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つれづれイタリア~ノ<132>さあ、山はもう怖くないよ! クネゴ式メソッドでヒルクライマーになろう

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 那須高原ヒルクライムが開催される前日の7月6日、面白い試みが行われました。2004年にジロ・ディタリアを制覇し、クラシックレースやジャパンカップでも輝かしい成績を残したイタリア人元プロレーサー、ダミアーノ・クネゴによるヒルクライムメソッドが実施されました。今回はクネゴにどのような練習方法を教えたのか。どのようにしてトレーニングメニューを決めたのか。一人でもヒルクライムに強くなるためのコツなど、様々なことを聞いてみました。

コースの最後に必ず休憩スペースを確保 ©DCCP

 ランプレやNIPPO・ヴィーニ・ファンティーニを経て、昨年プロ選手を引退したクネゴが、2020年に発足するクネゴ・サイクリングプロジェクトの活動の一環として、日本国内で様々な活動を行なっています。今回のヒルクライム教室はその一つです。天才的なヒルクラマーとして活躍したクネゴの名前を聞いて、十数人が集まり、力の衰えを知らない元チャンピオン直伝の元で練習がスタートしました。

長いトレーニングと同じ効果

――日本ではヒルクライムレースが多いですので、ヒルクライマーとしてどのような練習をすれば強くなれるのでしょうか。

クネゴ:さまざまな練習方法がありますが、「ripetute」(リペトゥーテ)というトレーニング方法が一番有効だと思います。

ヒルクライムメソッドの前に参加者の自転車を入念にチェックするクネゴ氏 Photo: Marco Favaro
ウォーミングアップにも参加 Photo: Marco Favaro

――「リペトゥーテ」とは、なんでしょうか。

クネゴ:「ripetute」とはイタリア語で「リピート」を意味します。決まられたコースに決められた負荷で上ることを繰り返す練習方法です。特に仕事や勉強が忙しい人に適するトレーニングです。短くも集中できる練習方法ですが、長いトレーニングとほぼ同じ効果が得られます。

――具体的にどのようなものでしょうか。

クネゴ:まずは、コースの選択は重要です。山に強くなるには、上り坂が必要です。家の近くに距離1500〜2000mで傾斜6〜7%の上り坂があればベストチョイス。8%を超える傾斜を避けるべきです。6〜7%の傾斜は十分厳しいですが、それほど失望するものではありませんし、脚力の変化を実感できるちょうどいい傾斜です。できることなら最後に平坦なスペースがあればベストです。今回、那須高原ロングライドのオーガナイザーが与えられたコースは1800mぐらいでしたのでちょうどよかったし、最後にホテルの駐車場がありましたので、完璧でした。ただ、傾斜はややきつかったのが難点でした。まずは誰でも練習できるコースの分け方を説明します。コースを8区間に分けます。コースに合わせて距離を変えてください。

第1区間:Aセクター (300m)
第2区間:Bセクター (200m)
第3区間:Aセクター (300m)
第4区間:Bセクター (200m)
第5区間:Aセクター (300m)
第6区間:Bセクター (200m)
第7区間:Aセクター (200m)
第8区間:Cセクター (100m)

クネゴ:参加者に区間がわかるように道路に看板を立てました。看板などが立てられない場合は、目印を決めるなり、サイコンを見るなり、各自で工夫してください。このコース上でインターバルトレーニングを行います。まずは20分の軽めのウォーミングアップを行います。筋肉を温めてからトレーニングを開始。全コースにおいてシッティングで挑みます。ダンシングをしないでください。

看板の設置を自ら手伝うクネゴ氏 ©DCCP

 Aセクターは、パワーを使う区間です。フロントギヤをアウターに固定し、リアのギヤを一番楽だと思うギヤから2つ落として(重くして)上ってください。Bセクターの区間に入ったらギヤを軽くして、足を休ませてください。こうやってAセクターとBセクターを繰り返します。最後のCセクターは短いですが、追い込み区間です! Aセクターから後ろギヤをさらに1つ重くして初めてダンシングを行ってください。全過程が終わったら、すぐに足を止めないで、自転車に乗りながら呼吸を整えてください。先ほど言ったように、駐車場や少し平坦な場所があれば理想的です。このセットを3回繰り返したら、十分です。パワー、リカバリー、パワーの繰り返しでヒルクライムに必要な脚力がアップします。最後の追い込みではコーナリングの立ち上がりが楽になるはずです。できることならパワーメーターやハートレートストラップの利用はおすすめです。

――それはなぜでしょうか?

クネゴ:まずはワット数などを見て脚力の進化を実感できるからです。そしてハートレートストラップを使えば、心臓に対する負荷を監視することができます。心臓の動きを可視化することによって、力を出し切っているかどうかを知ることができます。60%なのか、限界に近い90%なのか。オーバーワークなのか。データを知ることで無理な練習をしないようにできます。それ以降のステップアップにはなりますが、自分の限界値を知るにはやはりスポーツ専門機関を訪れるべきですね。イタリアでは割とポピュラーです。ま、そこまでストイックにならなくてもそれなりに成果が出ると思います。

一人一人のフォームを確認するために軽々と登ってゆくクネゴ氏。とても引退したと思えない身体能力 Photo: Marco Favaro

――悪天候や仕事でトレーニングがなかなかできない場合、どのような練習をすればいいですか。

クネゴ:ローラー台は効果的だと思います。最新のローラー台はだいぶ進化しましたので、今までできなかった練習ができるようになりました。例えば私のスポンサーであるイタリアのローラー台メーカーの「Magnetic Days」は、スマートトレーナーというアプリと連動し、トレーナーが設定した練習メニューをそのままローラー台が再現できます。

