ツール・ド・フランス2019 第13ステージマイヨジョーヌのアラフィリップが個人TTでも勝利 自らの総合リードを広げる激走

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 ツール・ド・フランス2019は現地時間7月19日、第13ステージが行われ、今大会唯一となる個人タイムトライアルステージを、個人総合首位のマイヨジョーヌを着るジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)が快走し、27.2kmを35分0秒で走破してステージ優勝した。第3ステージに続く今大会2勝目を挙げる走りで、文句なしのマイヨジョーヌを防衛。ステージ2位で、個人総合でも2位につけるゲラント・トーマス(イギリス、チーム イネオス)とは1分26秒差とした。

ツール・ド・フランス2019第13ステージ。今大会唯一の個人タイムトライアルステージを制したのは、マイヨジョーヌを着用するジュリアン・アラフィリップだった Photo: Yuzuru SUNADA

変化に富んだポーのTTコース

 ステージレースにおいて、個人タイムトライアルは総合成績を狙ううえで勝負を分けるポイントとなることが多いが、今大会は山岳比重が高いと言われ、実際に個人タイムトライアルステージはこの第13ステージのみ。レース距離が27.2kmとあり、ここでの結果が今後のステージにどのようにつながっていくかは興味深いところだ。

マイヨジョーヌ誕生100周年の記念イベントが会場で行われた。ベルナール・イノー氏(左端)、エディ・メルクス氏(左から2人目)、アルベルト・コンタドール氏(右から3人目)、グレッグ・レモン氏(右から2人目)らレジェンドが多数出席した Photo: A.S.O./Olivier CHABE

 コースは、ポーの市街地を抜けて南進。その後折り返すようにしてポーへと戻ってくる。前半から中盤にかけてアップダウンがあり、その一方で後半は平坦基調。このステージ最大の難所はフィニッシュ前1kmを切ってから現れる勾配17%の急坂。いかにしてペースを配分していくかが大きなカギとなりそうだ。

 レースは、個人総合の下位から1人ずつスタート。現地時間午後2時に第1走者であるヨアン・オフルド(フランス、ワンティ・ゴベール)がスタートし、1分おきに次々と選手が出走。個人総合35位から上位は2分おきのスタートへと変わり、首位のマイヨジョーヌを着るアラフィリップは現地時間午後5時19分にスタートする。

デヘントが好走 長くトップの座を守る

 序盤出走の選手たちの中で、トップに立ったのは6番出走のカスパー・アスグリーン(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ)。35分52秒を記録し、当面の基準タイムとなった。この後、アスグリーンのタイムに肉薄する選手が現れたものの、フィニッシュで上回ることはできず、しばしトップ君臨した。

 この流れに変化が見られ始めたのは、91番出走のワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)のスタートから。ベルギーチャンピオンジャージを着用し、このステージの優勝候補にも挙げられていたファンアールトは、その期待に違わず中間計測でトップタイムをマークする。フィニッシュタイムが見ものとなっていたが、レース後半の右コーナーで落車。コース内側の鉄柵に上半身をひっかけてしまい、強く地面に叩きつけられてしまった。この激しいクラッシュにより、ファンアールトはリタイア。今大会大活躍中の1人がツールを去ることとなった。

暫定トップタイムをマークし長くホットシートを温めたトーマス・デヘント Photo: A.S.O./Pauline BALLET

 こうした混乱の中、トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)がタイムを伸ばしてきた。7.7km地点に設置された第1計測でトップタイムをマークすると、15.5km地点に置かれた第2計測でも16秒更新。その後も勢いは衰えず、フィニッシュでは35分36秒を記録。アスグリーンのタイムを16秒上回り、暫定1位についた。

 そして、好走のデヘントは長くホットシートを温めることとなる。

有言実行の個人TT勝利を決めたアラフィリップ

 後半出走の中にデヘントのタイムを上回る選手が現れず、残すところは個人総合上位陣へ。

個人総合上位陣で好タイムマークの口火を切ったリゴベルト・ウラン Photo: Yuzuru SUNADA

 その中でまず、個人総合12位につけるリゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト)がトップをうかがう。第1計測を3秒遅れで切り抜けると、第2計測、21.9km地点に設置された第3計測と、いずれも1秒差。終盤にかけてさらに追い込んで、フィニッシュ前の上りも力強いペダリング。猛然とフィニッシュへ飛び込んだが、トップタイムとは0秒28差。わずかな差でトップを逃す。

 以降、トップまでは届かずも上位タイムでまとめる選手が多くなってくる。個人総合10位のティボー・ピノ(フランス、グルパマ・エフデジ)は13秒差、同6位のエンリク・マス(スペイン、ドゥクーニンク・クイックステップ)も22秒差とまずまず。他選手の結果次第で、順位をジャンプアップさせる可能性も広がってくる。

ステージ6位で終えたステフェン・クライスヴァイク。個人総合では3位に浮上した Photo: Yuzuru SUNADA

 さらには、同4位のステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)が第1、第2両計測ポイントでトップタイムをマーク。後半こそペースが落ちたが、フィニッシュでは9秒の遅れにとどめ、総合上位戦線での生き残りを確定的なものとする。

 そして、注目のトップ3。まずコースへと飛び出したのは、エガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス)。直前の選手たちと同様に上位を狙いたいところだが、前半からいまひとつスピードに乗り切れない。第1計測こそ12秒差だったが、その後はデヘントとのタイム差の広がりが顕著なものとなっていく。盛り返すことができないまま残り距離を減らしていき、フィニッシュでは1分遅れ。個人総合上位陣の中ではブレーキ気味の結果になってしまった。

