ツール・ド・フランス2019 第20ステージニバリが渾身の逃げ切り ベルナルは総合リード守ってマイヨジョーヌ獲得へ

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 ツール・ド・フランス2019は第20ステージ。現地時間7月27日に行われたレースは、悪天候による直前のコース変更があり59.5kmで争われた。そんな中、逃げメンバーがステージ優勝争いを演じ、終盤に独走に持ち込んだヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)が優勝。今大会は山岳ステージでの逃げでレースを進めることが多かったが、ついに勝利をつかんだ。最後の戦いとなった個人総合争いは、エガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス)が危なげない走りでライバルとのタイム差を堅守。最終の第21ステージは総合争いを行わないことが慣例であることから、マイヨジョーヌ獲得を濃厚にした。

ツール・ド・フランス2019第20ステージ。この大会最後の山岳ステージでヴィンチェンツォ・ニバリが独走勝利を挙げた Photo: Yuzuru SUNADA

運命の最終決戦は超級ヴァル・トランス一本に

 レースは当初、3カ所の上りをこなして、超級山岳ヴァル・トランスの頂上へフィニッシュする130kmのルートが設定されていた。しかしここ数日、アルプス山脈周辺は異常気象に見舞われ、26日以降は雷雨が続く悪天候。これによって、1つ目の山岳として走る予定になっていた1級ロズラン峠に土砂が流れ込み、レース通過が不可能となった。

変更になった第20ステージのコースプロフィール ©︎A.S.O.

 大会を主催するA.S.O.(アモリ・スポル・オルガニザシオン)は前夜、急遽コースを変更すると発表。ロズラン峠と2級山岳コート・ド・ロンジュロワをパスし、直接ヴァル・トランスへ向かう新ルートを設定した。レース距離は59.5kmで、そのうち33.4kmがヴァル・トランスの上りで占められる形に。

 ヴァル・トランスは、その上りの長さが特徴的。急勾配こそ多くはないものの、上り距離がどのようにレース展開に影響を与えるか。途中、平坦区間や短い下りもあり、テンポよく頂上を目指していけるかがポイントだ。

 翌日に行われる最終・第21ステージは総合争いを行わないことが慣例となっており、実質このステージがマイヨジョーヌ争いの最終決戦。ヴァル・トランスへ到達した時点で、マイヨジョーヌに袖を通す選手が事実上、今大会の個人総合優勝に決まる。

 ただ、この日もヴァル・トランス周辺は早朝から大雨。レース実施が危ぶまれる状況で、天候次第では頂上から11km手前に計測ポイントを置き、それをレースタイムに反映させる案も上がった。だが、幸いにしてスタート前に好天となり、レースは59.5kmのまま行われることになった。

マイヨジョーヌで出走サインへ臨むエガン・ベルナル Photo: Yuzuru SUNADA

 前日の第19ステージは降雹と地崩れにより、レース終盤部分がキャンセルとなった。直前に上った超級山岳イズラン峠までのタイムが有効となり、ベルナルが個人総合首位に浮上。マイヨジョーヌを着て第20ステージに臨む。個人総合2位のジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)との総合タイム差は48秒。以下、3位ゲラント・トーマス(イギリス、チーム イネオス)が1分16秒差、4位ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)が1分28秒差、5位エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)が1分55秒差で続く大接戦。

 上位5人のタイム差は、ヴァル・トランスでの展開次第で大きく変動することも十分にあり得るもの。泣いても笑っても、すべてが決することになる。

ユンボ・ヴィスマが集団をコントロール

 レース距離が大幅に短縮されたことも関係してか、リアルスタートから飛び出しを図る選手が続々と現れる。ファーストアタックからの流れでまずは6人がリードしたが、15km地点を前に23人が第2グループを形成。前を行く6人を追い、20km地点手前で合流。最大29人の先頭グループとなった。

レース前半に形成された逃げグループ Photo: A.S.O./Pauline BALLET

 これまでの山岳ステージと同様に、この日も大人数がレースをリードすることになったが、この中で総合最上位はセバスティアン・ライヒェンバッハ(スイス、グルパマ・エフデジ)の18位。総合タイム差では40分45秒あることから、メイン集団は29人が先を急ぐことを許した。

 30km地点でタイム差が2分30秒となったのを機に、メイン集団は少しずつ先頭グループとの間隔を調整し始める。ヴァル・トランスの上りに入ったところで個人総合3位のクライスヴァイク擁するユンボ・ヴィスマが集団コントロールを開始。主にジョージ・ベネット(ニュージーランド)がペーシングを担った。

