ツール・ド・フランス2019直前コラム<1>「マイヨヴェール」はスプリンターの栄誉! ランキングシステムや有力選手を紹介

by あきさねゆう / Yuu AKISANE
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 世界最大の自転車ロードレースであるツール・ド・フランスが、7月6日にスタートする。栄光の黄色いジャージ「マイヨジョーヌ」を巡って、21日間の戦いが繰り広げられる。だが、ツールには「マイヨジョーヌ」以外にも、価値の高い特別ジャージが存在する。緑の「マイヨヴェール」、赤水玉の「マイヨアポワルージュ」、白の「マイヨブラン」の3つだ。今回は「マイヨヴェール」について、ランキングシステムや有力選手についてプレビューしていく。

緑のジャージ「マイヨヴェール」の現在のスポンサーはチェコの自動車メーカー「シュコダ」社。表彰の際に左手に持つ人形が副賞としてプレゼントされる Photo: Yuzuru SUNADA

「マイヨヴェール」の起源とルール

 「マイヨヴェール」はポイント賞ランキング1位の選手が着用できるジャージで、初登場はツール・ド・フランス50周年を記念した1953年大会からだ。緑色となっている由来は、当時のジャージのスポンサーが芝刈り機メーカーだったためだ。以降、スポンサーが交代しても基本的に緑色のジャージが採用されている。

1992・1995年大会でマイヨヴェールを獲得したローラン・ジャラベール。2001・2002年には山岳賞にも輝き、ツールの両ジャージを手にした選手はこれ以降登場していない Photo: Yuzuru SUNADA

 マイヨヴェールは中間スプリント地点と、ゴール地点に設定されたポイントを、最も多く獲得した選手が着用する権利を得られる。スプリンターが多くポイントを獲得できるルールやポイント配分になっているため、実質的にスプリンターのためのジャージだといえるだろう。

 タイムトライアルを除く各ステージには、中間スプリント地点が1カ所設けられ、1位通過した選手は20ポイントを獲得できる。15位通過の選手までポイントを獲得できるため、逃げ集団が15人に満たない場合は、メイン集団に残ったスプリンターたちがポイント獲得を狙って中間スプリント争いを繰り広げることも多い。

 そして、ゴール地点のポイントはコース難易度に応じて傾斜がつけられてる。スプリンターが活躍しやすい平坦ステージでは、1位に50ポイントが与えられる。スプリンターにとって難易度が高くなる丘陵ステージや中級山岳ステージに分類されるコースでは1位に30ポイント、上級山岳ステージや個人タイムトライアルステージでは1位に20ポイントとポイントが獲得しにくくなっている。

史上最多6年連続マイヨヴェールに輝いたエリック・ツァベル。肩車している男の子はツァベルの息子リックで、現在はカチューシャ・アルペシンでプロ選手となっている Photo: Yuzuru SUNADA

 それでも、最大20〜30ポイントと少なくない点数が設定されているため、マイヨヴェール獲得のためには、こうした平坦ステージ以外での走りが重要となってくる。

 2015年大会では、ペテル・サガン(スロバキア、当時ティンコフ・サクソ)がマイヨヴェールを獲得したが、ステージ優勝は0回だった。一方、ポイントランキング2位のアンドレ・グライペル(ドイツ、当時ロット・スーダル)はステージ優勝4回とスプリントで圧倒的な強さを見せていたが、ポイントランキングでは66点差で2位だった。

 サガンはポイント圏内となるトップ15位以内でフィニッシュしたのは計11ステージ、グライペルは5ステージのみだった。平坦ステージの大集団スプリントに加われるだけでなく、ブルターニュの壁にフィニッシュする激坂スプリントや、2級山岳を越えた先にフィニッシュする中級山岳ステージでもまんべんなくポイントを獲得できる稀有な脚質の持ち主だからこそ、なせる技である。

 サガンに限らず、6年連続マイヨヴェールに輝いたことのあるエリック・ツァベル(ドイツ)を筆頭に、いわゆる上れるスプリンターが獲得しやすいジャージとなっている。

今大会の有力選手

 今年はスプリンター向けの平坦ステージが計7ステージ、パンチャー向けの中級山岳ステージが5ステージ登場する。1級山岳以上の上りを越えた先に中間スプリントポイントが設定されているステージは第14ステージのみとなっている。そのため、上りが苦手なスプリンターでも、中間スプリントポイントを獲得できる機会が例年より多くなりそうだ。

 という観点から、今大会のマイヨヴェール獲得の可能性が高いと思われる有力選手を3人ピックアップしてみた。

●ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)

史上最多となる7度目のマイヨヴェール獲得を狙うペテル・サガン Photo : Yuzuru SUNADA

 史上最多タイ6度のマイヨヴェール獲得を誇る。今大会もダントツのマイヨヴェール候補だといえよう。

 前述したとおり、集団スプリントに加わる力を持ちながら、丘陵ステージや山岳ステージの上りを越える力を持っていることで、ピュアスプリンターが生き残ることができないような中級山岳ステージで大きくポイントを稼ぐことができることが最大の強みである。

 前哨戦のツール・ド・スイスでは9年連続となるステージ優勝を飾り、3年連続ポイント賞にも輝いており、ツールに向けて上々の仕上がりを見せている。

●マイケル・マシューズ(オーストラリア、チームサンウェブ)

2年ぶりのマイヨヴェール獲得を狙うマイケル・マシューズ Photo: Yuzuru SUNADA

 2017年大会にマイヨヴェールを獲得。しかし、同年はサガンの失格、ステージ5勝のマルセル・キッテル(ドイツ、当時クイックステップフロアーズ)のリタイアもあり、マシューズの手元にマイヨヴェールが舞い込んだともいえる。しかし、トラブルなく21日間走り切る力も重要であり、マシューズもまた丘陵ステージや山岳ステージの上りを越えられるスプリンタータイプのパンチャーであることも有利に働くだろう。

 総合エースを務める予定だったトム・デュムラン(オランダ)が膝の怪我のため欠場となり、チームにとってマシューズのマイヨヴェール獲得が大きな目標となるだろう。

●ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)

2017年1勝、2018年2勝と連続してステージ優勝を飾っているディラン・フルーネウェーヘン Photo: Yuzuru SUNADA

 フルーネウェーヘンは、今シーズン最も集団スプリント勝っているスプリンターである。シーズン10勝はすべて集団スプリントを制して挙げている。フルーネウェーヘン自身の強さもさることながら、ミケ・テウニッセン(オランダ)、アムンドグロンダル・ヤンセン(ノルウェー)、トニー・マルティン(ドイツ)らリードアウト陣が非常に強力であるため、集団スプリントで高い勝率を誇る。

 一方で上りは全く上れない選手なので、丘陵ステージ・山岳ステージでのポイント獲得は見込めない。平坦ステージでどれだけ勝ち星を積み上げられるかが、マイヨヴェール獲得の鍵を握るだろう。ピュアスプリンターによる獲得となれば、2011年のマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、当時HTC・ハイロード)以来となる。

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