最終日の苦境もチーム一丸で克服キナンのトマ・ルバが「ツール・ド・インドネシア」で総合優勝 難関山岳で先行しトップに

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 キナンサイクリングチームが出場していたツール・ド・インドネシア(UCIアジアツアー2.1)は、8月22日に第4ステージ、23日に最終の第5ステージが行われ、キナンのトマ・ルバが第4ステージで総合首位に立ち、続く第5ステージでもその座を守って個人総合優勝に輝いた。ルバは山岳賞でも首位を守り、総合2冠に輝いた。

キナンサイクリングチームがトマ・ルバ(中央)で個人総合優勝と山岳賞の2冠を獲得 Photo: KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

難関イジェン山に挑むクイーンステージ

 第4ステージは、今大会で最も重要な1日。ジャワ島最東部まで進んだプロトンは、アジアの秀峰・イジェン山の頂上を目指すことになる。上り始めから急坂が始まり、中腹以降は10%を超える急勾配。道路舗装が荒い区間や、部分的に勾配20%前後の激坂も待ち受け、この上りで各選手の登坂力の差が明白になる。このステージの結果がそのまま総合成績へと反映される可能性も。レース距離は147.3km。

イジェン山の登山口にある小学校では児童たちが応援歌(?)の大合唱 Photo: KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

 レースは6人の逃げで幕を開けた。いずれも総合成績に関係しない選手であることから、メイン集団は6人の先行を容認。キナン勢は先に控える山岳に向けて、まずは集団に待機する。レースが100kmを迎える段階でタイム差がこの日最大の約5分まで広がったことをきっかけに、集団が少しずつ活性化していくこととなった。

 徐々に縮み始めたタイムギャップは、120km地点を過ぎて上りが始まるとあっという間に縮まり、130km地点を目前に逃げメンバーを全員吸収。キナン勢は5選手全員が問題なく集団内を走る。134km地点に設定される1級山岳の頂上に向かって、まずは新城が集団のペースを上げ、続いて山本も牽引に加わり、プロトンを完全に崩壊させることに成功。頂上の山岳ポイントへはルバが2位で通過し、山岳賞争いで得点を伸ばした。

ルバが総合ライバルを突き放し首位に

 そしていよいよやってきたイジェン山の上りは、登坂開始早々にルバを含む6人が先行を開始。やがて先頭は3人となり、その後ろではマルコス・ガルシアも続く。残り10kmを切ったタイミングで、先頭はルバとメトケル・エヨブ(エリトリア、トレンガヌ.INC・TSGサイクリングチーム)の2人に絞られた。

ステージ優勝はエヨブ(前)に譲ったものの、ルバが総合ジャンプアップに成功 Photo: KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

 エヨブは総合争いで大きく遅れているため、ルバは後続とのタイム差拡大を最優先し、先頭固定で先を急いだ。最後はエヨブにステージ優勝を譲ったが、ルバは2位を確保。6秒のボーナスタイムも獲得し、個人総合で首位へとジャンプアップした。今大会へは順調なトレーニングを積んで臨んでいるルバだが、“本番”ともいえるイジェン山登坂でしっかりと結果を残してみせた。他大会でもこの山岳を経験しており、コースの特徴を把握していた点もプラスに作用した。

 キナンはこの日ほかにも、ガルシアがステージ4位に入り、グアルディオラが9位と上位に続いた。また、献身的な走りを見せた山本も20位で終え、混戦となった個人総合で10位に踏みとどまっている。

マルコス・ガルシアがステージ4位 Photo: KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU
サルバドール・グアルディオラがステージ9位 Photo: KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU
トマ・ルバが山岳賞のブルージャージに続き、個人総合のグリーンジャージも獲得 Photo: KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

トマ・ルバのコメント

 イジェン山は(ツアー・オブ・ジャパンで上る)富士山と似ていて、戦術的に走るよりはいかにテンポで上り続けられるかが重要になる。強い選手が勝つし、そうではない選手は遅れていくだけだ。だから今日もアタックらしいアタックはしなかったし、テンポで上り続けた結果だといえる。

 明日も上りが待っているが、今日は3人がトップ10フィニッシュでき、自信をもって臨める。リーダージャージを守り切ることに集中するし、ミスやトラブルには注意したい。明日の夜、みんなで喜び合えると信じている。