 先頭グループでもヴァル・トランスに入って動きがあり、上りを進むうちに人数が徐々に絞り込まれていく。大人数だったグループはやがてニバリを含む5人となった。

1年4カ月ぶりの勝利に「リベンジ」とニバリ

 登坂距離の長いヴァル・トランスの上りに、メイン集団では徐々に苦戦する選手の姿が見られるようになった。頂上まで17kmのところで、個人総合10位でスタートしたリッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード)が脱落。さらには、4kmほど進んだところで個人総合2位のアラフィリップが遅れ始めた。

集団内でレースを進めるジュリアン・アラフィリップ。この後、ヴァル・トランスの上りで苦しんだ Photo: Yuzuru SUNADA

 アラフィリップには、チームメートのエンリク・マス(スペイン)が引き上げ役についたが、ユンボ・ヴィスマがペースを上げ続けるメイン集団との勢いは歴然。総合順位ダウンのピンチが訪れた。

 タイミングを同じくして、先頭ではニバリがアタック。ここまで一緒に走ってきた逃げメンバーを完全に振り切って、独走態勢に入った

 スピードに乗ったニバリは、縮小傾向にあったメイン集団とのタイム差を1分前後に保って残り距離を減らしていく。ニバリから遅れた残りの逃げメンバーはいずれもメイン集団にパスされ、レース前半から先行を続けるのはニバリただ1人となった。

ステージ優勝を挙げたヴィンチェンツォ・ニバリ Photo: Yuzuru SUNADA

 それでも力強いペダリングは変わらず。途中のわずかな下りも問題なく通過し、いよいよ最終局面へ。さすがに最後は表情が苦しさでゆがんだが、後続との十分なタイム差を持って最後の直線へ。両手を高々とかざしてフィニッシュラインを通過した。

 ニバリは今シーズン、5月に行われたジロ・デ・イタリアで個人総合2位となったが、グランツール連戦の今大会は早々に総合争いから離脱。山岳ステージを中心に逃げで勝機をうかがってきた。そして最後のチャンスともいえるこのステージで渾身の逃げ切り。レース直後のインタビューでは、「最後の数百メートルは終わらないかと思うくらい長く感じた」とホッとした表情。昨年のミラノ~サンレモ以来、実に1年4カ月ぶりの勝利に「ようやくリベンジができた」と喜んだ。

ベルナル「ジロに出場していたらここにはいなかったはず」

 ニバリのフィニッシュから約10秒、メイン集団でレースを進めていた選手たちがなだれ込むようにしてやってきた。残り約1kmからのミケル・ランダ(スペイン、モビスター チーム)のアタックをきっかけに、ステージ上位フィニッシュをかけて選手たちがスピードアップ。最終的に、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)が2位をおさえ、ランダが3位となった。

前後に並んで走るゲラント・トーマス(右)とエガン・ベルナル(中央) Photo: Yuzuru SUNADA

 そして数秒差でマイヨジョーヌのベルナルとトーマスがならんでフィニッシュラインへ。リードを守り抜いて個人総合優勝をほぼ手中に収めたベルナルをトーマスが祝福し、互いに手を取りながらレースを終えた。最終局面に向けては、ワウト・プールス(オランダ)が集団の先頭に立ってレースをまとめる方向へ。総合トップ5のうち、集団から遅れたアラフィリップをのぞく4人の構図には大きな変動はなかった。

 このステージではアラフィリップが総合上位陣から約3分の遅れとなったことから、個人総合5位にランクダウン。トーマス、クライスヴァイク、ブッフマンが1つずつ順位を上げ、2位から4位を占めることになった。

個人総合3位としたステフェン・クライスヴァイク Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 レース後、個人総合上位3選手による記者会見が行われ、ベルナル、トーマス、クライスヴァイクが席に着いた。まずははじめに会見に臨んだクライスヴァイクは、「ツールが始まった頃から総合表彰台の可能性があると思っていた」といい、その自信は昨年のツール個人総合5位、ブエルタ・ア・エスパーニャでの同4位からくるものだと説明。「表彰台に上がるのと4位に終わるとのは大違い。ベルナルは勝利に値するし、昨日(第19ステージ)の時点でそれは決まったようなものだった。私自身の結果には十分満足している」述べた。

