ツール・ド・フランス2019 第6ステージ終盤の激坂を制したトゥーンスが逃げ切り 積極性光ったチッコーネが初のマイヨジョーヌ

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
  • 一覧

 ツール・ド・フランス2019第6ステージは、現地時間7月11日に行われ、今大会最初の上級山岳ステージは序盤に形成された先頭グループが逃げ切り、ディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・メリダ)がツール初勝利を挙げた。トゥーンスと争い2位だったジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)が個人総合首位に浮上。一方メイン集団でも総合有力選手同士の戦いが繰り広げられ、ゲラント・トーマス(イギリス、チーム イネオス)が最上位となる4位でフィニッシュした。

フィニッシュラインをトップで通過したディラン・トゥーンス Photo: Yuzuru SUNADA

未舗装や激坂がカギに

 ここまでスピードマンやアタッカーが主役となってきたが、いよいよ個人総合争い、マイヨジョーヌにつながるステージを迎えることとなった。この日行われた第6ステージは、レース距離160.5kmに7カ所のカテゴリー山岳が詰め込まれた。

第6ステージはミュルーズをスタート Photo: ASO/Pauline BALLET

 フランス東部の街・ミュルーズをスタートすると、早々から上り基調。以降、最後まで上っては下り、上っては下りの繰り返しとなる。カテゴリー山岳は、1級ル・マルクシュタイン(43.5km地点、登坂距離10.8km、平均勾配5.4%)を皮切りに、3級グラン・バロン(50.5km地点、登坂距離1.3km、平均勾配9%)、2級コル・デュ・ユンスリュック(74km地点、登坂距離5.3km、平均勾配6.9%)、1級バロン・ダルザス(105km地点、登坂距離11km、平均勾配5.8%)、3級コル・ド・クロワ(123.5km地点、登坂距離3.3km、平均勾配6.1%)、2級コル・ド・シュヴレール(141.5km地点、登坂距離3.5km、平均勾配9.5%)、1級ラ・プロンシュ・デ・ベル・フィーユ(山頂フィニッシュ、登坂距離7km、平均勾配8.7%)の順。

 最後にそびえるラ・プロンシュ・デ・ベル・フィーユは、2012年の第7ステージでクリストファー・フルーム(イギリス、当時スカイ プロサイクリング)、2017年の第5ステージでファビオ・アル(イタリア、当時アスタナ プロチーム)がそれぞれ上りでライバルを圧倒。総合争いを加速させるきっかけとなった名峰。今回はこれら2回と比べて約1km延伸。フィニッシュ前残り900mから約700mにわたって未舗装区間があるほか、フィニッシュ手前約1.5kmが20%、フィニッシュ目前で24%の激坂と、これまで以上に難易度が増した。

 実際、今大会最初の上級山岳がこの日に設けられたこともあり、総合系ライダーの多くが大会前半戦のポイントに掲げる。開幕前にはヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)が「総合成績を狙っていくかは第6ステージの走りである程度判断できると思う」と述べたように、自他の走りから今後の戦い方を図ることのできる重要な一日になるものと考えられた。

 なお、コル・ド・シュヴレールの頂上にはボーナスタイムを設定。上位通過3人に8秒、5秒、2秒のボーナスタイムが付与される。

パレード走行中のジュリアン・アラフィリップ Photo: A.S.O./Pauline BALLET

ウェレンスが山岳ポイントを大量加算

 開幕から5日間、出走176選手全員が走り続けてきたが、この日の朝にCCCチームがパトリック・ベヴィン(ニュージーランド)の未出走を発表。2日前の第4ステージで落車し、その時に肋骨を痛めたことが原因で、この大会最初の離脱者となった。

