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旅サイクリスト昼間岳の地球走行録<35>ヨーロッパでもう一度走りたい「ドロミテ街道」 美しすぎるイタリアンアルプス

by 昼間岳 / Gaku HIRUMA
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 ヨーロッパの中でもう一度走りたいのはどこかと聞かれたら、迷うことなく北イタリアのドロミテ街道と答える。ただ、初めからヨーロッパでドロミテを走ろうと思っていた訳ではない。フィレンツェを観光している時に、たまたま開いた雑誌にドロミテの記事が載っていて、ここは走らないと絶対に後悔すると思ったからだ。フィレンツェからそのまま水の都ベネチアに抜けようとしたが、遠回りを覚悟でドロミテへと舵を切った。フィレンツェからドロミテ山塊の拠点になるボルツァーノまでは約400kmほど。標高900mの峠を2つ越えるものの、後はほぼ平地なので4日で着いた。

100kmという短い距離だが、早く進むのが勿体無く3日かけてじっくり走った Photo: Gaku HIRUMA

緑あふれる大地と聳え立つ岩山

 このボルツァーノからコルティナ・ダンペッツォというアルプスの山奥にある街まで、約100kmがドロミテ街道と呼ばれている。2009年には世界遺産に登録された場所だ。山岳地帯の100kmというと、通常は1日半ほどで走れてしまう距離だけど、あまりにも美しい山々に圧倒され、走り抜けるのが勿体無く感じるの道だったので、3日かけてじっくり走ってきた。

 標高200mちょっとのボルツァーノから徐々にアルプス山脈に向かって走り、まずは1752mのコスタルンガ峠を目指す。遠くに見えていた山影が段々と鮮明になって、岩山のダイナミックな姿が近づいてくるだけでも圧巻だった。しっかりと峠に入る頃には、その美しさからカーブを曲がるたびに「おー」と感嘆の声を漏らしていた。

雄大な景色の中では峠道も全く疲れなかった Photo: Gaku HIRUMA

 道の一部には急坂のつづら折りが続き、急激に標高をあげるところもあったけど、なだらかな上りが続く気持ちの良い高原地帯を走っている感覚だった。

 山の木は家や燃料にする。木を切ったところは牧草地になり、羊や牛が放牧されてカウベルが心地よく響く。ここでは自然と人と動物がバランスよく調和し、山との共存を図っているのがよく分かるから、走っていても本当に気持ちがいい。

 緑あふれる穏やかな大地がある一方で、目の前には首を上げなければ見れないほどの断崖絶壁の岩山が、森林限界を一気に越え、今にも迫ってくるかのように立っている。足元の心地の良い牧草地とは対照的に、スパンと切られたような荒々しい岩肌が力強く、そのギャップが恐ろしいくらいに風景の美しさを際立たせていた。

迫りくる岩山は大迫力だ Photo: Gaku HIRUMA

 この対照的なコントラストはドロミテ街道一帯に広がっている。こんな道は世界中のどこを見渡してもドロミテだけでしか味わえない。世界遺産になるのも納得の街道だ。大迫力な景色の前には、いつもは物陰に隠れて張るテントも、気持ちの良い場所に張るのを選ぶくらいのところだった。

 標高200mのボルツァーノから、最終的に2239mのポルドイ峠を越えたけど、景色に大興奮してアドレナリンが分泌され、全く疲れなかった。

標高3000m級の山々に囲まれた黄金の盆地

 ドロミテ街道終点のコルティナは、標高3000m以上の山々に囲まれた盆地にある。そこは黄金の盆地と呼ばれるほど、この険しい山々の中に奇跡的に開けた山間の土地だ。リゾート地だが大型ホテルなどはなく、景観を壊さないようにロッジ風の家が立ち並んでいるのには脱帽する。

厳しい山の中に突如として現れる開けた盆地は本当に奇跡的だった Photo: Gaku HIRUMA

 ただホテルやスーパーはイタリアの平均的な物価よりもかなり高い。普段なら絶対泊まれない金額だったけど、この街を満喫したくて45ユーロのホテルに泊まった。なんとかオフシーズンの価格に交渉できたので、シーズン中に行ったら泊まれなかったかもしれない。

オフシーズンのコルティナは落ち着いたリゾートの雰囲気が漂う Photo: Gaku HIRUMA

 僕が走ったのは10月中旬。一般的にはオフシーズンに当たり、朝晩は氷点下まで気温が下がる。うっかり峠にテントを張ってしまうと、凍えながらダウンヒルをしなければならないほどだった。ただ太陽が出ると、一気にポカポカと感じるくらい暖かい。空気が澄んでいて、まさにツーリングに適した季節だった。

 ただ、一つだけ残念なことがあった。トレッキングコースが素晴らしいという3つの頂きを持つ山、トレ・チーメ・ディ・ラヴァレードへ向かう時の出来事だ。登山靴を履いて、山へ向かうバス停に意気揚々と向かっていたのだけど、オフシーズンでバスが運行しておらず、行くならタクシーしか交通手段がないとのことだった。登山客が少ないのと遭難などのリスク、そして金銭面を考え、行くのを渋々諦めた。

昼間岳昼間岳(ひるま・がく)

小学生の時に自転車で旅する青年を見て、自転車で世界一周するという夢を抱いた。大学時代は国内外を旅し、卒業後は自転車店に勤務。2009年に念願だった自転車世界一周へ出発した。5年8カ月をかけてたくさんの出会いや感動、経験を自転車に載せながら、世界60カ国を走破。2015年4月に帰国した。『Cyclist』ではこれまでに「旅サイクリスト昼間岳の地球写真館」を連載。ブログ「Take it easy!!

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