全日本ロードレース男子エリート詳報天国の父親に勝利捧げた入部 チーム一丸で勝ち取ったチャンピオンジャージ

by 松尾修作 / Shusaku MATSUO
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 フィニッシュラインに先着した入部正太朗(シマノレーシング)は、天に向かって指を差し、その勝利を今年5月に亡くなった父親へと捧げた。全日本選手権ロードレース男子エリートで新城幸也(バーレーン・メリダ)は力を見せつけるも、タイトル獲得ならず。横塚浩平(チームUKYO)は粘りの走りで3位表彰台の座を射止めた。

男子エリート表彰。左から2位の新城幸也(Iバーレーン・メリダ)、優勝した入部正太朗(シマノレーシング)、3位の横塚浩平(チームUKYO) Photo: Shusaku MATSUO

シマノ、ブリッツェンがコントロール

 全日本選手権ロードレース最終日となった6月30日、男子エリートは富士スピードウェイに設けられた10.8kmの特設コースを21周する計227kmで行われた。スタートラインには国内トップクラスの実力を持つ選手のほか、別府史之(トレック・セガフレード)や新城といった海外で活動する選手も集結。152人の選手が日本一を決めるレースに挑んだ。

富士スピードウェイを使った特設コースを走る Photo: Shusaku MATSUO

 個人タイムトライアル(TT)が開催された27日から天候に恵まれない会場は、朝から霧と雨が降りしきり路面を濡らした。すでに行われていた各種目で落車が目立ったこともあり、スタート直後から慎重に走る選手が多かったが、それでもタイヤを滑らせて転ぶ選手が続出。一方でアタックを仕掛けたい選手による動きは集団後方を走る選手にダメージを与え、序盤からメイングループの数は半分ほどとなった。

TGRコーナーを走る集団 Photo: Shusaku MATSUO
序盤で抜け出した9人の逃げグループ Photo: Shusaku MATSUO

 主導権を握りたいチームによるアタックが繰り返され、大きな動きがあったのは4周目。山本元喜(キナンサイクリングチーム)や小石祐馬(チーム UKYO)ら9人が逃げグループを形成。さらに鈴木譲(宇都宮ブリッツェン)や窪木一茂(チーム ブリヂストンサイクリング)らが続々と合流し、30人を超える集団が生まれた。

メイングループは宇都宮ブリッツェンとシマノレーシングを中心にコントロール Photo: Shusaku MATSUO

 一方の後方集団では別府や小林海(ジョッティ・ヴィクトリア・パロマー)らは乗ることができず、自らの脚を使ってブリッジを試みるなどペースアップ。6周目には追いつき、再び一つの大きな集団になり振り出しへと戻った。

単独で逃げ続けた徳田優(チーム ブリッツェン Photo: Shusaku MATSUO

 落ち着きを見せたのは8周目、徳田優(チーム ブリヂストンサイクリング)がアタックを仕掛けると、集団はこれを容認。徳田は単独でレースをリードした。一方の集団ではシマノレーシング勢がコントロールし、次の動きに備えていた。8周回に渡って粘った徳田だったが、新城のペースアップなどにより速度が上がったメイングループへと吸収。集団は後半戦へ向けて再び活性化した。

阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)がけん引するメイングループ Photo: Shusaku MATSUO
集団の後方ではチームカーが隊列をなす Photo: Shusaku MATSUO

強さを見せつけた新城幸也

 アタックが繰り返しかけられては合流する展開が続き、選手たちの顔に疲労の色が浮かぶ中、18周目に鋭いアタックで新城、小林、小石が抜け出した。追うメイングループの選手たちは18周目の終わりに3人をようやくキャッチするも、19周目に入ってすぐ早川朋宏(愛三工業レーシングチーム)の飛び出しをきっかけに、入部、横塚、そして再び新城が合流しアタック。早川は間もなく脱落するも、3人はメイン集団に対して約1分のリードを築くことに成功した。

小石祐馬(チームUKYO)と新城幸也(バーレーン・メリダ)が抜け出し、小林海(ジョッティヴィクリア・パルマ―)も合流 Photo: Shusaku MATSUO

 メイングループからは小林、草場啓吾(愛三工業レーシングチーム)、伊藤雅和(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)、鈴木譲の5人、湊涼(シマノレーシング)が追走グループを形成。以降の選手たちに余力はなく失速。優勝争いは先行する3人と追走の5人、合計8人に絞られた。

