ツール・ド・フランス2019 第3ステージアラフィリップが鮮やかアタックで逃げ切り フランス入国日にマイヨジョーヌ手繰り寄せる

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 ツール・ド・フランス2019第3ステージは現地時間7月8日、215kmで争われ、終盤のカテゴリー山岳で単独アタックを決めたジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)が、フィニッシュまでの約15kmを独走しステージ優勝した。この日はベルギーからフランスへの入国日で、地元期待度ナンバーワンのライダーが今大会フランス勢初勝利を自国のファンに届けた。アラフィリップはこの勝利により、個人総合首位の証であるマイヨジョーヌも手に。翌日からはイエローのジャージに身をまとって走ることになる。

ツール・ド・フランス第3ステージ。最後の約15kmを独走しステージ優勝したジュリアン・アラフィリップ。マイヨジョーヌも手繰り寄せた Photo: Yuzuru SUNADA

ブドウ畑を縫うコース レース後半にカテゴリー山岳が立て続けに登場

 今大会の開幕地、ベルギー・ブリュッセルで2ステージを戦ったプロトン。第3ステージは、ワロン地域の街・バンシュがスタート地点となる。この街は春に行われるカーニバルが有名で、2003年にはユネスコの無形文化遺産にも登録。ヨーロッパでも最後のお祭りとして知られている。

美しい教会を背に進むプロトン Photo: Yuzuru SUNADA

 そんな情緒溢れる街を出ると、12kmでフランスに入国。いよいよ、本来の舞台での戦いが始まる。ほぼ南に一直線に進むと、フィニッシュ前50kmからカテゴリー山岳が立て続けに現れる。なかでも、残り16kmで通過する3級山岳コート・ド・ミュティニーは、登坂距離こそ900mと短いが、最大勾配にして12.6%。

 その後も細かな上下動が待ち受け、残り5kmからは山岳にカテゴライズされない急坂が登場。この区間に限っては道路舗装がそれまでと異なりコンクリートとなっている。さらに、残り1.5kmからは路面が石畳となっているほか、最後の500mに至っては勾配8%の上り。コース全体を通して道路幅が狭く、登坂区間に入る前などは集団内でのポジショニングに慎重さが求められそう。主催者はこのステージを中級山岳にカテゴライズした。

 また、大会を通じて8カ所に設定される「ボーナスポイント」の1つ目が、コート・ド・ミュティニー頂上に設けられる。上位通過3選手に8秒、5秒、2秒のボーナスタイムが付与され、個人総合成績を狙う選手たちにとって、重要な局面となることも考えられた。

 こうした難所を経て、この日はエペルネーにフィニッシュする。シャンパンが有名で、古くから醸造業が街を潤してきた歴史を持つ。レース後半は、ブドウ畑が広がる地域を進む。

ウェレンスが山岳ポイントを稼いでマイヨアポワ獲得

 そうして迎えたレースは、アクチュアルスタートと同時にヨアン・オフルド(フランス、ワンティ・ゴベール)がアタック。これをステファヌ・ロセット(フランス、コフィディス ソルシオンクレディ)、ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)、ポール・ウルスラン(フランス、トタル ディレクトエネルジー)、アントニー・ドゥラプラス(フランス、アルケア・サムシック)が追随し、そのまま逃げグループを形成した。5人のリードをメイン集団がすぐに容認し、10km進むごとにおおよそ1分単位でその差が開いていく。80km地点でこの日最大となる6分15秒差となった。

アクチュアルスタートと同時に形成された先頭グループ。ティム・ウェレンス(先頭)が牽引する Photo: Yuzuru SUNADA

 メイン集団では、マイヨジョーヌでスタートしたマイク・テウニッセン(オランダ)を擁するユンボ・ヴィスマがコントロールする。先頭との差が6分ほどになったところで、トニー・マルティン(ドイツ)が集団先頭に出てタイム差を調整。先頭の5人は少しずつアドバンテージを減らしていった。

