ツール・ド・フランス2019直前コラム<5>バルデとピノが揃って出場!フランス人34年ぶりの総合優勝は実現するのか?

by あきさねゆう / Yuu AKISANE
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 1985年にベルナール・イノーが総合優勝して以来、ツール・ド・フランスを勝ったフランス人選手は登場していない。そのなかで久々に総合優勝の期待が高まっているのが、ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール)とティボー・ピノ(フランス、グルパマ・エフデジ)だ。今回は2人が総合優勝する可能性について考察してみる。

フランス人34年ぶりマイヨジョーヌ誕生なるか。期待のかかるロマン・バルデ(左)とティボー・ピノ(右) Photo: Yuzuru SUNADA

長い暗黒期を経て、希望の光の登場

 では、フランス人がマイヨジョーヌを最後に獲得してから久しいが、その間ツールに強かった国はどこなのか。過去30大会のツールの総合表彰台(総合1〜3位)に上った選手の国籍と人数・回数を調べてみた。

 最も多く表彰台に送り込んだ国はスペインだ。ミゲル・インドゥラインやアルベルト・コンタドールら、9人で計19回。次いで多いのはイタリアでヴィンチェンツォ・ニバリやイヴァン・バッソら5人で計12回。3位はイギリスでクリストファー・フルームやブラッドリー・ウィギンスら3人で計8回、4位はドイツでヤン・ウルリッヒやアンドレアス・クレーデンの2人で計8回だった。フランスは5人で計7回であり、5番目に多い国となっている。

1989年ツール・ド・フランス総合2位となったローラン・フィニョン =写真は1991年パリ〜ルーベにて Photo : Yuzuru SUNADA
2014年ツール・ド・フランスで総合2位となったジャン=クリストフ・ペロー Photo : Yuzuru SUNADA

 フランス人で総合表彰台に上がった5人の内訳は、1989年2位のフィニョン、1996年3位・1997年2位のリシャール・ヴィランク、2014年2位のジャン=クリストフ・ペロー、2014年3位のピノ、そして2016年2位・2017年3位のバルデだ。ということで、直近5年では4回の総合表彰台を獲得しており、直近5年の回数でいえば、イギリスの5回に次いで2番目に多い。つまり、ツールにおいてフランスはマイヨジョーヌ争いにおける第2の強豪国であるといえよう。

 その立役者こそがバルデとピノだ。共に1990年生まれ、今年29歳となりプロとして一番脂の乗った円熟期を迎えている選手である。

7年連続でツールに出場するバルデ

 バルデが総合2位を獲得した2016年ツール、しかしながら優勝したフルームから4分5秒と大差がついていた。バルデが苦手とする個人タイムトライアルで、計3分31秒失ったことが大きな敗因であった。

 そこでバルデは、元イギリスTT王者にして、キャリア通算17回の個人TTでの勝利を飾ったデヴィッド・ミラーをコーチに招聘。風洞実験をしながらタイムトライアルのポジション改善に取り組んだ。

 ところが、2017年ツールでもバルデはタイムトライアルで大きくタイムを失ってしまった。特に総合2位で迎えた第20ステージの個人TTでは、バッドデーが重なったのか、前半から力なく苦悶の表情を浮かべながら走っていた。ステージ52位と大失速し、総合3位に転落。さらに総合4位のミケル・ランダ(スペイン)とはわずか1秒差であり、危うく総合表彰台を逃すところだった。

 不調ながらも表彰台を守るために死力を尽くしたバルデは、レース直後に地面に座り込むほど憔悴しきっていた。そのような状況でもバルデからコメントを取ろうと、報道陣が何重にも囲んでいた。フランスの期待を背負ってツールに挑むということは、このようなメディアを通じた世間からのプレッシャーを背負うことでもあった。

