山下晃和の「“キャンプ”ツーリングの達人」<12>実践“グラベルバイクパッキング”スタイル 旅の自由度が増すキャンプツーリング②
自転車キャンプツーリングの実践編、その2。前回からの続きで、羽田からの飛行機輪行を経て長崎空港に到着したところからスタートします。この日向かう先は長崎市内。大村湾を船で渡って時津まで移動し、そこから長崎市へと走ります。参考として、皆さんの夏休みの計画にも入れられるよう最後にルートもご紹介しています。
バイクパッキングは実は準備が一番頭を使います。積載するアイテムによって旅の快適さ(移動時、キャンプ時含む)が大きく左右されるためです。飛行機輪行の場合、積載荷物が多いと輪行時に自転車から外した道具を全部抱えて歩くのが大変だったり、空港へ自走するまでの道中で思いがけず辛い思いをする場合もあります。空港までどうアクセスするのか、バイクから外した荷物をどう処理できるかなど、さまざまなシチュエーションや解決策を考えた上で準備を行ないましょう。
輪行旅は飛行機からフェリーへ
朝7時45分に羽田を発ち、フライトタイムは約1時間45分。長崎空港には9時30分に到着しました。自転車を受け取り、大型サドルバッグとフロントバッグを入れたビニール袋を受けとって、しばらく空港を歩いたり、写真を撮っているうちに、予定していた10時発の船には間に合わず、10時40分発のフェリーで長崎空港から時津港まで渡ることにしました。

空港から時津までを渡る大村湾内の航路は約25分。自転車で走ると約40kmあり、頑張ってスピードを出しても2時間かかりますが、それが4分の1にショートカットされた格好です。料金は1400円と自転車代720円で合わせて2120円です。
輪行状態のままで持ち込んだところ、客席まで自転車を入れて良いということで、自分の席の真横に置いて“一緒に”座りました。空も海も青々とした大村湾の美しさに見とれながら、旅の始まりにワクワクしました。けたたましいエンジン音と波を切り裂く音はあるものの、船の旅情感はたまりません。
「ハウステンボス」行きのフェリーと違って時津への航路はお客さんが少ないせいか、自転車の扱いもとても親切。乗り降りの時も手伝ってくださったうえに、港に着いて自転車を荷ほどきしていたら、ペットボトルの飲み物までいただきました。長崎の人の温かさに触れてほっこりしたあと、自転車のペダルを踏み始めました。
時間に縛られず自由に長崎市内観光
太陽はギラギラに照っていて、首の後ろや腕がジリジリと焼けるのを感じます。ワシワシとセミの鳴き声で周りの音が聞こえないほど、ここはもう夏でした。時津は想像以上に栄えた町で、コンビニやレストランもたくさんありました。が、まずは今日の宿泊地、「崎野自然公園キャンプ場」まで行くことに。時津港から4.3kmだったので、あらかじめどんなキャンプ場かを見に行ってみました。が、ここへ行くには結構な上りがあるので、それだけでけっこう脚が削られました。余裕をもって長崎市内を観光したい方は事前には寄らない方が無難でしょう。

キャンプ場で手続きをする際、稲佐山の夜景を見に行くので戻ってくる時間が遅くなることを伝え、キャンプ場から南下。途中、ランチにふらっと立ち寄った長崎ちゃんぽん屋が驚くほど美味しく、本場のちゃんぽんの“すごさ”を実感して市内へと向かいました。およそ16kmなのでかなり近いです。

国道沿いにある平和公園、長崎原子爆弾落下中心跡地、長崎原爆資料館へ寄り、戦争のことを改めて学び、その後、ベイサイドエリア「長崎出島ワーフ」でカフェに寄りました。ここは美しい船着場を目の前におしゃれなレストランが軒を連ね、とても居心地の良い場所でした。ありがたいことに、しっかり自転車スタンドもありました。数あるカフェの中でも個人的には「ATTIC COFFEE second」がオススメでした。

その後、オランダ坂、グラバー園、長崎県美術館と、名だたる名所を巡りました。移動としても自転車がとても便利で、時刻表を見ることなく、自分のペースで廻れるのはとてもストレスフリーです。また、嬉しいことに、いずれの観光地も自転車駐輪場完備。しかもキャンプ道具をそのまま着けておいても、ものが盗まれることはありませんでした。長崎は自転車ウェルカムな上に、抜群に治安が良く旅がしやすいです!
最大のミッション、稲佐山からの夜景をゲット
そして、念願だった新世界三大夜景の稲佐山へ。2012年に、モナコ、香港と並んで認定されたそうです。自転車の駐輪は駐車場の横に案内してもらい、ロープウェイで登りましたが、自転車でそのまま上の展望台の真下まで自力で行けそうでした。
ここから撮影した夜景の写真ももちろんありますが、それはご自身の目で見ていただいた方が良いと思うので、敢えて公開しません。夕日が落ち込む時間には大音量のミュージックが流れ、世界中から来たであろう旅行客と一緒に、グラデーションに移ろう美しい夜空を見届けました。
そこから再びキャンプ場まで国道を戻り、買い出しでコンビニに立ち寄り、着いたのは午後9時半頃。そこからテントを設営するのですが、今回初めて使用したモンベルの「ルナドーム2型」は設営方法が改良されており、あっという間に設営が完了しました。
重量が1.79kgとやや重めで、ポールが53cmと長いのですが、室内がとても広く、前室もあるので、仮に全日雨だとしても毎日濡れた物をそこに置いておくこともできます。


このテント本体部分がフロントバッグにちょうどよく収まりました。ポールは長めで入らなかったので、サドルバッグの「支え」として積載。フロントバッグの隙間には、レインウェア上下を入れて形を整えました。
パッキングの中身を公開
今回は「無駄な物を持っていかない」ということをテーマに最大限の軽量化を計りましたが、どうしてもバックパックを背負わなくてはならなかった理由は一眼レフカメラと三脚です。これがないと取材として成立しないため、泣く泣く背負いました。その2つ以外は全て自転車に装着しているバッグに収まったので、カメラが無ければバックパックは必要なかったと思います。


今回は荷物削減のためバーナーとクッカーを持って来なかったので、昼はレストランや食堂を探して、地の物を食べました。…が、夜と次の日の朝はこんなんで大丈夫だろうかと思うようなシンプルなごはんで済ませました(笑)。

本当はお弁当を買いたかったのですが、プラスチックの箱はかさばるので全て袋に収納された商品をチョイス。キャンプ場のゴミ処理代が一袋1000円。ソロキャンプとしてはなかなかな額だったので、ここは持ち帰ることで対処しました。ただし、自販機が近くにあったので飲料水を積んで来なくても大丈夫だったことと、そこで購入したペットボトルや缶であればそこのゴミ箱を利用してOKということで安心しました。
1日の総距離は51.3km=15km(自宅から空港)+36.3km(長崎の移動)でした。夜は移動疲れもあったためバタンキュー。波の音をBGMに、そのまま朝までぐっすりと眠りにつきました。
<つづく>

タイクーンモデルエージェンシー所属。雑誌、広告、WEB、CMなどのモデルをメインに、トラベルライターとしても活動する。「GARVY」(実業之日本社)などで連載ページを持つ。日本アドベンチャーサイクリストクラブ(JACC)評議員でもあり、東南アジア8カ国、中南米11カ国を自転車で駆けた旅サイクリスト。その旅日記をもとにした著書『自転車ロングツーリング入門』(実業之日本社)がある。趣味は、登山、オートバイ、インドカレーの食べ歩き。ウェブサイトはwww.akikazoo.net。