ツール・ド・フランス2019 第16ステージユアンがスプリント制して今大会2勝目 アラフィリップら総合上位陣は変動なし

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 ツール・ド・フランス2019第16ステージは現地時間7月23日に行われ、スプリンターによるステージ優勝争いをカレブ・ユアン(ベルギー、ロット・スーダル)が制した。第11ステージ以来となる今大会2勝目。総合上位陣では8位につけていたヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ プロチーム)が落車によりリタイアしたが、それ以外の大幅な変動はなし。ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)は問題なくマイヨジョーヌをキープしている。

ツール・ド・フランス2019第16ステージ。スプリンターが主役となった平坦ステージを制したのはカレブ・ユアン(中央)だった Photo: Yuzuru SUNADA

熱波に見舞われた第3週初日

 大会は第3週に突入。今回の終盤戦の舞台となるのはアルプス山脈。第2週最終日の第15ステージまでピレネー山脈で戦った選手たちは、レースを終えた脚で第16ステージが行われるニームへと移動した。

スタート地点でひときわ大きな歓声を受けたマイヨジョーヌのジュリアン・アラフィリップ。後ろに見えるのはニームの遺構・円形劇場 Photo: Yuzuru SUNADA

 アルプスでの最終決戦を前に、この日は平坦ステージがセッティングされた。ニームを発着とするコースは、全体的に見て大きな上下動がなく、カテゴリー山岳も中盤の1カ所のみ。それも4級山岳とあって、スプリンターでも十分に対応可能な上りだ。このステージを終えると、残す平坦ステージは最終日、第21ステージのパリ・シャンゼリゼのみとなる。スピードマンたちにとっては、数少ないチャンスを生かしたい。かたや、総合系ライダーたちにとっては、本格的なアルプス決戦を前に、試運転の1日に。前日は軽めのトレーニングやプレスカンファレンス、休養などで時間を費やした選手たちだが、このステージで体を「レースモード」に戻すことができそうだ。

キャラバン隊の通過に沿道が賑わう Photo: A.S.O./Thomas MAHEUX

 ただ、ツール一行が南フランスへ入ったところで熱波が襲来。この日は最高気温37℃、翌日以降も暑い日が続くとの予報。さらには、この地域特有の風「ミストラル」がレースに思わぬ変化をもたらす可能性もはらむ。いずれにせよ、走り終わるまで気を抜くことはできない。

 第3週の始まりにあたり、4賞はマイヨジョーヌがアラフィリップ、ポイント賞のマイヨヴェールはペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)、山岳賞のマイヨアポワはティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)、新人賞のマイヨブランはエガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス)がそれぞれ首位に立つ。また、大会終盤に入るとチーム総合を意識した動きも目立ち始めるが、ここまではモビスター チームがトップに位置している。

先頭5人を射程圏内にとらえて進んだメイン集団

 しばしのニュートラル走行ののちアクチュアルスタートが切られると、アレクシー・グジャール(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール)とステファヌ・ロセット(フランス、コフィディス ソルシオンクレディ)がファーストアタックに成功。さらにルカシュ・ヴィシニオウスキー(ポーランド、CCCチーム)、ポール・ウルスラン(フランス、トタル ディレクトエネルジー)、ラルスイティング・バク(デンマーク、ディメンションデータ)が続き、5人による逃げグループが形成される。

レース序盤から逃げ続けた5選手 Photo: Yuzuru SUNADA

 メイン集団は5人の先行を許しつつも、タイム差の拡大は最小限にとどめ、射程圏内にとらえながら進行。その差は1分台で推移する。

 落ち着いてレースが進んでいた最中、メイン集団では個人総合2位につけるゲラント・トーマス(イギリス、チーム イネオス)が右コーナーでバランスを崩し落車。大きなけがはなく、バイクを交換して再出発。アシスト陣が牽引し、集団へと復帰している。

 そんな流れの中、一時的にレースが活性化したのは、65km地点に設けられた中間スプリントポイント。先頭の5人は争うことなくがなかったが、メイン集団ではミケル・モルコフ(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ)のリードアウトを受けたエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)が真っ先に通過。全体の6位でこのポイントを押さえている。以降、モルコフ、ソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ)、サガンと続いた。

 それからも先頭グループとメイン集団とのタイム差は1分台で変わらず。フィニッシュまで残り50kmとなったあたりから横風が強くなり始めたのをきっかけに、メイン集団の前方には総合上位にエースを送り込んでいるチームが隊列を組んで上がっていくが、レース展開が大きく変わるところまでは至らない。結局、進路が変わったタイミングで再び落ち着きを取り戻し、先頭5人とのタイム差をコントロールしながら残り距離を着々と減らしていった。

世界遺産の水道橋、ポン・デュ・ガールを見ながら進むプロトン。第17ステージのスタート地点にもなる Photo: Yuzuru SUNADA

局面打開したユアンの早掛け

 メイン集団にアクシデントが起こったのは残り27kmでのこと。数人が絡む落車が発生し、これにフルサングが巻き込まれてしまった。すぐさまアシスト陣が集まり、再出発に向けて態勢を整えるが、肝心のフルサングが動けない。レース続行が不可能となり、フルサングはチームスタッフに支えられながら搬送車両へと乗り込んだ。

レース前半に落車したゲラント・トーマス(中央)だが、レース続行には支障はなさそうだ Photo: Yuzuru SUNADA

 そうしている間にも、集団は少しずつ先頭5人とのタイム差を縮めていく。残り20kmで45秒、残り10kmでは18秒まで迫った。かたや、先頭グループも協調体制を崩すことなく、先頭交代のローテーションを繰り返す。集団のスピードアップに合わせるかのように、5人もペースを上げて逃げ続ける意志を示す。残り7kmで一時は10秒を切ったその差は、残り5kmで再び10秒を超えるなど、予想以上の粘りを見せた。

