e-MTBクロスカントリーも初開催11度目優勝の山本幸平「勝つことが一番の目標だった」 MTB全日本選手権詳報

by 織田達 / Satoshi ODA
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 第32回全日本マウンテンバイク選手権大会が7月19〜21日、秋田県の田沢湖スキー場で開催され、クロスカントリー、ダウンヒルなど各競技、各年代のチャンピオンをかけてのレースが繰り広げられました。今年はe-MTBによるクロスカントリー競技も初開催。盛り上がりの兆しをみせる大会の様子を、Kasukabe Vision FILMzの織田達さんによるリポートでお届けします。

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エリート男子のトップ3。左から2位の平野星矢(チーム ブリヂストンサイクリング)、優勝の山本幸平(ドリームシーカーMTBレーシングチーム)、3位の前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム) Photo: Satoshi ODA

王者・山本幸平が今年国内初参戦

 大会最終日の21日(日曜日)はクロスカントリーのレースが行われた。田沢湖スキー場で全日本選手権が行われるのは2008年以来、5回目。2008年に山本幸平がエリートクラスで初優勝した会場でもある。

 男子エリート、注目は今シーズン国内初レースとなる山本幸平(ドリームシーカーMTBレーシングチーム)。国内CJシリーズ戦で連勝中の前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)、国内のCJシリーズをスキップして海外レース転戦してきた沢田時と平野星矢(チーム ブリヂストンサイクリング)だ。

エリート男子スタート Photo: Satoshi ODA

 特に山本はポーランドでのステージレース後ワールドカップを2戦スキップして帰国し、長野県松本市で調整をして万全の体制でこのレースに臨んだ。また午前中に行われたマスターズレースで実兄の山本和弘が復活レースで優勝しており、いい刺激にもなっていたはずだ。

先頭パックをリードする山本幸平(ドリームシーカーMTBレーシングチーム)と前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム) Photo: Satoshi ODA

 前日に比べ蒸し暑く、日差しも強く、まさに灼熱とも言える午後2時30分に4.4kmx6Lapsのレースがスタートした。山本、前田、平野、中原義貴(WIAWISレーシングチーム)が好スタートを切り、スタートフィニッシュエリアからシングルセクションには前田が先頭で突入した。

 その後、前田、山本、中原、平野の4人がパックとなりレースが進む。しかし2周目には中原がパックからドロップ。3周目には前田が遅れる。前田と中原のセカンドパックに沢田が合流し前を行く山本と平野の先頭を追う形となった。

前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)がパックから脱落した先頭パックを引く平野星矢(チーム ブリヂストンサイクリング) Photo: Satoshi ODA

五輪に向けてひた走る山本幸平

 しかし3周目、平野がドロップオフセクションでペダルが外れ、サドルにみぞおちを打ち付けペースダウン。このタイミングで山本が単独でトップとなった。平野は呼吸が苦しい状態のまま走り続け、後方から中原がドロップした前田と沢田の3位パックとの差が一瞬詰まり、先頭の山本との差は広がった。

平野星矢(チーム ブリヂストンサイクリング)のミスにより単独走行となった山本幸平(ドリームシーカーMTBレーシングチーム)は最終周にスピードアップして勝利を確実にした Photo: Satoshi ODA

 残り2周となり平野が再び踏み始め山本を追うと、後ろとの差は広がり始めて山本の差が縮まった。その頃、沢田は前田から遅れ、5位のポジションには19日のEマウンテンバイククロスカントリーレース、20日のクロスカントリーエリミネーターを走った竹之内悠(Toyo Frame)が上がるが、1位の山本から5位の竹之内までバラバラの状態となった。

 平野が遅れた3周目から5周目までは冷静にペースで走り続けたという山本だが、最終周に踏み直して平野の追撃を振り切った。山本は2008年に選手権連覇の伝説が始まった田沢湖で、5年連続となる通算11勝目の全日本タイトルを獲得。2位には平野、3位は前田となった。

