ツール・ド・フランス2019直前コラム<2>キング・オブ・マウンテンに捧げる水玉ジャージ 「マイヨアポワルージュ」の有力選手は?

by あきさねゆう / Yuu AKISANE
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 世界最大の自転車ロードレースであるツール・ド・フランス。栄光の黄色いジャージ「マイヨジョーヌ」を巡って、21日間の戦いが繰り広げられる。だが、ツールには「マイヨジョーヌ」以外にも、価値の高い特別ジャージが存在する。緑の「マイヨヴェール」、赤水玉の「マイヨアポワルージュ」、白の「マイヨブラン」だ。今回は「マイヨアポワルージュ」のランキングシステムや有力選手についてプレビューしていく。

かわいらしいデザインの赤水玉ジャージである「マイヨアポワルージュ」は、黄色い「マイヨジョーヌ」と並んでツール・ド・フランスのアイコンだといえよう Photo: Yuzuru SUNADA

クライマーだけでなく逃げ屋にも向いている

 「マイヨアポワルージュ」は山岳賞ランキング1位の選手が着用できるジャージである。1933年から山岳賞の表彰は行われていたが、白地に赤い水玉模様のデザインのジャージが初登場したのは1975年大会でのことだった。赤の水玉模様は、当時のスポンサーである製菓会社の人気商品のパッケージに由来しているといわれている。以降、スポンサーが交代しても白地に赤の水玉ジャージが採用されている。

史上最多7度のマイヨアポワルージュを獲得したまさに真の「山岳王」であるリシャール・ヴィランク Photo: Yuzuru SUNADA

 マイヨアポワルージュはクライマーのためのジャージだ。各ステージに設定されたカテゴリー山岳の山頂、山頂フィニッシュステージのゴール地点に設定されたポイントを最も多く獲得した選手が着用する権利を得られる。

 ツールではカテゴリー山岳に、4級・3級・2級・1級・超級の5つの等級がある。それぞれ1位通過すると、4級は1ポイント、3級は2ポイント、2級は5ポイント、1級は10ポイント、超級は20ポイント獲得できる。また、山頂フィニッシュとなっている場合、超級山岳の山頂が標高2000mを超えている場合は基本的にポイントが2倍となる。ちなみに今年登場する5つの超級山岳はすべて標高2000m超えであるため、山頂フィニッシュのステージも含めてすべて最大40ポイント獲得可能だ。

 カテゴリー山岳はステージの道中に設定されているケースが大半であるため、マイヨアポワルージュは逃げ屋が獲得しやすい傾向がある。しかし、山頂フィニッシュの多い年、例えば2015年のクリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)のように総合上位勢が獲得する場合も見受けられる。

マイヨジョーヌとのダブル獲得を果たした2015年大会のクリストファー・フルーム Photo: Yuzuru SUNADA
2014・2016年にマイヨアポワルージュを獲得したラファル・マイカ Photo: Yuzuru SUNADA

 そして、4級・3級山岳でポイントを稼いでも、ほとんどポイントが溜まらないため、1級・超級山岳が多数登場するような難関山岳ステージを逃げてポイント獲得することが効率の良い稼ぎ方だといえよう。そういった難関山岳ステージで逃げられる脚を持つ選手がマイヨアポワルージュに近い。

今大会の有力選手

 今年の山頂フィニッシュは第6、14、15、20ステージの4回。これら山頂フィニッシュで獲得できる山岳ポイントは合計は最大120ポイントだ。対して、道中獲得できる山岳ポイントの合計は最大326ポイント。そのため、山頂フィニッシュを争いがちの総合勢よりも、道中の山岳ポイント獲得を狙う逃げ屋に有利なポイント設定になっているといえよう。

 といった観点から有力選手を4人ピックアップした。

●ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)

ジュリアン・アラフィリップのド派手なガッツポーズも魅力のひとつだ Photo: Yuzuru SUNADA

 昨年、マイヨアポワルージュを獲得した選手だ。ダントツ1位の170ポイントを獲得したが、山頂フィニッシュでの獲得ポイントはゼロで、すべて道中のカテゴリー山岳で獲得したポイントだ。狙いをステージ優勝とマイヨアポワルージュ獲得に絞った走りが功を奏した格好だ。そのアグレッシブで果敢な走りはフランス国民の心をわしづかみにし、今やフランスで一番人気を誇る選手であるといっても過言ではない。

 アラフィリップは短めの激坂、上りスプリント、テクニカルなダウンヒル、少人数のスプリントを得意としており、今シーズンは未舗装路を走るストラーデ・ビアンケ、スプリンターズクラシックと呼ばれるミラノ〜サンレモ、ユイの壁を駆け上がるフレーシュ・ワロンヌなど計10勝をあげており、キャリア最高のシーズンを送っている。

 今年もステージ優勝を狙いつつ、2年連続でのマイヨアポワルージュ獲得を狙ってくるだろう。

●マクシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)

 今シーズン急成長を遂げており、イツリア・バスクカントリーではステージ3勝をあげるセンセーショナルな活躍を見せた。上りスプリントや短い激坂を得意とするアラフィリップに似た脚質の持ち主であるが、ツールに登場する超級山岳のような長い上りに関してはシャフマンの方が得意に見える。

今シーズン序盤にブレイクを果たしたドイツ人若手ライダーのマクシミリアン・シャフマン Photo: Yuzuru SUNADA

 だからこそ、今年のマイヨアポワルージュを狙えるのではないかと予想する。

 ただし、ボーラ・ハンスグローエはペテル・サガン(スロバキア)のステージ優勝やマイヨヴェール、エマヌエル・ブッフマン(ドイツ)らの総合成績と目標の多いチームである。展開次第では、シャフマンはアシストに専念する可能性もあるかもしれない。

●ヘスス・エラダ(スペイン、コフィディス・ソルシオンクレディ)

 モン・ヴァントゥチャレンジという、ラストにモン・ヴァントゥを一発上るというワンデーレースが今年初開催された。

今季ここまで5勝とキャリアハイの成績を残しているヘスス・エラダ Photo: Yuzuru SUNADA

 その初代勝者がエラダである。ツール総合優勝候補の一人であるロマン・バルデ(フランス、アージェードゥゼール ラモンディアール)との一騎打ちを制しての勝利だった。

 さらに、細かいアップダウンの多いツール・ド・ルクセンブルクでステージ2勝と総合優勝を飾っており、今季のエラダは絶好調だ。長い上りも短い上りもスプリントもこなせるため、難関山岳ステージで逃げて山岳ポイントを獲得するのにふさわしい脚質の持ち主だといえよう。

●ワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック)

 一昨年のマイヨアポワルージュ獲得者だ。ピュアクライマーらしい細身の身体つきと、逃げに乗ってからのアグレッシブな走りが魅力の選手だ。

ワレン・バルギルは2年ぶりのマイヨアポワルージュ奪還なるか Photo: Yuzuru SUNADA

 しかし、今季はあまり良いところがなく、落車負傷も相次ぎ、出場レース数も少なかった。それでも、直近のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ第8ステージでは4位に入る好走を見せると、フランス選手権で優勝。ツールにフランス王者として出場することとなった。

 調子を取り戻したバルギルは今大会のマイヨアポワルージュの有力候補であると思う。なぜなら、直近2年間で最もツールの山岳ポイントを稼いだ選手は、他ならぬバルギルであるからだ。

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