全日本選手権ロード男子【詳報】濃霧と雨の男子U23 インカレ元王者と中長距離スペシャリストのロングスプリント対決に

by 松尾修作 / Shusaku MATSUO
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 深い霧がコースを包み、雨が降りしきる悪天候の中でおこなわれた全日本選手権ロード男子U23(23歳未満)。厳しいコンディションを制して日本一のタイトルを手にしたのは、最終コーナーからフィニッシュまで踏み切った武山晃輔(チームUKYO)だった。中長距離のスペシャリスト、沢田桂太郎、今村駿介のチーム ブリヂストン勢が追ったが力及ばず、武山に追いつくことはなかった。

男子U23表彰。左から2位の沢田桂太郎(チーム ブリヂストンサイクリング)、優勝した武山晃輔(チーム UKYO)、3位の今村駿介(チーム ブリヂストンサイクリング) Photo: Shusaku MATSUO

悪天候で距離が短縮に

 男子U23カテゴリーは当初、10.8kmの特設コースを15周する計162kmで行われる予定だったが、早朝からの濃霧のために距離を変更。4周減らされ計118.8kmでの開催となり、スタート時間も1時間順延された。

昨年のトップ3を先頭にレースがスタート Photo: Shusaku MATSUO

 出走の時間が迫ると、会場では霧雨が降りしきり路面を濡らした。濃霧で選手がコースを確認できない可能性も考慮され、1周半のローリング走行が設けられたものの、アクチュアルスタートを前に落車が多発。昨年、同カテゴリーで準優勝を果たした松田祥位(エカーズ)も後続に追突された影響で早々にレースを降りた。

U23の3周目 ダンロップコーナーで転倒する選手たち Photo: Kenta SAWANO
スタートアタックは藤田俊輔(京都産業大学)と西原裕太郎(鹿屋体育大学) Photo: Shusaku MATSUO

 スタートが切られてファーストアタックを仕掛けたのは藤田俊輔(京都産業大学)と西原裕太郎(鹿屋体育大学)だったが、後続のメイングループは有力選手が前方を固め、すぐに2人を吸収。一塊となった集団は滑る路面に用心しながらの走行となったが、個人タイムトライアル(TT)でも落車が頻発した「ダンロップコーナー」だけでなく、所々でスリップする選手が続出し、人数を減らしていった。

両鎖骨を折りつつも集団を積極的に引っ張った石上優大(AVC AIX EN PROVENCE)  Photo: Kenta SAWANO

 序盤から積極的に前方で展開したのはU23個人TTを制し、ロードレースでも優勝候補に挙げられていた今村駿介を擁するチーム ブリヂストンサイクリング勢、また、織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)や大前翔(愛三工業レーシングチーム)、渡邉歩(Les Sables Vendée Cyclisme)、そして両鎖骨の骨折をおして出場したディフェンディングチャンピオンの石上優大(AVC AIX EN PROVENCE)もメイン集団に残った。

常時アタックが散発するも決定的な逃げがなかなか決まらない Photo: Shusaku MATSUO
集団の先頭で互いをチェックする沢田桂太郎(右)と織田聖(左) Photo: Kenta SAWANO

横一線からのロングスパート

 アタックが散発するも決定的な逃げが生まれない状態が続いたが、動きがあったのは7周目完了時。小野寛斗(早稲田大学)が単独で飛び出した。一時は容認したメイングループだったが、5人の選手が追走グループを形成。武山、今村、白川幸希(ヴィクトワール広島)、中村圭佑(鹿屋体育大学)、蠣崎優仁(エカーズ)が小野を追うとともに、集団との差を広げにかかる。

有力選手が乗った追走グループの5人 Photo: Shusaku MATSUO

 一方のメイン集団では、有力選手を逃すまいと石原悠希(インタープロ・サイクリングアカデミー)や大前、中川拳(愛三工業レーシング)、渡邉らがスピードアップを試みるが、チームメートが前を行く沢田も抜かりなくチェックに入る。

