門田基志の欧州XCマラソン遠征記2019<2>UCI MTBマラソンシリーズ初戦「Malevil Cup」 海外レースならではの展開と戦い方

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 マウンテンバイク(MTB)クロスカントリーの門田基志選手(チームジャイアント)と、まな弟子の西山靖晃選手(焼鳥山鳥レーシング)のヨーロッパ遠征記。6月8日、いよいよ初戦のUCI MTB マラソンシリーズ「Malevil Cup」に挑みます。MTBの海外レースの展開や雰囲気、そしてエキサイティングな様子がまるでその場で見ているかのように伝わってくる、門田さんの臨場感あるレースリポートです。

©Milos Lubas

◇         ◇

 レーススタートは朝8時なので早めに起きる(朝日が眩しくて強制的に目覚めるシステム)。朝食をとり、お気に入りの「スーパーメダリスト9000」と梅丹本舗サイクルチャージをボトルに入れ、レースの準備が整ったらアップを兼ねて自走でスタート地点へと移動。ペダルを回す脚にはまだ疲労感が残っていて、フレッシュではないことを理解した。

©Milos Lubas

 まあ、やれるだけの事はやる! ヨーロッパ初戦のスタートは前列3番目から。長いレースは少し集中しつつも余裕はある。合図とともに集団はきれいにまとまってスタート。最初の舗装路をお互いに尊重し合いながら進む様子はロードレースとXCOレースを合わせたような感じだが、最初の直角コーナーに入る手前で位置取り合戦が始まり、幅員2mほどの林道ではハンドルバーや肩が当たりながらロードレースのような密集度でオフロードを時速40km程度で巡行する。

©Milos Lubas

 見ず知らずの外国人を信用して前輪と後輪も当たりそうな密度の中、岩や穴が空いた林道を突き進む。集団のあちこちで急ブレーキから失速、加速を繰り返しているが、落車が無いのはさすがとしか言いようがない。

切れても復活してくる“ゾンビ戦”

 ここで前方の選手が急減速! 大きな水溜りというかドロたまりでブレーキをしたようだった。XCOのレースなら突き進んだり飛んだりすることもあるが、集団で路面が確認出来ず、長いレースでバイクを痛めたら後々のレースに大きく影響するので、マラソン系の選手は出来るだけ泥等でバイクを傷めることを回避し、時には乗車できても泥を避けるために脇を通ることもあるのだ。

©Milos Lubas

 この遅れで先頭集団は少し分裂気味になり、ここで誰が引っ張って前に追いつくのか軽く“お見合い”が始まる。まあこんなところでお見合いしても仕方ないので、前を引いて大和魂を見せるが…疲労状態の体はさらにキツく、股関節の動きも悪いことを再認識してしばらく走ってペースを落としてしまった。

 長いレースで、メリハリが少ないマラソンレースにおいて集中力は重要。一度切れたら一気に順位を落としてしまう。日本のレースのイメージは一度気持ちが切れたり集団から千切れたら、その選手が追いついてくることはほとんど無いが、このマラソンシリーズは千切れた選手がバンバン復活してくる、まるで“ゾンビ戦”だ。

©Milos Lubas

 西山がいる集団を見送り、単独走行になると心の中で「若さは正義だ!」と叫んでしまった。「疲労回復が全く違うな〜」と連戦のあり方について考えながら、自問自答のレースとなるのも実は嫌いではない(笑)。

調子を取り戻してきた後半戦

 レースは体調が悪いと如実に前に行けない。でも長距離だから後々のダメージを考慮して、中盤はトレーニングとして短くキツい上りではモガき、平坦はペースで走って次に繋げる走りに切り替えてと繰り返していたら、この走り方があっていたのか、それとも疲労が抜けてきたのか、途中からペースが上がり始めた。

