ツール・ド・フランス2019 第15ステージサイモン・イェーツが逃げ切りで今大会2勝目 ピノが猛攻で総合上位陣に一気に迫る

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
  • 一覧

 ツール・ド・フランス2019は現地時間7月21日、第2週の最後となる第15ステージを行い、ピレネーの山々をめぐった一日は、レース前半に形成された大人数の逃げグループでレースを進めたサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)が、最後は独走に持ち込んで今大会2勝目を挙げた。個人総合争いでも大きな動きがあり、ティボー・ピノ(フランス、グルパマ・エフデジ)が猛攻。総合上位陣では最上位となる2位となり、個人総合でも4位浮上。マイヨジョーヌのジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)はジャージこそ守ったものの、ライバルから遅れ、リードを減らす結果となった。

ツール・ド・フランス2019第15ステージ、サイモン・イェーツが独走で今大会2勝目を挙げた Photo: Yuzuru SUNADA

ピレネーの4つの山をめぐる一日

 名峰トゥールマレーをの頂を目指した前日の第14ステージでは、フランス勢が大活躍。ステージ優勝をピノが飾ったほか、エリー・ジェスベール(アルケア・サムシック)やロメン・シカール(トタル ディレクトエネルジー)、ワレン・バルギル(アルケア・サムシック)らのアタックも見ごたえ十分のものとなった。

 そして何より、アラフィリップのマイヨジョーヌキープが最大のトピックともなった。ステージ優勝こそピノに譲ったが2位でフィニッシュと、個人総合争いのライバルに対して先着しリードを拡大。地元ファンの盛り上がりが日増しに高まっている。

第15ステージのスタート。前日優勝のティボー・ピノ(右端)はエガン・ベルナルやジュリアン・アラフィリップとセルフィーに収まる Photo: A.S.O/Alex Broadway

 この日行う第15ステージは、リムーからフォア プラット・ダルビまでの185km。レース前半に2級コル・ド・モンセギュール(登坂距離6.8km、平均勾配6%)を越え、中間スプリントポイントを通過すると、その後は1級山岳が立て続けに3つ立ちはだかる。ポール・ド・レール(登坂距離11.4km、平均勾配7%)を越えたのち、ダウンヒル区間を経て向かうミュール・ド・ペゲール(登坂距離9.3km、平均勾配7.9%)にはボーナスポイント(1位から8秒、5秒、2秒付与)が用意される。頂上手前約3kmから10%を超える急勾配となり、最大では18%に。

 そして、頂上にフィニッシュラインが敷かれる1級山岳フォア プラット・ダルビは、登坂距離11.8km、平均勾配6.9%。フィニッシュに近づくにつれて勾配が緩くなっていくのが特徴で、フィニッシュ前は3%ほど。この山では急坂を利用した攻撃ができない分、重要なのはライバルとの駆け引きをいかにモノにできるか。展開次第では、ミュール・ド・ペゲールで得られるボーナスタイムを利用して、レースを活性化させることも一手となりそうだ。

 着々とリードを広げるアラフィリップに対して、追う総合勢がどう攻撃に出るのか、注目の1日となった。

最大36人の先頭グループがレースをリード

 レースはアクチュアルスタートから激しい出入りの連続となる。次々とアタックが発生するもプロトンの容認は得られず、ハイスピードで序盤が進行していく。ポイント賞首位のマイヨヴェールを着るペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)やロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール)らもアタックに加わったが、なかなか逃げが決まらない。

レース序盤のメイン集団 Photo: A.S.O./Alex BROADWAY

 こうした流れが落ち着いたのは、スタートから50km過ぎで上り始める2級山岳コル・ド・モンセギュールに入ってからのこと。サイモン・イェーツやバルデらを含む28人の先頭グループが形成される。頂上ではマイケル・ウッズ(カナダ、EFエデュケーションファースト)が1番に通過し、下りからしばしの平坦区間へ。この間にメイン集団からさらに8人が抜け出し追走グループが形成されており、平坦路に入ったところで先頭まで合流。この日最大の36人が先行することになった。

 しかし、この大人数の先頭グループは長くは維持せず、スタートから100kmを過ぎでのニルス・ポリッツ(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)の抜け出しを境に活性化。まず14人が先行を開始し、2つ目のカテゴリー山岳となる1級ポール・ド・レールで人数を増やして21人とした。

アシスト陣に守られながらレースを進めるジュリアン・アラフィリップ Photo: Yuzuru SUNADA

 これらの間、メイン集団ではリーダーチームのドゥクーニンク・クイックステップが主にコントロール。タイム差が開いていくのは許容しつつ、淡々と残り距離を減らしていく。ポール・ド・レールの頂上へは、トップ通過したバルデから5分15秒差だった。

 この日3つ目の山であるミュール・ド・ベゲールで、先頭グループ、メイン集団ともに動きが起こった。まず先頭グループでは、頂上まで5.5kmのところでサイモン・ゲシュケ(ドイツ、CCCチーム)が飛び出す。しばらく独走状態となったゲシュケだったが、頂上を目前にサイモン・イェーツが追走を開始。ゲシュケまでの合流にはさほど時間がかからなかった。そのまま2人で頂上を通過し、下りへと入っていく。