3人での優勝争いとなった Photo: Shusaku MATSUO

 先頭を走る3人の中で最も積極的にけん引したのは新城だ。力強い走りで後続の5人まで約1分のタイムギャップを稼ぎ、リードを保ったままファイナルラップへと突入した。そして新城が上りで仕掛けると横塚が脱落。ゴールが迫り、追走が追いつく見込みもなくなったため、新城と入部の一騎打ちとなった。

 残り1kmとなったTGRコーナーの上り、新城が入部を振り切ろうとアタックを仕掛けるが、入部は懸命に食らいつく。ホームストレートに姿を現した2人はペースを落とし、けん制体制となったが、残り150mで先に仕掛けたのは入部だった。入部の勢いは衰えず、フィニッシュラインに先着。自身初のタイトルを獲得した。2人から遅れた横塚だったが、粘りを見せ、プロ2年目ながら3位に入り健闘した。

力強いガッツポーズで喜びを表した入部正太朗(シマノレーシング) Photo: Shusaku MATSUO

上位3選手インタビュー

入部:まだ実感が湧きませんが、最高の気分です。勝ったら今年亡くなった親父(フレームビルダーとして活躍した正紀さん)が喜んでくれるかなと思いながらレースを走りました。自分が勝つための最善の方法を考えなければと迷走し、胸が苦しかった。

チームにとって2008年の野寺秀徳監督以来となるナショナルチャンピオンジャージを獲得した入部正太朗(シマノレーシング) Photo: Shusaku MATSUO

 優勝はゴールラインを切るまで確信できませんでした。3人で逃げている最中も新城選手が強すぎて、上りで遅れそうになったこともあります。どうしても勝ちたかったので、終盤では三味線を弾く(辛そうに振る舞う)などクレバーに立ち回りました。スプリントでは先に仕掛けましたが、新城選手にあわせられて捲られるのではないかと思っていましたが、先着することができました。

 脚を残すことができたのはチームメートのおかげです。集団前方を陣取ってくれたおかげで、リスクがなく安全で、常にいい位置を走ることができた。アタック合戦でも立ち回り、新城選手や別府選手の動きに対してもチームで対抗し、焦らず良い方向に展開を運ぶことができました。実は100kmを超えたあたりで脚が攣りかけていたのですが、これまでに攣っても優勝した経験もありました。最後まであきらめなかったことが結果につながったのだと思います。

新城:本当に悔しいという気持ちです。全日本王者らしい勝ち方を目指しましたが、最後は入部選手を千切れなかったことが甘かった。(入部は)三味線を弾いたと言っていましたが、そんなことはすぐに分かりました。アタックについてくるわけですから。

「全日本チャンピオンらしい勝つ方を目指した」と明かす新城幸也(バーレーン・メリダ) Photo: Shusaku MATSUO

 国内のチームは人数を揃えて臨みましたが、僕は単騎での戦いを強いられます。なので数を減らす戦いをしなければなりません。積極的に動き、人数を絞ったのはそのためです。最後は入部に対して残り1kmでアタックをかけるなどしましたが、千切るのは大変です。彼らだって千切られたくありませんから。

 国内選手は決して弱くありません。パワーだけだと僕たちと変わらない選手もいます。現に今日負けました。違いは欧州での走り方を知ってるか知らないかだけ。全日本選手権で勝つというのは簡単なことではありません。

 3月に落車し、骨折してから今回が復帰戦です。事故の当初のコンディションはゼロではなく、もはやマイナスでした。しかし、沈んだ分はさらに上げることができます。去年の100%を超えていきたい。この悔しさは今後のシーズンに生かしたいです。

プロ2年目ながら健闘した横塚浩平(チームUKYO) Photo: Shusaku MATSUO

横塚:自分の力を出し切っての3位で満足しています。序盤から展開が激しく、動いて終盤まで残る自信がなかったので、序盤は脚を貯めていました。終盤はマークしていた入部選手が踏んでいったので、チェックすると後ろから新城選手もついてたので、チャンスだと思い腹をくくりました。力の差は感じましたが、2人と逃げ切れたことは嬉しいです。上りのペースアップで千切られましたが、これが精いっぱい。悔いはありません。

■男子エリート結果
1 入部正太朗(シマノレーシング) 6時間12分27秒
2 新城幸也(バーレーン・メリダ)
3 横塚浩平(チームUKYO) +8秒
4 湊諒(シマノレーシング) +1分41秒
5 伊藤雅和(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ) +1分49秒
6 草場啓吾(愛三工業レーシングチーム)
7 小林海(ジョッティ・ヴィクトリア・パロマー)
8 増田成幸(宇都宮ブリッツェン) +2分30秒
9 鈴木譲(宇都宮ブリッツェン) +2分34秒
10 西村大輝(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)+2分50秒

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