第4ステージ結果
1 メトケル・エヨブ(エリトリア、トレンガヌ.INC・TSGサイクリングチーム) 4時間16分33秒
2 トマ・ルバ(フランス、キナンサイクリングチーム) +0秒
3 アミール・コラドウズ(イラン、タイユアンミオジェサイクリング) +50秒
4 マルコス・ガルシア(スペイン、キナンサイクリングチーム) +1分24秒
5 ベンジャミン・ダイボール(オーストラリア、チームサプラサイクリング) +1分44秒
6 ドリュー・モレ(オーストラリア、トレンガヌ.INC・TSGサイクリングチーム) +1分51秒
9 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、キナンサイクリングチーム) +5分3秒
20 山本元喜(キナンサイクリングチーム) +8分14秒
38 新城雄大(キナンサイクリングチーム) +15分22秒

リーダーチームとして集団コントロール

 最終日は、前日までのジャワ島を離れ、バリ島へ移動。第5ステージは同島の西側に位置する港、グリマヌクからバトゥール・グローバル・ジオパークまでの136.8kmで行われた。前半は海沿いの平坦路をゆくが、後半にかけて上り基調へと変化する。山岳区間は全体的に舗装が荒く、残り25kmからは未舗装区間も現れる難コースだ。

バリ島へは船で移動。選手らもこの時は観光気分 Photo: KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU
ユネスコに認定されるバトゥール・グローバル・ジオパーク Photo: KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

 最終日とあって、残りわずかなチャンスに賭ける選手たちがスタート直後から次々とアタック。激しい出入りの中、レース序盤が進行していく。30km地点を迎えたところで7人が先行を開始。個人総合での最上位はトップのルバから約6分差の選手とあり、この段階でキナン勢が集団を落ち着かせてコントロールを本格化させた。50km地点を過ぎたところでのタイム差は5分30秒。メイン集団は新城や山本がペーシングを担う。

レース序盤からメイン集団のコントロールに従事した新城雄大 Photo: KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

 レース状況が一変したのは、70kmを過ぎたあたり。タイム差を知らせる情報が錯綜したことや、通過する都市の交通規制が混乱したことが関係し、あっという間にその差が大きく広がってしまったのだ。90km地点でのタイム差は、この日最大の10分25秒となった。

 だが、ここからがキナン勢の見せ場となった。大差になっていることを確認すると、新城や山本がペースを上げ、レース後半の山岳区間に入るとグアルディオラとガルシアが登坂力を武器に前を行く選手たちとの差を縮めていく。同時にメイン集団は崩壊し、徐々に人数が絞られていく。この日2つ目のカテゴリー山岳が設置された126km地点では4分45秒差として、リーダージャージキープに向けて状況を整えていく。

逃げ切ったダイボールがステージ優勝 Photo: KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

 この間、先頭は2人となりステージ優勝争いへとシフト。結果、最終盤に独走へと持ち込んだベンジャミン・ダイボール(オーストラリア、チームサプラサイクリング)がこのステージの勝者となった。

苦境を乗り越え総合優勝

 ダイボールのフィニッシュから約5分。ルバを含むクライマーたちの集団がやってきた。最後はルバが自らこのグループを率いてペースアップ。ステージ3位争いのスプリントからは後れを取ったが、総合においては安全圏でフィニッシュラインを通過。この瞬間、ルバの個人総合優勝が決定した。

ステージ8位に入り、総合首位を守りきったトマ・ルバ Photo: KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU
ゴール後、ルバ(中央)の個人総合優勝を喜ぶグアルディオラ(左)とガルシア(右) Photo: KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

 スタート直後からライバルの動きをチェックし、逃げを狙う選手たちのアタックを選別しながらレースコントロールに持ち込んだキナン勢。途中、思わぬ形で先頭グループに大差を許すことになったが、そこはUCIアジアツアーを戦う中で培った走り方やメンタルで苦境を乗り切った。

 ルバは個人総合のグリーンジャージと山岳賞のブルージャージを獲得し、2冠を達成。チーム総合でも3位とし、その力を示すこととなった。今大会に臨むうえでのテーマの1つであったUCIポイントの獲得は、139点。大会を制したルバにとどまらず、第3ステージで3位となった新城ら日本人メンバーの走りも高い貢献度となった。

序盤からチームのために尽くし、大きく遅れてゴールした山本元喜 Photo: KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU
自らの成績を犠牲にして働いた山本元喜をトマ・ルバが出迎える Photo: KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

