現役競輪選手・児玉利文さんの参戦記フランスでピストバイク世界選手権「Fixed nations cup」 空港クリテや、公道ヒルクライムまで

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 5月31日~6月2日、フランス中部の都市ディジョンでピストバイクによる世界選手権「第1回 Fixed nations cup」が開催され、日本からは3人の選手が出場しました。海外選手をチームに迎え、3日間のレースを戦い抜いた模様を、現役競輪選手、スポーツ自転車店「104サイクル」を経営しながらフィクスドギヤを広めている児玉利文さん(sfiDARE CRIT JAPAN)のリポートでお届けします。

ピストバイクの世界選手権に出場してきました Photo: sfiDARE CRIT

◇         ◇

島国にない国境移動

 フランス・デジョンで初開催されたフィクスドギヤクリテリウムの世界選手権に、日本ナショナルチームとして、児玉利文、高橋健一、児玉和代、個人参加でJasmin Ten Have(sfiDARE CRIT JAPAN)のメンバーで参加してきました。初日がチームタイムトライアル、2日目にクリテリウム、3日目はヒルクライムという3日間にわたるフィクスドギヤライダーの頂点を決める大会です。

 ナショナルチーム以外に個人参加も認められているのがこの大会の面白いところ。ナショナルチームはシードで決勝から、個人参加は予選からレースに出場します。チーム全員が5月28日にフィンエアーを使い、中部国際空港からベルギーのブリュッセルに向かいました。

向かって左からJasmin Ten Have、児玉利文、高橋健一、児玉和代 Photo: sfiDARE CRIT

 途中ヘルシンキで乗り換え、ブリュッセルに到着。そこからレンタカーでフランス・デジョンに移動します。500kmという距離は日本国内ならだいたい新幹線に乗るような距離ですが、こちらの方々は普通みたいです。私の友人はオーストリアから片道1000kmかけて応援に駆けつけてきてくれました! そして国境を何事もなく普通に通過してしまうところが、島国の私たちには驚きですね。

サプライズで盛り上がるチームJAPAN

各国ロードジャージとスキンスーツが支給され、雰囲気良いですね Photo: sfiDARE CRIT

 レース前日はナンバーピックアップとパーティです。我々もだいぶん知り合いが増えて、仲間に会うのが楽しみな時です。カナダチームのI BIKEのメンバーや、以前sfiDARE CRITに参加してくれたアメリカのLynnに会えました。支給されたナショナルジャージは、とてもかっこ良く、各国らしさが出たものではないでしょうか。

 ここで主催者マキシム氏からサプライズがありました。チームジャパンは直前欠場があり、2人で参加だったので、チームタイムトライアルに出場できないと思っていたら(チームタイムトライアルは最大5人で、3人ゴールが条件)助っ人Jasminをチームに加え参加できることになりました。

主催者マキシム氏の粋な計らいで! 急遽チームJAPANとして走ることとなった、カナダのJasmin Photo: Marc

 さらになんと、和代もアメリカ&メキシコ&クロアチアの混成チームでチームタイムトライアルに参加することになり、俄然盛り上がったチームJAPAN。

カナダナショナルチームのI BIKEのメンバーはいつも陽気でいい奴です Photo: Marc
受付ですが、ほとんどがフランス語でした…。これは勉強の必要ありですね Photo: Marc

風に苦しめられた1日目

 そして迎えた翌日31日、ディジョン郊外のフランス軍飛行場に作られた、1周7キロの特設コースでチームタイムトライアルが行われました。とにかくだだっ広いところを行って帰ってくるだけのコースなので、風の影響に左右されました。

男子チームJAPANは3人でのスタート、苦しい戦いになりましたPhoto: Marc

 チームJAPANは3人なので、3人ゴールが必須条件になり、様子を見ながらペースを上げていく作戦でスタート。最初は追い風なので時速50キロオーバーで進み、良い感じでローテーションしていましたが、折り返してからが向かい風によってペースダウンしてしまい、9チーム中7位でした。

男子チームタイムトライアル リザルト

1位 オランダ
2位 イタリア
3位 スイス

混成チームの女子チームタイムトライアルに参加した児玉和代。脚力が分からず、難しい走りとなりました Photo: Marc

 女子混成チームは実力が全く分からないメンバーで、どんな会話が交わされたのかも分かりませんがスタート。メキシコのライダーが強く、それに和代が食らいつく展開、残念ながら最下位でした。

女子チームタイムトライアル リザルト

1位 カナダ
2位 フランス
3位 ドイツ

レース経験差がでた2日目

 6月1日、前日の場所に作られた特設コースにてクリテリウム。直線400メートルと3つのヘアピンカーブ、4カ所の高速コーナーを結んだテクニカルかつ、脚が必要な自転車の本場フランスらしいコースと言えるでしょう。

落車の影響がありながらも、Bファイナルで3位入賞をはたしたJasmin Photo: sfiDARE CRIT

 まずは個人参加の選手の予選から始まりました。世界一を決める大会だけに各選手ピリピリムードです。緊張感の中、予選1組目にJasminがスタート。スタート時にクリートキャッチをミスして、後方よりレースを展開。徐々にポジションを上げていきますが、少々焦ったのか最終コーナーのヘアピンでスリップダウン。落車後もあきらめずに走りましたが19位でフィニッシュ。Bファイナルに進みました。

