日本代表・三瓶HCのインタビューも全日本BMX選手権 男女ともにエリート1年目の中井飛馬と丹野夏波がタイトルを獲得

by 織田達 / Satoshi ODA
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 第36回全日本BMX選手権大会が7月7日、広島県安芸高田市にある土師ダムBMXトラックで開催されました。男子エリートは中井飛馬、女子エリートは丹野夏波がともに、昨年優勝したジュニアカテゴリーから昇格し連続で優勝。BMX競技の説明、現在の国内情勢を含め、Kasukabe Vision FILMzの織田達さんによるレポートをお届けします。

男子エリートの好スタートを切ったのは池田大暉(新潟県/Rockstar Rift Tangent)だった Photo: Satoshi ODA

東京五輪を見据えた大会の体制

 BMXでは新潟、埼玉、茨城、大阪、岡山、広島に存在する公認コースがあり、毎年持ち回りで全日本選手権が開催されているが、前回この会場で開催されたのは2011年。8年振り3度目となる。

子供用に開放された試乗も好評 Photo: Daisuke KITAGAWA
パンプトラックを体験する子供と見守るお父さん Photo: Daisuke KITAGAWA

 同大会は、昨年テストイベントを行った「バンクリーグ」を主催する一般財団法人日本サイクルスポーツ振興会にとっても初の主管イベント。オーガナイザーとしてこの大会を支えたBMXレジェンドレーサーの島田忠彦氏によると「会場ではケータリングサービスのほか、パンプトラック体験会や小径車の試乗会など、一般の来場者にむけてアクティビティを充実。ライブ配信サービスを利用したライブ中継など、『観て』・『体験して』を可能にし、東京オリンピックを控え、人気上昇を見込んで受け入れ体制のモデルケースとして取り組みました」と意気込んだ。

フィニッシュまで独走状態の中井飛馬(新潟県/新潟県BMX協会 日本体育大学) Photo: Satoshi ODA

 九州地方が豪雨での被害が連日ニュースで取り上げられているが、ここ広島もちょうど1年前に西日本豪雨の被害によって茨城で行われた全日本選手権への参加できなかった選手、関係者のいろいろな熱い思いが込められた大会でもあった。

 コースは土師ダムに隣接し、水面に反射する光を背景にライダーが飛び、駆け抜ける。大雨の時は水位の上昇により水没してしまうが、「まさ土」で盛られたセクションは水はけが良い。国内では唯一5個のバーム(コーナー)があり、大小のセクションが用意される。第1バーム以降コース幅が狭まり、その先の第2バームがクイックな180度のターンになるため、勝つためにはホールショットが絶対条件とも言えるコース。また各地にあるコース同様、広島県BMX協会によるスクールも定期的に実施されている。

 BMXレースの特徴としてクラスは大きく2つに分類される。ひとつはUCIのカテゴリーであるチャンピオンシップクラス。そしてもうひとつはマスターズを含めた年齢別に区切られたチャレンジクラス。どちらも世界選手権は同じイベントのひとつとしてカウントされ同じコースを使って行われる。違いはチャンピオンシップクラスだけは8mの高さのスタートヒルからスタートして、10m前後のキャニオンジャンプが連続して出てくる。

 今大会も下は5歳から上は50歳オーバーまでのクラスによって争われた。国内競技人口のホットゾーンは小学校中高学年世代。この世代にサイドバイサイドのレースをし、大きなジャンプにも挑戦しておけば、将来どんな自転車にでも乗れる。今回はチャンピオンシップクラスとマスターズに絞ってレポートする。

波乱をまき起こした男子エリート

 準決勝で2016年のチャンピオン吉村樹希敢(大阪府/関西BMX競技連盟 Gan Trigger)が転倒して敗退。その他上位に食い込んでくるのではと思われたライダーも敗退する波乱があり、ディフェンディングチャンピオンの松下巽(神奈川県/神奈川県BMX協会 全日空商事株式会社)もスタート直後にペダルが外れあわや準決勝敗退かと思わせる場面もあった。

エリート準決勝では有力選手の半分が姿を消した。密集しているが故、もらいクラッシュも免れない Photo: Satoshi ODA

 決勝は予選、準決勝を勝ち上がってきた8人のライダーによって全てのゲートが埋まりシグナルとともにスタート。前に出たのは池田大暉(新潟県/Rockstar Rift Tangent)。それに松下、中井飛馬(新潟県/新潟県BMX協会 日本体育大学)。その後に吉井康平(東京都 / 秩父BMX協会 フォスター電気株式会社)が続く。

