ツール・ド・フランス2019 第12ステージサイモン・イェーツが逃げ切りでピレネー初日制す アラフィリップ首位で翌日の個人TTへ

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 ツール・ド・フランス2019第12ステージが現地時間7月18日に行われ、レース後半に2つの1級山岳を越える209.5kmをサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)が制した。この日は最大40人の先頭グループが形成され、山岳に入ってから徐々に人数が絞り込まれていく中、3人による勝負となった最終局面でイェーツが力を発揮。これで全グランツール(ジロ・デ・イタリア、ツール、ブエルタ・ア・エスパーニャ)でのステージ優勝を達成した。総合上位陣には変動がなく、ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)がマイヨジョーヌを着用し続ける。

ツール・ド・フランス2019第12ステージ。最大40人の逃げグループから絞られた3選手による争いをサイモン・イェーツ(中央)が制した。右は2位のペリョ・ビルバオ、左は3位のグレゴール・ミュールベルガー Photo: Yuzuru SUNADA

ピレネー初日 2つの1級山岳越え

 今大会第2週の舞台はフランスとスペインとを隔てるピレネー山脈。いよいよその山々へと入っていくことになる。

 この日はフランス南部の大都市・トゥールーズを出発し、半ば過ぎまではおおむね平坦基調。130.5km地点に設けられる中間スプリントポイントを過ぎると、それをきっかけに山岳区間へと入っていく。

今大会2度の敢闘賞獲得のワンティー・グループゴベール。チームバスの前方に記念トロフィーが飾られる Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 1級山岳ペルスールド(登坂距離13.2km、平均勾配7%)を上り、約20kmのダウンヒル。続くは1級山岳ラ・ウルケット・ダンシザン(登坂距離9.9km、平均勾配7.5%)。10%を超えるような極度の急坂こそないものの、これらの上りでライバルから遅れる総合系ライダーが出てくるようでは、その先のステージも厳しい戦いが続くかもしれない。そうした指標となる1日といえるだろう。上りきった後の30.5kmには、フィニッシュ地バニェール=ド=ビゴールまでのダウンヒルが待つ。

 また、このステージのカギとなりそうなのが、ラ・ウルケット・ダンシザン頂上に敷かれるボーナスポイント。1位通過から順に8秒、5秒、2秒のボーナスタイムが付与されるが、総合系ライダーたちがこのポイントをめがけて動きを見せるようだと、その後に控えるフィニッシュまでのダウンヒルも利用してライバルからの逃げ切りを図る可能性がある。頂上フィニッシュではないため、タイムを失わないことが大前提のステージだが、見立てに反して攻撃的なレースとなるかもしれない。

スタート前に報道陣の質問に答えるエガン・ベルナル Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 ピレネー初日のステージとあり、総合争いに動きがあるかが焦点となるが、個人総合3位で新人賞のマイヨブランを着るエガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス)はスタート前、総合成績に関係するような動きを狙っていくかと問われ「まったく想像がつかない」とし、「まずは逃げグループが先行するようなレースになるのではないか」とレースを展望した。

 このステージでは、ジャスパー・フィリプセン(ベルギー、UAE・チームエミレーツ)が未出走。168選手がトゥールーズをスタートした。

最大40人がレースを先行

 レースはアクチュアルスタート後からアタックが散発するが、すぐに逃げが決まるようなムードにはなく、出入りの激しいものとなる。これまでファーストアタックが決まることの多かった今大会だが、本格山岳ステージとあり、各チーム・選手たちの思惑が行き交うレース序盤となる。

ひまわり畑の中を進んでいくプロトン Photo: Yuzuru SUNADA

 プロトン全体が時速50kmを超えるハイスピードとなり、長く集団が1つのままだったが、均衡が破られたのはスタートから40kmを迎えたあたりでのこと。次々と集団から選手たちが飛び出し、大人数が先行したのを確認してチーム イネオス勢が集団前方をふさぐようにポジショニング。この動きで、ようやく逃げが容認されることになった。

 この日、レースをリードしたのは40人。この中には、ポイント賞のマイヨヴェールを着るペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)や、山岳賞のマイヨアポワ着用のティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)も加わった。個人総合での最上位は、トップから14分25秒差で28位につけるグレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム)。総合上位陣にとって順位を脅かす選手が入っていないこともあり、メイン集団は先頭グループを急いで追う必要に迫られなかった。

