ツール・ド・フランス2019 第17ステージ逃げから終盤に独走へ持ち込んだトレンティンが勝利 総合上位陣は安全にレースを終える

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 ツール・ド・フランス2019は現地時間7月24日、第17ステージが行われ、30人を超える逃げグループが序盤に形成されそのまま逃げ切り、終盤の絞り込みから単独で抜け出したマッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)がツール通算3勝目、チームは今大会を通じて4勝目を挙げた。メイン集団は約20分経ってフィニッシュ。個人総合上位陣はいずれもこの中に含まれており、順位の変動はなかった。首位のマイヨジョーヌはジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)がキープしている。

ツール・ド・フランス2019第17ステージ、終盤のカテゴリー山岳から抜け出したマッテオ・トレンティンがステージ優勝を果たした。ヨーロッパチャンピオンジャージをまとう29歳だ Photo: Yuzuru SUNADA

世界遺産「ポン・デュ・ガール」からスタート

 今大会の最終決戦地、アルプス山脈へ向かう1日。まず手始めに、丘陵地帯を進んでいく。

世界遺産「ポン・デュ・ガール」の脇を通過してスタート地点へ向かうマイヨジョーヌのジュリアン・アラフィリップ Photo: Yuzuru SUNADA

 このステージのスタート地は、世界遺産に登録される水道橋「ポン・デュ・ガール」。古代ローマ時代・紀元前19年頃に建てられたとされ、前日のレース基点となったニームへ導水されていた。、今回、ツール史上初めてスタート地点として選ばれ、選手・チームが待機するチームパドックからスタートラインまでは、この水道橋の脇を通過していく粋な演出が施された。なお、前日のステージでもコースに組み込まれており、驚異の遺構は第3週のハイライトの1つになりそうだ。

スタート地点へ向かうジュリアン・アラフィリップ。沿道のファンの視線を釘付けにする Photo: Yuzuru SUNADA

 レースコースに目を向けると、前半から少しずつ上り基調になっていくものの、カテゴリー山岳は中盤の4級山岳と終盤の3級山岳の2つのみ。3級コル・ド・ラ・サンティネル(登坂距離5.2km、平均勾配5.4%)は、頂上がフィニッシュ前8.5km地点。そこからフィニッシュへと下っていくレイアウトだけに、ステージ優勝争いに何らかの影響を与えることが考えられる。この上りでアタックを決められれば、そのまま逃げ切りのチャンスが膨らむ。

 また、リーダーチームを中心としたメイン集団が主導権を握るのか、逃げグループの先行を容認するのかといった、プロトン全体の判断も見ものだ。展開次第では、上れるスプリンターにもチャンスが出てくる可能性もあり、あらゆるレース展開が想定される。

 前日に続いて南フランスは熱波の影響で気温30℃台後半の暑さ。そんな気象条件も選手たちの走りに影響を与えるかもしれない。

パレードスタートを切るプロトン Photo: Syunsuke FUKUMITSU

33人が先行 タイム差拡大の一途

 ここまでのステージ同様に、レースはアクチュアルスタートと同時に動き出した。トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)のファーストアタックをきっかけに、次々と選手たちが追随。最大で34人が逃げる形になった。その後1人がパンクトラブルで下がったが、33人はそのまま先頭グループを形成。

トーマス・デヘントを先頭に逃げグループが先を急ぐ Photo: A.S.O./Alex Broadway

 先を行く選手のうち、総合最上位は19位のクサンドロ・ムーリッセ(ベルギー、ワンティ・ゴベール)。首位アラフィリップとのタイム差は28分25秒とあり、メイン集団は急いで追うことはしない。先頭グループは集団とのタイム差を少しずつ広げていきながら、先を急ぐ。レース最初の1時間の平均時速は51.7kmとハイスピードで進行した。

 62km地点に設けられた中間スプリントポイントは、ポイントが付与させる上位通過15人を先頭グループで占め、アンドレア・パスクアロン(イタリア、ワンティ・ゴベール)が1位で通過。104.5km地点に置かれた4級山岳コート・ド・ラ・ロシェット=デュ=ビュイは山岳賞争いで2位につけるデヘントがトップで通過をしている。

 こうしている間も、集団とのタイム差は広がる一方。途中、強い雨に見舞われながらもペースが乱れることはなく、フィニッシュまで40kmを残したところでその差は14分40秒まで広がった。

上空から見たメイン集団 Photo: ASO/Pauline BALLET

ライバルの隙を見逃さなかったトレンティン

 逃げ切りが濃厚となった先頭グループ。焦点はステージ優勝争いへと移っていく最中、残り30kmを切ったところで動きが起こる。11人が抜け出すことに成功。その後1人が脱落したこともあり、先頭グループは10人に絞られる。

独走に持ち込んだマッテオ・トレンティン Photo: Yuzuru SUNADA

 その後も細かなアップダウンや選手間の駆け引きから人数が絞り込まれていくが、この日最後のカテゴリー山岳である3級コル・ド・ラ・サンティネルの上りが始まるとともにトレンティンがスピードアップ。優勝争いのライバルたちが牽制気味になったのを見て抜け出しを図ると、あとは1人でグングンと突き進む。しばらくしてピエールリュック・ペリション(フランス、コフィディス ソルシオンクレディ)が単独追走を開始するが、勢いはトレンティンが上回る。そのまま頂上を一番に通過し、30秒遅れてペリションをかわしたカスパー・アスグリーン(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ)が続いた。

 残すはフィニッシュ地ギャップまでの8.5kmのダウンヒル。下りを得意とするトレンティンにとっては、おあつらえ向きの最終局面。後続とのタイム差を広げて下り終えると、多くの観客が待つフィニッシュへと1人でやってきた。

