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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<300>ツール序盤戦最新情報 チームスポンサー動向や有力選手コメントを総まとめ

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 7月6日の開幕以来、日々熱戦が展開されているツール・ド・フランス2019は、ベルギー・ブリュッセルでの開幕を経て、フランスへ入国。先に控える難関ステージでの戦いや、マイヨジョーヌを筆頭とした各賞争いなど、楽しみは尽きない。そこで今回は、話題豊富なツールの現場から最新トピックをお届け。チーム動向や有力選手のコメントなど、注目情報をまとめてみた。

大会序盤戦が進行中のツール・ド・フランス2019。この先に待つドラマに楽しみが膨らむ(写真は第3ステージ) Photo: Yuzuru SUNADA

フランス・ベルギーの雄がそれぞれスポンサーシップ延長

 まず、ツール開幕に合わせて発表されたチーム動向について。アージェードゥーゼール ラモンディアールとロット・スーダルがそれぞれスポンサーシップの延長を発表した。

ツール2019チームプレゼンテーションに臨むアージェードゥーゼール ラモンディーアル。チームは2023年までのスポンサーシップ延長に合意した Photo: Yuzuru SUNADA

 6月下旬に発表のあったアージェードゥーゼール ラモンディアールは、2023年までの契約延長。現状で2020年までの契約が残っているため、実質3年間を延長することになった。メインスポンサーのアージェードゥーゼール ラモンディアール社は、フランスの保険や年金を扱う共済組合で、同組合の最高経営責任者(CEO)のアンドレ・レヌダン氏は「自社を活気づけるチームの連帯感とパフォーマンスの価値を見出している」と選手たちの活躍を高く評価。

 チームのゼネラルマネージャーであるヴァンサン・ラヴァニュ氏もこれを受けてコメントを発表。「アージェードゥーゼール ラモンディアール社との関係は申し分ない。経営陣、各種役員、そして組合員の方々がチームを信じてくれていることに心から感謝している」と述べ、この先のレースに集中できる状況を喜んでいる。

ツール開幕前のプレスカンファレンスに臨むロット・スーダルの選手・首脳陣。2022年までのスポンサーシップ延長を発表した Photo: ASO/Alex BROADWAY

 ロット・スーダルは2022年までの契約延長が決定。こちらは今年がスポンサーシップの最終年となっていたが、ベルギーの宝くじ公社であるロット社、同国の工業用品メーカーのスーダル社とも、新たに3年間の延長に合意した。

 ツール開幕の2日前の発表にあたり、ゼネラルマネージャーのジョン・ルランゲ氏は「ロット社、スーダル社ともスポンサー額が同じレベルに達した」ことを明らかに。これにともない、今後ベルギー国外のレースにおいてはジャージにプリントされる両社のロゴが逆転。「スーダル・ロット」の順に代わり、このツールから採用されている。なお、チーム名の「ロット・スーダル」には変化がない。

 この先数年もUCIワールドツアーを主体に戦うメドが立った両チーム。今回のツールでは、アージェードゥーゼール ラモンディアールがロマン・バルデ(フランス)での総合成績、ロット・スーダルがカレブ・ユアン(オーストラリア)でのスプリントと、明確な目標のもと戦いを続けている。彼らの活躍がスポンサー企業へのさらなるアピールなるか。スポンサーシップの価値を示す、重要な3週間となっている。

有力選手たちの意気込みは 記者会見コメント集

 大会はまだまだ始まったばかり。マイヨジョーヌを筆頭に各賞争いは先々の楽しみだが、その主役候補となる選手たちが開幕前の記者会見でどのように意気込みを語ったのかまとめていきたい。その言葉から、彼らのレースプランや戦いの方向性が見えてくるはずだ。

ツール個人総合2連覇がかかるゲラント・トーマス。プレッシャーを排除しエガン・ベルナルとの共闘にも前向きだ Photo: ASO/Alex BROADWAY

 まず、前回覇者のゲラント・トーマス(イギリス、チーム イネオス)。やはり嫌でも個人総合2連覇の期待が高まるが、本人は「自分が優勝候補なのかは分からないし、考えていない」と不必要なプレッシャーを避けたい構え。昨年はクリストファー・フルーム(イギリス)との共闘態勢で、どちらがエースなのかが大会期間中常に話題となっていたが、今年も若きグランツールレーサーのエガン・ベルナル(コロンビア)とのダブルエース体制。

 そうしたチーム事情を受け入れつつ、トーマスは「フルームと過ごした昨年のように、コミュニケーションを取り合い、互いがオープンであれば間違いなくうまくいく」と語り、そこには王者の風格も漂う。そして、「ともに総合成績を狙っていくことになる」と共闘にも前向き。第1ステージでは落車に巻き込まれるハプニングもあったが、これから戦える状況を整えていくはずだ。

