日本は男女1枠ずつが濃厚東京五輪自転車競技の代表選考事情② 世界トップレベルの男女擁するBMXフリースタイル・パーク

by 腰山雅大 / Masahiro KOSHIYAMA
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 2020年東京オリンピックまであと1年を切りました。五輪の自転車競技の選手選考の基準について解説する連載の第2回目は、男女で世界トップレベルの演技力を持つ選手が揃うBMXフリースタイル・パークをクローズアップ。9月21、22日には第3回全日本BMXフリースタイル選手権が岡山市で開催され、五輪への盛り上がりも一気に加速しそうです。(レポート・腰山雅大)

世界トップレベルでも活躍する大池水杜(左)と中村輪夢(JFBF JAPANCUP第1戦=2019年8月) Photo: Kenta SAWANO

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 2020年7月24日、ついに東京五輪が開幕する。中でも話題を集めているのは次世代スポーツの新規採用だろう。スケートボード、スポーツクライミング、サーフィン、そしてBMXフリースタイル・パーク、今回採用された競技の中でもこれらは所謂エクストリームスポーツとして独自の進化を遂げてきた背景を持つ。「BMXフリースタイル・パーク」競技に焦点をあて、今日に至った背景から、選手の選考などをご紹介したいと思う。

レースから「技」が分化

 フリースタイル・パーク、という聞き慣れない競技を説明する前に、まず話の中心となるBMXそのものの生い立ちについて触れたいと思う。時は1970年代、土の上をオートバイで走るモトクロス競技に興じていた大人たちが、子供たちにも練習ができるようにと小径の自転車を充てがったことがBMXの起源と言われている。“バイシクルモトクロス”=自転車のモトクロスというBMXの語源はそれにちなんだものだ。この遊びはBMXレース競技へと進化し、長い年月を経て2008年北京大会で正式なオリンピック種目として採用されることとなる。

 BMXのレースコースには土で出来たコブのようなジャンプ台がいくつあり、ライダーたちはオートバイのモトクロスと同じようにそれらをジャンプしてコースを走り抜ける。そして一部のライダーたちはより速くコースを走る以外にも、このジャンプに特化したBMXの新たな価値を見出すこととなる。空中を舞う間に身体をひねったり回転を加えたりする「技」を繰り出すことが編み出され、それは「フリースタイル」というジャンルが生み出されたことを意味した。
 
フリースタイルはダートでのジャンプにとどまらず、スケートボードなどと同じ街中やスケートパークなどのフィールドへ遊びの場所を広げていった。90年代には徐々にフリースタイルの中でも枝分かれが起き、平地でバランスを取りスピンなどのトリックを行うフラットランドが形成され、対してジャンプなどを行う競技は総じてストリートと呼ばれるようになった。

 その後フラットランドは目まぐるしい技の進化を果たし、一方ストリートというジャンルは、スケートパークでのライディングを示すパークと、本来の街中でのライディングを示すストリートに分かれていった。

たくさんのジャンプ台で構成されたBMXフリースタイル・パークの競技会場(神奈川県藤沢市の鵠沼スケートパーク) Photo: Kenta SAWANO

「フラットランド」や「ストリート」競技も

 話が少し長くなってしまったが、これらがオリンピックにおける「BMXフリースタイル・パーク」というネーミングの所以である。つまりBMXフリースタイルには、「パーク」のほか、「フラットランド」や「ストリート」という競技があり、またその他にもダートジャンプであったりヴァートなど複数の競技が古くから存在する。実際にフラットランドはUCIの一種目として既に採用されており、今後オリンピック種目への採用が期待されている。

五輪参加選手は男女で18人だけ

 ところで、今回オリンピックでの競技定員はどの程度であろうか。例えばロードは男子130人/女子67人の合計197人、1国あたり男子5人/女子4人の合計9人参加が最大となる。トラックは種目数も多く189人、MTBは76人、BMXレースは48人が定員と決まっている。一方BMXフリースタイルパークは男子9人/ 女子9人、合計18人のみの狭き門だ。例えばFISE(UCIワールドカップの大会名)の広島開催ではエリート男子だけで57人の出走があり、それを考えればこれが如何に狭き門であるかが伝わるはずだ。

 参加資格は個人ではなく国別に与えられ、各9枠のうち1枠は開催国、つまり日本は男女共既に参加が確定している。その他はUCIのオリンピック国別ランキング(6枠)と2019年世界選手権での成績(2枠)によって決定され、国別ランキング1位には2枠、それ以下は1枠ずつとなり、すなわち5位になった国の代表までが参加権を得ることとなる。UCI世界選手権は2019年11月6〜10日の日程で中国で開催されるが、国別ランキング上位の選手が入賞した場合や、日本がランキングで5位以内になった場合は順位を繰り下げて参加権が与えられることとなる。なお日本が5位以内に入ったとしても開催国枠と重複させることはできず、2枠を確保するためには国別ランキングで1位になる以外に方法はない。また大陸毎の最小参加割り当てという決まりもあり、同じ大陸に偏らないように参加資格が優先して分配される。

 ちなみに2019年8月8日で国別ランキングは男子が1位がオーストラリアで7420pt、2位がアメリカで7320ptと大変僅差で推移しており、3位ロシアの5380ptには差をつける形となっている。日本は2759ptの7位。女子については1位のアメリカが10310ptで、2位ドイツ7370pt、3位スイスは3930pt。日本は6位で2980pとなっている。男女共多くの選手を上位に送り込んでいる国が有利な結果を出していると言える。