大失速した個人タイムトライアル走破直後、報道陣に囲まれるロマン・バルデの姿 Photo: Yuzuru SUNADA

 2018年は未舗装路を走るストラーデ・ビアンケで3位、世界最古のクラシックであるリエージュ~バストーニュ~リエージュで3位、さらに獲得標高4600mという超難関コースを走るインスブルックでの世界選手権で2位と、非常にタフなレースで結果を残した。しかし、肝心のツールではステージ未勝利に終わり総合6位。あまり目立たないまま大会が終わった印象だった。

2018年インスブルック世界選手権で2位となったロマン・バルデ(左) Photo: Yuzuru SUNADA

 2019年シーズンは不調に陥り、軒並み前年より成績を落としている状況でツールを迎えることとなった。さらに、今季はチームも予算削減を強いられ、オフに思うような補強はできなかった。頼みの綱であった昨年新人賞を獲得したピエール・ラトゥール(フランス)もコンディションが整わず、ツールを欠場。ジロに出場したアレクシー・ヴィエルモーズ(フランス)が急遽出場を決めるなど、苦しい台所事情が露呈している。

 このように、プラスとなる要素がほとんど見当たらないため、バルデを総合優勝候補に推す声もあまり聞かれない。むしろバルデをメディア・世論のプレッシャーから解放させ、心の余裕を持ってツールに参加できる状況だ。それは、バルデにとって、とても大事なことかもしれない。

主戦場をジロに移していたピノ

 一方のピノもメディア・世論のプレッシャーに押し潰されていた一人だった。

 2012年ツールではグランツール初出場にしてステージ1勝&総合10位と鮮烈なデビューを飾ると、2014年には総合3位で新人賞を獲得。否が応でも期待の高まるなかで出場した2015年大会は序盤から精彩を欠き、総合戦線からは早々と脱落。第20ステージで勝利して面目躍如となるも、翌2016年大会は体調不良に陥り途中リタイアとなった。

2016年ツール・ド・フランスでは山岳賞ジャージを狙える順位だったが、体調不良でリタイア Photo: Yuzuru SUNADA

 チーム首脳陣はピノをメディア・世論のプレッシャーから解放させるために、2017年はジロへの参戦を決めた。終盤まで総合優勝争いを繰り広げ、ステージ1勝&総合4位とグランツールレーサーとして好成績を残した。

 2018年はツールを回避して、ジロとブエルタに出場。ジロは大会終盤に体調を崩して最終ステージを前にリタイア。ブエルタではステージ2勝をあげる活躍で総合6位となった。さらにモニュメントの一つであるイル・ロンバルディアで優勝を飾るなど、キャリア最高の一年といえる活躍を見せていた。

 プレッシャーの少ないところで経験を積み、実力をつけたピノは、2019年シーズンいよいよ満を持してツールへの参戦を表明。ここまでシーズン4勝を飾るなど好調を維持し、マイヨジョーヌ獲りに意欲を燃やしているのだ。

2017年ジロ・デ・イタリア第20ステージで勝利したティボー・ピノ Photo: Yuzuru SUNADA

 チームとしても、2018年シーズンよりグルパマがメインスポンサーとなったことで、予算が大幅アップ。的確な補強により、チーム強化に成功しており、昨年はシーズン33勝を飾るなど、チーム状態も上向きだ。

 今大会にも、ベストメンバーに近い布陣で挑むことができ、ピノを総合優勝候補に推す声も多く、前評判は高い。

 バルデとピノ。同い年の2人の置かれた状況は対極にある。チームも本人も不調のバルデ。チームも本人も好調のピノ。プレッシャーと真正面から向き合っていたバルデ。プレッシャーを回避してキャリアを積んだピノ。しかし、目指すところは共にツールの頂点で一致している。

 もし、2人で総合優勝を争うような展開になれば、メディア・世論は2人をプレッシャーにさらされてきた2人だが、プレッシャーを2人で分け合えるかもしれない。バルデとピノ、2人が揃って活躍できれば、34年ぶりのフランス人マイヨジョーヌ誕生が近づくことだろう。

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