 後方を確認しつつもしっかりとしたペダリングを続けたトレンティン。最後にようやく脚を止め、両手を高々と抱えてフィニッシュラインを通過。ツールのステージ優勝は2013年大会の第14ステージ、2014年大会の第7ステージに続く3勝目。今大会はスプリントで上位を狙うステージもあったが、逃げでもチャンスを構築できる万能ライダーが鮮やかに逃げ切りを決めた。

会心の逃げ切りに走り終えて笑顔のマッテオ・トレンティン Photo: Yuzuru SUNADA

 大会後半に入り、勝てる手ごたえをつかんでいたというトレンティン。当初は第12ステージを視野に入れていて、そのときはチームメートのサイモン・イェーツ(イギリス)が優勝。自身は6位だったがレース内容には満足していたといい、再度のチャンスとしてこのステージに目をつけていたという。「脚より気持ちの面が自らを支えた」と勝因を語り、「上りでアタックする選手をチェックするより、先手を打って独走に持ち込もうと思っていた」と作戦勝ちであることをアピール。チームとしても今大会4勝目。総合エースとして乗り込んだアダム・イェーツ(イギリス)が精彩を欠いているが、ここまでのステージ狙いは成功していると言えるだろう。

 後続は、トレンティンから37秒差でやってきたアスグリーンが2位。その後は逃げメンバーがなだれ込むようにフィニッシュラインを通過。グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム)が3位となり、以降33位までをレース序盤から逃げていた選手たちで占めた。

アルプスへ「準備はできている」とアラフィリップ

 メイン集団はリーダーチームのドゥクーニンク・クイックステップのコントロールのもと、セーフティーに進行。フィニッシュへの到達は、トレンティンから20分10秒経ってのものに。最後はマイヨジョーヌのアラフィリップが先頭へ出て、フィニッシュラインを通過した。

メイン集団はリーダーチームのドゥクーニンク・クイックステップが終始コントロール Photo: A.S.O./Alex Broadway

 問題なくジャージのキープを決めたアラフィリップはレース後、「可能な限り動きを少なくし、よいテンポで楽に1日を終えようと思っていた」と振り返った。翌日からはアルプスの山々での戦いとなるが、「準備はできている」と意欲を見せた。

 このステージを終えて、個人総合上位陣に大きな変動はなし。各賞にも変化はなく、ポイント賞のマイヨヴェールをペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)、山岳賞のマイヨアポワをティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)、新人賞のマイヨブランをエガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス)が保持。チーム総合にのみ動きがあり、逃げに3選手を送り込んだトレック・セガフレードが首位に浮上している。

マイヨジョーヌのキープに成功したジュリアン・アラフィリップ。アルプスの山岳ステージに向け意欲を見せる Photo: Yuzuru SUNADA

 プロトンはいよいよアルプスの本格山岳へと足を踏み入れる。25日に行われる第18ステージから上級山岳ステージ3連戦の初日。まず第1関門となるのが、1級山岳コル・ド・ヴァル(登坂距離9.3km、平均勾配7.5%)。一度下って、ツールでもおなじみの超級イゾアール峠(登坂距離14.1km、平均勾配7.3km)へ向かう。この上りを終える頃までには、メイン集団には精鋭だけが残っていることだろう。約20km下って、この日の最大の勝負どころとなるのは、超級山岳ガリビエ峠(登坂距離23km、平均勾配5.1%)。頂上を前に急勾配が待つほか、頂上にはボーナスポイント(1位通過から順に8秒、5秒、2秒を付与)を設定しており、この山で何らかの動きがあるはず。そして最後は19km下ってヴァロワールのフィニッシュへ。マイヨジョーヌを目指す総合上位陣がどんな動きをみせるのか、見どころ満載の1日だ。

第17ステージ結果
1 マッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット) 4時間21分36秒
2 カスパー・アスグリーン(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ) +37秒
3 グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム) +41秒
4 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)
5 ディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・メリダ)
6 ゴルカ・イサギレ(スペイン、アスタナ プロチーム)
7 ダニエル・オス(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ) +44秒
8 ピエールリュック・ペリション(フランス、コフィディス ソルシオンクレディ) +50秒
9 トムス・スクインシュ(ラトビア、トレック・セガフレード)
10 ヘスス・エラダ(スペイン、コフィディス ソルシオンクレディ) +55秒

個人総合(マイヨジョーヌ)
1 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) 69時間39分16秒
2 ゲラント・トーマス(イギリス、チーム イネオス) +1分35秒
3 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) +1分47秒
4 ティボー・ピノ(フランス、グルパマ・エフデジ) +1分50秒
5 エガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス) +2分2秒
6 エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) +2分14秒
7 ミケル・ランダ(スペイン、モビスター チーム) +4分54秒
8 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム) +5分0秒
9 リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト) +5分33秒
10 リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード) +6分30秒

ポイント賞(マイヨヴェール)
1 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 309 pts
2 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) 224 pts
3 ソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ) 203 pts

山岳賞(マイヨアポワ)
1 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) 64 pts
2 ティボー・ピノ(フランス、グルパマ・エフデジ) 50 pts
3 トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル) 38 pts

新人賞(マイヨブラン)
1 エガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス) 69時間41分18秒
2 ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマ・エフデジ) +13分31秒
3 エンリク・マス(スペイン、ドゥクーニンク・クイックステップ) +42分0秒

チーム総合
1 トレック・セガフレード 208時間59分41秒
2 モビスター チーム +8分13秒
3 UAE・チームエミレーツ +46分23秒

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