ツール・ド・熊野2019 第3ステージフェデリコ・ズルロが逃げ切り5人の勝負を制す 個人総合優勝はオールイス・アウラール

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 4日間の日程で開催された、第21回ツール・ド・熊野(UCIアジアツアー2.2)は、6月2日に最終の第3ステージが行われた。和歌山県の太地半島をめぐる変化に富んだコースでの争いは、逃げ切った5人によるスプリントをフェデリコ・ズルロ(イタリア、ジョッティ・ヴィクトリア)が制してステージ優勝。また、悪天候によって例年以上にサバイバル化したレースとなるも、リーダージャージのオールイス・アウラール(ベネズエラ、マトリックスパワータグ)は終始安定した走りで個人総合優勝を達成。今年の熊野の王者に輝き、栄光のイエロージャージを獲得した。

逃げ切った5選手によるスプリント勝負をフェデリコ・ズルロ(右端)が制してステージ優勝を挙げた Photo: Tour de Kumano 2019

激しい出入りから7人の逃げが決まる

 世界遺産の熊野路を駆けてきた大会は、ついに最終日を迎えた。この日は、日本の捕鯨の歴史を凝縮する太地町を舞台に、1周10.5kmの周回コースをメインにレースが行われた。昨年から採用されたこのコースは、太地港からの上りやテクニカルなコーナーが連続するダウンヒルなど、変化に富んだルートセッティング。10周回・104.3kmで争われた。

スタートラインに並んだ4賞ライダー Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 前日は山岳ステージでの争いで、トマ・ルバ(フランス、キナンサイクリングチーム)が優勝。個人総合首位のアウラールはチームメートに守られ、24秒差のメイン集団でフィニッシュ。この集団の先頭をとってステージ3位としたことから、ボーナスタイムを獲得し、個人総合2位の岡篤志(宇都宮ブリッツェン)とは9秒差とした。個人総合上位12人が34秒以内にひしめく僅差の争いとなっており、1つのミスも許されない緊張感の中でレースを迎えることになった。

太地湾を望む登坂区間をゆくプロトン Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 ニュートラル区間が明けてリアルスタートが切られると、すぐにアタック合戦に。シマノレーシング勢が複数で前方をうかがうなど、積極的にレースを動かしていく。1周目後半に山岳賞ジャージを着用するマルコス・ガルシア(スペイン、キナンサイクリングチーム)が飛び出すと、入部正太朗(シマノレーシング)が追随。この周回を終える頃には、2人逃げの態勢が固まり、しばし先行することとなる。

山岳ポイントに向かって上っていくマルコス・ガルシア(右)と入部正太朗 Photo: Kensaku SAKAI

 3周目に設けられた山岳ポイントはガルシアが1位で通過。すでに2位以下に大差をつけており、山岳賞確定をかけての出走でもあったが、1ポイントを加算し、その座をより強固なものとした。

 この間、メイン集団では2周目に設定されたこの日1回目の中間スプリントに向かって、個人総合4位のコービン・ストロング(オーストラリア)擁するセントジョージコンチネンタルがコントロールを開始。しかしここはストロングに対し1秒差でリードしている同3位のユーセフ・レグイグイ(アルジェリア、トレンガヌ.INC・TSGサイクリングチーム)先着。逃げの2人に続く3位通過で1秒のボーナスタイムを獲得する。

5周目に先頭グループは7人となる Photo: Tour de Kumano 2019

 さらに、4周目に入ると個人総合12位につけていたホセビセンテ・トリビオ(スペイン、マトリックスパワータグ)が逃げの2人をめがけてアタック。登坂区間で追いつき、先頭は3人となるが、リーダーチームの一員の動きとあってメイン集団は活性化。この周回の後半に逃げグループを吸収し、レースは一度リセットされた。だが、この直後に再び入部がスピードを上げて先行開始。5周目に入ったところでさらに6人が抜け出しに成功し、登坂区間で入部に合流。総勢7人による先頭グループが形成された。

写真判定の結果ズルロに軍配

 先行する7人は、入部のほか、ズルロ、前日の覇者であるルバ、ロビー・ハッカー(オーストラリア、チームUKYO)、孫崎大樹(チーム ブリヂストンサイクリング)、中井唯晶(シマノレーシング)、鈴木龍(宇都宮ブリッツェン)の面々。総合で大きく影響を及ぼすメンバーではないことから、リーダーチームのマトリックスパワータグが先頭グループを容認。最大で2分近いタイム差にまで広がっていく。総合上位陣は、個人総合8位につけていた山本大喜(キナンサイクリングチーム)が落車で遅れた以外はメイン集団にそろい、次なる展開に向けて進んでいく。

