ツール・ド・フランス2019 第10ステージ横風に揺れた第1週最終日 ファンアールトが強敵撃破でツール初出場初勝利

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 ツール・ド・フランス2019第10ステージが現地時間7月15日、217.5kmで争われ、スプリントによるステージ優勝争いをワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)が制し、ツール初出場で初勝利を挙げた。このステージでは、後半に数チームによる横風分断作戦が決まり、ティボー・ピノ(フランス、グルパマ・エフデジ)やヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ プロチーム)ら一部の総合系ライダーがタイムを失った。そんな中、ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)はマイヨジョーヌを守り、個人総合首位のまま第2週へ向かうことになった。

ツール・ド・フランス2019第10ステージ。横風の影響で人数を減らしたメイン集団によるスプリントをワウト・ファンアールトが制した Photo: Yuzuru SUNADA

スプリンターには細かなアップダウン攻略が大前提の1日

 7月6日の開幕以降、連日展開されてきたレースだが、この第10ステージでようやく第1週が終わり。いつもは第9ステージ(プロローグ開幕の年は第8ステージ)までを第1週としていたが、今年は第10ステージまでを連続して行うことになった。実質、この日を終えた時点で大会は折り返し地点を迎えるといえそうだ。

 そんな第10ステージは、サン=フルールからアルビまでの217.5km。大会主催者は平坦とカテゴライズしているが、実際のところは細かなアップダウンの連続。3級と4級のカテゴリー山岳4カ所設けられており、レースの流れ次第ではスプリンターにとってタフな1日となることも。エーススプリンターを消耗させないよう、アシスト陣の腕の見せどころでもある。

 中央山塊をめぐった、前日の第9ステージでは大人数の逃げを容認したプロトン。大多数の選手が勝負を行わなかったメイン集団の中でレースを終えており、脚を休めることができているはず。この日もマイヨジョーヌはアラフィリップが着用する。

高台に構えるサン=フルールの街を背に進むプロトン Photo: Yuzuru SUNADA

6人が先行 逃げのベルハネは山岳すべてで1位通過

 スタート地サン=フルールの象徴でもある「サン=ピエール教会」を見ながらスタートしたプロトンは、7.1kmのニュートラル走行を経てアクチュアルスタート。7kmほど進んだところで5人が飛び出し、追って1人が合流。6人逃げでレースの幕が開かれた。

レースをリードした6選手 Photo: Yuzuru SUNADA

 この日のレースを先導したのは、トニー・ガロパン(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール)、ナトナエル・ベルハネ(エリトリア、コフィディス ソルシオンクレディ)、アントニー・テュルジス(フランス、トタル ディレクトエネルジー)、マッズウルス・シュミット(デンマーク、カチューシャ・アルペシン)、オドクリスティアン・エイキング(ノルウェー、ワンティ・ゴベール)。メイン集団では、トニー・マルティン(ドイツ、ユンボ・ヴィスマ)が中心となってペーシングを行い、前の6人とは3分程度のタイム差に抑える。

 先頭の6人は途中に待つ各種ポイントを次々と上位通過。特にこの日は山岳ポイントすべてでベルハネが1位通過。この日だけで7点を獲得している。

メイン集団は約3分差となったのを境に少しずつタイム差を調整。マイヨジョーヌのジュリアン・アラフィリップは集団前方に位置する Photo: Yuzuru SUNADA

 レースはフィニッシュまで残り距離100kmを切ったあたりを境に、メイン集団がわずかずつながら先頭グループとのタイム差を縮小させていく。この間、128.5km地点に設けられた中間スプリントポイントへと到達し、エイキングが1位通過。メイン集団は1分40秒差で続いたが、スプリントに挑んだのは実質ソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ)ただ1人。集団先頭を獲り、全体では7位通過。ポイント賞首位のマイヨヴェールを着るペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)が全体の8位通過で続いた。

 先頭6人を視界にとらえつつあったメイン集団に変化が見られ始めたのは、残り75kmを切ろうかというタイミング。チーム イネオスがペースを上げると、集団前方は活性化。ドゥクーニンク・クイックステップも加わって、自然と集団のペースが上がっていく。

