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旅サイクリスト昼間岳の地球走行録<33>陸続きだけれど道がない中南米 ヨットでつなぐカリブ海の自転車旅

by 昼間岳 / Gaku HIRUMA
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 カリブ海の澄み渡る海と白いサンゴ礁の島々に立ち寄りながらヨットで渡ることが出来たのは、この旅でも最高の思い出のひとつだ。中米と南米は陸続きだが「道がない」ということは旅に出てから知った。「ダリエンギャップ」と呼ばれるゲリラの拠点としても有名な未開のジャングルが広がっており、道路が通っていない。2010年当時、中米のパナマから南米のコロンビアに渡る手段として、飛行機・ヨット・貨物船という選択肢があった。その中で現実的だったのが飛行機とヨットだった。その後フェリー会社が航路を通し、移動はだいぶ楽になったそうだが、再度調べてみるとそれもすでに廃業してしまったというから旅の世界も移り変わりが早い。

このヨットに乗って南米大陸に本当に行けるのかと胸が高まる Photo: Gaku HIRUMA

ヨット選びで見るべきは船長の人柄

 さて、飛行機・ヨット・貨物船という選択肢があった時、やはり最も一般的なのは飛行機だ。ヨットに比べると費用も安く快適なため、バックパッカーは迷わず飛行機を選ぶことをおすすめするが、サイクリストの信条として出来るだけ陸路を繋ぎたいという気持ちからヨットを選ぶ人が多かった。

 カリブ海をヨットで渡れるなんて、なんて素敵な響きだろうと思うかも知れないが、問題もある。ヨットの当たり外れが極端に酷いのだ。ヨットを選んだ人の感想は「最悪」という人もいれば、「最高」という人もいるくらい極端だった。それは船長の性格や船の設備だったり、海の時化具合や出される食事の質、同乗した客のわがままだったり、それらが重なるときは、とんだ船旅になるらしかったが、結論からいうと、僕らの乗ったヨットはまさにカリブ海クルーズと言ってもいいくらいの、大当たりのヨットを引き当てることが出来た。

 ヨットの運行情報は現地のバックパッカー宿に集まってくる。レセプション脇のボードに出航日時、募集定員、費用などが書き出される。シーズンによるが、毎日~週1本くらいの運行頻度らしい。当時の相場は300~400ドルくらいだった。飛行機が200ドル弱で乗れることを考えると割高だ。

 ここで自分の希望に合ったヨットをレセプションに伝え、申し込む。出来るだけ船長と直接会い、船の設備や日数、寄港地などを確認しておくことをおすすめする。正直いって設備などは写真を見るくらいで、実際とかけ離れていることは少なくないし、同乗客も当然選べない。ここでできることは唯一、船長の人柄を見ることだ。航行中、船長には当然命と自転車を含む装備品全て、それにパスポートも預けることになる。

 出入国の手続きは全て船長が行う。南米のコロンビア入国の際は入国審査に時間がかかるということで、パスポートを船長に預けたまま、後日指定されたホステルで無事受け取った。信頼できる船長だったのでなにも不安は無かったが、やはり船長の人柄は最も注意して見ておくべき点だと思う。そして当然、自転車を積み込めるかを確認しておく。ヨットを使うサイクリストは多いので、事前に申告しておけば問題ない。

イメージそのままの美しさと自由さ

 僕は友人のサイクリストとパナマシティの宿で落ち合い、一緒に小型のヨットに決めた。小型なので波の影響はかなり受けそうだったが、少人数の方が落ち着いた船旅になるかと思ったし、なにより船長の落ち着いた信頼できそうな雰囲気で、このヨットに決めた。

 僕はてっきり太平洋側のパナマシティからヨットが出るのかと思っていたら、カリブ海側のポルベニールという港町から出航するらしく、ポルベニールまでは110kmを自走することになった。パナマ運河で有名なパナマ地峡を縦断する。運河があるくらいだから平坦なのかと思っていたが、山の中のうっそうとしたジャングルを通過した。いかにここに運河を通すのが大変だったかを肌で感じることが出来る。

 そして出港地ポルベニールに着いて指定されたホステルに入り、船長と合流すると、なんともう一人日本人サイクリストが一緒に乗っていくと告げられて、偶然にも日本人サイクリスト3人の貸し切り船になった。

一緒に乗船した日本人サイクリストの出堀良一さん、伊東心さんと一緒に南米上陸へ上陸した Photo: Gaku HIRUMA

 ボートで沖に停泊しているヨットに乗り込む。自転車と荷物を慎重に積み込み、船長の指示に従ってヨットに括り付けて出航した。

ヨットに自転車を括り付ける。潮風にさらされるので、下船後よく洗車する必要がある Photo: Gaku HIRUMA

 カリブ海のヨットクルーズは自由で、まさにカリブ海のイメージそのものだった。朝、照り付ける太陽で暑くなったキャビンを抜け出し、そのまま透き通る海に飛び込む。真っ白い砂浜のプライベートビーチ、ならぬプライベートアイランドで心ゆくまで泳いだら、ビールとラムを飲みながら夕方涼しくなったデッキで真っ赤に染まる海上の夕陽を楽しんだ。

プライベートビーチならぬプライベートアイランドに上陸する Photo: Gaku HIRUMA

 月明かりがヤシの木のシルエットをはっきりと映し出し、白い砂浜とどこまでも透明なブルーの海は、まるでそれ自体が発光しているかのように美しく、妖しく神秘的に照らし出していた。沖に浮かぶヨットでは、無人島に優しく打ち寄せる波をBGMに星を仰ぎながら横になる。静かな海はまるで揺り籠で優しく揺られているかのようだった。

カリブ海は信じられないくらい透き通り、サンゴ礁で出来たビーチは真っ白だった Photo: Gaku HIRUMA
涼しくなったデッキからカリブ海の夕暮れを望む。カリブ海という響きだけでもビールとラムが進む Photo: Gaku HIRUMA
良く食べるサイクリスト3人でも、充分満足出来る量の美味しい料理が提供される Photo: Gaku HIRUMA

 3泊4日の船旅で2泊はカリブ海の島々を巡りながらのんびり進み、3日目に外洋に出るとヨットは南米に向けて一気に速度を上げ、夜通し走り続ける。外洋は流石に多少揺れるので、大概の人は船酔いになるが、それでもその分南米大陸が見えた時の感動は、陸路でアラスカから繋いできた道が南米まで繋がったという達成感と南米大陸への期待感で、ひとしおに感じることが出来た。

昼間岳昼間岳(ひるま・がく)

小学生の時に自転車で旅する青年を見て、自転車で世界一周するという夢を抱いた。大学時代は国内外を旅し、卒業後は自転車店に勤務。2009年に念願だった自転車世界一周へ出発した。5年8カ月をかけてたくさんの出会いや感動、経験を自転車に載せながら、世界60カ国を走破。2015年4月に帰国した。『Cyclist』ではこれまでに「旅サイクリスト昼間岳の地球写真館」を連載。ブログ「Take it easy!!

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