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栗村修の“輪”生相談<157>30代男性「グランツールのモーターバイクについて教えてください」

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今年もグランツールが始まりましたね。走る選手たちは強者揃いでライディングのスキルやテクニックに毎回驚かされていますが、先日テレビを観ていてレースを支える側のモーターバイクスタッフのライディングスキル/テクニックも気になりました。

 ほとんどのバイクが重量のある大排気量タイプにも関わらず、長い激坂ではふらつく事なく自転車の速度で走行しますし、ダウンヒル区間ではクレイジーな選手たちに合わせて断崖絶壁を高速で下ります。軽量な自転車に合わせるようにブレーキングもコーナーリングもこなしています。カメラバイクなんてタンデムでそれです。心身共にとても毎日できる仕事ではないと感じました。

 そこで質問です。グランツールの規模になるとモーターバイクのスタッフは交代制になるのでしょうか。また、車両も登り用の低速ギヤを搭載した専用カスタマイズだったり、そういった車両が提供されているのでしょうか。

 何かとトラブルが起こらないとフォーカスが行かないモーターバイクですが、長いレースの中の一つの楽しみ方としてご教示ください。宜しくお願い致します。

(30代男性)

 近年の日本では、海外の有名レースは言うに及ばず国内レースもよくライブ配信されるようになっています。

 しかし、海外レースと国内レースを見比べて映像の迫力や安定感などの違いを感じたことがある方は少なくないと思います。僕も、正直いってまだかなりの違いを感じてしまいます。向こうのモーターバイクのライダーとカメラマンはあきらかに特殊技術をもって撮影していますよね。

 そう、自転車ロードレースを撮影することはかなりの特殊スキルなので、ヨーロッパでもそれができる人材は限られます。そういう人々がレースに帯同しているわけです。J SPORTSオンデマンドには視聴者が映像を切り替えられる「マルチカメラ機能」があるのですが、それを使うと通常モーターバイクカメラ1、2、3、4、5と、5台くらいの視点を楽しめます。テレビ放送で映し出される映像は主に「1.先頭集団+2.メイン集団+3.ヘリコプター」の3カメラが標準パターンですが、実際にはモーターバイクカメラだけでも同時に5台くらいが走っているようです。それらがバックアップの役割を持ちつつ交代しながら毎日走っているのでしょう。

ダウンヒルする選手をローアングルで撮影するバイクカメラマン =ツール・ド・ランカウイ2003 Photo: Yuzuru SUNADA

 また、海外レースと国内レースのモーターバイクカメラマン及びモーターバイクを比較すると次のような違いが見て取れます。

◯使用カメラ
海外=ショルダータイプの大型カメラを使用。
国内=手持ちタイプの小型カメラを使用。

◯撮影方法
海外=前方撮影時はカメラを肩に担いで立って撮影。後方撮影時は斜め横向きに座りカメラを太ももの上に置いて撮影。
国内=前方撮影時も後方撮影時も基本的にカメラを手で持って撮影。

◯モーターバイク
海外で使用されているモーターバイクは、カメラマンが立って撮影する時用の大型ステップと、比較的平面でスペースのある後部座席が特徴。(特殊な低速用ギヤなどを搭載しているかはわかりません…)

 ちなみに国内レースを撮影しているカメラマンさんに聞いた話ですが、撮影時はモーターバイクの後部座席にどっかり座ることはなく、中腰の態勢で手足をショックアブソーバーにしてブレを防ぐそうです。綺麗な映像を皆さんに届けるためには、ここまでの努力が必要だということです。

集団の後ろでバイクに立って撮影 =ツール・デ・フランドル1997 Photo: Yuzuru SUNADA

 やはり、大変な体力と技術が必要で、しかも危険な仕事であることは間違いありません。海外の中継用モーターバイクカメラの後ろには映像をヘリに飛ばすためのアンテナがありますが、かなり強力な電波を発しているとのことで電磁波の影響なども懸念されます。

 モーターバイク自体も特別だと思いますが、それ以上にライダーやカメラマンのスキルや体力が特別だといえます。もしかしたら選手以上に厳しい仕事かもしれません。

(編集 佐藤喬)

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまで、タイトルを「輪生相談質問」としてお寄せください。

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