 逃げと集団との形勢はそのままに、102km地点に設けられた中間スプリントポイントへ。まず先頭ではウルスランが1位通過した。メイン集団は先頭通過から4分差で到達し、エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)が集団先頭、全体では6位での通過。ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)、ソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ)と続く。ポイント賞のマイヨヴェールにつながる重要な局面だが、ポイント獲得に動いたのは実質、スプリンター6人ほどだった。

 それからも先頭5人はレースをリードし続けたが、残り100kmを切って以降はメイン集団のペーシングが本格化。残り60kmを切る頃にはタイム差は2分を切った。

単独でカテゴリー山岳を上るティム・ウェレンス Photo: Yuzuru SUNADA

 集団の足音が迫る中、残り50kmを切って迎えたこの日最初のカテゴリー山岳、4級コート・ド・ナンテュイユ=ラ=フォレでウェレンスがアタック。労せず他の4人を突き放すと、ここから独走を開始する。この上りだけでなく、3級コート・ド・オーヴィエ、3級コート・ド・シャンピヨンと、立て続けに1位通過。この時点で山岳ポイント5点を稼ぎ出し、山岳賞争いで首位に浮上。フィニッシュできればマイヨアポワ獲得という状況を作り出す。

 その間、メイン集団では数人が絡む落車が発生したほか、総合争いで期待がかかるティボー・ピノ(フランス、グルパマ・エフデジ)やロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール)、イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)がパンクで車輪交換。だが、いずれも大きなトラブルには至っておらず、問題なくレースに復帰した。

麦畑を見ながら進むプロトン Photo: Yuzuru SUNADA

上りも下りも自在のアラフィリップ マイヨジョーヌも手に

 残り20kmを切る頃には、先頭のウェレンスとメイン集団との差は1分10秒に。アスタナ プロチームを中心に集団のペースが上がっていき、最後の上りとなるコート・ド・ミュティニーに前後してウェレンスを捕まえようという構え。

 だが、ウェレンスも簡単には引き下がらない。勾配10%を超えるミュティニーの上りを懸命に上り、この日4回目の山岳トップ通過を目指す。

上りでアタックを成功させ独走に持ち込んだジュリアン・アラフィリップ Photo: Yuzuru SUNADA

 その後ろでは、決定的な動きが起こっていた。集団最前列へと上がっていたアラフィリップが、頂上を手前にしたタイミングで猛然とアタックしたのだ。コースを脇を埋め尽くした観客の声援を背に、グイグイと加速していく。1位での頂上通過こそウェレンスに譲ったものの、この直後にウェレンスがバイクトラブルで止まったこともあり、アラフィリップが単独で先頭へ。頂上までのわずかな距離で引き離された集団は、その後の下りで追撃を試みることになった。

 独走となったアラフィリップは、得意の下りでスピードを上げ、集団との差を約40秒にまで広げる。メイン集団では、コート・ド・ミュティニーでマイヨジョーヌのテウニッセンが遅れたが、復帰を待つことなくアラフィリップを追いかける。一時的に4人ほどが追走グループを形成したが、すぐに集団がキャッチ。チーム イネオスが牽引を担い、必死に前を追い続けた。

 残り5kmからの短い急坂で一度はタイム差を30秒程度にまで縮められたアラフィリップだったが、続く下りで再び加速。これを機に勢いづき、石畳区間も難なくクリア。フィニッシュへの急坂でもその走りに衰えは見られず、最後までしっかりとペダリングを繰り返した。

 他を圧倒するアタックで独走に持ち込んだアラフィリップ。ツールのステージではキャリア3勝目、今年の個人最多勝利でトップとなるシーズン11勝目を挙げた。レース後の記者会見では、開口一番「言葉にならない。本当に信じられない」と高揚した様子。この日のコースが自分向きであることは早くから感じていたといい、「クラッシュやトラブルに注意しながらレースを進めていた」と会心の走りを振り返った。

