門田基志の欧州XCマラソン遠征記2019<3>「地獄のMTB天国」ドロミテ 海外遠征の原点・マラソンレース「HERO」へ

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 マウンテンバイク(MTB)クロスカントリーの門田基志選手(チームジャイアント)と、まな弟子の西山靖晃選手(焼鳥山鳥レーシング)のヨーロッパ遠征記。第3回は次なるMTBマラソンレース「HERO」へと向かいます。戦いのステージは、門田さんにとって「アナザースカイ」というドロミテ。途中、日本から同レースに参戦する仲間と合流し、まるで里帰りをするかのようなリラックスモードで「地獄のMTB天国」(本人談)へと脚を踏み入れます。

ガルデーナの舗装路はジロ・デ・イタリアなどで使われているが、実際には舗装路の横に無数のオフロードがあり、地理がわかるとすごく楽しいMTB天国だ

◇         ◇

レーゲンスブルグの街並み

 チェコをあとにし、日本から合流するスー(鈴木)さんを迎えにドイツのミュンヘン空港へ。時間に余裕があったので、途中の街、レーゲンスブルグでランチを食べに立ち寄ることにした。すると、そこにはe-BIKEを使ったコーヒースタンドが。こういうサービスをしまなみ海道でも出来たら良いな〜と夢のような話をしながら、ミントコーヒーを飲んで暑いドイツの昼下がりを過ごし、ミュンヘン空港へと移動した。

e-BIKEコーヒースタンドで、ミントコーヒーで暑さをしのいだ。わりと美味しい
街で演奏してる人たちと

 空港でスーさんと合流し、オーストリアのインスブルックという街へ車を走らせた。インスブルックのことをSNSに書いてみると、昔からの知人の某自転車雑誌の元編集長から、「イン川に掛かる橋」という意味の街で激坂が多いという情報が入り、さらにCyclist編集長からも世界選手権開催の街という情報が入るという便利な世の中で、僕らにはガイドさんは必要ないと思った。

インスブルック到着、夜でも明るいヨーロッパは活動しやすい

 旧市街のど真ん中のホテルを予約していたので、夕食を食べに出てみると街がとても賑わっていた。この中から最良のレストランをチョイスするのは…長年の経験と勘を頼りにするしかない! そうして決めた一軒だったが、最高のお店をチョイスできた。店員さんのオススメのメニューを食べ、地元のワインを飲み、スーさんとの合流でテンションもMAX。

 お客さんも多く、良い店だな〜と感心しつつ、移動疲れもあったので早めにホテルに帰って就寝したが…、実はこのレストランは「黄金の小屋根」というインスブルックの超メジャースポットの目前にあったことは、翌朝の散策で知ったのだった。

インスブルックの有名な観光名所「黄金の小屋根」(写真右側)。この前が前夜のレストランだった

 インスブルックでは自転車の環境の視察と撮影を兼ねて、朝から街を見て回った。合理的で分かりやすい自転車道や、常設の工具と空気入れが整備されたスタンドがあり、実際にそこで空気を入れている女性に遭遇した。

街に自転車が溶け込んでいる
地元のオネーさんが困っているので即助ける西山。決して好みの女性だったからではない(※西山の理想のタイプは土屋アンナ)

 何か困っている感じなので近寄ってみると「空気が入らない」とのこと。僕と西山は迷わず手助け。良い気分でカプチーノをイン川沿いのカフェで堪能したら、次はいよいよ“心のオアシス”ドロミテへと向かう。

弟子・西山からの嬉しいサプライズ

 ドロミテではすっかり定宿となったホテルにチェックイン。いつものオーナー夫妻、毎年大きくなる子供、そしてどこまでも雄大な大自然! やはりここは僕の「アナザースカイ」だと感じた。

E-MTBを借りていざ、ドロミテへ!

 そして毎年行く街のレストランで昼食をとり、スーさんが現地予約していた電動アシスト付きMTB(e-MTB)を引き取りに。そこで車でスーさんを置き去りにするイタズラをすると、逆にテンション高めのスーさんは2000m級のセラ峠中腹まで難なく行ってしまった!(笑) e-MTBの性能おそるべし!

 この日はバイクを組み、軽くサイクリング程度で終了。夕食中に明日以降の作戦を立てていると、ホテルのスタッフが例年とちょっと違う雰囲気。少し変だが、気にせず食事をしているとオーナーがニコニコ顔でシャンパンを1本持ってきた! なんと、西山が新会社を設立したお祝いに、僕の大好きな地・ドロミテでシャンパンをということで用意してくれていたのだ!

大好きな場所で、会社設立祝いのシャンパンを堪能!良い弟子を持ちました!