戦いを振り返る個人総合2位のゲラント・トーマス Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 続いて会見したトーマスは、チームメートのベルナルの実力に驚くばかりの様子。「22歳でツールを勝つなんてすごいこと。ものすごい才能の持ち主だし、この先数年は明るい」とコメント。自身の走りについては、「失敗も多かった」と振り返り、前哨戦のツール・ド・スイスでの落車リタイアを含め、「困難な状況だったが、前向きに戦っていかなければいけなかった」と気持ちを奮い立たせて戦っていたことを打ち明けた。ライバルについては、前日リタイアのティボー・ピノ(フランス、グルパマ・エフデジ)を「最も危険に感じた」といい、マイヨジョーヌを14日間着用したアラフィリップを「彼の走りによってレースが素晴らしいものになった。将来的には(グランツールの)総合を狙える選手になるように思うし、今回の5位も表彰台に値する」と、競った相手を称えることも忘れなかった。

家族は母国への思いを語ったエガン・ベルナル Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 そして大トリを務めたのは、ニューヒーローのベルナル。「まだ信じられない。勝てた理由も思い浮かばない」と切り出すと、「いつもコロンビアでのトレーニングは父が一緒だった。ここまでの経緯や私の努力を知るのは父ただ1人」と感謝を口にした。当初はジロへの出場を予定しながら、直前の負傷で回避し目標をツールにスライドしたが、「ジロに出場していたら、いまここにはいなかったはず。疲労が回復できなかったと思う」と話す。そして、コロンビアの盛り上がりについて問われると、「正直どうなっているのか想像がつかない。とにかくみんなが幸せであることが一番」と、母国への思いを馳せた。

第20ステージを終えマイヨジョーヌに袖を通したエガン・ベルナル。ポディウムで歓声に応える Photo: Yuzuru SUNADA

 翌28日、いよいよツールは最終日を迎える。3週間の戦いの終わりは、ランブイエからフランスの首都パリ・シャンゼリゼまでの128km。レーススタートからしばらくはパレード走行となるのが慣例。完走を祝うムードの中、パリを目指していく。そして最後は、大観衆の待つパリ・シャンゼリゼ通りへ。ここからは最終・第21ステージの勝者を決める戦いへと移る。エトワール凱旋門やテュイルリー公園を含む1周約7kmのサーキットコースを8周回する。フィニッシュへは、コンコルド広場を抜けて200m。スプリンターたちが今大会最後のステージ優勝をかけての競演となる。

 そして、このステージのフィニッシュと同時に、第106回ツール・ド・フランスの各賞が確定。個人総合優勝のマイヨジョーヌを筆頭に、ポイント賞のマイヨヴェール、山岳賞のマイヨアポワ、新人賞のマイヨブラン、チーム総合、スーパー敢闘賞の選手たちがシャンゼリゼ通りに設けられるポディウムへと登壇し、華やかなフィナーレとなる。

第20ステージ結果
1 ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) 1時間51分53秒
2 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム) +10秒
3 ミケル・ランダ(スペイン、モビスター チーム) +14秒
4 エガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス) +17秒
5 ゲラント・トーマス(イギリス、チーム イネオス)
6 リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト) +23秒
7 エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
8 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) +25秒
9 ワウト・プールス(オランダ、チーム イネオス) +30秒
10 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)

個人総合(マイヨジョーヌ)
1 エガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス) 79時間52分52秒
2 ゲラント・トーマス(イギリス、チーム イネオス) +1分11秒
3 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) +1分31秒
4 エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) +1分56秒
5 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) +3分45秒
6 ミケル・ランダ(スペイン、モビスター チーム) +4分23秒
7 リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト) +5分15秒
8 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム) +5分30秒
9 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム) +6分12秒
10 ワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック) +7分32秒

ポイント賞(マイヨヴェール)
1 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 309 pts
2 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) 224 pts
3 ソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ) 203 pts

山岳賞(マイヨアポワ)
1 ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール) 86 pts
2 エガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス) 78 pts
3 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) 74 pts

新人賞(マイヨブラン)
1 エガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス) 79時間52分52秒
2 ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマ・エフデジ) +23分29秒
3 エンリク・マス(スペイン、ドゥクーニンク・クイックステップ) +57分35秒

チーム総合
1 モビスター チーム 239時間45分51秒
2 トレック・セガフレード +47分54秒
3 チーム イネオス +57分52秒

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