 シーズン後半戦最初のヤマ場として挑んだツール・ド・インドネシアを成功裏に終えたキナンサイクリングチーム。ここで得た勢いを、その後のレースにもぶつけていくことになる。なお、チームの次の公式戦は、9月1日のシマノ鈴鹿ロードレースクラシックを予定。その2日前には三重県・松阪競輪場で開かれるバンクリーグ第2戦に臨むことにもなっている。

キナンサイクリングチームのトマ・ルバ(中央)が個人総合優勝 Photo: KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU
トマ・ルバは山岳賞のブルージャージも最後までキープ Photo: KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU
キナンサイクリングチームはチーム総合でも3位に輝いた Photo: KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

トマ・ルバのコメント

 ハードなレースになることは想定していた。コース上がオープンになってしまっている状況があり、先頭グループとのタイム差が思っていた以上に広がってしまったが、(新城)雄大と(山本)元喜が素晴らしいコントロールをしてくれて、山岳に入ってからはサルバ(グアルディオラ)の牽引が本当に強かった。そのおかげでグリーンジャージをキープすることができた。もちろんこの結果はみんなで力を結集させたことによるもので、とても美しい優勝になった。

 (ステージ3位に入った)第2ステージ後にも感じたことだが、シーズン後半戦に入ってみんながよい働きを見せていて、厳しいシーズンインだったチーム状況を切り替えられている。まずは今日の勝利の喜びに浸るとして、明日からは次の大きな目標へ向かっていく。チーム全員がよいコンディションにあり、力を合わせて戦うことがとても楽しみだ。

第5ステージ結果
1 ベンジャミン・ダイボール(オーストラリア、チームサプラサイクリング) 3時間36分25秒
2 イェロエン・メイヤース(オランダ、タイユアンミオジェサイクリング) +1分0秒
3 アミール・コラドウズ(イラン、タイユアンミオジェサイクリング) +4分58秒
4 メトケル・エヨブ(エリトリア、トレンガヌ.INC・TSGサイクリングチーム)
5 ジェシー・イワート(オーストラリア、チームサプラサイクリング)
6 アンガス・ライオンズ(オーストラリア、オリバーズリアルフードレーシング)
8 トマ・ルバ(フランス、キナンサイクリングチーム) +5分4秒
10 マルコス・ガルシア(スペイン、キナンサイクリングチーム) +6分20秒
37 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、キナンサイクリングチーム) +23分25秒
65 新城雄大(キナンサイクリングチーム) +34分2秒
73 山本元喜(キナンサイクリングチーム) +38分5秒

個人総合
1 トマ・ルバ(フランス、キナンサイクリングチーム) 20時間7分32秒
2 アンガス・ライオンズ(オーストラリア、オリバーズリアルフードレーシング) +1分31秒
3 イェロエン・メイヤース(オランダ、タイユアンミオジェサイクリング) +1分46秒
4 ジェシー・イワート(オーストラリア、チームサプラサイクリング) +4分30秒
5 クリスティアン・ライレアヌ(モルドバ、チームサプラサイクリング) +4分43秒
6 メトケル・エヨブ(エリトリア、トレンガヌ.INC・TSGサイクリングチーム) +5分4秒
21 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、キナンサイクリングチーム) +31分13秒
32 マルコス・ガルシア(スペイン、キナンサイクリングチーム) +43分0秒
33 山本元喜(キナンサイクリングチーム) +43分13秒
37 新城雄大(キナンサイクリングチーム) +53分51秒

ベストアジアンライダー
1 ゴー・チュンファン(シンガポール、トレンガヌ.INC・TSGサイクリングチーム) 20時間20分40秒
16 山本元喜(キナンサイクリングチーム) +30分5秒
20 新城雄大(キナンサイクリングチーム) +40分43秒

スプリント賞
1 ローハン・ドゥプローイ(南アフリカ、プロタッチ) 54pts
5 トマ・ルバ(フランス、キナンサイクリングチーム) 23pts
14 新城雄大(キナンサイクリングチーム) 10pts
20 マルコス・ガルシア(スペイン、キナンサイクリングチーム) 6pts
24 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、キナンサイクリングチーム) 5pts
27 山本元喜(キナンサイクリングチーム) 3pts

山岳賞
1 トマ・ルバ(フランス、キナンサイクリングチーム) 63pts
6 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、キナンサイクリングチーム) 34pts
11 マルコス・ガルシア(スペイン、キナンサイクリングチーム) 11pts
27 山本元喜(キナンサイクリングチーム) 1pts

チーム総合
1 チームサプラサイクリング 60時間21分6秒
3 キナンサイクリングチーム +28分3秒

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