 こうした流れが一度は落ち着いたかに思われたが、残り40kmを切って再び集団は活性化。結果的に、これが決定打につながることとなる。

横風を利用して有力チームが猛攻撃 最後はファンアールトが制す

 プロトンの進行方向に対して横からとなる強い東風を受けて、ドゥクーニンク・クイックステップとチーム イネオスが再びのペースアップ。これにはマイヨジョーヌのアラフィリップも加わって猛然とスピードを上げていく。この動きを予測していた多くの有力選手が集団前方へと固まったが、総合上位陣の一部が後方へと取り残されてしまった。

メイン集団で発生した横風分断作戦。マイヨジョーヌのジュリアン・アラフィリップ自ら牽引する場面も見られた Photo: Yuzuru SUNADA

 ここまで活躍が光っていた個人総合2位、新人賞のマイヨブランを着るジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)、同3位ティボー・ピノ(フランス、グルパマ・エフデジ)、同8位リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト)、同9位ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ プロチーム)らが中切れの後方へ。さらに後ろでは、同4位のジョージ・ベネット(ニュージーランド、ユンボ・ヴィスマ)がほぼ単騎の状態で集団への復帰を目指す状況となる。

 この展開に、前方での生き残りに成功した有力チーム同士が協調体制の構え。ドゥクーニンク・クイックステップ、チーム イネオスに加えて、ボーラ・ハンスグローエやモビスター チームの選手たちも先頭交代に合流。レース序盤からの逃げをパスし、グングンと突き進む。

メイン集団の先頭交代に加わるナイロ・キンタナ Photo: Yuzuru SUNADA

 かたや、懸命に前への復帰を目指すピノらの第2グループは、一時先頭集団まで14秒差まで迫ったが、追走を試みる中で新たな分断が発生。ピノやウラン、フルサングらはそのままのポジションに位置したが、チッコーネは遅れてしまう。これで人数を減らしたピノらのグループは勢いを失うことになり、残り5kmでは約1分差まで広がってしまった。

 ライバルたちを振り切るべく、攻め続ける先頭集団は約30人。アラフィリップのマイヨジョーヌとエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)でのスプリントを狙いたいドゥクーニンク・クイックステップ、ゲラント・トーマス(イギリス)とエガン・ベルナル(コロンビア)両エースの総合順位アップを図るチーム イネオス。この両チームが長く主導権を握ったが、多くのチームがエースとアシストとを総動員したレースにあって、スプリントトレインを形成できたのはチーム サンウェブのみ。ジャージカラーの赤のトレインが残り2kmから先頭に立った。

 チーム サンウェブの牽引のまま迎えた最終局面。完璧なお膳立てに、あとは加速するだけに見えたエーススプリンターのマイケル・マシューズ(オーストラリア)だったが、スプリントタイミングが遅れてしまった。残り250mからのわずかな下りを利用して加速したのはファンアールト。その後ろからヴィヴィアーニが抜きにかかる。

 しかし、残り50mでファンアールトが抜群の伸びを見せる。早めにスプリント開始だったにもかかわらず、最後はライバルに前を譲らなかった。ヴィヴィアーニとは車輪半分ほどの差。それでも、ファンアールト本人はすぐに勝利を確信し高々と両腕を掲げた。

前方で生き残った選手たちによるスプリント勝負。ワウト・ファンアールト(右から3人目)が最後に伸びを見せて勝利を決める Photo: Yuzuru SUNADA

アラフィリップ首位で折り返し イネオス勢が着々と上位へ

 ファンアールトといえば、サイクルスポーツ界では言わずと知れたシクロクロスのスーパースター。同種目の世界選手権では2016年から3連覇。今年も銀メダルを獲得した現役トップシクロクロッサーだ。ロードには2年前から参戦機会を増やし、昨年本格的にシクロクロスとロードの並行態勢を整えた。今年3月にユンボ・ヴィスマに加入してからは、飛ぶ鳥を落とす勢いで上位進出を重ね、タイムトライアルやスプリントを中心にシーズン4勝を挙げている。

