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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<305>ロードシーズン後半戦も熱戦展開中 ビッグネームが大活躍の8月上旬の主要レースまとめ

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 ツール・ド・フランスが閉幕し、サイクルロードレースシーズンは後半戦へ。まだまだ熱は冷めることなく、レースは盛り上がり、力のある選手たちがその姿をアピールしている。そこで、今回は8月上旬にかけて開催された主要レースの結果や動向を総まとめ。トップシーンの最新情報をお届けしよう。

8月に入ってもUCIワールドツアーは熱戦展開中。写真は8月3日に行われたクラシカ・サンセバスティアンから Photo: KARLIS / SUNADA

19歳エヴェネプールがクラシカ・サンセバスティアンで大勝利

 ツール閉幕直後にセンセーショナルな走りを見せ、話題を独り占めしたのはレムコ・エヴェネプール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)だ。

クラシカ・サンセバスティアンでレムコ・エヴェネプールが驚異の独走勝利を挙げた Photo: KARLIS / SUNADA

 スペイン・バスク地方を舞台に開催される真夏のワンデーレース、クラシカ・サンセバスティアンは、8月3日に開催。例年、ツールを終えた選手たちの多くがそのままスライド参戦するハイレベルのレースだが、今年も同様で、ツールを制したエガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス)がスタートラインに並んだほか、マイヨジョーヌ争いの主役となったジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)は前回覇者として参戦した。

モビスター チームがレース途中までをコントロール。マイヨアルカンシエルのアレハンドロ・バルベルデでの勝利を目指した Photo: KARLIS / SUNADA

 バスク特有の丘陵地を使ったコースセッティングは、春に行われるアルデンヌクラシックに匹敵する難易度。獲得標高が約4000mにも上り、優勝争いはクラシックハンターやクライマーが中心。テクニカルなダウンヒル区間もあり、いかに攻略するかも優勝を争ううえでのポイントになる。

 227.3kmで争われたレースは、まず9人が先行。メイン集団は地元モビスター チームがコントロールし、残り50kmまでに先頭を走った選手たちを吸収。この間、有力選手たちでも次々と脱落し、ベルナルやアラフィリップらは優勝戦線から遅れることとなった。

 そんなサバイバル戦から抜け出したのは、エヴェネプールとトムス・スクインシュ(ラトビア、トレック・セガフレード)。最後の大きな上りを前に仕掛けた2人だったが、サンセバスティアンへ向かう下り基調に入ってエヴェネプールが優勢に。そのまま独走に持ち込んで、後続に背中を見せることなくフィニッシュへと飛び込んだ。

バスクの熱狂的な応援の中を走るレムコ・エヴェネプール Photo: KARLIS / SUNADA

 プロ1年目、19歳のエヴェネプールは昨年までジュニアカテゴリーに属し、アンダー23カテゴリーを経ずに“飛び級”でプロ昇格。昨年のUCIロード世界選手権では、ロード・個人タイムトライアルのジュニア種目2冠を達成しており、競技歴はまだ3年目だ。その前はサッカーの年代別ベルギー代表に選ばれるほどの選手で、身体能力は抜群。本来エースだったアラフィリップが早々に離脱した中で、“代役”がヤングパワーを炸裂させた。

 後塵を拝したメイン集団は38秒差でフィニッシュ。グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム)が2位、こちらもプロ1年目のマルク・ヒルシ(スイス、チーム サンウェブ)が3位に入った。

プルデンシャル・ライドロンドン・サリークラシックはヴィヴィアーニ優勝

 翌4日には、イギリスの首都ロンドンでワンデーレース「プルデンシャル・ライドロンドン・サリークラシック」が行われた。

 この大会の歴史は浅い。初開催は2011年、翌年に控えていたロンドン五輪のテストレースとして始まり、五輪をはさんで2013年に“本格始動”。2017年からはトップカテゴリーであるUCIワールドツアーの1つとなった。アップダウンがあるものの、おおむね平坦に位置付けられるコースレイアウト。主役はスプリンターとなるケースが多く、バッキンガム宮殿からトラファルガー広場を結ぶストリート「ザ・マル」でのスプリントフィニッシュがハイライトになる。

 やはりこのレースもホストチームが主にコントロール。地元英国のチーム イネオスが組み立てた展開は、残り15kmとなったところで逃げメンバーを全員吸収。勝負はスプリントにゆだねられた。