 しかし、フィニッシュが近づくにつれ、集団の勢いが勝っていることが明白になる。そして残り2km、ついに集団が5人をキャッチ。同時にユンボ・ヴィスマのトレインが先頭へと上がり、カチューシャ・アルペシン、ロット・スーダルのリードアウトマンたちも続く。

 残り1kmのフラムルージュを過ぎると、先頭へ上がったのはロット・スーダル勢。ユンボ・ヴィスマトレインもしっかり前方を固め、この両チームが主導権を握る。さらに、残り600mを切ったところから上がってきたのはドゥクーニンク・クイックステップ。モルコフの牽引で先頭まで上がると、マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン)が最終のリードアウトに入る。

 そして残り150mから満を持してヴィヴィアーニを発射。勝ちパターンに持ち込んだかに思われたが、脇から伸びてきたのはユアン。最後は頭一つ抜け出すような格好となり、自身もフィニッシュライン通過と同時に勝利を確信した。

チームメートと勝利を喜ぶカレブ・ユアン(左) Photo: Yuzuru SUNADA

 最終局面へはヴィヴィアーニはもとより、2位となるディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)やサガンより後ろのポジションを強いられていたユアンだったが、思い切りのよい“早掛け”でライバルを上回ってみせた。レース後のコメントでは「実は、今日は調子が悪かった」と切り出し、「暑さに苦しめられていたが、妻や娘から得られたモチベーションがそれを上回った」と家族に感謝。スプリントについて聞かれると、「かなり後ろからになってしまった。それなのにこの結果、何が起こったのか本当に分からない」と興奮を隠さない。「ステージ優勝1つでさえ夢のようなのに、2勝してしまうなんて信じられないね」と言って笑顔を見せた。

危なげなくマイヨジョーヌを守ったジュリアン・アラフィリップ Photo: Yuzuru SUNADA

 個人総合では、フルサングのリタイアにより8位以下が繰り上がる形になったが、実質のマイヨジョーヌ争いには変動なし。もちろん、アラフィリップもしっかり走り切り、ジャージを堅守している。レースを振り返って「暑すぎた」と言いつつも、「最後の数kmはクラッシュに注意していた。コーナーでは安全に抜けることを意識していたし、エリア(ヴィヴィアーニ)は勝てなかったけど、全体的にはよい1日だった」と冷静に走ることができたよう。今後について聞かれると「明日は簡単なステージにはならない。しかし、その次のステージ(第18ステージ)から先にも視野を向けている」と述べ、アルプスでの本格山岳ステージへの意欲を示した。

 なお、各賞にも変わりはなく、サガンがマイヨヴェール、ウェレンスがマイヨアポワ、ベルナルがマイヨブランを翌日も着用する。マイヨジョーヌ争いにも加わるベルナルは、チーム状態について「第3週に何が起こるかを見ている」と話し、今後のステージへ気持ちを高めている。チーム総合はモビスター チーム、この日の敢闘賞はスタートアタックから積極的に魅せたグジャールに贈られている。

ポディウムでマイヨジョーヌに袖を通したジュリアン・アラフィリップ Photo: A.S.O./Alex BROADWAY

 翌24日は第17ステージがポン・デュ・ガールからギャップまでの200kmで行われる。この日からアルプスへと入っていくが、カテゴリー山岳は中盤の4級山岳と終盤の3級山岳の2カ所だけ。勝負のポイントはフィニッシュ前8.5kmに頂上がある得級コル・ド・ラ・サンティネル(登坂距離5.2km、平均勾配5.4%)。頂上からはフィニッシュまでの下りとなることから、この上りでアタックが決まれば逃げ切りのチャンスが膨らむ。メイン集団が主導権を握る展開となるのか、逃げグループの先行を容認するのかでも、レースの展開は変化しそうだ。

第16ステージ結果
1 カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) 3時間57分8秒
2 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) +0秒
3 ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)
4 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)
5 ニッコロ・ボニファツィオ(イタリア、トタル ディレクトエネルジー)
6 マイケル・マシューズ(オーストラリア、チーム サンウェブ)
7 マッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)
8 ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)
9 アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAE・チームエミレーツ)
10 アンドレア・パスクアロン(イタリア、ワンティ・ゴベール)

個人総合(マイヨジョーヌ)
1 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) 64時間57分30秒
2 ゲラント・トーマス(イギリス、チーム イネオス) +1分35秒
3 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) +1分47秒
4 ティボー・ピノ(フランス、グルパマ・エフデジ) +1分50秒
5 エガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス) +2分2秒
6 エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) +2分14秒
7 ミケル・ランダ(スペイン、モビスター チーム) +4分54秒
8 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム) +5分0秒
9 リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト) +5分33秒
10 リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード) +6分30秒

ポイント賞(マイヨヴェール)
1 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 309 pts
2 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) 224 pts
3 ソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ) 203 pts

山岳賞(マイヨアポワ)
1 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) 64 pts
2 ティボー・ピノ(フランス、グルパマ・エフデジ) 50 pts
3 トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル) 37 pts

新人賞(マイヨブラン)
1 エガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス) 64時間59分32秒
2 ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマ・エフデジ) +13分31秒
3 エンリク・マス(スペイン、ドゥクーニンク・クイックステップ) +42分0秒

チーム総合
1 モビスター チーム 195時間19分44秒
2 トレック・セガフレード +30分45秒
3 チーム イネオス +30分54秒

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