勝利を喜ぶワウト・ファンアールト(右)とステフェン・クライスヴァイク Photo: Yuzuru SUNADA

 レース後には「本当に信じられない」と開口一番のファンアールト。ここまでの10日間でツールのレース傾向を分析していたというが、それでも「最初のトライで成功してしまった」と自らの走りに驚きの様子。集団が割れた際に前に残っていたのが自身と総合エースのステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)だけだったこともあり、エーススプリンターのディラン・フルーネウェーヘン(オランダ)に代わって勝負できるのは脚質的に自らだけだったことも幸いした。

横風区間での分断で中切れにあったティボー・ピノ。トップから1分40秒遅れてフィニッシュへ。個人総合でも順位を大きく落とした Photo: Yuzuru SUNADA

 最終的に28人に絞られたメイン集団。横風分断で中切れにあったピノ、ウラン、フルサングは1分40秒遅れ、チッコーネは2分9秒遅れ。個人総合でも、チッコーネがトップから2分32秒差の10位、ピノは同じく2分33秒差の11位とランクダウン。ウランやフルサングも同様に順位を落としている。さらに、ベネットにいたっては大規模なグルペットでのフィニッシュとなり、上位戦線からは完全に脱落している。

 その一方で、このステージを成功させたアラフィリップはマイヨジョーヌを守って第1週を終了。総合系ライダーでは、トーマスが1分12秒差の個人総合2位に浮上、ベルナルも1分16秒差の3位につけ、チーム イネオス勢がしっかりと順位を上げてきた。さらには、個人総合7位までがアラフィリップから2分以内の差につけている。

 なお、第1週を終えた時点での各賞は、マイヨジョーヌのアラフィリップのほか、マイヨヴェールがサガン、山岳賞のマイヨアポワがティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)、また新人賞のマイヨブランは総合順位を上げたベルナルのもとへ。チーム総合ではモビスター チームがトップに上がってきている。

個人総合トップで第1週を終えたジュリアン・アラフィリップ。休息日明けもマイヨジョーヌでレースに臨む Photo: Yuzuru SUNADA

 第1週を走り終えた選手たちは、この日のフィニッシュ地であるアルビに滞在。今大会1回目の休息日を迎える。各チーム、滞在ホテルでプレスカンファレンス(記者会見)や取材対応を行うほか、選手たちは軽めのトレーニングや休養にあてる。

 休息日明けの第11ステージは17日、アルビからトゥールーズまでの167kmで争われる。前半に2カ所のカテゴリー山岳をこなした後は、おおむね平坦。レース距離もほどほどで、多くの選手が休みを経ての試運転となりそう。この日の主役はおそらくスプリンターとなるだろう。

第10ステージ結果
1 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) 4時間49分39秒
2 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) +0秒
3 カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)
4 マイケル・マシューズ(オーストラリア、チーム サンウェブ)
5 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)
6 ジャスパー・フィリプセン(ベルギー、UAE・チームエミレーツ)
7 ソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ)
8 マッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)
9 オリバー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼール ラモンディアール)
10 グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム)

個人総合(マイヨジョーヌ)
1 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) 43時間27分15秒
2 ゲラント・トーマス(イギリス、チーム イネオス) +1分12秒
3 エガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス) +1分16秒
4 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) +1分27秒
5 エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) +1分45秒
6 エンリク・マス(スペイン、ドゥクーニンク・クイックステップ) +1分46秒
7 アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) +1分47秒
8 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム) +2分4秒
9 ダニエル・マーティン(アイルランド、UAE・チームエミレーツ) +2分9秒
10 ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード) +2分32秒

ポイント賞(マイヨヴェール)
1 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 229 pts
2 マイケル・マシューズ(オーストラリア、チーム サンウェブ) 167 pts
3 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) 153 pts

山岳賞(マイヨアポワ)
1 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) 43 pts
2 トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル) 37 pts
3 ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード) 30 pts

新人賞(マイヨブラン)
1 エガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス) 43時間28分31秒
2 エンリク・マス(スペイン、ドゥクーニンク・クイックステップ) +30秒
3 ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード) +1分16秒

チーム総合
1 モビスター チーム 130時間45分20秒
2 トレック・セガフレード +1分30秒
3 ボーラ・ハンスグローエ +14分59秒

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