 いずれにせよ、日本には開催国枠が用意されており男女共に出場は約束されている。枠を確保する活動から解放されている点は選手活動において大変なメリットで、国内での選考や競技レベル向上にしっかり注力できることを意味する。ではここからは国内での選考に目を向けてみたいと思う。

 日本でのオリンピック選考基準は男女共通となっており、選考基準が4つ、共通基準は3つ設けられている。

BMXフリースタイル・パーク選考基準と共通基準

<選考基準 ①>
A)2005年12月31日以前誕生
B)2020年5月12日付け UCI BMXフリースタイル・パーク・エリート個人ランキング10ポイント以上獲得者

<選考基準 ②> 当該種目において選考基準① を満たした者のうち、2019-2020年シーズンワールドカップ準決勝に2回以上進出した者を選考する。

<選考基準③>(選考基準②を満たす者が獲得出場枠数を超えた場合)選考基準②を満たす者の中から、2019-2020年シーズンワールドカップ上位1大会の成績上位者を選考する。※同順位の場合は2大会目以降を参考とする。

<選考基準④>(選考基②を満たす者が獲得出場枠数に満たない場合)選考基準①を満たす者の中から、2019-2020年シーズンワールドカップ上位1大会の成績上位者を選考する。※同順位の場合は2大会目以降を参考とする。

<共通基準①>選考時に本連盟強化指定を受けている者
<共通基準②>日本代表としてふさわしい言動・態度を備えている者
<共通基準③>強化事業への参加と強化の方針や指示に従う事を承諾した者

中村輪夢選手、大池水杜選手が“ほぼ内定”状況

 文字で羅列してしまうと少し複雑な基準ではあるが、選考基準①のAはオリンピック開催時15歳以上となる。そしてBを満たすUCIポイント保有選手は今現在で男子10人、女子3人となっている。但しJCF公式サイトによれば共通基準①の強化指定選手は男子6人、女子1人となっており、この中から選考される形となるだろう。

 選考基準は②→③(→④)と順番になるが、既に男子エリート中村輪夢選手、女子エリート大池水杜選手共に日本の広島、フランスはモンペリエで行われたW杯1戦・2戦で決勝進出を果たし選考基準②を満たしている。

 この後他の選手が②の基準を満たす機会は、11月のW杯中国、来年度のW杯となる。但し来年度のUCIカレンダーはまだ告知されておらず、唯一FISE公式サイトで告知のある2020年モンペリエ大会は5月20日開催、選考基準の2020年5月11日の後に開催となっていることから、対象外となる。

ダイナミックな技を武器に世界で活躍する大池水杜 Photo: Kenta SAWANO 

 更に現実的な話をすれば、日本が2枠を獲得する為には前述の通り国別ランキングで1位を獲る必要があるが、数で有利なライバル国を追い抜くことは難しいと言える。また国内では、女子強化指定選手が大池選手1人であること、男子は中村選手が抜きん出て技術を持ち合わせていることから、現時点で代表選手が内定していると言っても過言ではないと感じている。

本場アメリカの「Xgames」で準優勝の偉業も達成した中村輪夢(写真は2018年のJAPANCUP鵠沼大会) Photo: Kenta SAWANO 

 ただこのオリンピックの新しい競技に対して、日本の選手たちひとりひとり、そして連盟そのものが果たした役割は非常に大きい。筆者はこのフリースタイル・パーク競技と20年ほど付き合っており個人的な観点ではあるが日本のシーンについても述べておきたい。

 日本でのパーク競技はと言えば、いわゆる古くからの連盟などは存在せず、大会を運営するにしても個人が主催となっているケースがほとんどだった。そんな中、日本フリースタイルBMX連盟(JFBF)現理事長で長くライダーとしても活躍している出口智嗣氏が音頭を取り初の公式戦を開催したのが2015年11月のことだった。

 2016年5月、UCIが同競技を正式種目に加え、日本でもJCF公認のライセンスが発行され公認大会が運営されることとなる。しかしその全てはJFBFが単独で動き実行されてきた。理事長ほか各地方で手を挙げた大会主催経験者たちや、遠征でのマッサー、メカニックスタッフなど、全てBMXライダーたち自らの手でひとつずつ作り上げてきたものだ。各地の大会でも、競技用のセクションを強化選手自らが組み上げる姿が目撃されているほどだ。

日本でのBMXフリースタイルの競技化に尽力してきたJFBF理事長の出口智嗣氏 Photo: Kenta SAWANO

 そして2017年6月9日深夜、UCIや各連盟から正式にオリンピック採用という発表がなされ、関係者たちは自国開催の晴れ舞台に向けて準備を加速度的進めていくこととなる。

 いま中村選手や大池選手がW杯で決勝常連メンバーとして活躍していることは、あのときあのスピードで土壌を用意し活躍できる場所を示した連盟の努力に他ならない。また強化選手たち自身のチーム意識も強く、個人競技のBMXでありながらお互いを鼓舞させる団結の強さがある。海外大会で予選敗退した選手たちが大きな日本国旗を振り、決勝へ残った選手を応援する姿も印象深い。

 オリンピックまで残り1年弱。選考される選手のみならず、一心同体で本大会へ臨む連盟、そして強化選手たちの活躍に期待がかかる。

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