“ベタな表現”では伝えきれないエモーション走れば腑に落ちる 筆舌に尽くしがたい「ツール・ド・おきなわ」サイクリングの魅力

by 大澤昌弘 / Masahiro OSAWA
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 「ツール・ド・おきなわ」にサイクリングイベントがあるのをご存知だろうか。市民レースのイメージが強いが、誰もが楽しめるイベントがいくつもあるのだ。Cyclist編集部ではそのうちの一つ、市民レース210kmとほぼ同一のコースを走る「やんばるセンチュリーライド」の一部を実走、そこはもう一度走ってみたいと思わせる魅力に溢れていた。

「やんばるセンチュリーライド」のコースを走って沖縄の魅力を探る Photo: NPO法人ツール・ド・おきなわ協会

やんばるサイクリングの魅力

 仕事で沖縄でサイクリングだなんて最高だ。東京に戻って改めてそう思う。でも、「何がいいのか」と聞かれて、理解してもらうのはなかなか難しそうだ。「南国の雰囲気がいいよ」だなんて、どこかで聞いた感じがあるし、エメラルドグリーンの海、やんばるの大自然、大宜見村のシークァーサー、東村のパイナップル…、と言葉を並べても不安なのだ。どれもこれも印象深いのだが、誰もが持っている沖縄のイメージからは外れない。逆にそれが想像力を奪ってしまい、沖縄の良さが伝わりそうにないのだ。

何キロも先までも海岸線を行く。その先に何があるのかと想像が掻き立てられる Photo: Masahiro OSAWA
森を切り拓いたやんばるの大自然を行く Photo: Masahiro OSAWA
道の駅大宜見で売られていたシークァーサー Photo: Masahiro OSAWA
東村のパイナップルとパイナップルフローズン Photo: Masahiro OSAWA

 サイクリング視点ならば少しはわかってもらえるかもしれない。筆者が取材した「やんばるセンチュリーライド」は名護を起点に175kmを走るコース。一部区間を除き、市民210kmとほぼ同一のコースを走る。厳しいレースと違って、自分ペースで走れるからこそ、サイクリングが楽しめる。

 沖縄北部地域のやんばるに向けて、海沿いの道が続く。道路脇に澄んだ海が広がり、何キロも先まで海岸線が見える。走れば走るほど、道路以外、人手の加わったものがなくなっていく。目の前は海、山、空、道だけになる。

やんばるに向けて北上するにつれ風景がシンプルかつライブ感のあるものに。風景に目を奪われる時間が次第に増えていく Photo: NPO法人ツール・ド・おきなわ協会

 言葉で記せばシンプルな風景だが、普段気にしたこともなかった景色にライブ感があって、目を奪われる時間が次第に増えていく。風景が目に滞留するのだ。そんな新鮮な感覚が「ここに来てよかった」と思わせる。

 沖縄最北端の辺戸岬を過ぎてからの国道70号線は景色が一変する。森を切り拓いた道は、アップダウンの連続だ。下りの惰性だけではとても上れないような坂ばかり。コースプロフィールに山はないが、坂と表現するにはあまりに上るし、山をひたすら走り続けるといったほうがいいだろう。

 予想もしなかったこの展開も沖縄の魅力のひとつといえる。予想できてしまうより、思いもよらないルートを辿るほうがサイクリングは楽しいじゃないか、と思うのだ。

辺戸岬を過ぎてからはアップダウンの連続 Photo: NPO法人ツール・ド・おきなわ協会
海岸線を辿ってきたのとは対照的にひたすら森の中を走ることになる Photo: Masahiro OSAWA
コース脇には、集落の人が協力して運営するという共同売店の第1号店「奥共同店」の姿も Photo: Masahiro OSAWA
奥共同店で手に入れた沖縄の伝統菓子「ナントゥ」。ういろうのようなモチモチ感がたまらない Photo: NPO法人ツール・ド・おきなわ協会

 そういえば…と思う。ルート上で景勝地と名の付きそうなポイントは意外に少ない。「やんばるセンチュリーライド」のコースでは、辺戸岬近くに見える、約80mの絶壁が見所の「茅打ちバンタ」くらいだろうか。それでも、「これはいい!」と思える場所はいくつもある。ゴール間際の名護市を一望できる絶景スポットにも名前はないが、誰もが足を止めてしまうだろう。

 サイクリストの数だけ違った感想が生まれそうだ。あそこが良かった、ここが良かった、と。もういちど現地に行ってみれば、また違った感想を抱くような気がする。だからこそ、コースの魅力を端的に言い表そうとすると、口ごもってしまう。「筆舌に尽くし難い」とはこういうことを言うのだろう。こうした魅力に沖縄ならではの食べ物や気候も味わえれば、さらに満足度の高い旅になるはずだ。

「やんばるセンチュリーライド」には名護市を一望できる絶景スポットも Photo: NPO法人ツール・ド・おきなわ協会

大会実行委員長が語る魅力

 運営側の声にも耳を傾けてみよう。ツール・ド・おきなわの魅力について、森兵次実行委員長は次のように語る。「沖縄ブランドや、明るく親切な沖縄のホスピタリティがいいんだと思います。けれども、一番のウリは道です。海も坂もある。きついけど道がいい。そうした魅力を総合的に感じてもらっているのではないでしょうか」。

ツール・ド・おきなわ実行委員長の森兵次氏 Photo: Masahiro OSAWA

 「やんばるセンチュリーライド」の魅力はまさに森氏の言葉通り。きついけれども道がいい。風景もいいし、車の往来も少ない。そして、整備された道が続き荒れた場所も少ない。走っていて気持ちいいのだ。

 ちなみに、ツール・ド・おきなわのサイクリングイベントには、1泊2日かけて336kmを走る「沖縄本島一周サイクリング」、名護市から恩名村まで東海岸を走って南下して名護に戻る90kmコースの「チャレンジサイクリング」、1泊2日で離島に行く70kmコースの「伊平屋島サイクリング」など全部で7つのコースがある。すべて名護が起点になり、好みにあったコースが選べる。選んだコースの先々で様々な沖縄を見せてくれるのではないだろうか。

 今後は「センチュリーライドのように地域への滞在時間が短いものではなく、地域の文化に触れあい、地域の人と触れ合えるようなプランを増やしたい」(森氏)としており、これからにも期待できそう。名の知れ渡ったイベントだが、どんどん進化し、ますます面白い大会になりそうだ。

◇         ◇

 最後に、イベント当日の11月上旬の沖縄は“とにかく素晴らしい”と記したい。南国らしさを味わうのにふさわしい時期だ。昨年は気温が25℃を超え、この時期でも名護にはまだ夏の名残があった。東京と比較すると季節がひとつ違う。ギラギラとした夏の暑さはないながらも、肌寒さは感じない。サイクリングをするには、最も適している。

 南国の食べ物、走り応えのあるコース、目に滞留する風景、そして夏の名残。行ってみて、走ってみて、魅力がわかるイベントと言えるだろう。走り終えたときに、この時期にきて良かったと思えるはずだ。

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