状態の良さが伝えられるヴィンチェンツォ・ニバリ。今後の戦い方が見ものだ Photo: Yuzuru SUNADA

 開幕に前後して状態のよさを伝えられているのがヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)。グランツールは5月のジロ・デ・イタリアからの連戦となるが、体が絞れていて、しっかりとトレーニングを積んでいることがうかがえる。実際に、ジロ後1週間は休養をとったが、その後の2週間は実戦も含めて山岳地帯で調整を行ってきたと話す。

 ただ、こちらもプレッシャーは避けたいのか、総合については深く考えないつもりだという。「総合を諦める覚悟もできている」とし、その判断は今大会最初の上級山岳ステージとなる第6ステージである程度できるとの考え。「大会序盤に調子が良くても、3週目に難しい状況になっていることだってあり得る」といい、コンディションを見ながら狙いを定めていく姿勢だ。

1985年以来のフランス人選手によるツール制覇を目指すロマン・バルデ。総合での遅れを取り戻せるか Photo: ASO/Alex BROADWAY

 冷静な2人とは対照的に、高い意欲を示しているのが地元フランス期待のバルデ。「とにかく3週間にわたって好調を維持し、我慢強く走りたい」と語った。シーズン前半はイメージ通りに送ることはできなかったとしながらも、ツールは特別なレースだとしてチーム全体が戦える態勢を整えていると述べる。今大会は山岳比重が高く、自身のキャリアにおいても「最も厳しい3週間になる」と緊張感を漂わせるが、そうしたルート設定が1985年のベルナール・イノー以来となるフランス人ライダーによるツール制覇を可能にするとも。「フランスの人たちの期待に応えられることにワクワクしている」と前向きだ。第4ステージまでを終えて首位から1分44秒差の個人総合47位だが、ここから巻き返すはずだ。

好調のままツール入りしたティボー・ピノ。自信を胸に上位進出を狙う Photo: Yuzuru SUNADA

 同様にポジティブなのが、バルデとともにフレンチライダーの双璧をなすティボー・ピノ(グルパマ・エフデジ)だ。「これまでになく最高のコンディションでツールをスタートできる」と記者会見の席でも笑顔満点。フルームとトム・デュムラン(オランダ、チーム サンウェブ)をけがで欠く今大会は、「最高レベルの選手がいないことは確かだが、ほかのライバルも多い」として、決して楽な戦いにはならないことを強調。それでも、ツール前のレースでしっかりと結果を残すなど、順調に調整が進んでいることに自信を見せている。

第1ステージでの落車が気がかりなヤコブ・フルサング。目標の総合表彰台に向けトラブルは避けたいところ Photo: ASO/Alex BROADWAY

 こうした選手たちは一線を画し、あらゆる可能性を分析していたのがヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ プロチーム)だ。今大会の山岳ステージのいくつかを試走した結果、「総合系ライダーに大きな差が生まれないかもしれない」とし、マイヨジョーヌを目指すうえで必要となってくるのが、8ステージで設定されたボーナスポイントではないかと指摘する。

 ボーナスポイントは、第3、6、8、9、12、15、18、19の各ステージ内カテゴリー山岳に設定され、上位3選手に8秒、5秒、2秒のボーナスタイムが付与される。ギリギリの戦いにあって、選手間の差を生み出す要素となってきたボーナスタイム。レース展開次第では、ボーナスポイントでの取りこぼしが許されない状況となるかもしれないと気を引き締める。また、個人的な目標は「総合表彰台」には据え、「最低でもトップ5に入ることができればうれしい」とも。第1ステージでの落車負傷が心配されるが、今後の戦いぶりが注目される。

7回目のマイヨヴェール獲得を目指すペテル・サガン。実現すれば大会新記録となる Photo: Yuzuru SUNADA

 総合系ライダーに多くの目が注がれた中、スプリンターの中ではやはりペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)の言葉を求めて、世界中のジャーナリストが彼の周りに集まった。目標を問われ「まずはパリにたどり着くこと」と大前提を述べたうえで、「グリーンジャージ(マイヨヴェール)を再び手にすることが最大目標」と具体的に言及。今回ポイント賞のマイヨヴェール獲得となれば、通算7回目の受賞となり、大会新記録となる。

 サガン自身が挙げた3勝を含め、チームは今シーズン33勝と絶好調。記者会見に同席したエマヌエル・ブッフマン、マキシミリアン・シャフマン(ともにドイツ)とパトリック・コンラッド(オーストリア)の名を挙げ、「彼らがチームに活力を加えてくれたことは事実」と、チームメートの走りにも期待するよう呼びかける。今大会ではブッフマンが個人総合トップ10を目指すと公言し、総合系チームとしての一面を見せることにも自信を持っている様子だった。

