ツール・ド・フランス2019 第1ステージテウニッセンが今大会最初のマイヨジョーヌ エース落車による“代役”で大金星

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 第106回ツール・ド・フランスが、現地時間7月6日に開幕した。出場22チーム・全176選手が今年のグランデパール(開幕地)であるベルギーの首都ブリュッセルを出発。いよいよ3週間の戦いが始まった。この日行われた第1ステージは、そのブリュッセルを発着するルートが設定され、マイク・テウニッセン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)がステージ優勝。フィニッシュ前1.5kmで発生した大規模落車にエーススプリンターのディラン・フルーネウェーヘン(オランダ)が巻き込まれるも、その代役を務めて今大会最初の勝者に。テウニッセンはマイヨジョーヌに袖を通し、次のステージへ臨むことになった。

ツール・ド・フランス2019第1ステージ。大混乱となったスプリントはマイク・テウニッセン(右)が今大会最初の勝者となった Photo: Yuzuru SUNADA

3週間・総距離3480.3kmに及ぶ旅の始まり

 7月4日に行われたチームプレゼンテーションから、出場チーム・選手の関連イベントが本格的にスタート。同日から翌5日にかけては、主催者がセッティングしたプレスカンファレンス(記者会見)に各チームが臨み、ツール開幕のムードが急激に高まった。

パレス・ロワイヤルに設けられたスタート地点に並んだ選手たち。いよいよツール2019が幕を開ける Photo: A.S.O./Olivier CHABE

 ブリュッセルでの開幕は61年ぶり。ベルギーが誇る伝説のレーサー、エディ・メルクスのツール初制覇から50周年を記念し、同地でのグランデパールが実現した。また、ツールのリーダージャージである「マイヨジョーヌ」が採用されてから100年の節目の大会。今回のマイヨジョーヌは、日々異なるデザインが用いられ、各ステージにちなんだ象徴的なテーマやヒーロー、スポットが描かれる。

 3週間・全21ステージ、総距離3480.3kmに及ぶ長旅は、ブリュッセルを発着する194.5kmのステージによって幕が開ける。ブリュッセル王宮が目の前にはだかる「パレス・ロワイヤル」(王立広場)を出発したプロトンは、おおよそ反時計回りに進行。スタート以降、北部・フランデレン地域のフラームス=ブラバント州、オースト=フランデレン州、南部・ワロン地域のエノー州、ブラバン・ワロン州と順に通過。終盤はブリュッセル市街地を抜けて、「ガラスの宮殿」としても知られるラーケン王宮にフィニッシュする。

 ベルギーの情緒たっぷりのルート設定にあって、同国の熱狂的なサイクリングファンが集まったのが、3級山岳の「ミュール・ド・グラモン」と4級山岳の「ボスベルグ」。北のクラシックでもおなじみの石畳の登坂区間は、早朝からファンが集まり、レース通過数時間前から熱気に包まれた。レース前半に組み込まれたこともあり、勝負に大きな影響を及ぼすほどではなかったが、山岳賞ジャージ「マイヨアポワ」の最初の着用者を決めるのには、ぜいたくなまでに整えられた舞台となった。

ブリュッセル市街地をパレード走行するプロトン Photo: Yuzuru SUNADA

ファンアーフェルマートが自国でのジャージ獲得に向けアタック

 そんな演出に応えるかのように、“自転車の国”のエースが真っ先に動いた。

 ブリュッセル市街地を抜けてアクチュアルスタートが切られると、グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム)が、ナトナエル・ベルハネ(エリトリア、コフィディス ソルシオンクレディ)、マッズウルス・シュミット(デンマーク、カチューシャ・アルペシン)、クサンドロ・ムーリッセ(ベルギー、ワンティ・ゴベール)を引き連れて先行を開始。メイン集団は早々に4人を容認。20km地点を過ぎる頃には3分以上のタイム差となった。

ミュール・ド・グラモンを先頭で上るグレッグ・ファンアーフェルマート(右)。このステージを終えてマイヨアポワを手にした Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 先頭の4人が狙うのは、2カ所の山岳ポイント。先に到達したミュール・ド・グラモンでは、ベルハネがはじめに仕掛けるが、これをファンアーフェルマートがしっかりとチェック。さらにムーリッセが追随したが、ここは石畳の走りに一日の長があるファンアーフェルマートが先着した。

