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強さを仕上げるアミノバイタル<最終回>猪野学さん「これまでの“坂バカ”は死にました」 乗鞍で自己ベスト更新も悟った境地

by 後藤恭子 / Kyoko GOTO
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 近年タイムが伸び悩み、数々のヒルクライムレースで苦渋を味わってきた坂バカ俳優・猪野学さん。今シーズンを「勝負の年」と奮起し、ヒルクライマーの甲子園といわれる「マウンテンサイクリングin乗鞍」(以下、乗鞍)での自己ベストを更新すべくシーズンを通して体作りを基礎から見直してきた。47歳、多忙な俳優業の傍らで行う隙間トレーニングと、持病となった腰痛対策等々、実は「坂好きな一般人」よりも不利な条件下に置かれた“坂バカ”猪野さんは、この8カ月間でどう変わることができたのか。乗鞍で今シーズンを終えた猪野さんを直撃した。

「坂バカ」生命をかけて臨んだ乗鞍ヒルクライム。フィニッシュ直後、バックポケットに入れていたサイコンを取り出してタイムを確認する猪野さん。果たして記録更新は…? Photo: Shusaku MATSUO

自己ベスト更新の目標が裏目に…

─乗鞍おつかれさまでした。結果はいかがでしたか?

猪野:タイムは1時間15分20秒。単独で走った記録としては自己ベストを1分ほど縮めることができました。

─おめでとうございます! 目標達成しましたね! でも、なぜそんなに残念な感じなんですか?

残念な表情でCyclist編集部を訪れた猪野さん Photo: Kyoko GOTO

猪野:ベストは出たんですが、いくらなんでも(1時間)13分台は行けるだろうと思ってたんです。でも、結果はそこから2分も遅い15分台。これだけやってきたのに、この結果なのかと思うと報われない思いで…。周囲からは「理想が高い」って言われますが、これだけやってきて1分しか縮まらないのかと思うと不甲斐ないです。

─乗鞍本番当日の調子はどうだったんですか?

青い空が広がった大会当日。会場には4000人を超えるヒルクライマーが集まった Photo: Kyoko GOTO

猪野:一カ月前の試走は調子が良くて、全力を出さず一度脚をついても自己ベスト(試走)の16分台が出たんです。仕上がってるなって手応えを感じたからこそ本番では13分くらい行けると思ったんです。

 しかし、本番は「結果を出したい」という思いが緊張に転じてしまい、スタート直後から踏めないわ、心拍は上がるわで違和感しかなくて…。15km地点となる2つ目のチェックポイント、位ヶ原(くらいがはら)の給水場で飲み物を渡されたんですが、口にしたら胃が痙攣していて吹いてしまって(苦笑)。まったく飲みこめませんでした。そこからゴールまでは根性で“フルもがき”です。無我夢中でした。

坂バカ生命をかけたレースがいよいよスタート! Photo: Kyoko GOTO
緊張の面持ちでスタートを切った猪野さん。飛ばしすぎないよう慎重にペダルを回す Photo: Kyoko GOTO
アミノ酸組成を全面リニューアルした「アミノバイタル プロ」。ロイシンが高配合された当社独自のアミノ酸組成にグルタミンや新配合のシスチンなどを組み合わさり、アミノ酸含有量が200mg増の3800mgに。カラダ全体のコンディショニングをサポートする力がより高まった。味に加えて溶けやすさも改良され、猪野さんもトレーニング前に愛用 Photo: Shusaku MATSUO

 唯一良かったのは、これまでと違ってラスト間際の「黄金の垂れ」がなかったこと。シーズン中はいつも「アミノバイタル プロ」等を使ってトレーニングをし、調子が安定することを実感していたのでレース本番にも使用したのですが、精神的な緊張とは裏腹に、後半の粘りというか、次第に調子が出てきたのを感じました。

ゴール間際の猪野さん。走るラインを探して必死の表情 Photo: Shusaku MATSUO

 出だしの余計な緊張さえなかったら、と悔やまれます。あとはゴール付近で団子状態にならずちゃんと「ゴールデンライン」(距離が最短になるライン)を攻めることができていたら、せめて14分は行けたんじゃないか、とか。そんなこと言い始めたら「GoPro」(100g)も2台ついてるしな~とか色々言い訳が始まっちゃうんですけど…(苦笑)。

─ゴールの瞬間、すかさずサイコンを手にとっていましたね。

猪野:サイコンはずっとバックポケットに入れていて、レース中は見ないようにしていました。ポイントの通過時間は大体頭に入っているので、そのタイムを下回っていたら心が折れちゃうじゃないですか。何本も上って感覚は染み付いてるので、その感覚を信じて敢えて見ないようにしていました。試走時の良い感覚もあったんで、そんなに悪くはないと思っていたのですが、タイムを見た瞬間、自分のイメージとだいぶ差があったので「こんなはずはない!」と愕然としてしまいました。

フィニッシュ後、サイコンを見て衝撃のタイムに思わず白目を向く猪野さん Photo: Shusaku MATSUO

 「練習は例年よりも積んでいる。これだけやってきたんだから結果出るだろう、出さなきゃ」という思いで、逆に自分で自分の首を締めるというか(苦笑)。この気持ちってやった人にしかわからないと思いますけど…、「これだけやってきてこれか!」という。ゴールでサイコンを見たときの絶望感といったらなかった。あんな小さなサイコンの数字に叩きのめされました。こんなに努力が報われないことってあるのかと。まるで一生懸命作ったお米が全部持っていかれた感じです(苦笑)。

順調だった基本からのピーキング

─そんな状況下にありながら、わずかでも自己ベスト更新できたことは事実です。シーズン全体を通して仕上げは順調だったのでは?