プルデンシャル・ライドロンドン・サリークラシックはエリア・ヴィヴィアーニが優勝 ©︎Alex Livesey/Getty Images

 有力チームが主導権を争う中、残り2kmで大規模なクラッシュが発生。これで集団が完全に分断され、優勝争いに残ったのは約30人。残り1kmを切って最終コーナーを先頭で抜けたのはUAE・チーム エミレーツとイギリスナショナルチームだったが、別ラインからマイク・テウニッセン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)が上がっていくと、これにドゥクーニンク・クイックステップのトレインが同調。残り300mでミケル・モルコフ(デンマーク)が先頭に立ち、最後の150mでヴィヴィアーニを発射すると、そのままトップでフィニッシュラインを通過した。

ワン・スリーフィニッシュを達成したエリア・ヴィヴィアーニ(左)とミケル・モルコフ ©︎Alex Livesey/Getty Images

 ツールではステージ1勝を挙げたほか、山岳ステージではマイヨジョーヌを着用したアラフィリップのために献身的に働いたヴィヴィアーニ。「グランツール後も好調を持続できる」という自身の特性を生かして臨んだロンドンで、しっかりと結果を残してみせた。ドゥクーニンク・クイックステップはこれで2日連続の勝利。シーズン合計では54勝目とした。

 なお、サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)が、クラッシュの影響でリードアウトを失いながらも2位を確保。3位にはモルコフが続いた。また、このレースには新城幸也(バーレーン・メリダ)も出場。メイン集団に残って26位でフィニッシュ。UCIポイント12点を獲得した。

エヴェネプールとヴィヴィアーニが欧州王者に

 エヴェネプールとヴィヴィアーニの勢いが止まらない。8月11日まで開催されていた大陸王者を決めるヨーロッパ選手権でも王座に就いたのだ。

ヨーロッパ選手権の個人タイムトライアルはレムコ・エヴェネプールがトップタイムをマームした ©︎Bas Czerwinski / Getty Images

 今年はオランダで開催された大会はまず、8日に男子エリートの個人タイムトライアルを実施。22.4kmで争われたレースは、カスパー・アスグリーン(デンマーク)が暫定トップに立っていたが、これを普段はチームメートであるエヴェネプールが19秒上回る、24分55秒で走破。アベレージにして53.940kmをマーク。これがトップタイムとなり、初のヨーロッパ王者に輝いた。

 2位にはアスグリーン、3位にはミッチェルトン・スコットに所属するエドアルド・アッフィニ(イタリア)が入賞した。

 11日に行われたロードレースは、172.6kmに設定。序盤からイタリアとベルギーがプロトンをコントロールし、早い段階から前線の人数を減らしにかかる。オランダ特有の強風も相まって、残り65kmで先頭グループは13人に。力のある選手たちだけがそろったこともあり、しばらくこの形勢のまま突き進んだが、決定的な瞬間は残り25kmでやってくる。

 ヴィヴィアーニがアタックすると、これを追ったのがイヴ・ランパールト(ベルギー)とパスカル・アッカーマン(ドイツ)。ランパールトはヴィヴィアーニと普段のチームメート、アッカーマンはボーラ・ハンスグローエのエースプリンターでヴィヴィアーニ最大のライバルの1人だ。

 後続のペースが上がらず、次第に先頭3選手が優位に。そして残り4km、ランパールトがアタック。これにヴィヴィアーニが対応すると、アッカーマンが脱落。ドゥクーニンク・クイックステップで走る2人によるマッチングとなった。

 こうなるとスプリント力で圧倒するヴィヴィアーニの勝ちパターン。最後までランパールトから離れることなく、自らのタイミングでスプリントを開始。ランパールトの脚質を知っているからか、すぐに勝利を確信してヨーロッパチャンピオンの瞬間を迎えた。

エリア・ヴィヴィアーニが初のヨーロッパ王者に輝く ©︎Bas Czerwinski/Getty Images

 平坦基調で、スプリント勝負が予想されたレースだったが、ふたを開けてみると風の影響もあり前方で展開した選手たちが競う格好となった。クラシックレースに近い流れとなったが、いつもは集団スプリントで実力を見せつけてきたヴィヴィアーニが、まったく違った形でも勝利を収められる姿を披露することとなった。

 2位にはランパールト、3位はアッカーマンが続いた。また、前回覇者のマッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)は、ヴィヴィアーニのアシストをまっとうし7位で終えた。

 エヴェネプールとヴィヴィアーニは、それぞれヨーロッパチャンピオンジャージを1年間着用することになった。

レムコ・エヴェネプール(右)は個人タイムトライアルでヨーロッパチャンピオンジャージを着用する ©︎Bas Czerwinski/Getty Images
ヨーロッパ選手権ロードレースのポディウム。左から2位イヴ・ランパールト、1位エリア・ヴィヴィアーニ、3位パスカル・アッカーマン ©︎Bas Czerwinski/Getty Images