 175選手となったプロトンがミュルーズを出発。スタート前から雨が降りはじめ、場所によっては路面状況がウェットとなっている中、選手たちは進んでいく。

14選手で形成された先頭グループ Photo: A.S.O./Pauline BALLET

 5km地点を過ぎて、集団から少しずつ抜け出す選手が出始める。やがて14人が集団に対してリードを奪うことに成功し、この日の逃げグループが形成された。顔ぶれはトゥーンス、チッコーネ、ブノワ・コズネフロワ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール)、セルジュ・パウェルス(ベルギー、CCCチーム)、ジュリアン・ベルナール(フランス、トレック・セガフレード)、ニキアス・アルント(ドイツ、チーム サンウェブ)、ナトナエル・ベルハネ(エリトリア、コフィディス ソルシオンクレディ)、トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)、ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)、ファビアン・グルリエ(フランス、トタル ディレクトエネルジー)、ニルス・ポリッツ(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)、クサンドロ・ムーリッセ(ベルギー、ワンティ・ゴベール)、アンドレア・パスクアロン(イタリア、ワンティ・ゴベール)、アンドレ・グライペル(ドイツ、アルケア・サムシック)。

 この中で総合最上位はトップから1分43秒差につけるチッコーネで、先行してすぐにバーチャルマイヨジョーヌとなった。チッコーネに限らず、力のある選手がそろったことから、先頭グループの動きを容認したメイン集団に対して最大で約7分30秒差に広げる。14人が先を急ぐ間、29km地点に設けられた中間スプリントを通過しており、数人のスプリントからパスクアロンが1位で通過した。

チームプレーで山岳ポイントを加算させたロット・スーダルの2人。左がティム・ウェレンス、右がトーマス・デヘント Photo: ASO/Pauline BALLET

 レースはやがて山岳区間へと入っていく。先頭グループでは、山岳賞のマイヨアポワを着るウェレンスと、チームメートのデヘントが要所で主導権を握って山岳ポイント稼ぎに動く。1級ル・マルクシュタインではウェレンスが1位通過したが、続く3級グラン・バロンではデヘントが代わりに1位通過。ライバルのポイント奪取を許さない。2級コル・デュ・ユンスリュックでは、マークをかいくぐったベルハネに1位通過を許したが、デヘントの牽引からウェレンスが2位を確保。1級バロン・ダルザスでは再度デヘントが牽引して、今度こそはウェレンスがしっかりと1位で通過した。

 山岳ポイントを伸ばしたウェレンスが、このステージを終えた時点でのマイヨアポワ堅守は確定的に。先頭グループでは次々訪れる上りで人数を減らしていくが、集団に対しては十分なリードを保ったまま進んでいった。

 一方、メイン集団はマイヨジョーヌのアラフィリップ擁するドゥクーニンク・クイックステップがアシスト数人を送り込んで長い時間コントロール。バロン・ダルザスに入ってようやく他チームも動き始め、モビスター チーム、ミッチェルトン・スコットなどがポジションを上げていく。各チームとも先に控える勝負どころを意識し、総合エースを好位置へと引き上げようとする姿が見られるようになっていった。

激坂でも衰えなかったトゥーンスのペダリング

 先頭グループに大きな変化が起きたのは、3級コル・ド・クロワでのこと。頂上を前にデヘントがアタックし、独走態勢へと持ち込む。そのまま山岳ポイントを1位で通過し、下りでさらに加速。その後ろでは、ウェレンスが2位として山岳ポイントをさらに追加。ロット・スーダル勢が明確な目的のもと攻めの姿勢を貫く。デヘントとメイン集団とのタイム差は依然5分台。

最大14選手だった先頭グループは4選手まで絞り込まれる。先頭はディラン・トゥーンス Photo: Yuzuru SUNADA

 しかし、続く2級コル・ド・シュヴレールでデヘントの勢いに陰りが見え始める。そのタイミングを待っていたかのように、追走を続けていたチッコーネがペースを上げ、当初の逃げメンバーからトゥーンス、ウェレンス、ムーリッセの4人に絞り込んで、デヘントをキャッチ。さらに頂上へと向かう15%前後の急坂からはトゥーンスがスピードアップ。チッコーネをトップに頂上を通過した4人は、デヘントを引き離して残る距離を急いだ。

