ツール・ド・フランス2019 アフターコラム<1>最年少王者の誕生、賞金1億円、記録的な猛暑…データで振り返るツール・ド・フランス2019

by あきさねゆう / Yuu AKISANE
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 第106回ツール・ド・フランスは、エガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス)の総合優勝で幕を閉じた。マイヨジョーヌが誕生してから100周年を迎えた記念大会をさまざまデータ・記録とともに振り返ってみた。

マイヨジョーヌ100周年となった記念大会ではペテル・サガンが史上最多7度目のポイント賞に輝き、エガン・ベルナルが戦後最年少王者となった Photo: Yuzuru SUNADA

戦後最年少王者の誕生

 総合優勝を飾ったベルナルは、1997年1月13日生まれの22歳だ。ツール史上3番目の若さでの総合優勝となった。上位2人の記録は、マイヨジョーヌが誕生する1919年以前の出来事であり、マイヨジョーヌ獲得者としては史上最年少の若さである。戦後最年少のチャンピオンともいえるだろう。

レース中だけでなくレース後も22歳とは思えぬ立ち振舞いだった Photo : Yuzuru SUNADA

 なお、ツールだけでなくジロ・デ・イタリアとブエルタ・ア・エスパーニャを含むと、ベルナルは11番目に若い王者である。しかし、直近50年に限っていえば1979年ジロで優勝したジュゼッペ・サロンニ(イタリア、現UAE・チームエミレーツ アドバイザー)の21歳7ヶ月に次ぐ若さでの勝利となっている。

 2009年から2018年までのグランツール30大会で総合優勝を飾った選手の年齢を調べてみると、次のようなデータが得られた。

2009〜2018年のグランツール総合優勝者の年齢

25歳以下:3人
26〜30歳:12人
31歳以上:15人

平均年齢:30.0歳

 しかも、2018年にジロを制したクリストファー・フルーム(イギリス)は33歳で歴代5位、2011年にツールを制したカデル・エヴァンス(オーストラリア)は34歳5ヶ月で戦後最年長勝利(歴代3位)、2013年にブエルタを制したホーナーは41歳11ヶ月でグランツール歴代最年長勝利記録となっている。

チーム内にマイヨジョーヌ経験者が2人(フルーム、トーマス)いたことも、若いベルナルにとっては重要だったかもしれない Photo : Yuzuru SUNADA

 このように、近年のグランツールでは30歳を越えたベテラン選手が有利である傾向にあった。もちろん、トレーニングや栄養学の進化により、選手寿命が伸びていることもあるだろうが、コンディショニングや駆け引きなど実戦における経験がとても重要だからだ。

 30歳を過ぎてからがキャリアの本番ともいえるなか、22歳でツールを制したベルナルの若さがあまりにも際立っており、その衝撃の度合いがデータからも伝わってくるのではないだろうか。

賞金に見るチームとしての成功の是非

 続いて今大会の各チームの獲得賞金の一覧は次のとおりだ。

チーム別獲得賞金ランキング

※単位はすべて円、1ユーロ=120円で算出

1 チームイネオス 9590万
2 ユンボ・ヴィスマ 2440万
3 ドゥクーニンク・クイックステップ 2280万
4 ボーラ・ハンスグローエ 1910万
5 ロット・スーダル 1620万
6 モビスターチーム 1590万
7 トレック・セガフレード 980万 
8 ミッチェルトン・スコット 920万
9 バーレーン・メリダ 860万
10 グルパマ・エフデジ 720万
11 アージェードゥーゼール ラモンディアール 660万
12 EFエデュケーションファースト 500万
13 ワンティ・ゴベール 420万
14 チーム サンウェブ 380万
15 CCCチーム 330万
16 アスタナプロチーム 290万
17 UAE・チームエミレーツ 280万
18 アルケア・サムシック 270万
19 コフィディス・ソルシオンクレディ 250万
20 ディメンションデータ 230万
21 カチューシャ・アルペシン 220万
22 ディレクトエネルジー 210万

 ツールの賞金はUCIポイントやワールドツアーポイントと同様に、総合成績への比重が大きい。総合優勝者には50万ユーロ(約6000万円)が与えられる。総合1、2位を輩出したイネオスが約1億円に迫るダントツ1位であり、また総合3位のユンボ・ヴィスマ、総合4位のボーラ・ハンスグローエ、総合5位のドゥクーニンク・クイックステップ、総合6、8、9位のモビスターなどが上位なのは順当な結果といえよう。