 適当な師匠には良い弟子が付き物だ(笑)。そしてオーナーからはザッハトルテを設立祝いに出してもらい、ドロミテ最初の夜を大満足のほろ酔い気分で眠りについた。

高地順応から始まるドロミテの朝

毎朝ダイエットと体重維持のため軽い運動、1時間程度のウォーキングが日課になった

 翌日からダイエット、というか体重を維持するために朝食前のウォーキングをスタート! 1時間程度の朝の運動は体を目覚めさせてくれて、ダイエットにも効果的だ。

 ドロミテのコースはレースや試走も含めて何度も走っていてコースを覚える必要もないので、まずここに来てやることは標高に体を慣らすこと、とカフェに行くことだ(笑)。

 とりあえずレースコースになるガルデーナ峠への林道を上り、合言葉になってる“あのベンチ”(各ルートに色々なベンチがあり、「あのベンチまで」という言葉で僕と西山の間では通じる)まで調整を兼ねて走ってみると、やはり酸素不足で思うようにバイクは進まない。が、景色は相変わらずの絶景。それにしても今年は雪が多くて例年とは違う様相を呈していた。

今年は例年にないほど雪が多く残っていて、いつもと違う景色
雪でテンションが上がる3人

 コース脇にある雪を見たからには、後から来る人に投げつけないと気が済まない(笑)。ということで、スーさんが餌食となり雪合戦(一方的に僕が投げるだけなので、合戦かどうかわからないが)がスタートした。一通り楽しんで、まずはガルデーナ峠のレストランでお決まりの昼食とカプチーノで休憩。次は舗装路を下ってセラ峠へ! こうして何度も2000m級の峠に自転車で上ることで高地順応が進む。

ガルデーナの看板が峠のあちこちにあり、セラ峠の手前で記念撮影。初ドロミテに盛り上がるスーさんの記念撮影が多く、そろそろうんざりしてきた(笑)

海外遠征は勉強の場でもある

 数日が経った日から、街はマラソンレース「HERO」一色になり始め、街中にHEROの横断幕や看板が設置され始める。こうなると参加選手もテンションが上がり始める!

スタートグリッドが分かりやすいように案内が街のあちこちに点在する。この他にも受付会場やメディアセンターなどの案内が細かく設置されているので道に迷うことはない

 この大会は街を挙げた取り組みで、隅々までものすごく手が込んでいるのでレース自体よりも街の取り組む姿勢に感心させられる。国際イベント「サイクリングしまなみ」のアドバイザーとして大会にも関わっている立場で大会運営を眺め、次回のイベントに生かすヒントを多く得ることができた。僕にとって海外遠征は心の充電でもあると同時に、アドバイザーとして自転車に関わる者にとって最高の勉強の場でもある。

 あれこれやってたらすぐ時間が経ってしまうドロミテは楽しすぎる場所だけど、同時に世界最高レベルの過酷なマラソンレースでもある。レース前日はバイク整備をしっかり行い、タイヤもリアには軽さを重視して「THUNDER BURT」、フロントはグリップを意識して「RACING RAY」をチョイス。サドル下に取り付ける「GIANT UNICLIPドッキングステーション」を使ってCO2ボンベをサドル下にセットした。マラソンレースはチューブやパンク修理キット、工具にチェーン関係などをいかにコンパクト化して持つかも重要なポイントとなる。

CO2ボンベはサドルの下に収納。「GIANT UNICLIPドッキングステーション」は海外選手も興味津々で見て行く便利アイテム
ゼッケンと一緒にもらえる標高図とエイドなどの情報はハンドルバーに固定して使う。初参加のスーさんには重要な情報が満載だ

「HERO」目指して6000人がスタート

 スーさんも無敵のe-MTBからノーマルのレンタサイクル「GIANTトランス」に乗り換えてHEROを目指す。HEROドロミテは「完走した人全員がHERO」というレースだ。

HEROのゼッケン

 このレースは6000人規模のMTBマラソンレースで、スタートエリアがとにかく長い。街のメインストリートを完全に封鎖して、スタートグリッドがゼッケン毎に分けられている。グリッドには看板を目印に脇道からアプローチし、僕らUCIクラスは最前列からスタート。一方、スーさんは一般クラスなのでかなり後方からスタートした。

 いよいよレースがスタート! 連戦で疲労しまくってる体は、はっきりいって動く気配がない…。しかし、動かないなりに走る! とにかく厳しく壮大なドロミテの山々をMTBで最大限に楽しむことを心に誓い、地獄で天国なMTB天国、ドロミテの大冒険が幕を開けた。

<つづく>

(画像提供:門田基志)

門田 基志門田 基志(かどた・もとし)

1976年、愛媛県今治市生まれ。世界最大の自転車メーカー、ジャイアント所属のMTBプロライダー。選手として国内外のレースに参戦する一方、レース以外のサイクリングツアーも展開。石鎚山ヒルクライム、サイクリングしまなみなど数多くの自転車イベントを提案し、安全教室の講師やアドバイザーも務めるなど、自転車文化の発展に奔走している。

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