©Milos Lubas

 こうなると集中力も復活してきて、自分も“ゾンビモード”発動でペースアップ。再び集団に加わり、レースらしい展開になってきた。俄然ヤル気もペースも上がり、アップダウンを繰り返す中で、集団内の役割が決まってくるのもヨーロッパらしい。

 集団内では僕の下りが一番安定して速いと感じ、「先に下りに入りたいな~」と思っていたら、テクニカルなダウンヒルセクションに入る手前でラインが空き、選手から「前に入れ」とジェスチャーが出た!これは集団全体でペースを上げようということ。下りで後ろを千切るのではなく、最速で仲間を連れて下る感じだが、攻めの姿勢でかっ飛んで下る。

©Milos Lubas

 下り切った平坦では、今度は余裕がある選手が前を長めに引き始め、いい感じにペースが上がってくる。気温も上がってきてタイヤの空気圧があからさまに上がってくる。試走時にテストし、0.05気圧上がる感じだったので低めでスタートしていたが、かなり上がっている感じがした。

©Milos Lubas

 ここでチョイスしたバイク「ANTHEM」のMAESTROリンクシステムが機能を発揮。木の根がバリバリに張ったセクションも安定して体への負担を最小限にしてくれる。XCOのレースでは上半身のパワーも使い、衝撃を吸収したり抑え込む。一方で長距離のマラソンレースは出来る限り体の負担を減らしたいので、走り方が違ってくる。が、どちらのレースもペダリング効率は重要で、高次元にカバー出来るバイクはレースの成績を左右する。

3分差が大きなポイント差に

 ほどなくしてエイドステーションのエリアに入るが、待ち構えているスタッフが非常にプロフェッショナル! 食べ物、飲みものを種類別に持って並んでくれているのだ。ドリンクを取り、バナナを取ろうとして失敗したら、次の人がバナナを渡してくれた。

©Milos Lubas

 ヨーロッパのマラソンレースの多くは補給で困ることは無いが、開け方が分からない、食べたことがない食べ物を渡されることも少なくない。そういう時は挑戦することをおすすめするが、確率70%くらいで開けなければ良かったとも思う(笑)。

 レースも終盤に差し掛かってきた頃、なぜか足が動き始めてペースが上がってきた。集団から一人前に出てペースを上げ、さらに前の集団に追いつき、そしてポツポツと走っている選手をパスし始めると見覚えのある林道に戻ってきた。

©Milos Lubas

 後少しでゴールだ。「せっかく調子出てきたのにな〜」と思いながら前に見えるもう1人をパスしてゴールとなったが、西山からは3分程度の遅れ…。この遅れがUCI38位でポイントを獲得した西山と、44位の圏外で、ただの完走しただけになってしまった自分との大きな差となった。

トップでゴールしたイタリアの選手 ©Milos Lubas

 国内八幡浜のレースを含めて開幕からピーキングした結果、ヨーロッパ前半は落ちる時期と分かっていても、やはり悔しさは半端ない。この気持ちがある限り、43歳、これからも現役にこだわっていこうと決意したチェコのレースだった。

心のオアシス、ドロミテへ

 次のレース地は心のオアシス! 人気テレビ番組で表すなら「Dolomiti ここが僕のアナザースカイ」といえる場所だ。その前に移動距離が長いので、どこの町で一泊するか、これから決めなければならない。そして、ドロミテに果敢に挑戦しようとミュンヘン空港に降り立つ勇者を迎えに行かないと! 新たな仲間をピックアップするために、一路ミュンヘンへと移動しながら宿泊地をオーストリアのインスブルックに決めたのだった。

<つづく>

門田 基志門田 基志(かどた・もとし)

1976年、愛媛県今治市生まれ。世界最大の自転車メーカー、ジャイアント所属のMTBプロライダー。選手として国内外のレースに参戦する一方、レース以外のサイクリングツアーも展開。石鎚山ヒルクライム、サイクリングしまなみなど数多くの自転車イベントを提案し、安全教室の講師やアドバイザーも務めるなど、自転車文化の発展に奔走している。

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