ベルギーステージ取材記

 ツール第1ステージは、ベルギーの英雄エディ・メルクス氏ゆかりの場所をめぐるルート設定がなされていた。北のクラシックでおなじみの名所「ミュール・ド・グラモン」は、レース前半での通過にもかかわらず、このステージのハイライトともいえる盛り上がりとなった。

レース通過が近くにつれヒートアップしていったミュール・ド・グラモンの観客 Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 レース通過予定時刻の1時間30分前に到着した筆者の目に映ったのは、すでに“できあがっている”雰囲気。酒に酔ったファンが盛んに観衆の盛り上げをあおったり、ひいき選手のチャントを歌っていたりと、彼らを起点に全体がかなりのテンションの高さとなっていた。

 そんな中で、日本からのファンもこの地に駆けつけていて、改めてツールの注目度の高さを実感。最前列に陣取り選手たちを待つその姿に、どれほどの時間待機しているのかと思いきや、朝7時頃に到着して好位置を確保したのだそう。

 選手たちの到来が近づくにつれ人が増えていった沿道だが、周りのジャーナリストに言わせると、「春のクラシックと比べると今日の入りは半分程度じゃないかな」とのこと。盛り上がりの一方で、ベルギーではツールよりもクラシックレースに重きが置かれていることを再認識させられることとなる。

 とはいえ、選手が通過すると割れんばかりの歓声。ましてや、ベルギー期待のグレッグ・ファンアーフェルマート(CCCチーム)がトップで来たものだから、驚きと喜び、そして悲鳴までもが入り混じった歓声がグラモンに轟いたのだった。

 ちなみに、「ミュール・ド・グラモン」はフランス語の呼び名。現地フラマン語(オランダ語系)では「ミュール・ヘラールツベルヘン」、または「ミュール・カペルミュール」。そう読むと合点がいく方も多いのではないだろうか。ツール・デ・フランドルで数々の名場面が生まれたミュール・カペルミュールである。今大会での「ミュール・ド・グラモン」表記は、フランスが本来の舞台であるこの大会に合わせたもののようだ。

ミュール・ド・グラモンを越えていくプロトンに向け観衆の大歓声が鳴り響いた Photo: Syunsuke FUKUMITSU

今週の爆走ライダー−ステファヌ・ロセット(フランス、コフィディス ソリュシオンクレディ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 32歳にして初となるツールの舞台(ブエルタ・ア・エスパーニャには4回出場)。ここまでに至る彼の経歴が現地では少々話題になっている。

ツール序盤戦、再三の逃げで目立っているステファヌ・ロセット。32歳にして初出場を果たしている Photo: Yuzuru SUNADA

 アンダー23カテゴリー時代にはナショナルチーム入りを経験し、2010年に当時UCIプロコンチネンタルチームだったヴァカンソレイユで走るも、翌年にはアマチュアへ逆戻り。その後2年間は国内シリーズや地域のレースで勝利を積み重ね、2013年からは自国の小さなチームで活動。現チームには、2015年に加入。いわばプロ再デビューだった。

 苦労を重ねる中でも、自分がサイクリストであるというアイデンティティだけは守り続けたのだという。「職業を聞かれてサイクリストだと答えるたびに、“ツール・ド・フランスを走ったのか?”といつも聞かれていたんだ」と当時を振り返る。いまの年齢でのツール出場について問われ、「これが自分の運命だったのだと思う」と達観する。

 とはいえ、やはり期するものはあったのだろう。ツール第1ステージ、残り50kmを切ったあたりから魅せた1人逃げ。スタート前からチャンスがあれば逃げるつもりだったといい、実行のタイミングこそレース後半だったが、プラン通りトライしてみせた。初出場、最初のステージでの敢闘賞獲得には、「合格点じゃないかな」。どこまでも冷静である。

 今年のフランス選手権個人タイムトライアルで2位。このツールのメンバー入りにあたっては、チームタイムトライアル(第2ステージ)と逃げで期待がかけられているという。「この4~5年でレースシーンは大きく変わったと思う。レースそのものが進化していて、逃げを狙う選手のチャンスは減ってきているのが実情だ」と分析する。ただ、不遇の時でも変えてこなかった走りのスタイル。いまさらそれを曲げるつもりもない。

 良い体調と脚、運、そしてレース展開。自分の力を信じながら、あとはよい巡り合わせをモノにできるか。この3週間は、わずかな可能性を探る旅でもあるようだ。

ツール初出場までの経緯に注目が集まっているステファヌ・ロセット。第1ステージでは敢闘賞を獲得し「合格点」と自己評価してみせた Photo: Yuzuru SUNADA

 2013年から連載をスタートさせたこの「週刊サイクルワールド」。おかげさまで、今回で300回目を迎えることができました。今後も引き続き、サイクルロードレースを中心に、世界のトップシーンの動向を追いかけ続けていきたいと思います。

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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