ツール・ド・フランス2019 第21ステージシャンゼリゼ決戦はユアンが勝利 ベルナルがコロンビア勢初の個人総合優勝

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 ツール・ド・フランス2019は現地時間7月28日に大会最終日を迎えた。フィナーレとなるのは、パリ・シャンゼリゼ通りを中心に走る第21ステージ。スプリンターによる競演となり、カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)が勝利を挙げた。これで今大会最多勝となる3勝目。そして総合では、前日のステージを終えた時点でマイヨジョーヌに袖を通していたエガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス)が問題なくフィニッシュラインを通過し、この大会の個人総合優勝を確定。コロンビア人ライダーとしては初となるツール王座を戴冠した。

個人総合トップ3。左から2位のゲラント・トーマス、1位エガン・ベルナル、3位のステフェン・クライスヴァイク Photo: Yuzuru SUNADA

フランスの首都パリへ勇者たちの帰還

 7月6日にベルギー・ブリュッセルで開幕した今回のツール・ド・フランス。フランスに入国後はヴォージュ山脈、中央山塊と過ぎ、第2週はピレネー山脈へ。第3週は暑さとの戦いあり、レース続行を不可能とするほどの悪天候ありと激動の日々。決戦の地・アルプス山脈で数々のドラマが生まれた。

パリに向けてチャーター機に搭乗する選手・大会関係者 Photo: A.S.O./Thomas MAHEUX

 そして大会は、ついに最終目的地・パリへとたどり着く。第21ステージは、パリから見て南西に位置するランブイエをスタート。ツールは例年最終日がスタートからパレード走行となり、選手、チームスタッフ、関係者みんなでお祝いしながら進んでいくのが慣例。ゆっくりとパリを目指していく。もちろんレースも行われ、大観衆の待つパリ・シャンゼリゼ通りに入るとプロトンのムードは一変。最終ステージの勝利を目指して、選手たちの走りにもエンジンがかかりだす。

 パリでは、エトワール凱旋門やテュイルリー公園を含む1周約7kmのサーキットを8周回し、最後はコンコルド広場からシャンゼリゼ通りへ200m進んでフィニッシュ。スプリンター中心の優勝争いとなる。

今大会最後のキャラバンがスタート地点を出発 Photo: A.S.O./Thomas MAHEUX

 そして、このステージのフィニッシュと同時に、第106回ツール・ド・フランスの各賞が決まる。個人総合優勝のマイヨジョーヌを筆頭に、ポイント賞のマイヨヴェール、山岳賞のマイヨアポワ、新人賞のマイヨブラン、チーム総合、スーパー敢闘賞に輝いた選手は、シャンゼリゼ通りに設けられるポディウムへと登壇し祝福を受ける。

 このステージでは基本的にマイヨジョーヌ争いは行われないため、前日行われた第20ステージを終えた時点で個人総合首位に立つベルナルのジャージ獲得はほぼ確定。同時に、新人賞のマイヨブランを手にすることも濃厚だ。また、このステージには1位通過者に1ポイントのみ付与される4級山岳が2カ所設定されているが、山岳賞首位のロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール)が2位に8ポイント差をつけているため、レースフィニッシュできればマイヨアポワの獲得が決まる。

「エガン」コール轟くスタート地点

 大会最終日のスタート地点では、レース開始数時間前から多くの観衆が集まり、選手やチームの会場入りを待つ姿が見られた。その中でもにぎわったのは、やはりチーム イネオスのチームパドック。コロンビアの大応援団がチームバスの目の前を陣取り、繰り返し「エガン」コールを送る。ときおりコロンビア国歌の大合唱も轟かせ、“主役”の登場を待ちわびる。

マイヨジョーヌ仕様となったチーム イネオスのチームカー Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 そして、レーススタート約1時間前、マイヨジョーヌに身を包んだ新王者・ベルナルがチームバスから登場。大歓声の中、関係者との挨拶を済ませると、真っ先に向かったのはコロンビア大応援団。ひとりひとりサインに応じるその姿からは、早くも王者としての風格が漂っているように見えた。

 若きエースのツール制覇を祝い、チームは選手たちが着用するジャージの一部にマイヨジョーヌカラーを施した特別バージョンを用意。アイウエア、グローブも同色で統一。チーム車両も部分的にマイヨジョーヌカラーに替えてレースに臨む徹底ぶり。

 レースはというと、例年と変わらずアクチュアルスタート後もゆっくりと走行。プロトン内は選手同士で会話を楽しむ姿や、カメラバイクに向かって手を振る姿など、リラックスムード一色。やがて、チャンピオンチームであるチーム イネオスの“乾杯タイム”が始まる。ベルナルがチームカーへと下がり、スタッフと祝杯を挙げたのち、ここまで残った7選手全員でもシャンパンで乾杯した。