 先頭グループは着々とメイン集団とのタイム差を広げていき、フィニッシュまで残り100kmを切るタイミングで4分台。集団はアラフィリップ擁するドゥクーニンク・クイックステップがペーシングを担うが、前を行く選手たちとの差を調整しながら進んでいった。この間、62.5km地点で通過した4級山岳コート・ド・モントゥリュー=サン=ベルナールは、ウェレンスが1位で通過。130.5km地点で迎えた中間スプリントポイントは、ダニエル・オス(イタリア)のアシストを受けて、サガンが1位通過。マイヨヴェールに向け、貴重な20点を加算させた。

ペルスールドの上りで先頭グループから飛び出したリリアン・カルメジャーヌ Photo: Yuzuru SUNADA

 中間スプリントポイントを過ぎると、いよいよ1級山岳ペルスールドへと入っていく。スプリントにトライした流れからソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ)とアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAE・チームエミレーツ)がわずかな間先頭に立ったが、本格的に上りが始まったところでリリアン・カルメジャーヌ(フランス、トタル ディレクトエネルジー)が単独先頭に立つ。それまで一緒に逃げていたメンバーに対して、約30秒のリードをもって上り続ける。しかし、頂上が近づいてくると後方でも追走の動きに火がつきはじめる。そして、山岳ポイントをめがけて猛追したウェレンスが、頂上まで数十メートルのところでカルメジャーヌをパス。山岳賞の得点配分が多い1級の上りでも1位通過を果たした。

 一方のメイン集団は、ドゥクーニンク・クイックステップのコントロールに変わりはなく、淡々と登坂。頂上へは5分40秒差で到達。この間、前日のステージで落車したジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、ディメンションデータ)に加えて、翌日の個人タイムトライアルステージでの走りが期待されていたローハン・デニス(オーストラリア、バーレーン・メリダ)がリタイアしている。

3大ツールステージ優勝に「誇らしい」

 ペルスールド頂上からの下りでは、先頭グループのメンバーからサイモン・クラーク(オーストラリア、EFエデュケーションファースト)が抜け出す。しばしクラークの独走が続いたが、次の1級山岳ラ・ウルケット・ダンシザンの上りが始まろうかというところで、第2グループからマッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)がアタック。5kmほど追いかけると、上りの途中でトップをゆくクラークに合流を果たした。

ラ・ウルケット・ダンシザンの上りで一時トップに立ったマッテオ・トレンティン Photo: Yuzuru SUNADA

 トレンティンの動きが呼び水となって、後方でも前を目指す動きが活性化。頂上まで4kmを切ったところで、トレンティンのチームメートであるサイモン・イェーツが、グレゴール・ミュールベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)を引き連れて先頭へジョイン。トレンティンはレース先導をサイモン・イェーツに託すと後ろへと下がり、やがてトップをゆくのは2人に。その数秒差でペリョ・ビルバオ(スペイン、アスタナ プロチーム)が続き、その構図のままラ・ウルケット・ダンシザンの頂上を通過した。

フィニッシュまでの下りを急ぐ先頭の3選手 Photo: Yuzuru SUNADA

 この頃にはメイン集団とは7分以上の開きとなっていたことから、30kmを超えるフィニッシュまでの下りを先行メンバーが逃げ切るのは濃厚に。先頭ではビルバオが追いつき、3人となって先を急ぐ。上りを通じて形成された追走グループでもアタックが散発していたが、いずれも勢いに欠け、先頭までは届かない。ステージ優勝争いは快調に下り切ったサイモン・イェーツ、ミュールベルガー、ビルバオに絞られた。

 フィニッシュまで1kmを意味するフラムルージュでは、ビルバオ、ミュールベルガー、サイモン・イェーツの並び。後続とは十分なタイム差を得て、あとは誰がステージ優勝を果たすか。互いを見合いながら仕掛けどころを図る3人。緊迫度を増す中から、残り200mで動いたのはサイモン・イェーツだった。

 前へ出ると、最終コーナーをトップで抜け、フィニッシュまでの直線へ。ここでもスピードは落ちることなく、懸命に追ったビルバオ、ミュールベルガーに先行を許さなかった。ステージ優勝を決めたサイモン・イェーツは、これがツール初勝利となった。