応援団とフィニッシュ前にハイファイブをする山本幸平(ドリームシーカーMTBレーシングチーム) Photo: Satoshi ODA
兄の山本カズ(左)と勝利を喜ぶ山本幸平(ドリームシーカーMTBレーシングチーム) Photo: Satoshi ODA

 レースを振り返って山本は「今日は勝つことが一番の目標だったので、レース序盤は誰が前に来ようが、焦らず後ろについて何も心配いりませんでした。(平野)星矢がミスして勝手に差がつき離れましたが、星矢がまたペースを上げて追ってきたので、最後はしっかり踏んで引き離して勝利を確実なものにしてフィニッシュしました」とコメント。山本は来週レバノンで行われるアジア選を皮切りに、10月の東京オリンピックテストイベントまで、ほぼ毎週のようにレースが待っている。今後も世界を舞台に熱い走りに期待しよう。

 また自分のミスで勝負から遠のいてしまい2位となった平野は、「脚は全然大丈夫だったので、最後まで勝負がもつれたかもしれません。残念ですが、これもマウンテンバイクレースです」とレース後語ってくれた。

エリートの6分後にスタートした男子U23クラスをリードする平林安里(スペシャライズドレーシング ジャパン)エリート総合でも10番手まで順位を上げた Photo: Satoshi ODA
男子U23表彰式 Photo: Satoshi ODA

 男子エリートから6分後にスタートしたU23男子では平林安里(スペシャライズドレーシング ジャパン)がエリートでも10番目のポジションでフィニッシュし、U23のタイトル4連覇した。2位には北林力(ドリームシーカーMTBレーシングチーム)、最終ラップに村上功太郎(松山大学)を交わした竹内遼(フカヤレーシング)が3位に入った。

クロスカントリー 男子エリート
1位:山本幸平(ドリームシーカーMTBレーシングチーム)
2位:平野星矢(チーム ブリヂストンサイクリング)
3位:前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)

クロスカントリー 男子U23
1位:平林安里(スペシャライズドレーシング ジャパン)
2位:北林力(ドリームシーカーMTBレーシングチーム)
3位:竹内 遼(フカヤレーシング)

女子は今井美穂が連覇

 女子エリートはU23、ジュニア、ユース、マスターズが同時にスタートして、まさに誰が一番速い女性マウンテンバイカーなのかを決めるレースとなった。

序盤にレース全体をリードする場面も見られた、ジュニア女子の小林あか里(MTBクラブ安曇野) Photo: Satoshi ODA

 連覇を狙う今井美穂(CO2bicycle)がホールショットを決めるとそれに女王返り咲きを目指す末政実緒(ヨツバサイクル)、U23の佐藤寿美(drawer THE RACING)、ユースの中島瞳(Limited Team 846/KURE/TRIGON)らが続いた。ファーストラップのフィードゾーンに現れた時点でジュニアクラスただ1人の参加となった小林あか里(MTBクラブ安曇野)がトップ、それに松本璃奈(チームスコット ジャパン)が続き、今井。少し間があいてユースの渡部春雅(駒澤大学高等学校)の各クラスのトップが続いた。

 レースが動いたのは2周目。今井が小林、松本を順に捉えトップに立つ。先週イタリアでワールドカップを走って来た松本はペースが上がらず今井との差は広がった。

ジュニア、U23に一時期先行されるが、冷静に対処した今井美穂(CO2bicycle) Photo: Satoshi ODA
時差ボケが原因なのか、本来のパフォーマンスを発揮できなかった女子U23を走る松本璃奈(チームスコット ジャパン) Photo: Satoshi ODA

 ジュニア、ユース、マスターズは3周のレースのため4周回のレースであるエリート、U23より一足先にフィニッシュすると、エリート、U23のそれぞれのクラスでの順位差がはっきりとし、今井の勝利は揺るがないほどの差を確認できた。

 今井は全体の2位を走る松本を引き離して全日本連覇を達成。2位には末政、3位には小林可奈子(MTBクラブ安曇野)となった。ゴール後、時差の影響もあってか思っていた以上に体が動かず悔し涙を流した松本は、それでもU23カテゴリー1年目での優勝となった。