 メイン集団では、勾配の厳しくなるところを利用して個人総合11位のミケル・ランダ(スペイン、モビスター チーム)がアタック。同8位のヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ プロチーム)も続いたが、これを振り切ってランダは前方めがけてペースを上げる。集団はアシストが手薄になっているチームが多く、最も人数をそろえていたユンボ・ヴィスマがペーシング。先を急ぐランダへは、当初先頭グループに入っていながら少しずつポジションを下げていたアンドレイ・アマドール(コスタリカ)とマルク・ソレル(スペイン)が牽引役に。「前待ち」の状況からエースの引き上げを目指した。

ピノの猛攻実る サイモン・イェーツは2度目の逃げ切り

 ミュール・ド・ベゲールからの下りでも快調に飛ばした先頭の2人。これを追う第2グループではバルデやナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)らが含まれていたが、協調体制がとれず少しずつ先頭との差は広がっていく。下り終える頃にはさらに後ろから追っていた6人が追いつき、10選手による第2グループに。

 その後方では、ランダがメイン集団に対して約1分20秒のリードを確保。さらにその差を広げるべく攻め続ける。最後の上りである1級山岳プラット・ダルビに入り、残り10kmになろうかというところでアシスト陣が任務終了。1人になったランダは第2グループへ追いつくと、そのままパス。チームメートのキンタナ、バルデらはランダのペースにはついていけず、第2グループは崩壊した。

アタックを決め独走に持ち込んだサイモン・イェーツ Photo: Yuzuru SUNADA

 タイミングを同じくして、先頭ではサイモン・イェーツがアタック。残り距離は9kmを切ったところで、フィニッシュを目指して独走態勢に持ち込んだ。

 この頃には総合上位陣がおおよそを占めるようになっていたメイン集団。残り10kmからは、前日好アシストのダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマ・エフデジ)が牽引を開始。この引きが終わったのをきっかけに、ピノがアタック。ここから猛攻が始まった。

ダヴィ・ゴデュがメイン集団をペースアップ Photo: Yuzuru SUNADA

 ピノは、先頭グループに合流以降前方でレースを進めていたセバスティアン・ライヒェンバッハ(スイス)に追いつくと、アシストを受けながらスピードアップ。これをチェックしたのはアラフィリップ、個人総合4位につけるエガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス)、同5位のエマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)の3人。同2位のゲラント・トーマス(イギリス、チーム イネオス)、同3位のステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)は続かず、一定ペースで上り続ける。

 さらにピノは、ライヒェンバッハの引きが終わると同時に再びアタック。アラフィリップら3人が続くと見るや、アタックを連発。これでまず遅れ始めたのはアラフィリップだった。

繰り返しの攻撃を成功させたティボー・ピノ Photo: Yuzuru SUNADA

 ピノの攻撃は止まらない。次々と仕掛けていくとブッフマン、ベルナルの順に振り切っることに成功。残り4kmで独走となると、単独2位を走るランダも視界に捉える。この動きから後れを取ったアラフィリップへは、トーマスやクライスヴァイクらが合流。個人総合トップ3位が同集団で前を追うことになった。

 勢いが止まらないピノは、残り2kmでついにランダに追いつくことに成功。ここからはピノの前方固定でフィニッシュを目指す。その後ろではペースを保ったブッフマンがベルナルに追いついた。そしてメイン集団では、ついにトーマスがアタック。クライスヴァイク、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)、リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード)は対応したものの、アラフィリップは合わせられず徐々に後退していった。

今大会2勝目を独走で飾ったサイモン・イェーツ Photo: Yuzuru SUNADA

 激しい動きとなった総合上位陣の争いとはよそに、十分なリードを得ていたサイモン・イェーツは快調に終盤を走破。後続に最後までそのうしろ姿を見せることなく、フィニッシュへ。今大会2勝目のステージ優勝を決めてみせた。

 この33秒後、ピノとランダがフィニッシュへとやってきた。両者は争うことなく、ピノが2位、ランダが3位を確保。18秒後にブッフマンとベルナルが、さらに31秒後にトーマスとクライスヴァイクらがフィニッシュ。アラフィリップはトーマスやクライスヴァイクから27秒遅れてレースを完了させた。

個人総合上位陣から遅れてフィニッシュしたジュリアン・アラフィリップ Photo: Yuzuru SUNADA

個人総合上位陣に大差なく第3週へ

 第12ステージに続く今大会2勝目を挙げたサイモン・イェーツ。先日の勝利では3人による争いを制したものだったが、今回は“本職”でもある上りで独走に持ち込んでの逃げ切りを決めた。双子の兄弟であるアダム・イェーツが前日のステージで遅れて、総合争いから脱落。チームとして新たな目標を設定する中での快勝だった。