男子エリート決勝のスタート。チャンピオンとなった中井飛馬(新潟県/新潟県BMX協会 日本体育大学)は左から4番目 Photo: Satoshi ODA

 第1バーム手前のジャンプで池田は若干飛び過ぎ、フロントタイヤが接地したのはバックサイド(着地側の斜面)がなくなったフラットな部分。松下も若干バランスを崩す。昨年のチャンピオンの松下と2着だった池田がアウト側にはらんだ隙に「ここは行くしかないと思った」とイン側に切り込み一気に先頭にでた。ラインを修正した池田と中井のラインをトレースする形で第2バームに向かった吉井が接触し2人とも転倒。そこに松下と長谷川湧斗(茨城県/茨城県BMX協会 (株)関彰商事)が突っ込み多重クラッシュに発展した。

壮絶な2位争いは深川匠(埼玉県/秩父BMX協会)に軍配。高山一成(埼玉県/秩父BMX協会 モトクロスインターナショナル)にはフィニッシュラインが遠かった Photo: Satoshi ODA

 中井はフィニッシュまでリードを保ちエリート初年でチャンピオンを獲得。2位争いは第2バームのクラッシュに巻き込まれなかった深川匠(埼玉県/秩父BMX協会)と高山一成(埼玉県/秩父BMX協会 モトクロスインターナショナル)、古野哲也(新潟県/新潟県BMX協会 team western river)のバトルとなった。最終の第5バームまで高山が先行したが深川がハイロー(バームの高い位置からイン側に切り込む走法)でゴール前の直線で2位に上がった。高山はさらに前に出ようとラインを被せに来るがバランスを崩してフィニッシュライン3メートル手前で転倒。古野が逆転で3位になった。

 優勝した中井は「ジュニア2年連続タイトルからのエリート1年目で勝てた事は超気持ちいいです。金曜日からコースに入っていましたがゲートのタイミングが全然合わずに予選は出遅れたり苦労しました。準決勝ではバッチリ合わせることができましたが、決勝は行くしかないので頭を空っぽの状態で臨みました。世界で戦って行く上でフィジカル、パワーは今後課題になってくるので引き続きトレーニングして行けば改善されてくると思います」とコメント。

男子エリート表彰式。写真左から2位の深川匠(埼玉県/秩父BMX協会)、優勝した中井飛馬(新潟県/新潟県BMX協会 日本体育大学)、3位の古野哲也(新潟県/新潟県BMX協会 team western river) Photo: Satoshi ODA

 火曜日には活動拠点のカリフォルニア・モントレーに移って世界選手権まで調整するという。中井の世界選手権の目標はベスト16(準決勝進出)。オリンピックの選考期間はまだあるので、ワールドカップでも狙っていくとしている。

エリート1年目でタイトルを獲得した丹野

 女子エリートはジュニアと混走になり、3ヒート合計ポイントで争われた。昨年のジュニアチャンピオンの丹野夏波(神奈川県/神奈川県BMX協会 早稲田大学)はジュニア時代エリート女子を喰うのを狙っていたが、エリート初年の今年からは反対に狙われる立場。木曜に体調崩して万全ではなかったようだが、1ヒート目こそジュニアの選手たちに追い詰められそうになるも2本目、3本目は危なげなくトップでフィニッシュし、エリート1年目でタイトルを獲得。

女子エリートと女子ジュニアは混走となった。エリートの丹野夏波(神奈川県/神奈川県BMX協会 早稲田大学)を追う女子ジュニア優勝の酒井亜樹(大阪府/関西BMX競技連盟 DEUX ROUES ELITE TEAM) Photo: Satoshi ODA

 丹野は今年4月マレーシアで行われたアジア選手権で日本女子として初めてタイトルを獲得し、日本とアジアを制したことになる。2位には瀬古遥加(三重県 / 中部BMX協会 IRC TIRE)、3位には朝比奈綾香(大阪府 / 関西BMX競技連盟)が入った。

