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猪野学の“坂バカ”奮闘記<36>チャリダー★新生「坂バカ女子部」早くも崖っぷち 名コーチ登場で挽回なるか?

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 人生には時に崖っぷちに追い込まれる時がある。私が身を置く芸能界も、売れていようがいまいが少しでも油断すると足元をすくわれる。そんな世界に身を置く女性芸人2人が、2年前に解散したNHKBSの自転車番組『チャリダー★』の「坂バカ女子部」再結成を志願してきた。その名は牧野ステテコとふるやいなや。お笑い芸人がどこまで速くなれるのかも興味深いが、これだけでは力不足は否めない。やはり強烈なインパクトを持った“ピュアクライマー”が必要だ。そのとき、私の脳裏をある選手がよぎった。それは去年の乗鞍、私が腰痛に悶絶しながら上っていると「猪野さん!」と声をかけながら軽々と抜き去り、しかも往年のヤン・ウルリッヒのように重いギアを踏み倒していった女子選手だ。

再結成した坂バカ女子部(画像左から、星恵莉奈、牧野ステテコ、ふるやいなや)

距離短縮で地獄の“酸欠ヒルクライム”に

 彼女の名は星恵莉奈(ほし・えりな)。何とそんな彼女が坂バカ女子部に入部してくれるということになった。まさに彗星の如く活躍し、女子ヒルクライムを盛り上げてくれるに違いない。

 開幕戦は三重県で行われた菰野(こもの)ヒルクライムチャレンジ。彼女の目標はズバリ優勝! 誰しもがそう思っていた。そして私の目標は4年前に叩き出した31分を上回り、自己ベストを塗り替えることだ。

芸人2人のおかげでロケバス内は緊張感ゼロ(笑)

 レース当日。「開幕ダッシュだ!」と意気込む我々のもとに衝撃のニュースが舞い込んだ。ゴール地点が凍結しているため、コースが5kmに短縮されたというのだ。コース短縮のヒルクライムほどタチの悪いものはない。短くなった分ペースが上り、無酸素地獄の“酸欠ヒルクライム”となるのだ。これは困ったことになった…。

 すると私の目線に見覚えのある色白の男性が現れた。そう、ゲストライダーとして来ていた森本師匠だ! この事態をどう乗り切るか、早速相談すると師匠は、「みんな5kmと聞いて飛ばし過ぎて“タレ”るんですよ! だから最初の3kmは8割ぐらいで抑え、ラスト2kmを徐々に上げた方が良いですよ」。さすがは百戦錬磨の師匠。5kmといえど立派なヒルクライム! このペース配分が重要なのだ。これは良いことを聞いた!

わずか5kmでペースオーバー

 「前半抑えめに走る」と誓い、いざスタートを切った。早速3番手につける。我ながらなかなかの位置どりだ。すかさずトップの選手がアタック! 私も追おうとするがこの時、師匠の言葉が頭を過ぎる。「3kmまでは8割だ!」─しかしここで逃げた選手を容認してしまうと上位入賞は無理だ。なぜなら菰野ヒルクライムの特徴は年代別をさらに細かく分けて1組20人程でスタートする。なのでスタートしてトップでゴールしても優勝できるとは限らない。上位に食い込むには少なくともその組の3位には入りたい。

 2位の選手と猛烈に追い上げるが1位の選手に追い付かない…。そうこうしているうちに2人ともタレ始めた。しまった!オーバーペース! ヒルクライムの恐ろしいところは一度限界を超えてしまうとレースが終わるまで二度と帰って来れないのだ。

 何てことだ! 師匠の教えを全く無視しているではないか! すっかり失速した2人は、何と後ろからスタートした次の組にも追い付かれてしまう。私は慌ててペースを上げて食らいつく。するとゴール前のトンネルが現れた…「もうゴールだ! 速い! 速過ぎる!」慌ててフルもがきし、4人くらいゴボウ抜きして集団の4番手くらいでゴール。

 短い…短か過ぎるぞ5km。汗ひとつかいていない。坂バカ魂に着火する前に終わってしまった。結局ペース配分を間違えた私は自己ベストに遠く及ばず21位で終了…。これがコース短縮の恐ろしさだ。汗をかいてないから寒い。色々な意味で猛烈に寒い。

 しかしまだ坂バカ女子部監督としての仕事が残っている。後から来る女子部員達を応援するのだ!

 気持ちを切り替えゴール前の最後のコーナーで星さんを待つことに。すると私の前をスルスルと一人の女性選手が通り過ぎ、そのすぐ後に坂バカジャージの星さんが続いた。何と1人先行を許していたのだ! 優勝は関西で有名な強豪チーム「グリーンロード」の佐野歩選手が獲得。牧野ステテコとふるやいなやも目標タイムに遠く及ばず、何とも不甲斐ない開幕戦となった…。

坂バカ女子部強化に“柿木兄弟”現る

 これはマズいと見かねた番組サイドもさすがに焦ったのだろうか。あくる日、担当ディレクターが「猪野さんとんでもない方をコーチに招きました」といって来た。

 「日本代表強化コーチです」

 日本代表? 日本を代表する選手達のコーチが、坂バカ女子部の…? 一瞬何のことか分からなかったが、何とヒルクライムを盛り上げるという善意で、女子日本代表コーチの柿木孝之氏と、パワートレーニングの第一人者として名高い柿木克之氏の「柿木兄弟」が我々のトレーニングメニューを作ってくれるというのだ。

坂バカ女子部のコーチを引き受けてくださった柿木兄弟のお二人(画像左から兄の克之さん、弟の孝之さん)

 これはとんでもないことだ! サッカーに例えればジーコやザッケローニに指導頂けるのに等しい。役者に例えればスティーブン・スピルバーグに演出してもらえる!(もはや日本ではない)と訳の分からない初老の妄想が止まらない。芸人コンビにも、「明石家さんまさんから笑いを直接教えてもらえるようなものだ」と喜ばせる。星さんも「こんな機会はない!」と嬉しそうだ。

レース後にのんきに足湯に浸かる部員達

 一喜一憂する坂バカ女子部。しかし、しかしだ…。日本代表コーチが指導して速くならなかったら、それはもうそういうことだ。練習をサボっている、もしくは激しくセンスがないか。つまり、結果が出て当たり前という所まで追い込まれるということだ。そう、坂バカ女子部は最後のカードを切られたのだ。再結成してすぐに、崖っぷちに立たされしまったのだ。

 この先、快進撃は続くのか…それとも、全国放送で醜態をさらすのか。全ては柿木コーチが作った「地獄の無限ループトレーニングメニュー」でどこまで追い込めるかにかかっている。新生坂バカ女子部の運命や如何に!?

<次回へつづく>

(画像提供:猪野学・NHK・テレコムスタッフ)

猪野 学猪野 学(いの・まなぶ)

俳優・声優。自転車情報番組NHK BS1『チャリダー☆』(毎週土曜18:00~18:50)にレギュラー出演し、「坂バカ俳優」という異名で人気を博す。自転車の他、空手やスキーなども特技とするスポーツマン。俳優として舞台や映画、ドラマなどで活躍する一方、映画『スパイダーマン』のトビー・マグワイアの声優としても知られる。ウェブサイト「マナブログⅡ

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