シングルトラックを軽快にこなす今井美穂(CO2bicycle) Photo: Satoshi ODA
両手をあげて自身の連覇を祝福する今井美穂(CO2bicycle) Photo: Satoshi ODA
エリート女子のトップ3 Photo: Satoshi ODA

 先にゴールしたジュニアは、小林あか里が優勝し連覇。ユースは全体の4位のポジションでレースを展開した渡部が制し、渡部もこのカテゴリーで連覇を達成。マスターズでは綾野桂子(cycleclub3UP)が優勝した。

 エリート連覇を成し遂げた今井は、「スイスのWCCで合宿してきた2人(小林あか里と松本璃奈)がどのくらい強いか不安でしたが、ただ誰よりも早くフィニッシュしたかったので、行けるところで行きました」とレース後語ってくれた。

女子U23表彰式 Photo: Satoshi ODA
レース全体の4番手でレースを展開したユースの渡部春雅(駒澤大学高等学校) Photo: Satoshi ODA

クロスカントリー 女子エリート
1位:今井美穂(CO2bicycle)
2位:末政実緒(ヨツバサイクル)
3位:小林可奈子(MTBクラブ安曇野)

クロスカントリー 女子U23
1位:松本璃奈(チームスコット ジャパン)
2位:矢吹優夏(B・B・Q)
3位:佐藤寿美(drawer THE RACING)

クロスカントリー 女子ジュニア
1位:小林あか里(MTBクラブ安曇野)

復帰の山本カズがマスターズ優勝

 午前中に行われたマスターズクラス。30代、40代、50代、60代の世代が男子ジュニア、ユースの6分後にスタートした。

現役時代との違いはヒゲくらい?山本和弘(ドリームシーカーMTBレーシングチーム JP) Photo: Satoshi ODA

 このレースで山本和弘(ドリームシーカーMTBレーシングチーム JP)が復帰。口と顎にヒゲを蓄えた他は現役時代と変わらぬシャープな体型で、その走りはエリートクラスでも上位に食い込めるであろう。2周目中盤まで食らいつく40代の斎藤朋寛(RIDELIFE GIANT)を振り切り見事復活優勝。最終周斎藤は前半のオーバーペースがたたり品川真寛(MIYATA-MERIDA BIKING TEAM)に交わされた。年代を関係なく山本、品川、斎藤の順でフィニッシュした。

クロスカントリー競技のチャンピオンたち Photo: Satoshi ODA

 男子ジュニアは松本一成(チームスコット ジャパン)が終始トップを走り、ジュニア1年目でタイトルを奪取した。姉のU23優勝の松本璃奈とともに松本家に2枚のチャンピオンジャージをもたらした。

 男子ユースは村上裕二郎(松山工業高校)が優勝し、シクロクロスと合わせてユースタイトル2冠を達成した。

クロスカントリー 男子ジュニア
1位:松本一成(チームスコット ジャパン)
2位:山口創平(ProRide)
3位:野澤蓮(TEAM BG8)

ダウンヒル男子は清水一輝が7年ぶり優勝

 大会2日目の20日(土曜日)はダウンヒルと、クロスカントリーエリミネーターのレースが行われた。

 ダウンヒル男子エリートでは清水一輝(DELIGHTED JAPAN)が3連覇を狙う井本はじめ(SRAM/Santa Cruz)が出したタイムを0.285秒上回り、7年ぶり3度目の優勝を果たした。

ダウンヒル エリート男子、7年ぶり3度目の優勝の清水一輝(DELIGHTED JAPAN) Photo: Satoshi ODA
ダウンヒル エリート女子、初優勝の岩崎美智恵(TRIPCYCLE GLOBAL RACING) Photo: Satoshi ODA

 女子エリートは同会場で全日本選手権が行われた2008年以来に田沢湖でレースをしたという岩崎美智恵(TRIPCYCLE GLOBAL RACING)が初優勝を飾った。