3ヒートともに1着になり、エリート1年目でタイトルを獲得した丹野夏波(神奈川県/神奈川県BMX協会 早稲田大学) Photo: Satoshi ODA

 丹野は「エリートになり、ジュニアに負けられないというプレッシャーもあった中、目標だった3ヒート1着が達成できてホッとしています。木曜日に熱が出て体調も良く無く不安要素もあったのですが、三瓶コーチの助言もあって落ち着いて自分を取り戻せて良かったです」とレースを振り返った。

女子エリートの表彰式。写真左から2位の瀬古遥加(三重県/中部BMX協会 IRC TIRE)、優勝した丹野夏波(神奈川県/神奈川県BMX協会 早稲田大学)、3位の朝比奈綾香(大阪府/関西BMX競技連盟) Photo: Satoshi ODA

 丹野はエリート1年目だが、世界選手権のメンバーに確定している。目標はファイナリストの8人になることだ。今年のワールドカップ第2戦では準決勝進出を果たし、9位のリザルトを残した。目の前に立ちはだかっている壁は大きいが決して打ち破れないほど分厚くはない。

 男女それぞれのエリートクラスで優勝した中井飛馬と丹野夏波は、「Red Bull Pump Track World Final 2019」の会場で直前に行われる「Last Chance Qualifier」に招待される。

男子ジュニアはアジア選手権出場の増田が制す

男子ジュニア。いわゆるネクストジェネレーション。この世代が強くなれば必然的にエリートも強くなる  Photo: Satoshi ODA

 男子ジュニアのクラスも9人に満たないため、3ヒートの合計ポイントで争われた。国内のシリーズ戦ではエリートと混走となっている男子ジュニア。選手権は別枠でのレースとなるため層の薄さが目立ってしまうが、個々の力が低いわけではない。

 レースは3ヒートともに増田優一(大阪府/関西BMX競技連盟 Formula International Factory)が1着。2着に橋本颯馬(茨城県/茨城県BMX協会)。3位には九州から参加の中尾海斗(佐賀県 / 九州BMX協会 佐賀学園高等学校)が入った。優勝した増田と橋本は日本代表としてアジア選手権に出場した経験を持ち、すでに世界戦の代表メンバーとして確定している。

男子ジュニア、先頭を行く増田優一(大阪府/関西BMX競技連盟 Formula International Factory)とそれを追う橋本颯馬(茨城県/茨城県BMX協会 Photo: Satoshi ODA
男子ジュニアの表彰式。写真左から2位の橋本颯馬(茨城県/茨城県BMX協会)、優勝した増田優一(大阪府/関西BMX競技連盟 Formula International Factory)、3位の中尾海斗(佐賀県/九州BMX協会 佐賀学園高等学校) Photo: Satoshi ODA

 増田は「まず全日本選手権で勝つことが目標だった。それが達成できたので世界選手権に繋げていけたらと思います。ワールドカップにも挑戦していますが、ずっと予選落ちばかりでした。少しずつ落ち着けるようになってきてちゃんとレースができるようになってきたので、どんどん上目指して行きたいと思います」と意欲を見せた。

 女子ジュニアはエリートとの混走。3ヒート合計ポイントのレースを制したのは酒井亜樹(大阪府/関西BMX競技連盟 DEUX ROUES ELITE TEAM)。小学校4年生の時から岸和田競輪場に隣接するコースでBMXを始め、今日が初のビッグタイトルとなった。2位には籔田寿衣(大阪府/関西BMX競技連盟 モトクロスインターナショナル SEレーシング)。3位には早川優衣(岡山県/岡山県BMX協会)。このジュニア3人は実力が拮抗しており、今後楽しみな存在。畠山紗英と丹野夏海の2人のエースを脅かす存在になってくれることに期待する。

3ヒート合計で争われた女子ジュニアは、ヒートごとに着順が入れ替わり、誰が勝つのか最後までわからなかった Photo: Satoshi ODA
女子ジュニアの表彰式。写真左から2位の籔田寿衣(大阪府/関西BMX競技連盟 モトクロスインターナショナル SEレーシング)、優勝した酒井亜樹(大阪府/関西BMX競技連盟 DEUX ROUES ELITE TEAM)、3位の早川優衣(岡山県/岡山県BMX協会) Photo: Satoshi ODA