猪野:そうかもしれません。乗鞍終わってから、ここに来て急に調子が上がってますからね(苦笑)。たしかに、こんなに色々な視点から自転車に向き合ったのは初めてでした。トレーニング内容はもちろん、食事の見直しだったり乗車フォームの改善だったりを学んだことで、自分には基礎的な体作りの考え方が抜けていたことを痛感しました。

元プロ選手の土井雪広さん直伝の「時短トレーニング」 Photo: Yosuke SUGA
マッサーの中野喜文さんから指導を受けた腰痛対策 Photo: Shusaku MATSUO
味の素の管理栄養士、鈴木晴香さんに教わった栄養戦略 Photo: Shusaku MATSUO
専門家に教わったリカバーのためのアフターメンテナンス Photo: Manabu INO

 そのかいあって「榛名山ヒルクライム」(5月)ではベストタイムを約5分更新できましたし、自分のベンチマークにしている「富士国際ヒルクライム」(6月)では、過去の自己ベストに25秒差まで迫ることができました。それは乗鞍で自己ベストをマークした年よりも50秒くらい良いタイムだったので、「これはイケる!」という手応えを感じました。

 土井さんに教えてもらった約1時間のインターバルのローラー練を、仕事の合間を見ながら可能な限り毎日繰り返す練習でしたが、鍛えるだけでなくリカバーもしっかり意識して体をケアしたせいか、階段を上るように7月に入ったところでぐっと調子が上がったんです。いま思えばあれがピークだったのかな…(遠い目)。

来季は坂を楽しむ“New”坂バカに!

猪野:でもね、自分でも思うんですよ。この年齢(47歳)でよくやってるなって。一応年代別(45~50歳)だと52位で上位7%に入ってるんです。同年代の人たちがタイムが落ちたといってる一方で、レベルをキープできてるだけでもいいのかなって。宮澤崇史さんがいってましたが、1時間高強度の運動を持続することは加齢とともに難しくなってくるそうです。

次々現れる課題に「ヒルクライム向いてないのかも」と苦笑い Photo: Kyoko GOTO

 とはいえ、やっぱりここまでやってきたのにこれか、っていう悔しい気持ちがどうしても拭えない。筋力アップ、心肺強化、腰痛対策、全てがうまくできてきたと思ったら、今度はメンタル…。課題が尽きません。もしかしたら僕はヒルクライムに向いてないのかも(苦笑)。

─自転車やめちゃうんですか?

猪野:いやいや!(笑) でもゴールした瞬間、「このままじゃダメだ、ちょっとアプローチを変えないとダメだな」と悟りました。もっと力を抜かないとダメかなと(笑)。芝居でも良い演技しようと思ったらできないんですよ。自然に出るものであって、それはきっと自己ベストを出す走りにも共通することなんじゃないですかね。

 たしかに、良い結果が出るときってそんなに苦しくなかったりするんですよね。共演者の「ドクター竹谷」こと、竹谷賢二さんにも言われるんですが、「楽に走れないと速く走れない」って。がむしゃらに走れば結果が出るかというと、そうじゃない。そう思うとこれまでの僕は「苦しい=やってる感」という自己満足だったのかもしれません。とくに「今年はやる」と決めてやってきただけに本番で頑張りすぎたというか、自分で自分をがんじがらめにしていたのかもしれません。

気落ちしていたところに『チャリダー★』の共演者、竹谷賢二さんに励まされる。ちなみに竹谷さんは見事年代別優勝 Photo: Shusaku MATSUO

 もっと冷静にフォームなり、自転車を進ませるということに意識を集中させることが大切だったのかもしれない。心拍数を上げることだけにとらわれたり、ちょっとがむしゃら過ぎたのかもしれません。試走ではそれができていたのかもしれませんね。

 まぁ今回これだけやって出なかったことで、逆に悟ったというか、ある意味力が抜けました。諦めの境地というか、そこからまた始まる何かがあるかもしれないじゃないですか。現にいま調子いいんで(笑)。

─やりきった乗鞍で、“坂バカ”の殻を破ったと?

猪野:ええ。これまでの坂バカは死にました。来年からは「New坂バカ」に生まれ変わります!

─「New坂バカ」とは?

猪野:生まれ変わるというか、純粋に坂を上ることが好きだった「坂バカ」に一度戻りたいと思います。本音をいうとメガネも邪魔なときがあるんです。というと番組に怒られちゃいますけど(笑)。

「生まれ変わります!」とトレードマークのメガネを外した猪野さん。番組的に大丈夫なのか…? Photo: Kyoko GOTO

 まあタイムにこだわらず、力を抜いてヒルクライムを楽しみたいですね。そしたらいつかタイムが更新できるかもしれません。

─やっぱりタイムにこだわりが…

猪野:…もう、ほっといてください(苦笑)。

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