ダウンヒル エリート男子表彰式 Photo: Satoshi ODA
ダウンヒル エリート女子 Photo: Satoshi ODA
2日目に行われたのダウンヒル競技で各カテゴリーの優勝者たち Photo: Satoshi ODA

 午後から行われたクロスカントリーエリミネーター。男子は連覇を狙う澤木紀雄(acu-power Racing Team)が決勝でホールショットを取ったものの、その直後に痛恨の転倒をしてしまいタイトルを逃した。優勝したのは予選タイムトライアルでトップタイムを叩き出した竹之内悠(Toyo Frame)だった。

 女子は激しい先頭争いを制した川崎路子(PAXPROJECT)が優勝した。

クロスカントリーエリミネーター男子、連覇を狙っていた澤木紀雄(acu-power Racing Team)ホールショット後痛恨の転倒 Photo: Satoshi ODA
クロスカントリーエリミネーター男子の上位3選手 Photo: Satoshi ODA
クロスカントリーエリミネーター女子、優勝の川崎路子(PAXPROJECT)を娘さんが出迎え Photo: Satoshi ODA
クロスカントリーエリミネーター女子の上位3選手 Photo: Satoshi ODA

ダウンヒル 男子エリート
1位:清水一輝(DELIGHTED JAPAN)
2位:井本はじめ(SRAM/Santa Cruz)
3位:泉野龍雅(自転車道)

ダウンヒル 女子エリート
1位:岩崎美智恵(TRIPCYCLE GLOBAL RACING)
2位:富田敬子(Acciarpone racing)
3位:中川弘佳(Lovespo.com)

クロスカントリーエリミネーター男子
1位:竹之内悠(Toyo Frame)
2位:佐藤誠示(SAGE’S STYLE)
3位:松本佑太(フカヤレーシング)

クロスカントリーエリミネーター女子
1位:川崎路子(PAXPROJECT)
2位:広瀬由記(Cyclone)
3位:鈴木美香子(サイクラリーKIRIN)

初開催のe-MTBクロカンは竹之内悠が王者に

 大会1日目の19日(金曜日)には国内初開催となるEマウンテンバイククロスカントリーレースが土砂降りの中で行われ、竹之内悠(Toyo Frame)が優勝。初のe-BIKEによるレースは「常に踏まされている感覚があり、メッチャしんどかったです」との感想だった。

e-MTBクロスカントリーレースの上位3人。左から2位の斎藤朋寛(RIDELIFE GIANT)、優勝の竹之内悠(Toyo Frame)、3位の山田将輝(MIYATA-MERIDA BIKING TEAM) Photo: Satoshi ODA
e-MTBクロスカントリーレースを制した竹之内悠(Toyo Frame)のバイク Photo: Satoshi ODA
e-MTBクロスカントリーレース2位となった斎藤朋寛(RIDELIFE GIANT)のバイク。蛍光オレンジが眩しい Photo: Satoshi ODA
e-MTBクロスカントリーレース 3位となった山田将輝(MIYATA-MERIDA BIKING TEAM)のバイク Photo: Satoshi ODA

E-マウンテンバイククロスカントリーレース男子
1位:竹之内悠(Toyo Frame)
2位:斎藤朋寛(RIDELIFE GIANT)
3位:山田将輝(MIYATA-MERIDA BIKING TEAM)

E-マウンテンバイククロスカントリーレース女子
1位:広瀬由記(Cyclone)
2位:山崎理恵(バイシクルクラブ)

◇      ◇

 国内マウンテンバイクレースのCoupe du Japon(CJシリーズ)は休みなく続き、次戦は8月10、11日に白馬国際クロスカントリーが行われる。またダウンヒル競技は9月から、ウイングヒルズ白鳥で再開される。それと同時に代表選手は7月25日から、レバノンでアジア選手権に参加、8月31日からはカナダでの世界選手権大会が控えており、マウンテンバイクの熱い夏はまだまだこれからだ。


※記事公開時にタイトルを「11連覇の山本幸平」としていましたが、11度目の優勝の誤りでしたので訂正いたします。

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