 ときを同じくして、メイン集団では世界王者の証であるマイヨアルカンシエルを着るアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)が牽引を開始。実力者のこの動きにはやはり有力選手たちが前方への位置取りを固めて、勝負できる態勢を作っていく。先頭の4人とはおおよそ4分差。先頭グループ、メイン集団ともに、勝負どころである1級ラ・プロンシュ・デ・ベル・フィーユへと入っていった。

ステージ優勝争いを繰り広げるジュリオ・チッコーネ(左)とディラン・トゥーンス Photo: Yuzuru SUNADA

 先頭ではまず、山岳ポイント稼ぎに力を使ったウェレンスが残り4.5kmで脱落。直後にムーリッセも後方へと下がっていく。サバイバルを生き残ったトゥーンスとチッコーネは互いの顔色を見ながら仕掛けどころをうかがっている様子。集団に対するレース前半の貯金が奏功したチッコーネには、マイヨジョーヌ奪取の可能性も膨らむ。先頭の2人はフィニッシュへ向かって走りを緩めない。

ツール・ド・フランス2019第6ステージ、フィニッシュ目前の激坂で後続を振り切ったディラン・トゥーンスがステージ優勝を挙げた Photo: Yuzuru SUNADA

 残り1kmで集団とのタイム差は約2分。ステージ優勝争いはトゥーンスとチッコーネに完全に絞られた。残り900mからの未舗装区間でも譲らなかった両者だが、最後の激坂に入って残り100mでついにチッコーネが失速。最後まで力強いペダリングを続けたトゥーンスがラ・プロンシュ・デ・ベル・フィーユに敷かれたフィニッシュラインを1番に通過した。

 最後力尽きたチッコーネも、トゥーンスから11秒差にまとめてフィニッシュへ。バーチャルマイヨジョーヌのまま最終局面を迎えていたが、ジャージの行方はメイン集団のフィニッシュ待ちとなった。

 そのメイン集団は、ワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック)のアタックをきっかけとして、残り3kmを前にミケル・ランダ(スペイン、モビスター チーム)がカウンターアタック。精鋭のみとなった集団は、ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チーム イネオス)が牽引し、その後はダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマ・エフデジ)がスピードアップを担う。

未舗装区間で攻撃に出たジュリアン・アラフィリップ Photo: Yuzuru SUNADA

 そして残り1km。15秒ほどのリードを持って入ったランダだったが、ペースアップした集団に引き戻される。その流れから、未舗装区間に入ったところでアラフィリップが猛然とアタック。マイヨジョーヌのキープをかけたこの動きは効果的に思われたが、その後ろではついに個人総合優勝候補たちが本気になっていた。

 アラフィリップを追う一番手になったのはトーマス。その差を少しずつ詰めていき、残り50mで一気にパス。最後まで逃げ切ったムーリッセをはさんで、トーマスはステージ4位。アラフィリップはフィニッシュライン手前でティボー・ピノ(フランス、グルパマ・エフデジ)にもかわされ、ステージ6位で終えた。

 チッコーネとアラフィリップのフィニッシュでのタイム差は1分35秒。しかし、チッコーネはボーナスポイントでの8秒(2級コル・ド・シュヴレールでの1位通過)と2位フィニッシュでのボーナス6秒を得ており、この合計14秒が利いて個人総合首位に浮上。アラフィリップに対して6秒差でマイヨジョーヌを奪取することになった。

チッコーネはジロに続く快進撃

 チッコーネは、今年からトレック・セガフレードで走る24歳。5月に行われたジロ・デ・イタリアでも好走し、第16ステージで優勝。山岳賞を獲得しマリアビアンカに袖を通した姿が記憶に新しい。連戦となるグランツールでの快進撃は、マイヨジョーヌ獲得で実りあるものに。

マイヨジョーヌ奪取が決まり喜ぶジュリオ・チッコーネ Photo: Yuzuru SUNADA

 イエローのジャージを身にまとうと「子供の頃からの夢がかなった。本当に信じられない」と感激の面持ち。チームとしての目標はステージ優勝にあるといい、「2位でフィニッシュした瞬間は悔しかったが、マイヨジョーヌだと知ってすぐに気分が晴れた」とも。今後のステージに向けては、「ツールの平坦ステージは非常にタフだが、ジャージを守ることができるだけのメンバーをそろえている」と、マイヨジョーヌのキープに意欲を見せている。