濃霧の中に消えるメイン集団 Photo: Shusaku MATSUO
単独で飛び出した小野寛斗(早稲田大学) Photo: Shusaku MATSUO

 先行した小野や今村たちだったが、9周目には再び一塊に。集団は厳しいコースコンディションと、獲得標高以上に疲労が溜まるというレイアウトが影響して選手数が絞られていく。ラスト周回に入るとフランスで活動する門田祐輔(ESEG DOUAI)がアタック。数秒先行するも、吸収され20人ほどで最終局面へと入った。

 決定的な動きとなったのがフィニッシュまで残り600m強となった最終コーナーだ。大外から勢いをつけた武山が一瞬の隙をつきアタック。すぐ側にいた沢田が逃すまいとすぐさま追う。同時に今村も反応し、勝敗はホームストレート上のロングスプリントに委ねられた。

両サイドからロングスパートの一騎打ちとなった Photo: Shusaku MATSUO

 武山がスタンド側、沢田がピット側でそれぞれの全力を振り絞り、フィニッシュを目指した。最後は武山が仕掛けたリードを守り切って優勝。ガッツポーズもままならない追いこみぶりで、自身初の全日本選手権をインカレに続いて制した。

先着した武山晃輔(TEAM UKYO) Photo: Shusaku MATSUO

 武山はロングスパートについて「残り700mの最終コーナーではスリップしない絶妙なトルクで踏み込みました。番手に沢田と今村がいるのはわかっていましたが、一瞬遅れるのが見えた。後ろを見て速くなることはありません。力を出し切るしかなかったです」と明かした。スパート中の心境について問われると「2人は中長距離の日本代表。自分に分がないのは目に見えていましたので、残り5mでも差されるのではと心配でした。勝利を確信したのはゴールラインを割ってからです」とコメントした。

「ラスト5mでも勝つ確信はなかった」と明かした武山晃輔(チーム UKYO) Photo: Shusaku MATSUO

 武山はチームUKYOに所属しつつ、日本大学にも籍を置く現役の大学生だ。チームUKYOの活動は、自転車部での学生レースと両立。2017年は全日本学生選手権個人ロード優勝、全日本学校対抗選手権(インカレ)ロード優勝を果たしていたが、ナショナルチャンピオンのタイトルは自身初となった。

 一方の沢田は「武山が最終コーナーで仕掛けるのはわかっていました。集団にはスプリントが得意な選手も多く、彼が勝つにはあそこで行くしかない。武山がアタックしてすぐに反応しましたが『もし後ろから追われたら』と躊躇した瞬間もありました。結果的に後ろに誰もおらず、武山を追うだけでしたが、ラスト100mで差が詰まる距離はないと理解しました。追い込みましたが駄目でした」と振り返る。

武山を追いきれなかった沢田桂太郎(チーム ブリヂストンサイクリング) Photo: Shusaku MATSUO
厳しいマークに脚を使ったという今村駿介(チーム ブリヂストンサイクリング) Photo: Shusaku MATSUO

 3位の今村も沢田と同様に、武山に対して反応できたが「3人横並びでしたが、自分が一番内側。勾配がきつく、踏み遅れてしまいました。皆がきつい展開の中で、一瞬の判断で着順が決まったと思います」と解説した。

■全日本選手権ロード男子U23結果
1 武山晃輔(チームUKYO) 3時間7分33秒
2 沢田桂太郎(チーム ブリヂストンサイクリング)3時間7分34秒
3 今村駿介(チーム ブリヂストンサイクリング)3時間7分41秒
4 花田聖誠(Team Eurasia – IRC TIRE)
5 石原悠希(InterPro Cycling Academy)
6 織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)
7 小出樹(京都産業大学)
8 片桐東次郎(日本大学)
9 石上優大(AVC AIX EN PROVENCE)
10 中村魁斗(那須ブラーゼン)

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