ブエルタ・ア・エスパーニャ2019 有力選手プレビューマイヨロホ争いはユンボとアスタナの2強を中心に 4賞ジャージは誰の手に渡るのか?

by あきさねゆう / Yuu AKISANE
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 グランツール最終戦であるブエルタ・ア・エスパーニャが、8月24日に開幕する。赤い総合リーダージャージの「マイヨロホ」、緑色のポイント賞ジャージの「マイヨプントス」、青水玉模様の山岳賞ジャージ「マイヨモンターニャ」に加えて、新人賞ジャージとして白い「マイヨブランコ」が新設された。今回は4賞ジャージの有力選手をプレビューしていく。

左からマイヨプントス、マイヨロホ、マイヨモンターニャ、そして新設のマイヨブランコ ©ASO

2強を中心にマイヨロホを争うか

 今年のジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランスの総合優勝者に共通していることは、ダブルエース体制におけるセカンドエースだった選手であることだ。ジロで勝利したリチャル・カラパス(エクアドル、モビスターチーム)はミケル・ランダ(スペイン)に次ぎ、ツールで勝利したエガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス)はゲラント・トーマス(イギリス)に次ぐ立ち位置だった。

 このことから2人の強力なグランツールレーサーを起用できるチームがマイヨロホに近いのではないかと思う。その観点に立つと、2つチームが総合優勝の最有力候補として浮かび上がる。

 一つはユンボ・ヴィスマだ。ジロ総合3位のプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア)、ツール総合3位のステフェン・クライスヴァイク(オランダ)のダブルエース体制は非常に強力だ。さらに、ジョージ・ベネット(ニュージーランド)やロベルト・ヘーシンク(オランダ)など山岳アシストの戦力も分厚い。

ジロ・デ・イタリアでは個人タイムトライルで圧倒的な走りを見せたプロモシュ・ログリッチェ Photo: Yuzuru SUNADA

 もう一つはアスタナプロチームだ。昨年のブエルタ総合3位のミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア)、キャリア最高のシーズンを送っているヤコブ・フルサング(デンマーク)のダブルエース体制で挑む。ヨンとゴルカのイサギレ兄弟や、ブエルタで過去2回山岳賞に輝いたオマール・フライレ(スペイン)ら上れる選手がアシストに回る。

リエージュ~バストーニュ~リエージュで優勝を飾るなど、今季絶好調のヤコブ・フルサング Photo: STIEHL / SUNADA
2016年にブエルタ総合優勝を飾った経験のあるナイロ・キンタナ Photo: Yuzuru SUNADA

 ダブルエース+山岳アシストの陣容を見る限りでは、これら2チームがチーム力では図抜けているだろう。しかし、他にも強力な総合エースを据え、総合優勝を狙うチームは存在する。

 モビスターはジロ優勝のカラパスが出場予定だったが、オランダで開催されたクリテリウムレース中に落車負傷した影響で、急遽欠場となってしまった。それでも、2016年ブエルタ総合優勝のナイロ・キンタナ(コロンビア)、世界チャンピオンのアレハンドロ・バルベルデ(スペイン)、2018年パリ〜ニース総合優勝のマルク・ソレル(スペイン)といった実力者が揃っている。

 イネオスはワウト・プールス(オランダ)とタオ・ゲオゲガンハート(イギリス)の2人で総合を狙う。また、他のチームがクライマー中心の布陣で挑むのに対し、ヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ)、イアン・スタナード(イギリス)を筆頭に強力なルーラーを4人ほどメンバーに加えており、イネオス独自の戦術の実行が可能となるだろう。

 EFエデュケーションファーストはツール総合7位のリゴベルト・ウラン(コロンビア)を中心に、ジロ総合11位のヒュー・カーシー(イギリス)、ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ)、ダニエル・マルティネス(コロンビア)といったチーム内の上れる選手を全員投入する勢いでメンバーを固めてきた。

クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ第7ステージで勝利したワウト・プールス Photo : STIEHL / SUNADA
病気に苦しんだ昨シーズンから調子を取り戻しつつあるエステバン・チャベス Photo: Yuzuru SUNADA

 UAE・チームエミレーツはプロ1年目ながらツアー・オブ・カリフォルニアで総合優勝を飾ったタデイ・ポガチャル(スロベニア)がグランツール初参戦。2015年総合優勝のファビオ・アル(イタリア)と共にダブルエースとなるだろうか。昨年総合優勝を飾ったミッチェルトン・スコットはイェーツ兄弟が揃って欠場。代わりにジロでステージ1勝を飾ったエステバン・チャベス(コロンビア)が単独エースを担う。

 ボーラ・ハンスグローエはジロ総合6位のラファル・マイカ(ポーランド)、ジロ総合15位のダヴィデ・フォルモロ(イタリア)、ツアー・オブ・ターキー総合優勝のフェリックス・グロスチャートナー(オーストリア)を中心に総合上位を狙う。アージェードゥーゼール ラモンディアールからは、3年前のブエルタでステージ優勝を飾ったピエール・ラトゥール(フランス)が単独エースを務める見込みだ。

ロペスを中心に争われるマイヨブランコ

 以前から新人賞として25歳以下の選手の総合成績は表彰対象となっていたが、今大会からマイヨコンビナータ(複合賞)が廃止され、ホワイトジャージのマイヨブランコ(新人賞)が新設された。

 ツールと同様に1994年1月1日以降に生まれた選手が対象で、記事執筆時点のスタートリスト上では52人の選手が対象となっている。ツールでは28人が対象だったので、ブエルタは若い選手が多く出場する。新たなジャージをめぐる争いが、総合争いを含むレース展開に与える影響は大きいだろう。

もはや新人賞の常連であるミゲルアンヘル・ロペスだが、狙うは白ジャージよりも赤ジャージだろう Photo: Yuzuru SUNADA

 その中でマイヨブランコ候補の筆頭は25歳のロペスだろう。ジロとブエルタそれぞれで2年連続新人賞を獲得している。実績は抜群で、安定感のある走りは総合優勝候補としての呼び声も高い。

 20歳のポガチャルは、若手登竜門レースとして名高いツール・ド・ラヴニールで2018年に総合優勝を飾った。前述したとおり、すでにワールドツアーでの総合優勝の経験もあり、グランツール初出場ながら総合優勝の可能性さえ感じるポテンシャルの持ち主だ。

ツール・ド・スイス第9ステージで勝利したヒュー・カーシー Photo: STIEHL / SUNADA
ツアー・オブ・カリフォルニアでワールドツアーのステージレース初の総合優勝を飾ったタデイ・ポガチャル Photo: GIBSON / SUNADA

 25歳のカーシーは、今年のツール・ド・スイス第9ステージで100km以上を独走して勝利するという凄まじい走りを見せた。身長193cm・体重69kgという細い見た目に反してタイムトライアルでも力強さを見せており、総合上位進出が期待される。

 24歳のゲオゲガンハートは、プロ3年目にして初勝利を飾るなど躍進の1年となっている。タイムトライアルを得意としている点も大きなアドバンテージとなるだろう。

総合勢が獲りやすいマイヨプントス

 ポイント賞ジャージであるマイヨプントスだが、一概にスプリンター向けとはいえない。そもそもブエルタはピュアスプリンターにとって居心地の良い場所ではない。アップダウンの多いゴールフィニッシュに加えて、難関山岳を越えた先に中間スプリントポイントが設定されることも多く、スプリンターにとってポイント獲得は容易ではない。そのため、過去10大会でマイヨプントスを獲得した選手の脚質の内訳は、クライマータイプ6人、スプリンタータイプ3人、パンチャータイプ1人と、ほとんどクライマーが獲得している。

 スプリンタータイプでの有力候補の筆頭はサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)だ。絶好調の今シーズンは、すでに11勝をあげており、うち9勝がワールドツアーでの勝利と内容も素晴らしい。ピュアスプリンターのなかでは上りにも強く、多くのポイント獲得が期待できそうだ。

クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ第3ステージで勝利したサム・ベネット Photo : STIEHL / SUNADA

 ほかにはジョン・デゲンコルプ(ドイツ、トレック・セガフレード)、エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)も候補にあげられる。デゲンコルプはブエルタ通算10勝をあげており、2014年にマイヨプントスを獲得したこともある。ボアッソンハーゲンは上れるスプリンターの代表格であり、今シーズンはクリテリウム・ドゥ・ドーフィネでステージ1勝を飾った。

 パンチャータイプでは、フィリップ・ジルベール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)は有力候補だ。今シーズンはパリ〜ルーベで勝利するなど、近年は石畳など平坦系レースに合わせた身体つくりをしているように思われるが、かつてアルデンヌクラシックで猛威を奮った走りは、起伏の激しいブエルタに適しているだろう。

クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ第1ステージで勝利したエドヴァルド・ボアッソンハーゲン Photo : STIEHL / SUNADA
昨年のマイヨプントスに輝いたアレハンドロ・バルベルデ Photo: Yuzuru SUNADA

 総合勢では、過去4回マイヨプントスを獲得しているバルベルデを筆頭に、ログリッチェ、カラパス、フルサングら競り合いに強いオールラウンダーが実際のところの有力候補だといえよう。

マイヨモンターニャは逃げ屋向け

 山岳賞ジャージであるマイヨモンターニャは、クライマー向けというよりは逃げ屋向けのジャージだ。そして、総合成績を大きく崩してしまった有力選手がマイヨモンターニャ狙いに切り替えてくることもあり、4種類の特別ジャージのなかで一番予想が難しいジャージである。

 過去にグランツールで山岳賞ジャージを獲得した経験を持つ選手は、2018年ブエルタのトマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)、2016・2017年ブエルタのフライレ、2014・2016年ツールのマイカ、2016年ジロのミケル・ニエベ(スペイン、ミッチェルトン・スコット)、2014年ブエルタのルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナプロチーム)、2013年ブエルタのニコラ・エデ(フランス、コフィディス・ソルシオンクレディ)となっている。

昨年、マイヨモンターニャを獲得したトマス・デヘント Photo: Yuzuru SUNADA

 マイカは2015年ブエルタで総合3位になった経験を持ち、今シーズンもジロ総合6位となっており、まずは総合エースとしての走りが期待されている。フライレとサンチェスはロペスとフルサングのアシスト、ニエベはチャベスのアシストが最優先任務となるため、なかなか自由に動けないと思われる。

 そうした状況を加味すると、最有力候補はやはり逃げ職人のデヘントではないだろうか。今年はジロ・ツールに続いての出場となり、3大ツール全完走の記録達成を狙っている。ジロとツールではカレブ・ユアン(オーストラリア)のスプリントのアシストを最優先任務としてこなしていたが、ブエルタでは実質エースとして自由な走りが期待できそうだ。

 コフィディスにはエデ以外にも、ルイスアンヘル・マテ(スペイン)、ダルウィン・アタプマ(コロンビア)といった上りに強い逃げ巧者が揃っている。プロコンチネンタルチームとして積極的に逃げる戦略は理にかなっているので、コフィディスの選手はマイヨモンターニャの有力候補といえそうだ。

昨年のブエルタ第4、第8ステージで勝利したベン・キング Photo : Yuzuru SUNADA
昨年のブエルタ第13ステージで勝利したオスカル・ロドリゲス Photo: Yuzuru SUNADA

 他には昨年逃げで2勝を飾ったベン・キング(アメリカ、ディメンションデータ)、同じく昨年ブエルタ初出場にして初勝利を飾ったオスカル・ロドリゲス(スペイン、エウスカディ・ムリアス)、2016年ブエルタステージ1勝のジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、トレック・セガフレード)らもマイヨモンターニャ獲得の期待が持てるだろう。

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