 ステージ優勝のトゥーンスは、「最後から2つ目の上り(2級コル・ド・シュヴレール)で4人に絞られたが、すでにレース展開をイメージできていた」ことを勝因に挙げた。そして、「両親やガールフレンドにこの喜びを伝えたい。本当に幸せだ」とツール初勝利の余韻に浸っていた。

総合系ライダーではティボー・ピノ(中央右)、ゲラント・トーマス(中央左)が順調な戦いぶり Photo: Yuzuru SUNADA

 また、ステージ4位のトーマス以降、次々とフィニッシュへとなだれ込んだが、ニバリやロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール)がトーマスから約1分遅れ。チッコーネから総合タイム差2分以内に有力視される総合系ライダーがひしめいているが、バルデに至っては2分57秒差。上位進出へは、ここからの巻き返しが求められる。

 なお、このステージを終えての各賞は、マイヨジョーヌと新人賞のマイヨブランにチッコーネ、山岳賞のマイヨアポワはウェレンス、ポイント賞のマイヨヴェールはペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)がそれぞれトップに立つ。チーム総合では、トレック・セガフレードが大きくジャンプアップし1位としている。

個人総合首位に立ったジュリオ・チッコーネ。翌日の第7ステージではマイヨジョーヌでスタートラインにつく Photo: Yuzuru SUNADA

 ここまで2日間は中級、上級の山岳ステージが続いたが、翌12日の第7ステージは今大会3つ目となる平坦コース。ヴォージュ山脈に別れを告げ、次なる目的地である中央山塊に向けてプロトンは進んでいく。ベルフォールをスタートし、シャロン=シュル=ソーヌにフィニッシュする230kmは、今大会最長のステージだ。

第6ステージ結果
1 ディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・メリダ) 4時間29分3秒
2 ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード) +11秒
3 クサンドロ・ムーリッセ(ベルギー、ワンティ・ゴベール) +1分5秒
4 ゲラント・トーマス(イギリス、チーム イネオス) +1分44秒
5 ティボー・ピノ(フランス、グルパマ・エフデジ) +1分46秒
6 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)
7 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム) +1分51秒
8 エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
9 ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ プロチーム) +1分53秒
10 ミケル・ランダ(スペイン、モビスター チーム)

個人総合(マイヨジョーヌ)
1 ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード) 23時間14分55秒
2 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) +6秒
3 ディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・メリダ) +32秒
4 ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ユンボ・ヴィスマ) +47秒
5 ゲラント・トーマス(イギリス、チーム イネオス) +49秒
6 エガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス) +53秒
7 ティボー・ピノ(フランス、グルパマ・エフデジ) +58秒
8 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) +1分4秒
9 マイケル・ウッズ(カナダ、EFエデュケーションファースト) +1分13秒
10 リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト) +1分15秒

ポイント賞(マイヨヴェール)
1 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 144 pts
2 マイケル・マシューズ(オーストラリア、チーム サンウェブ) 98 pts
3 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) 92 pts

山岳賞(マイヨアポワ)
1 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) 43 pts
2 ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード) 30 pts
3 クサンドロ・ムーリッセ(ベルギー、ワンティ・ゴベール) 27 pts

新人賞(マイヨブラン)
1 ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード) 23時間14分55秒
2 エガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス) +53秒
3 エンリク・マス(スペイン、ドゥクーニンク・クイックステップ) +1分23秒

チーム総合
1 トレック・セガフレード 70時間19分27秒
2 モビスター チーム +1分39秒
3 グルパマ・エフデジ +2分4秒

この記事のコメント

利用規約順守の上ご投稿ください。

関連記事

この記事のタグ

UCIワールドツアー ツール・ド・フランス2019 ツール2019・レース詳報 ロードレース

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

e-BIKE最新特集

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載