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栗村修の“輪”生相談<156>20代男性「スキルアップに硬いフレームやホイールを使うのはありですか?」

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三十路間近の20代男性です。ロードに4年ほど乗っています。昨年はローラー台のトレーニングも含めて年間5千キロを達成できた程度です。

 まだまだロード乗りとして未熟な私ですが、ついに高剛性のセミディープリムカーボンホイールが欲しくなってきました。

 ネットによく高剛性フレームやホイールを乗りこなすには相応の脚力(パワーなのかスキルなのかは不明)が必要とあります。そこで質問ですが、高剛性に自分の脚力をダメ出ししてもらい、順応する事でスキルアップする事は可能でしょうか?

 もちろんより平地や坂を楽に走りたい気持ちもありますが、高剛性フレーム、ホイールはトレーニング機材としての側面を持っているのか知りたく質問させて頂きました。

 ご回答よろしくお願い致します。

(20代男性)

 高度なご質問ですね。

 最初にお伝えしなければいけないんですが、僕は選手を引退してずいぶん経ちますから、鍛え上げた肉体で近年の最新機材を使い込んだ経験があまりありません。ただ、そんな僕でも見えてくる大きな方向性についてはお話しできます。というのも、どうやら今は機材の大きな変革期にあるらしいからです。

 クロモリフレームと手組みホイールが主流だった僕らの時代から、硬いとか柔らかいとか、剛性についてはいろいろ言われてきました。しかし人間というややこしくて複雑なエンジンが乗るので、硬いからいいとか柔らかいからダメとか、簡単な理屈では割り切れなかったのも事実です。

 たとえば僕の監督時代の話ですが、軽くて硬いハイエンドのホイールを使いたがらない選手がたまにいました。わざわざ、重いミドルグレードのホイールを使いたがるんですね。聞くと、ハイエンドは硬すぎて脚にくるというんです。同じ理由で、カーボンのペダルやシューズのカーボンソールを避ける選手もいました。

 なるほど、たしかに硬すぎると脚にくることもあるでしょう。ただ、最近の僕が思うのは、機材の進化の方向性は正しいのではないかということです。すなわち、硬ければ硬いほど効率が良いことがわかっているなら、エンジンである人間が機材に順応したほうがいいのではないか、ということです。

約30年前、1990年のツール・ド・フランス。フレームはクロモリ、ホイールはローハイトの手組み、変速はダウンチューブのWレバー、選手はノーヘルで峠を越えていく Photo: Yuzuru SUNADA

 トレーニングは順応だとさんざん繰り返してきましたが、似たことが機材に対しても言えます。人間は、機材に対しても順応する機能(?)を持っているエンジンです。

 硬い機材を嫌う選手がいるのは、いろいろ理由はあるでしょうが、最大の要因は慣れていないからではないでしょうか。そんな選手も硬い機材しか選べない立場だったら、程度の差こそあれ硬さに順応するはずです(順応する過程でいろいろと工夫するでしょう…)。

 そして、結局のところ、硬いほうが力が逃げないのは間違いないと思うんです。だから機材は硬くなってきたんでしょう。だったら、順応する柔軟性があるエンジン、つまり人間が機材に合わせたほうがいいのではないかと感じるようになってきました。

 なぜかと言いますと、最近、現場の選手たちから漏れ聞こえる話を総合すると、機材差の影響が近年は大きくなっているらしいんですね。エアロフレームだ、ワイドリムのカーボンクリンチャーだ、チューブレスタイヤだ、ディスクブレーキだと騒がれていますが、そういう新しいトレンドをうまく使いこなしたバイクは、正直言ってめちゃくちゃに速い(進む)というんです。機材はどんどん高性能になっています。

プロロードレースの世界でもディスクブレーキが急速に広まりつつある Photo: Yuzuru SUNADA

 ところが、どんなに高性能なバイクにもひとつだけ搭載されていない機能があります。それが、エンジン(人間)に順応する機能です。せいぜいポジションをいじるくらいですが、近年のエアロな高性能バイクはポジションも調整しづらくなっています。

 ならば柔軟であるエンジンのほうが機材に合わせたほうが結局は速くなるのではないか、と最近の僕は感じるようになりました。少し前までは多少は柔らかい機材を薦めたりもしていたのですが、ちょっと、最近の機材の進化は僕の予想を上回るスピードで進んでいるようです。

 つまり、機材を人に合わせるのではなく、人が機材に合わせる時代が来たということではないでしょうか。そういった意味では、高剛性フレームやホイールはある意味で「トレーニング機材」としての側面を持っているともいえます。

 僕が選手として走っていたような、フルオーダーしたクロモリのフレームに手組みのホイールを履かせていた牧歌的な時代は遠く去ってしまったということです。もし究極の速さを追求するなら、ある程度人も機械の一部になるしかないのでしょうか。

(編集 佐藤喬)

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまで、タイトルを「輪生相談質問」としてお寄せください。

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