独走劇を演じたジュリアン・アラフィリップ。フィニッシュラインを通過するまでしっかりとペダリングを繰り返した Photo: Yuzuru SUNADA

 かたや、アラフィリップの後塵を拝したメイン集団。最後は「上れるスプリンター」たちの上位争いとなり、マイケル・マシューズ(オーストラリア、チーム サンウェブ)がステージ2位を確保。ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)、グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム)、サガンと続いた。

26秒差でフィニッシュしたメイン集団。マイケル・マシューズ(左から2人目)がステージ2位となった Photo: Yuzuru SUNADA

 アラフィリップとの差を最終的に26秒まで縮めたメイン集団だったが、上りフィニッシュの影響で前方で中切れが発生。総合系ライダーは、ピノとエガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス)が前方でステージを終えたが、ステージ13位から54位まではさらに5秒遅れてのフィニッシュとなっている。

 これらの結果から、アラフィリップは個人総合でも首位に浮上。マイヨジョーヌに袖を通すことになった。総合タイム差31秒でこのステージをスタートしたが、フィニッシュでの後続とのタイム差に加え、ステージ1位の10秒、ボーナスポイント2位通過での5秒と、それぞれボーナスタイムを獲得。それまでのビハインドを取り戻したばかりか、個人総合2位のワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)に20秒のタイム差をつけて、次のステージへ進むことになった。

 このほか、各賞ではポイント賞のマイヨヴェールがサガン、山岳賞のマイヨアポワはこの日だけで7ポイント得たウェレンス、新人賞のマイヨブランはファンアールトがそれぞれ首位に立つ。チーム総合ではユンボ・ヴィスマが1位を守っている。

個人総合首位に立ったジュリアン・アラフィリップ。フランス入国日に自国にマイヨジョーヌをもたらした Photo: Yuzuru SUNADA

 翌9日に行われる第4ステージは、フランス北部の主要都市同士であるランスとナンシーを結ぶ213.5km。東へ針路をとる平坦ステージで、中盤と終盤にそれぞれ4級山岳が設定されるが、レースをコントロールするのはスプリンターを擁するチームと予想されている。同様にスプリンターが主役と見られた第1ステージでは、終盤の大規模クラッシュで混乱しただけに、「今度こそ」との強い思いを胸にスタートラインにつく選手も多いことだろう。

第3ステージ結果
1 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) 4時間40分29秒
2 マイケル・マシューズ(オーストラリア、チーム サンウェブ) +26秒
3 ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)
4 グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム)
5 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)
6 マッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)
7 ソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ)
8 クサンドロ・ムーリッセ(ベルギー、ワンティ・ゴベール)
9 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)
10 ティボー・ピノ(フランス、グルパマ・エフデジ)

個人総合(マイヨジョーヌ)
1 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) 9時間32分19秒
2 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) +20秒
3 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) +25秒
4 ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ユンボ・ヴィスマ)
5 マイケル・マシューズ(オーストラリア、チーム サンウェブ) +40秒
6 エガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス)
7 ゲラント・トーマス(イギリス、チーム イネオス) +45秒
8 エンリク・マス(スペイン、ドゥクーニンク・クイックステップ) +46秒
9 グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム) +51秒
10 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、チーム サンウェブ)

ポイント賞(マイヨヴェール)
1 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 76 pts
2 マイケル・マシューズ(オーストラリア、チーム サンウェブ) 59 pts
3 ソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ) 54 pts

山岳賞(マイヨアポワ)
1 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) 7 pts
2 クサンドロ・ムーリッセ(ベルギー、ワンティ・ゴベール) 3 pts
3 グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム) 2 pts

新人賞(マイヨブラン)
1 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) 9時間32分39秒
2 エガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス) +20秒
3 エンリク・マス(スペイン、ドゥクーニンク・クイックステップ) +26秒

チーム総合
1 ユンボ・ヴィスマ 29時間7分4秒
2 チーム サンウェブ +1分44秒
3 EFエデュケーションファースト +1分57秒

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