Cyclist選出・サイクリストへお勧め図書㉑自転車旅の“達人”サイクリストの原点 山下晃和さん著『自転車ロングツーリング入門』

by 後藤恭子 / Kyoko GOTO
  • 一覧

 Cyclist執筆陣を中心に、サイクリストにおすすめ図書を紹介する本企画。今回ご紹介するのはCyclistの人気連載『ツーリングの達人』の執筆者、山下晃和さんの著書『自転車ロングツーリング入門~2泊3日から大陸走破の長期自転車旅まで~』(実業之日本社刊)です。モデルとしてファッション雑誌等で活躍する傍ら、自らを「旅サイクリスト」と標榜する山下さん。「旅は麻薬」と語るほど自転車旅に魅了された山下さんの原点であり、いつか自転車で海外を旅してみたいと思っている人の背中を押す「入門書」です。

山下晃和さん著『自転車ロングツーリング入門』(実業之日本社刊) Photo: Kyoko GOTO

「自転車旅は麻薬のよう」

 山下さんと出会ったのは2013年頃だっただろうか。仕事を介して知り合った彼の第一印象はとても爽やかで、端的にいえばイケメン。鍛え抜かれたスタイルが放つオーラはモデルそのものだった。そのとき、挨拶代わりに自著であるこの本を渡された。振り返ると、当時はちょうどこの本が出版された年にあたる。

「しばらく旅に出ないと発作のようにどこかへ行きたくなる」という山下さん Photo: Akikazu YAMASHITA

 「この人が自転車で世界旅?」─。偏見で大変恐縮だが、「モデルさんなのにそんなタフなことをする人がいるのか」と興味をもった。理由はわからないが、彼がイケメンというだけでそういうハードな世界とは無縁だと思ってしまったことと、顔や体が資本となるモデル業でそんなリスキーなことをするのか、といった“ギャップ”がそう思わせたのだろう。

 しかし、そんなギャップのイメージは本を開いた瞬間に消え去った。

 本著は2001年から自転車世界旅を始め、東南アジア8カ国、中南米11カ国を自転車で駆けた、およそ1年間にわたる旅の記録が綴られている。タイトルから「入門書」のようなイメージを受けるが、旅人になるまでのこと、旅に出るときの心境、旅先で経験したことなど山下さんの“感性フィルター”を通して見た世界が克明に記されている。その文章は本人初の著書とあって瑞々しく、臨場感が伝わってくる。自転車で世界を旅してみたいと考えている人にとって旅に役立つハウツーだけでなく、気持ちの面でも一つの道筋を示してくれているという点では、ある意味「入門書」といえるのかもしれない。

初の著書とあって、自身が「旅人」になるまでの経緯も記されている Photo: Kyoko GOTO
旅の装備やアイテム、輪行の方法など、お役立ち情報を紹介するコラムも満載 Photo: Kyoko GOTO

 旅について山下さんはこう書き綴っている。「いわゆる“麻薬”のようだった。辛くて、大変なことも多いが、旅をしているときはとてつもなく気持ちいい。自由気ままに目的地を決め、想像を超えた景色に出会う。そして日常から解放される。だからしばらく旅に出ないでいると発作のようにどこかへ行きたくなる」─。

 たしかに自転車旅はつらくて大変なことも多い。体力と自転車に関する知識はもちろん、旅力、アウトドア力、海外なら語学力。そして何より重要なのは価値観や多様性を理解する柔軟さと、トラブルに直面しても心が折れない精神力が求められる。「楽しい」の一言では済まない局面がいくつもある。

「それまでの人生の集大成が試された」という中南米の旅 Photo: Akikazu YAMASHITA

 本著には旅先で出くわした数々のトラブルについても書かれている。中には命の危険にさらされた出来事もある。それによって心に傷を負ったことも赤裸々に書き残しているが、それでも日本に帰国することなく走り続けた。「困った時や辛い時に出会った人々の優しさに救われたからこそ、僕は旅を続けることができた」という言葉が、彼が体験した自転車旅の奥深さを感じさせる。

 出会いから5年ほど。いつ会っても変わらず、おおらかな“タフガイ”ぶりを感じさせる山下さんの人柄は、なるほど、こういう経験によって培われたものなのだろう。イケメンなのに「男性のファンが多い」(本人談)というのも、山下さんには申し訳ないが頷ける。

重要なのは走行距離でなく「出会い」

 山下さんの活動は幅広く、自転車以外にも登山、カヤックなどさまざまなアウトドアの分野に活躍の場を広げている。その中でも自転車に関しては、Cyclistでの連載をはじめ、トークイベント、さらにはキャンプツーリングのイベントを主催するなど、自転車旅の魅力を伝える活動を積極的に展開している。数々のキャンプ経験や失敗談から紡ぎ出される話は、ビギナーを始め、玄人のサイクリストからも支持を集めている。

自身の経験をもとにトークイベント等で自転車旅の楽しさを伝えている山下さん Photo: Naoi HIRASAWA
最近は自転車とキャンプを組み合わせたイベントも主催するなど活躍の場を広げている Photo: Akikazu YAMASHITA
ロングツーリングからバイクパッキングスタイルのツーリングまで、なんでもござれの山下さん Photo: Akikazu YAMASHITA

 いまでこそ長い旅に出られるような時間はなくなったそうだが、それでもときどき「2週間ほどアメリカを旅してました」と“帰国報告”を受けることがある。「いっぱいいっぱいになったので、キャンプツーリングに出ます!」というメールも山下さんらしい。さらに最近は、小径折りたたみ自転車と公共交通機関を組み合わせた輪行スタイルもエンジョイしている。山下さんいわく、「旅の中でいちばん重要なのは遺跡観光でも自転車で走った距離でもなく、出会い」なのだそう。

 山下さんがこれほどまでに魅了された自転車旅の“原点”が詰まった本。雨続きで乗れない休日に、そして夏休みの自転車計画の参考に、ぜひおすすめしたい。

山下晃和さんトークイベント「キャンプツーリングのすすめ」

 山下晃和さんのトークイベント「キャンプツーリングのすすめ」を7月3日(水)にモンベル御徒町店で開催します。自転車や装備・アイテムの選び方、キャンプでの過ごし方、山下さんのおすすめの旅エリア等々、ビギナー向けのハウツーをわかりやすく解説。どんな疑問も山下さんに直接質問できるチャンスです。さらに参加者全員におみやげとしてモンベルのアミノ酸サプリメント「アウトドアサプリメント アミノサミット3500」をプレゼント! 当日参加も受け付けています。
日時:2019年7月3日(水)19:00~20:30(開場:18:30~)
会場:モンベル御徒町店(東京都台東区上野3-22-6 コムテラス御徒町)
定員:60人
参加料金:1,000円(税込)

この記事のコメント

利用規約順守の上ご投稿ください。

関連記事

この記事のタグ

サイクリストへお勧め図書

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

e-BIKE最新特集

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載