門田基志の欧州XCマラソン遠征記2019<1>凸凹師弟コンビの珍道中スタート 過密スケジュールの出国、疲労も機内持ち込み
マウンテンバイク(MTB)クロスカントリーの門田基志選手(チームジャイアント)が今年も6月4日から、まな弟子の西山靖晃選手(焼鳥山鳥レーシング)とともに自転車の本場・ヨーロッパへと遠征しています。今回は、チェコで開催されるUCI MTBマラソンシリーズの「malevil cup」を皮切りに、イタリア、フランスで開催される4レースを転戦。レースだけでなく現地の珍道っぷりも伝わってくる、門田選手のリアルな現地リポートをお届けします。第1回はレース前の“前菜”、チェコ入国初日のドタバタからスタートです。
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今年は“無理矢理”の出国
今年もこの時期がやってきた! というか今年に限っては「なんとかヨーロッパ遠征をスタートすることが出来た!」というべきか。春から続いた怒涛のスケジュールで、半ば無理矢理の出国となった。

3月の会社設立から開幕戦へ突入、四国一周と「自転車活用推進功績者」の表彰、UCIクラス1八幡浜から、国内最長最強の「松野四万十バイクレース」を走ったその翌日に出国という超過密スケジュールで、疲労状態&忘れ物してる気満々で適当に荷物を突っ込み、パスポートとライセンスを確認して日本を発った。

バイク3台とスーツケース2個という大荷物。過去何度も遠征しているが、一度もバイクが破損したことがなく、大切なレース機材を安心して預けられる全日空(ANA)でヨーロッパへと渡った。
フランクフルトから高速道路へ出るのがまた迷宮だったが、「Googleマップ」を片手に突き進む。さあ! いざチェコへ!
レース地の町は英語もあまり通じないので、食事をするのも一苦労するエリア。しかし、とりあえずレストランに入り、Googleマップで店をタップしてアップされている画像を出し、料理の画像を指差し注文。これさえできれば世界中どこでも困ることはない。

前回の遠征で覚えた唯一のチェコ語「ピヴォ」(ビール)だけは普通に知ってる体で注文。すると店員さんが驚いた感じで、一瞬で心が通じ合った気がした(笑)。
ちなみに僕らの遠征スタイルは自炊は一切しない! 各国の食文化に触れて、その中で栄養バランスを考えて食事をすることが遠征、旅の楽しさを倍増させてくれる。時に変なものに当たってしまっても、それも食文化交流だ。
“まさか”の忘れものが発覚
去年宿泊したホテルに到着し、安定の放置っぷりで部屋の鍵を渡され部屋に入った。そして思い出した。部屋のガラス窓は大きいのに、全てのカーテンがレースだということを! ヨーロッパの夜は短い。夜10時頃まで薄明るく、そして午前4時半頃からうっすら明るくなり、鳥が鳴き始める。今日から、暗くなったら寝て、明るくなったら鳥のさえずりで目覚める超自然体の生活がスタートする。
まあレースも朝早いからちょうど良いか…と思いつつ、やっぱり時差ボケと明るさで眠れない! ここでも、普通のビジネスホテルでも遮光カーテンが標準装備されている日本の素晴らしさを感じてしまう。このヨーロッパの不便さが良いと思える余裕が、自分にも欲しいところだ。

朝目覚めて、思い出す疲労状態。松野四万十バイクレースという国内最長のMTBマラソンレースを日曜に走り、翌月曜に出国してチェコ入りしたのだから、そりゃそうだ。ハードな連戦の疲労をチェコまでしっかり持って来てしまった。
とりあえずコースは昨年の経験からしっかり覚えているので、バイクを組んで軽く走りに行くことにした。が…、バイクバックを開いてびっくり! 松野四万十で使っていたパーツ、クランクを完全に忘れてしまい、慌ててメカニックに連絡した。
バイクは複数台待ってきているので、1台がクランク無しでも問題はない。ただ、翌週に走るドロミテではハードテールを使いたいので、忘れたクランクが必要だった。幸い、今回の遠征は後日友人が合流して一緒にドロミテに行くことになっていたので、その友人に持って来てもらうことで問題は解決した。
「無い物は現地で買えば良いやん」って西山と笑いながら話してたけど、ものを買おうにも売ってないということをここで認識。今後は忘れ物には気をつけようと心に誓った。
大会オーガナイザーとの嬉しい再会
チェコ2日目、チェコらしい食事に早くも飽きてしまい、ドイツの町まで昼食を食べに行くことに…ではなく、チェコとドイツを行ったり来たりする今回のレースコースの試走ついでに、ドイツでランチをとることにした。
テクニカルなセクションを試走しつつ、ドイツの街Oybin(オイビン)で今が旬のホワイトアスパラガスと、洗練された食事(チェコと比べて!)を食べる。西山は太らないから迷う事なくシュニッツェル(ドイツ風のトンカツ)を注文し、太りやすい僕は我慢。
1年ぶりのチェコ~ドイツの景色を堪能しつつ試走を終了。バイクは「GIANT ANTHEM ADVANCD PRO 29ER」を、西山は「XTC ADVANCD 29ER」をチョイスすることにした。
土曜にレースが多いマラソンシリーズは金曜が受付になる。チェコのレースの受付開始時間は午後4時から8時とかなり遅めの設定。この理由はビールにあるんじゃないのか? 今年も少し早めに会場入りすると、前回仲良くなったオーガーナイザーに出会った。

「モトシ〜カド〜タ」と名前を覚えてくれていたのは嬉しかったが、トレーに8杯以上のビアジョッキを持って現れた! やはりビールの国だ(笑)。そして僕と西山に「ピーヴォー△+*&%」…「ピヴォ」しか分からないが、とりあえず「飲むかって?」って聞いているのは容易に理解できた。そう、チェコの歓迎はビールで始まるのだ。しかし、残念ながら僕らは翌日にレースを控えていたため、笑顔で丁重にお断りしたのだった。
<つづく>

1976年、愛媛県今治市生まれ。世界最大の自転車メーカー、ジャイアント所属のMTBプロライダー。選手として国内外のレースに参戦する一方、レース以外のサイクリングツアーも展開。石鎚山ヒルクライム、サイクリングしまなみなど数多くの自転車イベントを提案し、安全教室の講師やアドバイザーも務めるなど、自転車文化の発展に奔走している。