海外レースの参加方法や注意点をレクチャーアラ還サイクリストの欧州グランフォンド挑戦記 ツールの峠を巡る「マーモット」

  • 一覧

 ツール・ド・フランスの開催で盛り上がる7月は、欧州各地で有名なグランフォンドが開催されるそうです。2018年にアラウンド還暦(アラ還)ながら「エタップ・デュ・ツール」に参戦した九州在住の村石昭彦さんは今年、ツールの有名な峠を巡る「マーモット・グランドフォンド・アルプス」に初挑戦。大会の様子を村石さんのリポートでお届けします。

アラ還サイクリストの村石昭彦さんがエタップに続き、海外レースに挑戦した  Photo:PHOTO BRETON

◇         ◇

7500人の参加枠がすぐ完売

 イエロージャージ誕生100周年を迎えた2019年のツール・ド・フランス。同大会で盛り上がる7月は、欧州各地で有名なグランフォンド大会が毎年開催されている。中でも、その年のツール山岳ステージを完全に封鎖して走る「エタップ・デュ・ツール」(エタップ) は1番人気と評され、昨年参加して感じた魅力を本誌に寄稿させていただいた(アラ還サイクリストが「エタップ」に挑戦した夏)。

レンタカーでラルプデュエズの街に到着 Photo: Akihiko MURAISHI

 ギリギリでも完走を果たすと還暦を前に欲が出るもので、エタップの会場で自分が所属するRCC(Rapha Cycling Club)主任コンシェルジュのAleda女史に、「60歳の僕が次にチャレンジする大会は何が良い?」と尋ねると、欧州のサイクリング事情に詳しい彼女は、「少し厳しいけど、チャレンジの気持ちならマーモットかな?」と教えてくれた。帰国後に調べてみると、「マーモット・グランドフォンド・アルプス」(マーモット)という凄くタフで魅力的な大会が見つかった。

 マーモットは今年38回目を迎える歴史ある大会だ。フランスのアルプスを舞台にした固定ルートのグランフォンドではトップの人気を誇る。イタリアのドロミテ山塊を舞台に、30年以上続くグランフォンドも評価が高く魅力的だったが、今年はマーモットと同日開催。来年は老体に鞭打って、その大会にも挑戦したいと思う。

断崖絶壁の小径で前日に早朝練習をした。道路は自転車、ハイカー優先 Photo: Akihiko MURAISHI
スタートのル・ブール=ドアザンを見下ろす小径 Photo: Akihiko MURAISHI

 エタップは毎年コースが変更され、ツールの最難関ステージはアマチュアには厳し過ぎて採用されない。2018年のコースではコロンビエール峠、今年はロズラン峠が最も有名な峠だと思われるが、読者はツールの有名な峠としてどこを思い浮かべるだろうか? やはりガリビエ峠やラルプデュエズの名前をまず挙げられる方が多いのではないだろうか?

コース プロフィール。距離174km 、獲得標高は5000mだ

 マーモットはその両聖地に加え、有名なグランドン峠とテレグラフ峠を巡る距離174km、獲得標高5000m近い難コースながら(だから)、7500人の参加枠は毎年すぐ完売するという。実際に参加してみたら、その魅力がとても良くわかった。

関門はラルプデュエズ直前のみ

 ラルプデュエズ麓の街、標高719mのル・ブール=ドアザンをスタートし、1916mのグランドン峠を南側から越え、北側からテレグラフ峠に続き2623mのガリビエ峠を越えて、160km走った後にラルプデュエズを1804mまで駆け上ってゴールとなる。

朝7時のスタート前。先頭グループ優先出走権を利用した Photo: Akihiko MURAISHI

 エタップと違い完全公道封鎖ではなく、スタート・ゴールと峠付近などの部分封鎖だが、長い経験からルートの要所要所の安全性は十分に確保されいる。道中には信号もないため、途中で一度も停止する必要がなく、日本では想像すらできないコースだ。幸いコース途中の時間制限は無く、唯一の関門がラルプデュエズの登り直前で、午後6時15分に閉じられる。

 途中で少々のトラブルがあっても、天候さえ良ければ比較的クリアしやすい設定で、そこを制限時間内に通過できれば、標高差1080mの有名な激坂を時間をかけて上っても完走と認定される。1万5000人が参加するエタップのように華やかなお祭りムードは無いものの、マーモットはフランス・アルプスの聖地を巡る定番コースだ。