 レース後のインタビューでは、「2勝目を挙げられて誇りに思っている。1勝目とは違う喜びだ」と笑顔。2つの勝利に満足しているとし、今後のステージでは「チームのサポートに力を注ぎたい」と語った。

 そして、大きな動きが起こった個人総合争い。連日の猛攻が実ったピノは、これで同4位に浮上。アラフィリップから1分16秒取り戻すことに成功し、さらにはステージ2位のボーナスタイム6秒も獲得。総合タイム差1分50秒とした。ところどころで雨が降るようなレースコンディションを味方にしたとし、「戦術通りのレースができ満足している」と述べた。

走り終えて鉄柵へともたれかかるジュリアン・アラフィリップ Photo: Yuzuru SUNADA

 前日のステージ2位とは逆に、この日はライバルから遅れてのフィニッシュとなったアラフィリップ。個人総合首位はキープしたが、本格山岳で苦しむ姿を露呈することになった。レースを終えて、「厳しい1日になることは分かっていた。多少タイムを失うことも覚悟していた」と話した。そんな中でも、マイヨジョーヌを守ったことはよかったといい、「もう少し夢を見続けられる」と前向きなコメントを残した。

個人総合2位と3位を保ったゲラント・トーマス(中央)、ステフェン・クライスヴァイク(右) Photo: Yuzuru SUNADA

 アラフィリップとの総合タイム差を取り戻したトーマスは、勝負どころでの動きに合わせられなかったと振り返ったが、苦戦を強いられた前日と比較し「多少は脚の反応はよくなってきた」とコメント。個人総合3位に続くクライスヴァイクも「ピノとともに行くことはできなかった」としながら、「走りそのものは悪くなかった。(ピノからの)遅れを最小限にとどめられるよう努力した」とレースを振り返った。

 このステージを終えて、アラフィリップの個人総合首位は変わらず、トーマスが1分35秒差の2位、その12秒差の3位でクライスヴァイクが続く。2ステージ続けて活躍のピノは、クライスヴァイクから3秒差、アラフィリップからは1分50秒差の4位とする。ベルナル、ブッフマンも僅差としており、マイヨジョーヌ争いはこの先のステージにも続いていく。

 なお、ポイント賞のマイヨヴェールはサガン、山岳賞のマイヨアポワはティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)、新人賞のマイヨブランはベルナルが保持。チーム総合ではモビスター チームがトップに立っている。

マイヨジョーヌのジュリアン・アラフィリップ。リードを減らしたものの、首位のまま大会第3週を迎える Photo: A.S.O./Alex BROADWAY

 これで今大会の第2週が終了。フランス南東部のニームへ移動して、2回目の休息日を迎える。第3週はいよいよ最終決戦の地・アルプス山脈へ。手始めとなる第16ステージはニームを発着する177kmの平坦ステージ。セオリー通りであれば、主役はスプリンター。総合系ライダーたちは、アルプス本番に向けてまずは脚慣らしの1日となるはずだ。

第15ステージ結果
1 サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) 4時間47分4秒
2 ティボー・ピノ(フランス、グルパマ・エフデジ) +33秒
3 ミケル・ランダ(スペイン、モビスター チーム)
4 エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) +51秒
5 エガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス)
6 レナード・ケムナ(ドイツ、チーム サンウェブ) +1分3秒
7 ゲラント・トーマス(イギリス、チーム イネオス) +1分22秒
8 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)
9 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)
10 リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード) +1分30秒

個人総合(マイヨジョーヌ)
1 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) 61時間0分22秒
2 ゲラント・トーマス(イギリス、チーム イネオス) +1分35秒
3 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) +1分47秒
4 ティボー・ピノ(フランス、グルパマ・エフデジ) +1分50秒
5 エガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス) +2分2秒
6 エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) +2分14秒
7 ミケル・ランダ(スペイン、モビスター チーム) +4分54秒
8 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム) +5分0秒
9 ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ プロチーム) +5分27秒
10 リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト) +5分33秒

ポイント賞(マイヨヴェール)
1 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 284 pts
2 ソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ) 191 pts
3 マイケル・マシューズ(オーストラリア、チーム サンウェブ) 187 pts

山岳賞(マイヨアポワ)
1 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) 64 pts
2 ティボー・ピノ(フランス、グルパマ・エフデジ) 50 pts
3 トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル) 37 pts

新人賞(マイヨブラン)
1 エガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス) 61時間2分24秒
2 ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマ・エフデジ) +12分29秒
3 エンリク・マス(スペイン、ドゥクーニンク・クイックステップ) +33分16秒

チーム総合
1 モビスター チーム 183時間28分20秒
2 トレック・セガフレード +30分45秒
3 チーム イネオス +30分54秒

この記事のコメント

利用規約順守の上ご投稿ください。

関連記事

この記事のタグ

UCIワールドツアー ツール・ド・フランス2019 ツール2019・レース詳報 ロードレース

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

e-BIKE最新特集

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載