――どういうことですか。

クネゴ:例えば、Aさんは私のトレーニングメソッドを受けたい場合、私が作ったメニューをAさんのアプリを通して、ローラー台に送り込みます。練習メニューに応じて、ローラー台の負荷が自動的に変わります。セッションが終わってから、その結果は私にも送られ、Aさんのトーレニングの成果を瞬時に確認することができます。サボったかどうかもしっかりわかりますよ(笑)。

――Zwiftとは違うのでしょうか。

クネゴ:全く違いますね。今私が取り組んでいるのが、バーチャルパーソナルトレーニングシステムです。忙しい人ほどお薦めのトレーニング方法です。天候に左右されず、1時間集中してできるものです。練習の結果も分析できますので、まるでトレーナーが自宅にいるような感じです。テクノロジーの進化に感謝します。

最後の追い込み区間でもがくトレーニングの参加者 Photo: Marco Favaro
フォームやギヤ比をチェックするクネゴ氏 Photo: Marco Favaro

――たった1時間の練習は少なくないですか?

クネゴ:昔のやり方は量が求められていましたが、現在は量より質。短い時間でも長いトレーニングと同じ効果が得られるとわかってきました。だらだらと練習をするよりも45〜60分を集中してトレーニングをしたほうが、質のいいトレーニングができます。さらに新しいローラー台のいいところは、心臓に対する最大の負荷を測ることができます。専用ソフトを使えば、たった20分のテストで、ハートレートのミドルレンジやMAXレンジを分析することができます。専門機関に行かなくても済みます。ワット数も何もかもわかります。

――今回の那須高原ロングライドで行ったトレーニングの印象は?

クネゴ:そうですね。参加者はみんな初心者でしたのでこのようなトレーニング方法は初めてだったようです。みんなにいい刺激になったと思います。1日で飛躍的な変化を見ることができないかもしれませんが、辛抱強くこのトレーニング方法を続けば、成果は現れてくると思います。

ポスト新城、別府を

――2020年にDCCP(ダミアーノ・クネゴ・サイクリング・プロジェクト)が本格的にスタートします。日本との長い付き合いが始まりますね。

クネゴ:サエコやランプレの時代にジャパンカップに出場するために何度も来日しましたし、NIPPO・ヴィーニ・ファンティニに移籍してから日本人と接する時間が増えました。いつの間にか私にとって日本は縁の深い国になりました。今はDCCPを通して日本にも自転車競技の面白さを伝えたいですし、私の経験を生かし、トレーナーとしてもみんなにもっと強くなってもらいたいです。

――日本人選手とイタリア人選手はまだまだ大きな差があると思いますが、NIPPOに携わった者としてどう思いますか。

クネゴ:確かにまだ大きな差があると思います。ヨーロッパでは自転車競技がメジャースポーツだし、競技人口も多いのでチャンピオンがたくさん生まれてもおかしくないです。私が見る限りでは、日本で自転車競技は盛んになり始めたのがこの20年ぐらいですね。この期間に日本人はずいぶん変わったと思います。2015年にNIPPOに入ってから日本人選手が凄まじい進化を肌で感じました。やはりヨーロッパで戦ってもらって、力をつけてもらって、初めて一流選手になれると思います。2020年の東京オリンピックを目標として頑張るだけでなく、その後の展開は大事ですね。NIPPOが進めているプログラムを私も信じています。すぐには成果が出ないと思いますが、その道に進んでいけば必ず「すごい!」と言わせる選手が日本から出てくると思います。もっと若者をヨーロッパで戦わせてポスト別府史之と新城幸也を作らなくちゃ。可能性はあると思います。

クネゴ氏が乗っている自転車に興味を示す那須高原ロングライドの参加者 Photo: Marco Favaro

――今度の予定は?

クネゴ:もうすぐ8月25日(日)、新潟県で行われるサイクリングイベント、ツール・ド・妻有にゲストライダーとして参加する予定です。大会の前日にもう一度ヒルクライムメソッドを開きますので、強くなりたい人、山に挑みたい人はぜひ会場まで足をお運びください。待っています。

ダミアーノ・クネゴとは

1981年9月21日、自転車強豪国イタリア、ヴェローナ生まれ。リトルプリンスと呼ばれ、2018年に選手を引退した天才的なヒルクライマー、ダミアーノ・クネゴ氏が、現在パーソナルトレーナーとしての活動。日本との関わりを深め、日本人選手のことや、これから取り組むべきこと、自身がプロデュースするオリジナルロードバイクも展開。

■主な成績
・ジロ・デ・イタリア 総合優勝(2004)
・ジロ・デ・イタリア 通算4勝
・ツール・ド・フランス 新人賞(2006)
・ブエルタ・ア・エスパーニャ 通算2勝
・ジロ・ディ・ロンバルディア優勝(2004, 2007, 2008)
・アムステルゴールドレース 優勝(2008)
・ジャパンカップサイクルロードレース優勝(2005, 2008)

■所属チーム
2002〜2004 サエコ
2005〜2014 ランプレ
2015〜2018 NIPPO・ヴィーニファンティーニ

マルコ・ファヴァロMarco FAVARO(マルコ・ファヴァロ)

東京都在住のサイクリスト。イタリア外務省のサポートの下、イタリアの言語や文化を世界に普及するダンテ・アリギエーリ協会や一般社団法人国際自転車交流協会の理事を務め、サイクルウエアブランド「カペルミュール」のモデルや、欧州プロチームの来日時は通訳も行う。日本国内でのサイクリングイベントも企画している。ウェブサイト「チクリスタインジャッポーネ

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