マイヨジョーヌ着用14日間、ステージ2勝、総合敢闘賞獲得と大活躍だったジュリアン・アラフィリップ Photo : Yuzuru SUNADA

 ステージ優勝者には1.1万ユーロ(約130万円)が与えられる。また、マイヨジョーヌを1日着用すると500ユーロ(約6万円)、ほかの各賞ジャージを1日着用すると300ユーロ(約4万円)を獲得でき、中間スプリントや山岳ポイントにも決して小さくない賞金が設定されている。

ロット・スーダルにとっては、ステージ3勝をあげたカレブ・ユアンに加えて、ステージ1勝のトマス・デヘント、山岳賞ジャージ15日間着用のティム・ウェレンスの活躍も目立った Photo : Yuzuru SUNADA

 そのため、総合成績では59位が最高順位だったロット・スーダルが獲得賞金ランキングで5位に来ているのは、ステージ4勝を飾ったうえに、トマス・デヘント(ベルギー)とティム・ウェレンス(ベルギー)が逃げで賞金を荒稼ぎしたためだ。なおウェレンスは15日間山岳賞ジャージを着続けた。

 一方で、大会を大いに沸かせたティボー・ピノ(フランス)は途中リタイアとなったために、獲得賞金ランキングではグルパマ・エフデジが10位となり、ヤコブ・フルサング(デンマーク)の総合成績に全てをかけていたアスタナも、エースのリタイアによりほとんど賞金を稼ぐことができなかった。

熱波による記録的猛暑なかの戦い

 総合争いが佳境を迎える第18ステージが行われた7月25日に、アルプスから遠く離れたフランスの首都・パリでは観測史上最高気温となる42.6℃を記録。災害級の熱波が欧州全体を襲うなか、選手たちも暑さとの戦いを強いられていた。

 そこで、選手たちのStravaにアップロードされているデータから、第3週(第16〜21ステージ)の気温を調べてみた。サイクルコンピュータのメーカーによる差を考慮して、ガーミンを使用しているEFエデュケーションファースト、SRMを使用しているロット・スーダル、Pioneerを使用しているユンボ・ヴィスマ、Wahooを使用しているアルケア・サムシック、それぞれの所属選手のデータから算出した。

第3週気温データ

第16ステージ:最高気温43℃、平均気温39℃
第17ステージ:最高気温43℃、平均気温36℃
第18ステージ:最高気温40℃、平均気温33℃
第19ステージ:最高気温41℃、平均気温30℃
第20ステージ:最高気温33℃、平均気温24℃
第21ステージ:最高気温28℃、平均気温23℃

凄まじい量のボトルを消費するため、アシスト陣によるボトル運びも相当な重労働だ Photo: Yuzuru SUNADA

 第16ステージが行われたニーム周辺の観測データによると最高気温は35℃だったようで、サイコンによる計測だと実際の温度より高くなるかもしれない。それでも十分暑いことは伝わるし、当該ステージ後の選手たちの多くが、暑さについて言及している。

 第17ステージで逃げ集団に乗ったトムス・スクインシュ(ラトビア、トレック・セガフレード)は「ボトル20本(=約10リットル)は消費したと思う。頭や足など体全体にかけていた」と語り、同ステージで一緒に逃げて終盤の勝負どころで失速してしまったグレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム)は「最後は暑さにやられてしまった」など、猛暑によるパフォーマンスの低下が見られる選手も少なくなかった。

第17ステージで勝利したマッテオ・トレンティンもフィニッシュ後に水を頭からかぶっていた Photo: Yuzuru SUNADA
ユンボ・ヴィスマはスタート直前までクーラーベストを着用し、身体を冷やしていた Photo: Yuzuru SUNADA

 ベルナルは第16ステージ後に「とても暑い日だったけれども、このような状況を楽しんでいる」と語っていた。そして、クイーンステージとなった第18ステージは、1級山岳ヴァール峠の山頂は標高2104mだったにもかかわらず、計測データによると37℃を記録していた。後半のガリビエ峠は標高2622mで、21℃を記録。1日で20℃近い気温差への対応も必要であった。今年のツールを制するには標高2000m超えの高地への順応性に加えて、乱高下した気温への耐性が必要だったのかもしれない。

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