 そんな和やかなムードで進んだパレード走行。残り70kmを切ったところからチーム イネオスが先頭へ出てプロトンのコントロールを開始。態勢を整えて、シャンゼリゼの周回コースへと入っていった。

コロンビアからのファンにサインで応じるエガン・ベルナル Photo: Syunsuke FUKUMITSU

8年前の誓いを達成したユアン

 大観衆がコース左右を埋め尽くすシャンゼリゼ通りは、コンコルド広場からエトワール凱旋門までが上り基調。折り返して逆走になると下りとなることから一気にスピードが上がる。また、路面が石畳であることも特徴。これが影響してか、個人総合4位のエマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)がパンク、同2位のゲラント・トーマス(イギリス、チーム イネオス)がメカトラブルで止まったが、無事に集団へ復帰している。

談笑しながらパレード走行するエガン・ベルナル(左)とジュリアン・アラフィリップ Photo: A.S.O./Alex BROADWAY

 周回コースに入るとともに、オマール・フライレ(スペイン、アスタナ プロチーム)とトーマス・スクーリー(ニュージーランド、EFエデュケーションファースト)がアタックを成功させ、レースをリード。さらに、ヤン・トラトニク(スロベニア、バーレーン・メリダ)とニルス・ポリッツ(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)が合流。4人の逃げとなる。

 逃げグループとメイン集団とのタイム差は、しばし30秒前後で推移。フィニッシュまで残り30kmを切った頃から集団が前を行く4人との差を縮め始めて、残り3周となったところでは20秒差に。

西日を浴びながらシャンゼリゼ通りを進むメイン集団 Photo: A.S.O./Pauline BALLET

 この周回の終盤に先頭ではトラトニクとスクーリーがアタック。直後にトラトニクがスクーリーを引き離し独走となったが、ペースを上げるメイン集団がグングンと迫り、残り2周となったところで吸収。各チームがスプリントに向けて態勢を整えていく。このうち、このステージの優勝候補であるソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ)がパンク。この対応に前日のステージ勝者であるヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア)が動き、コルブレッリを集団復帰させることに成功する。その後にマイケル・マシューズ(オーストラリア、チーム サンウェブ)もパンクでバイク交換を余儀なくされたが、何とか集団へ戻り、スプリント参戦に賭けた。

凱旋門を見ながら進んでいくプロトン Photo: A.S.O./Alex BROADWAY

 そして迎えた最終周回。グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム)がアタックしたが、これは決まらず。集団は多くのチームが入り乱れる大混戦。そんな中、残り1kmで先頭へ上がってきたのはジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)。ペースを上げて集団を縦長にする。その後ろでは有力スプリンターたちの位置取り争いが激化するが、ドゥクーニンク・クイックステップのトレインが先頭のまま、コンコルド広場を通過。最終コーナーを抜けて、勝負の直線を迎えた。

 ここで先陣を切ったのは、エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)。さらにマキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、ドゥクーニンク・クイックステップ)とニッコロ・ボニファツィオ(イタリア、トタル ディレクトエネルジー)が続く。先に仕掛けた3人が抜け出したかに思われたが、残り100mで急加速したのはユアンとディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)。両者は左右両サイドに分かれるようにしてスプリントラインをとって勝負をかけたが、伸びで上回ったユアンに軍配が上がった。

ツール・ド・フランス2019第21ステージ。最後を飾るパリ・シャンゼリゼでのスプリント勝負は残り100mから猛追したカレブ・ユアン(左端)が勝利した Photo: Yuzuru SUNADA

 今大会の個人勝利数で単独トップとなる3勝目を挙げたユアン。レースを振り返って、「かなり難しいスプリントになった。(先に仕掛け3人が)かなり離れた位置まで行ってしまったが、ただただ踏み続けるだけだった。スピードを最後まで維持できたことは本当にラッキーだった」とコメント。プロデビューよりはるか前、8年前にシャンゼリゼ通りでレース観戦したことがあるといい、「そのときにいつかここで勝利すると誓ったんだ。それを初めてのツールで達成できたことは最高だ」と喜びに浸った。

今大会3勝目、シャンゼリゼのポディウムで表彰を受けたカレブ・ユアン Photo: A.S.O./Pauline BALLET

ベルナル「いま世界で一番幸せな男だと思う」

 ステージ優勝争いの後ろでは、個人総合ワン・ツーをほぼ手中に収めていたベルナルとトーマスが手を取り合いながらフィニッシュへ。互いを称えながら歓喜のときを迎えた。そして、第106回ツール・ド・フランスの王座にベルナルが就くことが正式に決まった瞬間だった。