ステージ2位のゲラント・トーマス。フィニッシュでは暫定トップタイムをマークしたが、直後に逆転された Photo: Yuzuru SUNADA

 その一方で、チームメートのトーマスは個人タイムトライアルを得意とするだけあって、スタート直後から快調に飛ばした。第1計測こそ1秒遅れだったが、そこからはギヤを上げていき、第2計測ではトップタイムを13秒更新。第3計測では21秒と大きく上回り、フィニッシュタイムに期待が膨らむ。そしてフィニッシュへと飛び込んだそのタイムは35分14秒。トップのタイムを22秒更新し、長くホットシートに座り続けたデヘントからその座を受け継ぐことになる。この時点で、総合争いのライバルに対してさらなるアドバンテージを得ることになった。

沿道からの大声援を受けながらフィニッシュへ向かうジュリアン・アラフィリップ Photo: Yuzuru SUNADA

 だが、この日誰よりも強さを見せたのはデヘントでもなく、トーマスでもなく、アラフィリップだった。スタートから飛ばしに飛ばすと、第1計測はトップタイの記録。そこからは下りを攻め、さらには距離の短い上りをダンシングで進むと、第2計測ではトーマスが残したばかりのタイムを6秒更新。その走りは後半にも続き、第3計測では同様に5秒更新する。

 そして迎えた最終局面。沿道の歓声を一身に浴びながら急坂を上ると、最後の直線はスプリントさながらのダンシングで魅せる。フィニッシュへ飛び込むと、直前にマークされたトーマスの記録を14秒更新。この瞬間、ステージ優勝が決まるとともに、マイヨジョーヌのキープが決まった。

マイヨジョーヌを守ったジュリアン・アラフィリップ Photo: Yuzuru SUNADA

 フィニッシュ直後には、レースを走った勢いのままチームスタッフへと抱き着き喜びを爆発させたアラフィリップ。「決して得意ではない」と自認するタイムトライアルだが、今大会の第1休息日であった16日のプレスカンファレンス(記者会見)では「優勝を狙いたい」と宣言していた。まさに有言実行の勝利に、「素晴らしい結果。今日のようなコース(上下動の多いセッティング)では、いつも通り走れば良いパフォーマンスができると確信していた。自分でも驚くような走りがしたかった」と振り返った。

 この日はマイヨジョーヌが誕生して100年のメモリアルデー。同時に、今大会通算9日目となる着用も決まり、「今日はマイヨジョーヌ(の存在)が背中を押してくれた。沿道からの声援もいつもとは比較にならないほどだった」と述べ、この先も守っていけるかとの問いには「まずは回復しないといけない」と答えた。

 これらの結果から、トップの座を守ったアラフィリップから個人総合2位のトーマスまでは1分26秒差に拡大。3位以下にシャッフルが発生し、ステージ上位と健闘したクライスヴァイクが2分12秒差の個人総合3位、マスが2分44秒差の4位に浮上。一方、ベルナルは5位に順位を落とし、その差は2分52秒。新人賞のマイヨブランはマスのもとへ移っている。

歴代のマイヨジョーヌ着用者たちがポディウムに集結。100周年を祝う記念撮影に臨んだ Photo: Yuzuru SUNADA

 翌20日は第14ステージ。ピレネーを代表する山岳・トゥールマレー登坂が待ち受ける。レース序盤に4級山岳を上り、中盤からは1級山岳コル・ドゥ・スロール(登坂距離11.9km、平均勾配7.8%)へ。一度下って、トゥールマレーを目指していく。そのトゥールマレー峠は登坂距離19km、平均勾配7.4%。今大会最初の超級山岳は、フィニッシュ前3kmから10%前後の急勾配へ。この山で、総合争いに動きが起きることは必至。個人タイムトライアルの結果を受けて、戦術を決める選手も多いことだろう。タルブをスタートしてトゥールマレー・バレージュのフィニッシュまでは117.5km。ハイスピードの山岳ステージとなることが予想される。

第13ステージ結果
1 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) 35分0秒
2 ゲラント・トーマス(イギリス、チーム イネオス) +14秒
3 トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル) +36秒
4 リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト)
5 リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード) +45秒
6 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)
7 ティボー・ピノ(フランス、グルパマ・エフデジ) +49秒
8 カスパー・アスグリーン(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ) +52秒
9 エンリク・マス(スペイン、ドゥクーニンク・クイックステップ) +58秒
10 ジョセフ・ロスコフ(アメリカ、CCCチーム) +1分1秒

個人総合(マイヨジョーヌ)
1 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) 53時間1分9秒
2 ゲラント・トーマス(イギリス、チーム イネオス) +1分26秒
3 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) +2分12秒
4 エンリク・マス(スペイン、ドゥクーニンク・クイックステップ) +2分44秒
5 エガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス) +2分52秒
6 エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) +3分4秒
7 ティボー・ピノ(フランス、グルパマ・エフデジ) +3分22秒
8 リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト) +3分54秒
9 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム) +3分55秒
10 アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)

ポイント賞(マイヨヴェール)
1 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 277 pts
2 ソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ) 191 pts
3 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) 184 pts

山岳賞(マイヨアポワ)
1 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) 54 pts
2 トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル) 37 pts
3 ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード) 30 pts

新人賞(マイヨブラン)
1 エンリク・マス(スペイン、ドゥクーニンク・クイックステップ) 53時間3分53秒
2 エガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス) +8秒
3 ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマ・エフデジ) +5分50秒

チーム総合
1 トレック・セガフレード 59時間16分27秒
2 モビスター チーム +10分12秒
3 アージェードゥーゼール ラモンディアール +13分56秒

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