◇         ◇

訃報

 8月3日から9日までポーランドで行われたツール・ド・ポローニュは、第6ステージで2位に入ったパヴェル・シヴァコフ(ロシア、チーム イネオス)が、翌日の最終・第7ステージで総合順位を逆転。この大会で初の個人総合優勝を飾るとともに、ベルナルら総合系ライダーを多数擁するチーム イネオスの層の厚さを示す結果となった。

ツール・ド・ポローニュのチームプレゼンテーションに臨むビョルグ・ランブレヒト。第3ステージの落車で帰らぬ人となった Photo: STIEHL / SUNADA

 今大会では、将来有望株として期待されていたビョルグ・ランブレヒト(ベルギー、ロット・スーダル)が第3ステージの落車により死去という悲しい出来事が起こった。

 ヨーロッパのサイクルメディアによる報道を総合すると、スタートから約50kmのところでコンクリートの構造物に衝突。すぐに病院へと緊急搬送されたが、肝臓の深刻な裂傷による内部出血により帰らぬ人となった。

 ランブレヒトの近くを走っていた選手による「ボトルを求めて後方を見ながら手を挙げていた直後にクラッシュした」との証言や、ドクターヘリが出動したものの、近くに着陸できるポイントがなかったためやむなく救急車で搬送したとの情報もあり、悲劇的な事故となってしまった。

 ランブレヒトは、若手の登竜門「ツール・ド・ラヴニール」で2017年にベルナルに続く個人総合2位。昨年はUCIロード世界選手権でアンダー23ロード銀メダルと活躍。今年のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネでは個人総合12位となり、新人賞のマイヨブランを獲得するなど、将来のグランツールレーサーとして期待されていた。ポローニュ後はブエルタ・ア・エスパーニャへの出場が予定されていたという。

ツール・ド・ポローニュ第4ステージはビョルグ・ランブレヒトの追悼パレードに。ロット・スーダルのチームメートが先頭に並んで走る Photo: STIEHL / SUNADA

 これを受けて、死去翌日の第4ステージは追悼のパレード走行となりニュートラル扱いに。第5ステージからレースを再開されたが、ロット・スーダルのチームメートは遺族の意志を受けて走り続けることを選択。ポローニュに限らず、多くのレースで優勝した選手たちがランブレヒトへその勝利を捧げている。

 ランブレヒトの葬儀は13日に故郷のベルギー・クネセラーレで行われる。

今週の爆走ライダー−ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 熱気と悲しみとが混在し、異様なムードとなったツール・ド・ポローニュ。それでも、戦いは最後まで続いた。そこで躍動したのは、亡くなったランブレヒトと同世代のヤングライダーたち。プロ1年目のヨナス・ヴィンゲゴーは、チームの勢いそのままに第6ステージで勝利。世界的にはまだ無名の22歳が、一時はプロトンのトップに立った。

ツール・ド・ポローニュ第6ステージを制したヨナス・ヴィンゲゴー。チーム一丸となって勝利を狙った末のステージ優勝だった Photo: STIEHL / SUNADA

 ヴィンゲゴーが勝ったステージでは、チームメートが再三レースをコントロール。レースを動かしていく中で、重要な動きに反応した彼が結果的に勝負を託されることになった。短めの上りと少人数でのスプリントは得意とするところ。調子のよさも感じていたといい、めぐってきたチャンスを見事にモノにした。

 ただ、勝利の代償はあまりに大きかった。リーダージャージを守るという強い意志とは裏腹に、疲労感が全身を襲った。早い段階で勝負から脱落してしまったあたりは、ステージレースを戦ううえでの大きな課題になった。

 グランツールレーサーや山岳での走りに長けた選手たちが豊富にそろうチームにあって、まだまだ実力不足であることは本人も認める。プロ初年度のテーマは、「個人総合優勝を狙うエースのアシストとして価値を証明すること」。4月下旬から5月上旬にかけて行われたツール・ド・ロマンディでプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア)の勝利に貢献し、第一の課題はクリア。この先は大きなレースでの経験を積み重ねていくことにある。

 本人に急ぐ気持ちはまったくない。チームも長い目で見ているといい、近々控えるブエルタ・ア・エスパーニャも回避する見込み。「飛躍の年にしたい」という2020年シーズンを見据えつつ、まずは土台づくりに集中する。その過程でめぐってきたポローニュのステージ優勝は、大きな意味を持つものとなるだろう。

プロ1年目のヨナス・ヴィンゲゴー。将来的にステージレースやグランツールで活躍することを目指し土台づくりに励んでいる Photo: STIEHL / SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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