手を取り合いながらフィニッシュを迎えた個人総合ワンツーの2人。エガン・ベルナル(左)とゲラント・トーマス Photo: Yuzuru SUNADA

 今大会の覇者となったベルナルは、1997年1月13日生まれ、コロンビア・シパキラ出身の22歳。サイクリストとしてのキャリアはマウンテンバイクが始まりで、2014年と2015年には同種目のジュニア世界選手権でそれぞれ銀メダルと銅メダルを獲得している。2016年にイタリアのUCIプロコンチネンタルチーム、アンドローニジョカットリ・シデルメクでロードでのプロ生活をスタート。翌2017年には若手の登竜門「ツール・ド・ラヴニール」で個人総合優勝。2018年から現チーム(当時チーム スカイ)入りし、ツールにも初出場。個人総合15位で終えた。

 今シーズンは、3月に行われたパリ~ニース、6月にはツール・ド・スイスでそれぞれ個人総合優勝。当初は5月に開催されたジロ・デ・イタリアへの出場を予定していたが、直前のトレーニングで落車負傷し目標をツールへと切り替えていた。

 初の個人総合優勝に際し、ポディウムでのスピーチで「何を言おうか言葉が浮かばない」と切り出したベルナル。横に立ったトーマスに「チャンスをくれてありがとう」と直接感謝を伝えるとともに、「チームのサポートも素晴らしかった」と仲間を称えた。そして、「私はいま、世界で一番幸せな男だと思う」と言って胸を張った。英語で始めたスピーチはやがて、イタリア語、スペイン語、そしてフランス語と、4カ国語を駆使してみせた。なお、ベルナルは22歳6カ月15日でのマイヨジョーヌ獲得となり、これは大会史上3番目の若さ。マイヨジョーヌ採用からは最も若い選手のツール制覇となり、「マイヨジョーヌ100周年」記念大会に花を添えた。

 ベルナル以下、個人総合上位陣に変動はなく、2位トーマス、3位ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)が総合表彰台を確保した。

 その他各賞も確定。ポイント賞のサガンは、大会新記録となる7度目のマイヨヴェール獲得。山岳賞のマイヨアポワはバルデ、25歳以下の選手が対象の新人賞・マイヨブランはベルナルがそれぞれ獲得。各ステージのチーム内上位3選手のフィニッシュタイム合算で争われるチーム総合は、モビスター チームが1位となった。また、今大会最もアグレッシブな走りを見せた選手に贈られる「スーパー敢闘賞」には、第19ステージまで14日間にわたりマイヨジョーヌを着用し、最終的に個人総合5位で終えたアラフィリップが選出された。

4賞選手の表彰。左からポイント賞のペテル・サガン、個人総合優勝と新人賞のエガン・ベルナル、山岳賞のロマン・バルデ Photo: Yuzuru SUNADA

 これで、2019年のツール・ド・フランスは閉幕。次回、2020年大会はフランス南部の都市・ニースで開幕することが決定しており、同地を発着する山岳ステージが第1、第2ステージに設定されている。

第21ステージ結果
1 カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) 3時間4分8秒
2 ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) +0秒
3 ニッコロ・ボニファツィオ(イタリア、トタル ディレクトエネルジー)
4 マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、ドゥクーニンク・クイックステップ)
5 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)
6 アンドレ・グライペル(ドイツ、アルケア・サムシック)
7 マッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)
8 ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)
9 ニキアス・アルント(ドイツ、チーム サンウェブ)
10 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)

個人総合(マイヨジョーヌ)
1 エガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス) 82時間57分0秒
2 ゲラント・トーマス(イギリス、チーム イネオス) +1分11秒
3 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) +1分31秒
4 エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) +1分56秒
5 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) +4分5秒
6 ミケル・ランダ(スペイン、モビスター チーム) +4分23秒
7 リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト) +5分15秒
8 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム) +5分30秒
9 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム) +6分12秒
10 ワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック) +7分32秒

ポイント賞(マイヨヴェール)
1 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 316 pts
2 カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) 248 pts
3 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) 224 pts

山岳賞(マイヨアポワ)
1 ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール) 86 pts
2 エガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス) 78 pts
3 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) 75 pts

新人賞(マイヨブラン)
1 エガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス) 82時間57分0秒
2 ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマ・エフデジ) +23分58秒
3 エンリク・マス(スペイン、ドゥクーニンク・クイックステップ) +58分20秒

チーム総合
1 モビスター チーム 248時間58分15秒
2 トレック・セガフレード +47分54秒
3 チーム イネオス +57分52秒

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