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旅サイクリスト昼間岳の地球走行録<37>サイクリストの足を引き止める 魅惑の国、メキシコ

by 昼間岳 / Gaku HIRUMA
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 アラスカからスタートした多くのサイクリストが、当初の走行計画を忠実に守れるか否かはこのメキシコで決まるといっても過言ではないと思う。アラスカ・カナダ・アメリカはビザの関係と物価の高さで長く滞在することができず大体計画通りに進むが、国の魅力に惹かれ、走行ペースが落ち、想定よりだいぶ長く滞在してしまう国がメキシコだった。

メキシコのイメージ通りに多種多様なサボテンが植わっていた Photo: Gaku HIRUMA

思ったよりも治安は良好

 まず物価がアメリカより安く、観光目的の場合ビザなしで180日以内の滞在許可が下りるためだ。2009年当時アメリカの滞在費が1日平均3000円~4000円くらいに対し、メキシコは2000円から3000円と、そこまでは安くないのだが、食費は屋台をお腹一杯食べ歩きしても500円くらいと嬉しい価格帯になってくる。ちなみにメキシコ以南の中米はもっと物価が下がる。

例えごはんを食べた後でも、毎回美味しそうな匂いのする屋台の誘惑には敵わなかった Photo: Gaku HIRUMA

 ただし、メキシコ国境はどこも治安が悪く、アメリカへの入国を待つ車や人が長蛇の列を作っており、まずその光景にこの先の行く末を案じる。いざ走ってみると、確かに想像通り道路はボコボコの所が多く、雨が降ろうものなら水はけが悪く雨水がいつまでも溜まっていたり、建物も年季が入っているものが多かった。

時期にもよるとは思うが、本当に連日のようにお祭りに遭遇した Photo: Gaku HIRUMA

 ところが、アメリカよりも全然路上にゴミが落ちておらず、きれだったことは驚きだった。州にもよるが所々にゴミ箱が設置されており、ドライビングマナーも悪くないし、陽気に応援もしてくれる。メキシコは治安がとても悪いと思われているし、実際にそういう側面ももちろんあるのだけれど、普通に旅行する分には国境以外では治安の心配はほとんどなかった。夜になっても町と屋台の活気は衰えず、女性や子供も普通に出歩いていたことにも驚いた。

 ただ大都市では廃墟が立ち並び、落書きも多かったりして、「入ってはいけいない地域だな」と感じる雰囲気の場所もあるので、その点は気を付けなければいけないが。

多様性を一度に楽しめる

 街は新市街と旧市街に分かれており、新市街はショッピングモールやブティックが立ち並ぶ洗練された雰囲気で、先進国と本当に遜色ない。

 一方、旧市街は古くからの建物や商店、車なども多く、ごちゃごちゃしているのだが、レトロ調で上手くまとまっており、街の中心の広場とカテドラルと呼ばれる大聖堂を拠点に街が広がって、分かりやすく歩きやすい。建物の壁には暖色系の色が多く使われており、冬でも日なたは暑いくらいのラテンの町に、不思議なくらい違和感なく溶け込んでいる。

冬なのに日差しが強く、場所によっては暑いくらいだったが乾燥しているので木陰が気持ちいい Photo: Gaku HIRUMA
タコスはひとつ50円前後で気軽に食べられる。肉と野菜と香草とライムのバランスが絶妙だ Photo: Gaku HIRUMA

 屋台でタコスを注文して、路上に無造作に置いてあるプラスチック製のテーブルと椅子に腰かける。手のひらサイズのトルティージャに野菜と得体の知れない肉が乗ってくる。そこに香草とライムで爽やかさを足し、サルサソースで辛味を決める。このバランスが本当に絶妙でうまかった。余韻まで楽しんだら一気にビールやコーラで流し込む。これが本当に最高だった。

旧式のビートルが街に溶け込むように、よく走っている Photo: Gaku HIRUMA

 傍らをフォルクスワーゲンの旧式のビートルがゆっくり通り過ぎ、安っぽいオーディオからはラテンの音楽が流れてくる。メキシコの日常の風景だ。

 メキシコっぽく面白いのは旧市街だが、いつも荒野を走ってるサイクリストにとっては新市街の洗練された空気感や、スペイン統治時代のコロニアル都市でヨーロッパにいるかのような雰囲気を感じられるのは息抜きになり、とても楽しめた。

 地元の小さな商店も多いが、日本のようにコンビニが発達しているのも特徴だ。ガソリンスタンドにもほとんどコンビニが併設されており、走行中も休憩や補給が非常にしやすい。さまざまな多様性を一度に楽しめるのもメキシコの魅力だと思う。

昼間岳昼間岳(ひるま・がく)

小学生の時に自転車で旅する青年を見て、自転車で世界一周するという夢を抱いた。大学時代は国内外を旅し、卒業後は自転車店に勤務。2009年に念願だった自転車世界一周へ出発した。5年8カ月をかけてたくさんの出会いや感動、経験を自転車に載せながら、世界60カ国を走破。2015年4月に帰国した。『Cyclist』ではこれまでに「旅サイクリスト昼間岳の地球写真館」を連載。ブログ「Take it easy!!

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