最初のグランドン峠は頂上付近で美しい景観が広がる(緩い交通規制区間) Photo: Akihiko MURAISHI

 難易度もエタップより高いため、ツールのファンにとっては甲乙つけがたい大会だろう。ツール参加の気分重視なら祭典エタップ、フランス・アルプス記念なら定番マーモットか。参加者には女性も多く、国際色も豊かだ。およそ80%以上がフランス以外からの参加者で、エタップと同じく48カ国から集まった。

大会の参加方法と戦略

 本大会の開催日はエタップに左右されるが、欧州で7月開催となる人気の大会は、いずれも前年の10月頃に大会HP上で申込みが始まる。数日以内には完売するため迷う余裕はない。大会HPを通じた個人参加も可能だが、初めて参加するには今から計画を練り、事前申し込みで出走が確約される公式ツアー会社の企画したプランに申し込むことが好ましいと思う。大会HPのリンク先としてツアー会社情報が提供され、そこから自分に合うプランを申し込んでいくことになる。

 残念ながら日本人の参加者が少ないため、自分の都合に合う日本発着のツアーを探すことは難しい。そうなると英語のHPから、海外旅行会社の大会最寄り空港発着のツアーを申し込むことになるが、こちらは案外難しくない。滞在日数や航空機便、空港往復の時間利用を自分で選択できるメリットもある。

 今回利用したイギリスの旅行会社、スポーツ・ツアー・インターナショナルは、ジュネーブ空港とラルプデュエズ往復の送迎とホテルなどを手配してくれた(しかし筆者は往復レンタカーを利用して楽しんだ)。大会参加費は先頭グループ優先スタート権付きで約2万7000円のほか、4つ星ホテルのダブルのシングル利用3泊、空港送迎バス、スポーツ保険などで約11万円だった。

車で訪れたイゾアール峠の荒涼とした有名な区間。この後、S氏夫妻と下見を兼ねてガリビエ峠へ向かった Photo: Akihiko MURAISHI
大会前に訪れた2770mのイズラン峠。今年のツールに登場した Photo: Akihiko MURAISHI

 遅いスタート順で良ければ半額程度だが、女性や中年ホビーライダーが精神的余裕を持ち、完走確率を上げるには出走順が非常に重要だ。昨年参加したエタップのラファ優先出走権に続き、今回も大いに助けられた。もし、走行実績の申告に応じて最後尾から出走したら、天候次第では最終関門通過は厳しかったかもしれない。大会や旅行に関する質問も会社HPとのやり取りが役立った。

補給所の大切さと心強さ

 海外のグランフォンドは日本と異なり、エイド地点での豪華な飲食は期待できず、遅い場合はほぼ何も残っていない。タフなコースを完走するには、十分な補給食を自身で準備することが大切だが運搬が大変だ。

 標高2000m超えの峠を巡るコースは、急に冬模様になったりと天候変化も大きく、大会公式の補給所のほかに、各会社が3カ所ほど追加補給所を用意してくれた。そこに雨具や防寒具、補給食などを前夜に預けることも可能で大変便利だった。ツアー会社は“いざ”という時に救援者の役目を担う。海外の厳しいコース設定の大会では、これが友人の様な助けになって心強い。

テレグラフ峠の上りは暑さが厳しく、補給所が大混雑で水不足。大きく時間をロスした Photo: Akihiko MURAISHI
ガリビエ峠の南側にツアー会社の追加補給所。事前に預けた補給食や衣類調整に役立った Photo: Akihiko MURAISHI

 欧州では今大会の一週間前に40℃の熱波に襲われ警報が出ていたが、大会の前後は一転して気温が下がり、風雨が強まる予報が出発時まで出ていた。雨対策のほかに冬物まで現地に持参したが、幸い直前の天気予報も外れ比較的天候に恵まれた。もし荒天なら峠付近は5℃程度となり、雨風では長く険しい下りはホイール選択も悩ましい。数日前に出発せざるをえない海外の山岳コースの大会では、気象対策が最も悩ましい。

荒涼とした厳しい登りが続くガリビエ峠 Photo: Akihiko MURAISHI
ガリビエ峠から望む南西側 Photo: Akihiko MURAISHI

 7500人の申込者のうち実際の出走者数は不明だが、制限時間以内の完走者は5518人で全体の74%。正式な関門は160km地点にしかないが、交通規制の関係上、実際には後から大型バスが帯同する。そのバスが遅れた参加者たちを次々に容赦なく拾っていくので、念願のガリビエ峠やラルプデュエズを自分で登ることなく大会を終える場合も少なくない。同行した海外ライド初体験の後輩O君は、残念ながら強制的に救援バスに乗せられ、念願のガリビエ峠は100m下のトンネルでの通過となり、非常に悔しがっていた。

