本、バーレーン・メリダ) +29分21秒

個人総合(マイヨロホ)
1 プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) 66時間43分36秒
2 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム) +2分24秒
3 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム) +2分48秒
4 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAE・チームエミレーツ) +3分42秒
5 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ プロチーム) +4分9秒
6 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、チーム サンウェブ) +5分5秒
7 ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) +7分40秒
8 ジェームス・ノックス(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ) +8分3秒
9 カールフレドリク・ハーゲン(ノルウェー、ロット・スーダル) +10分43秒
10 ディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・メリダ) +12分21秒
132 新城幸也(日本、バーレーン・メリダ) +3時間27分39秒

ポイント賞(プントス)
1 プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) 117 pts
2 サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) 94 pts
3 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAE・チームエミレーツ) 92 pts

山岳賞(モンターニャ)
1 ジョフリー・ブシャール(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール) 50 pts
2 アンヘル・マドラソ(スペイン、ブルゴス・BH) 44 pts
3 タオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チーム イネオス) 29 pts

新人賞(マイヨブランコ)
1 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAE・チームエミレーツ) 66時間47分18秒
2 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ プロチーム) +27秒
3 ジェームス・ノックス(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ) +4分21秒

チーム総合
1 モビスター チーム 99時間8分40秒
2 アスタナ プロチーム +32分14秒
3 ユンボ・ヴィスマ +1時間28分59秒

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