 Bファイナルは決勝の下のレース。レベルの高い猛者たちの激しいレース展開となりました。Jasminはスタートを上手く決めて5番手以内で周回を重ね、そこから2人で逃げる展開で、さらに1人が追いつき3人のローテーションで逃げる。落車の影響も見せず、見事に3位入賞しました。Bファイナルとは言え、世界に爪痕を残したと言えるでしょう。

Bファイナル リザルト

1位 Mathieu Grolier
2位 Lecry Sylvain
3位 Jasmin Ten Have

 女子決勝、スタートグリッド2列目の和代は、スタートを上手くこなし3番手で周回を重ねるも、各選手の激しいポジション取りに後退してしまいました。なんとか先頭集団に食らいつき22位、厳しいレースとなりました。ヨーロッパ、アメリカの選手は年間で10レース以上をこなしているので、大人数でのレース経験の少なさがもろに出てしまった感じですね。日本のレース環境の改善をしていかなければ…。

児玉和代は集団での位置取りが課題か? Photo: Marc
主催者が用意してくれたローラーで、各レーサー入念にウォーミングアップをする Photo: Marc

 男子決勝、スーパーファイナルと名付けられたこのレースは、まさにスーパー! 各国を代表する名の知れたレーサーたちが集結しました。ナショナルチームの私も高橋も最高の緊張感で、入念にウォーミングアップしていたら、ここでまさかの主催者マキシム氏のスーパーサプライズ!? 私のスタートグリッド、フロントロー!!!つまり一番前!!!

 あぁなんてことでしょう。これはやるしかない。最高の緊張感を楽しみながら最前列に並びます。隣は優勝したスイスのMERKT。「Good luckは日本語で何て言うんだい?」「幸運を祈るかな?」なんて会話を交わすが、私はそれどころじゃない!

 いよいよスタート。私はクリートキャッチが上手くいってしまい(笑)、先頭でファーストコーナーを通過。ポジションを取りに行くには悪くない。マイペースで先頭を引き、5番手以内で周回するがペースが速い。牽制なんてものが全くなく、緩むのはタイトコーナーの前だけ。集団は常に一本棒の状態でずるずるとポジションを下げてしまいました。高橋は後方のスタートポジションが災いして、上手くレースの流れに乗れず。結果、児玉47位、高橋52位でフィニッシュ。

 脚力もさることながら、レース慣れしていないことがもろに出た結果でしょう。高橋はレース終了後、「ノーブレーキのフィクスドギヤで3人並走しながらタイトコーナーを回り、ポジションを上げてゆく経験などしたことない」と興奮気味に語ってくれました。それはそうでしょう。ヨーロッパ、アメリカの選手たちはリーガル、イリーガルを含めて毎週レースしているような環境なんです。これは日本では、私が努力するしかありませんね(笑)。

日本の存在をPRした大会遠征

 大会最終日の6月2日は前代未聞のフィクスドギヤヒルクライム。距離1.6km、平均勾配15%と聞いたとき、何を言っているのか理解できませんでしたが、現地に着くと各選手ギヤ比の意見交換など求められ、本気度がうかがえました。

 私はフロントチェーンリング44T、リヤスプロケット(コグ)17Tでセッティングしましたが、他の選手はもっと軽いギヤをチョイスしている様子。当日は当然、交通規制しているのかと思ったら、車がバンバン来るもみんな黙って折り返していく!? この辺りは文化なのでしょうか? 「あっ、自転車レースやってんの?ふーん」という感じなのでしょうか? 日本ではありえないですね。

フィクスドギヤヒルクライムでは、思わず蛇行する選手も続出 

 レースはマスドスタート方式(※)なので、集団で進むが私には無理。ブチブチとちぎられながらも耐えるが、シングルスピードでは限界がある。児玉利文24位、高橋24位でした。女子の児玉和代は13位と健闘。意外と楽しかったらしく、日本での開催もあるかもよ?

 日本ではまだまだキワモノ扱いのフィクスドギヤクリテリウムですが、ヨーロッパで人気の高さを感じた遠征でした。結果だけを見れば惨敗なのでしょうが、日本のフィクスドギヤクリテリムの存在をアピールできましたね。各国のライダーはもちろん、プレスや関係者に質問されることが多かったです。

 それは私を含め今回遠征に参加してくれたメンバーが、貴重な本場の経験を伝えてくれるでしょう! この経験を生かして、日本で盛り上げていきます!

児玉利文児玉利文(こだま・としふみ)

1974年12月19日に生まれ。8歳からBMX、BTRに興味を持ち乗り始め、12歳から、地元のロードレースチーム「大垣レーシング」に所属し草レースに参加。名門岐南工業高校自転車競技部に入部、平成4年宮崎インターハイにて3km個人追い抜きを高校記録で優勝。初めて日本代表に選ばれてジュニア世界選手権に出場。1995年競輪選手としてデビュー、競輪選手として走る傍ら自転車競技にも参加し幾度もナショナルチームに選出され平成11年アジア選手権、団体追い抜きを日本記録で優勝。2013年2015年全日本プロ選手権 チームパーシュート優勝。競技者としての経験と、幼少の頃からの知識を生かし2011年に104サイクルをオープン。2017年、2018年にニューヨークで行われるRED HOOK CRIT BROOKLYNと韓国のKing of Track(フィクスドギヤクリテリウム)に競輪選手として初参戦。

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