 かつてのエリートライダーがバチバチに当たり合うマスターズクラス。優勝したのは佐伯進(千葉県/秩父BMX協会)。佐伯の乗るフレームはカーボンとクロモリのハイブリッドフレーム。カーボン+クロモリと聞けばビルダーはすぐに思い浮かぶだろう。また40歳の誕生日を迎えたばかりでバースディウィンとなった。2位には渡辺濃(神奈川県/神奈川県BMX協会)、3位には地元広島の佐々木健吾(広島県 / 広島県BMX協会)が入った。

クロモリとカーボンのパイプを組み合わせたハイブリッドフレームで走る佐伯進(千葉県/秩父BMX協会)はマスターズクラス3連覇 Photo: Satoshi ODA
24インチクルーザークラス40歳オーバーで7年連続チャンピオンの三輪和弘(神奈川県/神奈川県BMX協会)。もはや国内無敵<br /> Photo: Satoshi ODA

BMX日本代表チーム三瓶将廣ヘッドコーチインタビュー

 日本代表チーム三瓶将廣ヘッドコーチとレースオーガナイザーの島田忠彦氏に本大会を振り返ってもらった。

———今大会に長迫吉拓、畠山紗英が不在ですが?

三瓶ヘッドコーチ:彼らはWCC(スイス)にてコーチングを受けてトレーニングをしていて、この後2週間後に世界選手権が控えています。しかもこのレースはオリンピックの代表選考対象ではないため、移動と調整などの時間を考えるとトレーニングの時間がなくなってしまうので、彼らには世界選手権に集中してもらうために不参加となった。

————チャンピオンシップクラスのレースを見てどう思いましたか?

三瓶ヘッドコーチ:男子は有力な選手が5人以上いて、かなりバチバチかなと思っていたが、準決勝でそれが半分に減ってしまい、池田が松下をアウト側に残してしまった。そこに中井をターゲットとするライダーが準決勝で減ってしまったので、スルスルっと抜けられたんではないかと。日本人が世界で戦って行くにはあの曲がり方ができないと無理なので、中井の選択はあれで良かった。

 女子エリートの丹野は心配事がある中でうまく修正できたことはプラスだし、最終的に本来に近いパフォーマンスを発揮できたのは良かったと思う。

 女子ジュニアはある意味波乱だったかもしれない。このコースは昔ながらのトラディショナルなコース設定なのでイコールコンディションだと思っていた。酒井にも十分勝機があった。誰が勝つかよりどれだけ丹野に食らいつくことができるか注目していた。

 男子ジュニアについては順当に増田が勝ったと思う。2位になった橋本も自分の走りがしっかりできたのでプラスだと思う。彼ら2人はワールドカップも一緒に転戦して合宿してお互いを刺激しあっている。いい形のレースだったと思う。

 この後年齢別のチャレンジクラスを含めた日本代表チームは2週間後世界選手権が行われるベルギーに出発。彼らの情報はSNSで「#BMXTEAMJAPAN」でフォローできる。

 今回の全日本選手権は、狭いエリアに写真メディア以外で映像を収めようとする映像メディアが7~8社ほどいたようだ。勝負の付き方が単純ではっきりしているし、何よりダイナミックなアクションは観戦型としては最高の競技。オリンピックに向けてBMXの注目度が増していくであろう。

男子エリートリザルト
1位:中井飛馬(新潟県/新潟県BMX協会 日本体育大学)
2位:深川匠(埼玉県/秩父BMX協会)
3位:古野哲也(新潟県/新潟県BMX協会 team western river)

女子エリートリザルト
1位:丹野夏波(神奈川県/神奈川県BMX協会 早稲田大学)
2位:瀬古遥加(三重県/中部BMX協会 IRC TIRE)
3位:朝比奈綾香(大阪府/関西BMX競技連盟)

男子ジュニアリザルト
1位:増田優一(大阪府/関西BMX競技連盟 Formula International Factory)
2位:橋本颯馬(茨城県/茨城県BMX協会)
3位:中尾海斗(佐賀県/九州BMX協会 佐賀学園高等学校)

女子ジュニアリザルト
1位:酒井亜樹(大阪府/関西BMX競技連盟 DEUX ROUES ELITE TEAM)
2位:籔田寿衣(大阪府/関西BMX競技連盟 モトクロスインターナショナル SEレーシング)
3位:早川優衣(岡山県/岡山県BMX協会)

マスターズリザルト
1位:佐伯進(千葉県/秩父BMX協会)
2位:渡辺濃(神奈川県/神奈川県BMX協会)
3位:佐々木健吾(広島県/広島県BMX協会)

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