 続くボスベルグは、ムーリッセが1位通過。これでファンアーフェルマートとムーリッセが山岳ポイント2点で並んだが、上級カテゴリーでの上位通過数が反映されるため、この時点での山岳賞首位はファンアーフェルマートとなった。

 このステージでのカテゴリー山岳を終えたところで、ファンアーフェルマートは先頭グループから下がり、メイン集団へ戻ることに。自国ベルギーでの最初のミッションは、マイヨアポワの獲得だったことをうかがわせる。一方、他の3人は引き続きレースをリード。少しずつ勢いを増してきたメイン集団にタイム差を縮められつつも、逃げの姿勢は崩さず進んでいった。

ミュール・ド・グラモンを上るプロトン。熱狂的な応援を背に進んでいく Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 先頭グループとメイン集団、両者の形勢に変化が見られたのは、残り76kmでやってきたパヴェセクション。メイン集団ではボーラ・ハンスグローエを中心にペースアップを試みると、先頭3人とのタイム差は一気に縮まる。この間、エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)がパンクでバイク交換を行ったほか、総合系ライダーではダニエル・マーティン(アイルランド、UAE・チームエミレーツ)が集団の中切れによって一時後方に取り残されるが、ともにしばらくして集団に復帰を果たしている。

パヴェセクションを進むアレハンドロ・バルベルデ Photo: Yuzuru SUNADA

 メイン集団はパヴェ通過後もスピードを緩めることなく、残り70kmで先頭3人をキャッチ。さらに、その直後に控えた中間スプリントポイントへ、スプリンターチームが中心となって主導権争いが激化していった。

 ボーラ・ハンスグローエ、CCCチームなどが前を固めて迎えたスプリント。先に仕掛けたソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ)のチェックに動いたペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)がポイント手前でトップに立ち、そのまま1位通過。20ポイントを獲得しポイント賞「マイヨヴェール」に向け、幸先のよい出足。2位はコルブレッリ、3位はファンアーフェルマートと続いた。

 タフな状況が続いたプロトンだったが、中間スプリントポイントを通過しいったんブレイクの趣き。ペースが緩んだところで、ステファヌ・ロセット(フランス、コフィディス ソルシオンクレディ)が単独で飛び出し、レースは次なる展開へと進んでいく。

クラッシュを避けた精鋭による優勝争い テウニッセンがライバルしのぐ

 独走となったロセットに対し、メイン集団はタイム差をコントロール。残り45kmで1分45秒差となったのを境に、残り30kmで1分25秒、残り20kmで1分と、着々とその差を減らしていく。この頃には、メイン集団はスプリント狙いのチームがペーシングを担い、フィニッシュに向けて態勢を整えていく。

残り10kmを切るまで独走を続けたステファヌ・ロセット Photo: Yuzuru SUNADA

 快調に見えた集団に緊張感が走ったのは残り18km。数人が絡む落車が発生し、この中に個人総合優勝候補のヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ プロチーム)が巻き込まれる。すぐに立ち上がって再スタートを切ったが、顔面からの流血も見られ、ダメージは決して小さくない様子。アシスト陣4人がフルサングの引き上げのために牽引し、残り10kmとなったところで集団復帰に成功させた。

 1人粘ったロセットだったが、残り9.5kmで集団が吸収。スプリントに向けた主導権争いは佳境に入る。しばらくはスプリンターチーム、総合狙いのチームとが入り乱れてポジション争いが展開されたが、残り5kmを切るとスプリンターチームが主となってフィニッシュへと急ぐ構えへ。ボーラ・ハンスグローエやロット・スーダル、残り3kmを切ったところからはドゥクーニンク・クイックステップも前線へ。リードアウトマンたちがエースの引き上げを試みた。

 テクニカルなコーナーが続いたブリュッセル市街地を抜け、残り1.5kmとなったところでこの日最大のアクシデントが発生した。集団前方に位置した選手の落車をきっかけに、大規模なクラッシュへと発展。このステージの優勝候補では、フルーネウェーヘンが巻き込まれ、完全に戦線から脱落した。

