ツール・ド・フランス2019直前コラム<3>最強若手ライダーを決める「マイヨブラン」の有力選手は誰か?

by あきさねゆう / Yuu AKISANE
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 世界最大の自転車ロードレースであるツール・ド・フランス。栄光の黄色いジャージ「マイヨジョーヌ」を巡って、21日間の戦いが繰り広げられる。だが、ツールには「マイヨジョーヌ」以外にも、価値の高い特別ジャージが存在する。緑の「マイヨヴェール」、赤水玉の「マイヨアポワルージュ」、白の「マイヨブラン」だ。今回は「マイヨブラン」のランキングシステムや有力選手についてプレビューしていく。

25歳以下の最強選手を決めるマイヨブラン。2018年はピエール・ラトゥールが獲得した Photo : Yuzuru SUNADA

若くても経験は必要?

 「マイヨブラン」は、1969年に複合賞(=ブエルタ・ア・エスパーニャでは現存する総合成績・スプリントポイント・山岳ポイントの順位の合計で争う賞)獲得者が白いジャージを与えられるようになったのが始まりだ。1975年より25歳以下の選手のなかで最も総合成績の良い選手が新人賞として表彰されるようになり、白いジャージも引き継がれた。その後、複合賞が復活したり、マイヨブランの授与が廃止されたりしながら、2000年以降再びマイヨブランが新人賞ランキングトップの選手に与えられるようになった。

マイヨブランが復活した2000年に受賞したのは写真左のフランシスコ・マンセボだ。19年後のいまも現役バリバリだ Photo : Yuzuru SUNADA
2度目のグランツール参戦にして総合優勝を飾ったアルベルト・コンタドール Photo: Yuzuru SUNADA

 現在のルールでは、その年に25歳を迎える選手、つまり今年でいえば1994年1月1日以降に生まれた選手が受賞対象となる。新人賞の対象であれば、何度も受賞することが可能で、これまでにも2008〜2010年のアンディ・シュレク(ルクセンブルク)、2013、2015年のナイロ・キンタナ(コロンビア)ら複数回受賞した選手も存在する。

史上最多タイ、3年連続マイヨブランを獲得したアンディ・シュレク Photo: Yuzuru SUNADA

 1975年以降、のべ43人が新人賞を獲得したが、同時に総合優勝を飾った選手は1983年のローラン・フィニョン(フランス)、1997年のヤン・ウルリッヒ(ドイツ)、2007年のアルベルト・コンタドール(スペイン)、2010年のアンディ・シュレクの4人のみと、およそ10年に1人の逸材のみが成しうる偉業だといえよう。

 また、グランツール初出場で新人賞に輝いた選手も、1981年のピーター・ヴィネン(オランダ)、1990年のジル・デリオン(フランス)、1993年アントニオ・マルティンの(スペイン)、1996年のヤン・ウルリッヒ(ドイツ)と、わずか4人のみだ。

 つまり若ければ有利というわけではなく、グランツールの総合成績で結果を残すためには、経験が重要であることを示唆しているデータだといえよう。むしろマイヨブランを獲得したことで、周囲のプレッシャーにさらされ、その後のキャリアに影を落とす状況に追い込まれた選手も少なくない。

 25歳以下の選手による総合成績を争うというシンプルなルールながら、他のジャージとの獲得難易度のバランスのとれているジャージといえそうだ。

今大会の有力選手

 7月1日時点で今大会に出場が決まった選手、または暫定出場メンバーに名を連ねている選手のなかから、マイヨブランの有力候補を4人紹介したい。

●エガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス)

ずば抜けた実力を持つエガン・ベルナル Photo: STIEHL / SUNADA

 直近のツール・ド・スイスで総合優勝を果たし、すでにワールドツアーで計3回の総合優勝を飾っている実績はピカイチ。むしろ、マイヨジョーヌ候補に推されるほどの図抜けた実力の持ち主だ。今年を含めて、あと4回獲得チャンスがあり、史上最多4度のマイヨブラン獲得の偉業を成し遂げても不思議ではない。

 とはいえ、基本路線はイネオスの総合エースであるゲラント・トーマス(イギリス)のアシストである。トーマスが総合優勝を争うなかで、ベルナルが身を粉にして、総合タイムを失ってまでトーマスをアシストせざるを得ない場面も訪れるかもしれない。

●エンリク・マス(スペイン、ドゥクーニンク・クイックステップ)

ブエルタ総合2位の実績を引き下げて、ツールでマイヨブランを狙うエンリク・マス Photo: Yuzuru SUNADA

 2018年のブエルタ・ア・エスパーニャ総合2位と、すでにグランツールでの実績を残しており、総合上位が期待される選手の一人である。チームから総合エースを託されている状況も大きく、全力でマイヨブラン獲得を目指せるだろう。

 スイスでは総合9位とまずまずの走りを見せているが、集団スプリントとステージ優勝に主眼を置いたチームにおいて、山岳ステージでチームメートの助けを借りることが難しく、マス自身の立ち回りが重要となってきそうだ。

●ティシュ・ベノート(ベルギー、ロット・スーダル)

石畳のレースも、難関山岳を含むステージレース、どちらも好成績を出せる稀有な脚質の持ち主であるティシュ・ベノート Photo : Yuzuru SUNADA

 21歳のときに初出場したロンド・ファン・フラーンデレンでいきなり5位となり、2018年には未舗装路を走るストラーデ・ビアンケで優勝したように、ワンデーレースを得意とするクラシックライダーとみなされていた。

 しかし、ステージレースでは意外な登坂力を見せており、直近のスイスでは総合4位となり、難関山岳ステージでも上位でフィニッシュできる力を持っている。チームには他に総合を狙う選手もおらず、山岳ステージでは自由な走りができる点もマイヨブラン争いでは有利に働くことだろう。

●ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマ・エフデジ)

ダヴィ・ゴデュは歴代ラヴニール王者と同様に、頭角を現しはじめている Photo: STIEHL / SUNADA

 若手登竜門レースであるツール・ド・ラヴニールの2016年総合優勝者がゴデュだ。キンタナ、ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナプロチーム)、ベルナルら押しも押されもせぬ主力選手として活躍している選手が歴代優勝者に名を連ねている。ゴデュもある意味では大成が約束された選手の一人だといえよう。

 今シーズンはUAEツアー総合3位、ツール・ド・ロマンディではワールドツアー初勝利を飾って総合5位&新人賞。リエージュ~バストーニュ~リエージュでは6位に入るなど、好成績を残している。しかし、ツールではエースのティボー・ピノ(フランス)のアシストが最優先事項となるため、自身の総合成績は二の次となるかもしれない。

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