ラルプデュエズの劇坂では感慨に耽る人、ダウン寸前の人、諦めた人など様々なサイクリストがいた Photo: Akihiko MURAISHI

 筆者は本大会に向け、仕事の合間に1月から獲得標高4万3000mに達するほど練習したが、完走者としては最後から10人目の5509位、同行者のS氏も普段の実力を発揮できず5341位。誕生日が同じ二人には還暦記念だったとはいえ、少々恥ずかしいレース結果だった。

 ちなみに、男性の50~59歳の完走者は1335人、60~66歳の完走者が223人で、67歳以上も50人が完走した。女性の完走者は262人で全体の4.7%、50歳以上も61人もいる。その中でもトップは6時間41分で全体の172位だ。男女ともに先頭集団はプロ級の選手たちだと思われる。二度と走らないかもしれない最後のラルプデュエズはのんびりと登ったし、注意すれば1時間近く短縮出来たとは思うが、優勝者の2倍以上の時間をかけて雄大な美しい風景を楽しみながら走った…ということにしておく(笑)。

大会の最終完走者到着予想時刻の午後8時15分の1分前に無事完走した Photo: Akihiko MURAISHI
エタップに続きマーモットも無事完走。右がエタップ2018、左がマーモット2019のメダル Photo: Akihiko MURAISHI

 凄く速い50代の日本人(全体の197位、6時間46分)が参加していたが、速い人も普通の人も、本場での力試しにはもってこいの大会だろう。今回は日本人の完走者は全部で4人だった。過去の大会参加のブログ記事(日本人参加記)が少ないため、日本人には馴染みがないようだ。

 マーモットは欧州を代表する素晴らしい大会だった。エタップと比べると、女性と60歳以上の参加者割合がかなり少なく、全体の完走率もやや低いようで、少しタフな大会と言えるかもしれないが、エタップとは違いスタートとゴールが近く、日本人にも参加しやすいと思う。ぜひ挑戦されてみてはいかがだろうか?

海外ライドの注意点と醍醐味

 海外ライドの注意点は、利用航空機が自転車搭載を受付けてくれるかどうかを事前に問合せすることだ。昨年は筆者が、今年は同行したS氏が当初予約したヨーロッパでの乗継便で、自転車搭載不可であることが出発直前に判明し、慌てて全行程を急遽変更するトラブルに見舞われた。受付が可能な便も自転車の台数に限度があるため、大きな大会では積み残しが出る話も時々あるようだ。

 パンク修理用エアボンベの扱いは、航空会社や空港や担当者で大きく異なり、自転車部品と一緒に現地調達が無難かもしれない。ラルプデュエズのような自転車の街では何でも揃うが、現地調達が難しい専用のエンド金具だけは予備を持参したい。メカ調整は大会やツアー会社でも対応可能だが、現地の自転車屋さんを気軽に利用することもできる。

 大会会場への往復にレンタカーを利用すると旅の楽しみが一気に増し、コース下見もできるので、少し旅慣れしてきたら是非お勧めしたい。筆者は2年前の南仏カンヌでのRCCサミット、昨年のアヌシーでのエタップに続き、3度目のフランス自転車旅だった。

 だから今回はレンタカーを利用し、約800km走って各地の有名な峠(今年のツールに登場したロズラン峠、イズラン峠、イゾアール峠、去年のツールに登場したマドレーヌ峠、クロワドフェル峠、モンベルニエの坂など)を思う存分巡ってきた。

クロワドフェル峠からグランドン峠方面を望む Photo: Akihiko MURAISHI
マドレーヌ峠のモニュメントと Photo: Akihiko MURAISHI

 ツールで有名な峠もテレビで見るか実際に走るか(と言っても残念ながら自転車ではないが…)は大違いで、マーモットと同じくらい感動した。今年はS氏の夫人が応援に同行したが、レースを走らない婦人でも「ガリビエ峠を自転車で越えていく夫が凄い…」と、惚れ直していた様子だった(笑)。聖地ラルプデュエズの街の様子や周辺の小径を知り、有名な峠の雰囲気や魅力も感じたことで、今後ツールをより一層愉しめるのではないかと思う。

この記事のコメント

利用規約順守の上ご投稿ください。

関連記事

この記事のタグ

イベント ロングライド

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

e-BIKE最新特集

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載