マイク・テウニッセン(右から2人目)とペテル・サガン(左から2人目)がハンドルを投げ出してのステージ優勝争い。写真判定の末テウニッセンに軍配が上がった Photo: Yuzuru SUNADA

 このクラッシュをきっかけに集団は大混乱。前方で生き残った選手たちがそのまま最終局面を迎える格好となった。上り基調のフィニッシュ前。残り300mで押し出されるようにして先頭に立ったマイケル・マシューズ(オーストラリア、チーム サンウェブ)がやむなくスプリントを開始すると、サガンがぴったりとチェック。残り200mで満を持してトップに出たかに思われたが、その脇から伸びてきたのはテウニッセン。最後は両者が並んでハンドルを投げ出しながらフィニッシュラインを通過。写真判定の末、軍配はテウニッセンに挙がった。

 26歳のテウニッセンは、これがツール初勝利。当初はフルーネウェーヘンの発射台を務める予定だったが、フィニッシュ直前のクラッシュによって舞い込んできた“代役”で勝利を挙げた。レース後の記者会見では、「フルーネウェーヘンの落車には気づいていなかった」としながらも、「スプリントできるだけの脚はあった。ただ、みんなが失速していくのが見えたことは驚きだった」と最終局面を振り返っている。同時に、「フルーネウェーヘンともこの勝利を喜びたいし、彼は次の目標に向けて走り出すはず」とエーススプリンターを気遣うことも忘れなかった。

今大会最初のマイヨジョーヌ着用者となったマイク・テウニッセン Photo: Yuzuru SUNADA

 大会初日を終えた時点で、テウニッセンがマイヨジョーヌとマイヨヴェール、ファンアーフェルマートがマイヨアポワ、新人賞のマイヨブランはステージ3位のカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)が受け取っている。また、フィニッシュ前3km以内での大規模クラッシュだったことにより、分断された集団の後方に取り残された選手たちの多くがトップと同タイム扱い。個人総合2連覇がかかるゲラント・トーマス(イギリス、チーム イネオス)も巻き込まれたが、大事には至っていないことを明かしている。

 大会は引き続きブリュッセルが舞台。7日に行われる第2ステージは、ブリュッセル王宮をスタートし、ブリュッセル・アトミウムにフィニッシュする27.6kmのチームタイムトライアルが行われる。コースには幹線道路が使われるため、ハイスピードでフィニッシュ地点まで突き進んでいくことになりそうだ。フィニッシュタイムは約30分と予想されているが、総合で上位進出を目指す選手にとっては、数秒の遅れも避けたいところ。チーム力が試される。

第1ステージ結果
1 マイク・テウニッセン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) 4時間22分47秒
2 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) +0秒
3 カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)
4 ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、ディメンションデータ)
5 ソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ)
6 マイケル・マシューズ(オーストラリア、チーム サンウェブ)
7 マッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)
8 オリバー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼール ラモンディアール)
9 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)
10 ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)

個人総合(マイヨジョーヌ)
1 マイク・テウニッセン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) 4時間22分37秒
2 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) +4秒
3 カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) +6秒
4 ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、ディメンションデータ) +10秒
5 ソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ)
6 マイケル・マシューズ(オーストラリア、チーム サンウェブ)
7 マッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)
8 オリバー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼール ラモンディアール)
9 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)
10 ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)

ポイント賞(マイヨヴェール)
1 マイク・テウニッセン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) 50 pts
2 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 50 pts
3 ソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ) 33 pts

山岳賞(マイヨアポワ)
1 グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム) 2 pts
2 クサンドロ・ムーリッセ(ベルギー、ワンティ・ゴベール) 2 pts

新人賞(マイヨブラン)
1 カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) 4時間22分43秒
2 アムントグレンダール・ヤンセン(ノルウェー、ユンボ・ヴィスマ) +4秒
3 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)

チーム総合
1 ユンボ・ヴィスマ 13時間8分21秒
2 ワンティ・ゴベール +0秒
3 ドゥクーニンク・クイックステップ

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