ステージ優勝を決めて喜びを爆発させるサイモン・イェーツ Photo: Yuzuru SUNADA

 昨年のブエルタで個人総合初制覇を果たすなど、グランツールレーサーとして進境著しいサイモン・イェーツ。今年はジロを個人総合8位で終え、今大会へは双子の兄弟であるアダムのアシストとして参戦している。レース後、最終局面での走りを問われ「最後のコーナーの前で先頭に出るようスポーツディレクターから指示されていた。それを実行できたことが勝因」と振り返る。ビルバオとミュールベルガーの詳しい脚質までは把握できておらず「勝つ自信がなかった」というが、これですべてのグランツールでのステージ優勝を達成。「誇らしいね」と言って笑った。この先は「アダムの山岳アシストに集中する」と述べ、第9ステージでのダリル・インピー(南アフリカ)の勝利から、チームはよい状態にあると自信を見せた。

 2位はビルバオ、3位はミュールベルガーと続き、ステージ21位までを逃げメンバーが占めた。

セーフティーを選択したメイン集団

 大人数の飛び出しを「見送った」メイン集団。最後まで追撃態勢はとらず、下りも慎重にクリア。ピレネー初日は「セーフティー」を選択した。

 ラ・ウルケット・ダンシザンに入ってからは、チーム イネオス勢が前へ出てフィニッシュまでのコントロール役を担った。最終的に、サイモン・イェーツのフィニッシュから9分35秒後にレースを完了させた。

メイン集団内で走りきったジュリアン・アラフィリップ(右から3人目)。マイヨジョーヌをキープした Photo: Yuzuru SUNADA

 個人総合上位陣は、いずれもメイン集団でフィニッシュ。これにより、アラフィリップは8日目となるマイヨジョーヌ着用が決まった。レースを終えて、「ツールで首位に立つことは素晴らしい。明日のタイムトライアルは最終走者として走ることができる。いつも以上に攻めて、限界に挑戦したい」と宣言した。

 また、新人賞のマイヨブランを保持したベルナルは、「個人タイムトライアルを受けて、みんな攻撃的になっていくだろう。とにかくスマートに戦っていくだけだ」と今後の見通しを語った。

 そのほか、ポイント賞のマイヨヴェールはサガン、山岳賞のマイヨアポワはウェレンスがそれぞれ得点を伸ばして首位を走行。チーム総合では、この日2選手がトップ10フィニッシュしたトレック・セガフレードがトップに立っている。

 翌19日も重要なステージが待ち構える。ツールではおなじみのポーの街を発着地とする27.2kmの個人タイムトライアルだ。コースは、ポーの市街地を抜けて丘陵地帯へ。一方で、ポーへと帰ってくる後半は平坦基調。そして、残り1kmを切ってから今度は17%の急坂を上ってフィニッシュへと飛び込む。しっかりとしたペース配分が求められるが、各選手ともここでの結果を受けて今後の戦術を立てていくことになるはず。総合系ライダーたちの走りに注目が集まる。もちろん、TTスペシャリストたちの競演も楽しめるだろう。

第12ステージ結果
1 サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) 4時間57分53秒
2 ペリョ・ビルバオ(スペイン、アスタナ プロチーム) +0秒
3 グレゴール・ミュールベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)
4 ティシュ・ベノート (ベルギー、ロット・スーダル) +1分28秒
5 ファビオ・フェッリーネ(イタリア、トレック・セガフレード)
6 マッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)
7 オリバー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼール ラモンディアール)
8 ルイ・コスタ(ポルトガル、UAE・チームエミレーツ)
9 サイモン・クラーク(オーストラリア、EFエデュケーションファースト)
10 ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)

個人総合(マイヨジョーヌ)
1 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) 52時間26分9秒
2 ゲラント・トーマス(イギリス、チーム イネオス) +1分12秒
3 エガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス) +1分16秒
4 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) +1分27秒
5 エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) +1分45秒
6 エンリク・マス(スペイン、ドゥクーニンク・クイックステップ) +1分46秒
7 アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) +1分47秒
8 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム) +2分4秒
9 ダニエル・マーティン(アイルランド、UAE・チームエミレーツ) +2分9秒
10 ティボー・ピノ(フランス、グルパマ・エフデジ) +2分33秒

ポイント賞(マイヨヴェール)
1 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 277 pts
2 ソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ) 191 pts
3 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) 184 pts

山岳賞(マイヨアポワ)
1 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) 54 pts
2 トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル) 37 pts
3 ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード) 30 pts

新人賞(マイヨブラン)
1 エガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス) 52時間27分25秒
2 エンリク・マス(スペイン、ドゥクーニンク・クイックステップ) +30秒
3 ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマ・エフデジ) +3分16秒

チーム総合
1 トレック・セガフレード 157時間27分18秒
2 アージェードゥーゼール ラモンディアール +9分19秒
3 モビスター チーム +10分22秒

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