登坂区間を行く先頭グループ Photo: Kensaku SAKAI

 先を急ぐ7人は着々と残り距離を減らしていく。一方のメイン集団はフランシスコ・マンセボ(スペイン、マトリックスパワータグ)らの牽引によって、先頭グループとのタイム差を調整。一時は約1分まで迫ったが、それ以降は無理に追うことはしなかったこともあり、先頭グループの逃げ切りの可能性が一気に高まる。

 逃げ切りへ俄然ムードが高まる先頭では、9周目に中井と鈴木が遅れ、5選手による争いに。その形勢のまま10周目・最終周回の鐘を聞いた。

クジラのオブジェを過ぎるといよいよ最終局面 Photo: Kensaku SAKAI

 上りを利用してルバがアタックを見せるも決まらず。5人のまま最後の周回を進行していく。メイン集団に対して十分なリードを得て、先頭グループからステージ優勝者が出ることは濃厚。あとは誰が少人数のスプリントを制するかが焦点になった。

 そして迎えた最終局面。先月のツアー・オブ・ジャパンでもステージ1勝を挙げてポイント賞を獲得したズルロにマークが集中する。残り1kmでズルロが押し出されるように先頭に立つと、5人は牽制状態に。そうした中から入部が残り200mでスパートすると、フィニッシュに向かってスプリントが始まった。

 先頭を譲るまいと懸命に踏み続けた入部だったが、その進行方向左サイドからズルロが、右サイドからは孫崎が加速する。三者がならぶようにしながら通過したフィニッシュラインは、写真判定の結果ズルロに軍配が挙がった。孫崎は2位、入部は3位だった。

 その後方では、アウラール自ら引いていたメイン集団から、チームメートのトリビオがアタック。これに最後まで食らいついたのは横山航太(シマノレーシング)。ズルロから44秒差でトリビオと横山がフィニッシュし、さらに7秒差でメイン集団が続いた。

フィニッシュラインを通過するメイン集団。イエロージャージのオールイス・アウラールが個人総合優勝を確定させた Photo: Tour de Kumano 2019

アウラールがキャリア初のステージレース総合優勝

 総合上位陣のほとんどがメイン集団でフィニッシュしたこともあり、アウラールのこの大会初となる個人総合優勝が決定。第1ステージを制して首位に立つと、以降は安定した走りでリーダージャージを堅守。今シーズンの来日から、出場するレースで次々と活躍してきたアウラールだが、意外にもUCIレースにおけるステージレース個人総合優勝は初めて。自身のキャリアに新たな勲章を追加した。

個人総合の表彰。オールイス・アウラールがキャリア初のUCIステージレース個人総合優勝を挙げた。自由民主党幹事長の二階俊博・衆議院議員(右から4人目)から祝福を受けた Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 加えて、個人総合上位に大きな変動はなく、岡が2位、レグイグイの3位も確定。ポイント賞ではアウラール、山岳賞ではガルシアがそれぞれ獲得した。ヤングライダー賞は個人総合でも4位としたストロングが手にし、チーム総合ではアウラール、マンセボ、トリビオと3枚看板が強さを発揮したマトリックパワータグが1位となった。この日のステージが強い雨の中でのレースだったこともあり、サバイバルに生き残ったのは42選手。大会開幕時の101人から半数以上がレースから離脱する結果だった。

山岳賞はマルコス・ガルシア(左から4人目)が獲得 Photo: Syunsuke FUKUMITSU
ヤングライダー賞はコービン・ストロングが獲得 Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 第21回のツール・ド・熊野はこれにて閉幕。近年の大会で好評を博してきたインターネットライブ配信や、現地観戦での楽しみともいえるレース終了後恒例の「餅投げ」といったイベントで選手とファンが交流を図るなど、この大会ならではの魅力がより高まった4日間となった。そして、熱い応援はもとより、主催の「SPORTS PRODUCE 熊野」をはじめ、地元の人々による運営やボランティアといった尽力も、出場チーム、選手、スタッフのモチベーションとなった。

 国内のチームはもとより、海外チームからの出場希望が年々増加しているなど、注目度は右肩上がりのこの大会。UCI(国際自転車競技連合)公認のステージレースとして、さらにはアジアツアーでも指折りのホスピタリティで、今後はより地位や国際的な認知が高まっていくことが期待される。

ツール・ド・熊野 第3ステージ(104.3km)結果
1 フェデリコ・ズルロ(イタリア、ジョッティ・ヴィクトリア) 2時間38分28秒
2 孫崎大樹(チーム ブリヂストンサイクリング) +0秒
3 入部正太朗(シマノレーシング)
4 ロビー・ハッカー(オーストラリア、チームUKYO)
5 トマ・ルバ(フランス、キナンサイクリングチーム)
6 ホセヴィセンテ・トリビオ(スペイン、マトリックスパワータグ) +44秒
7 横山航太(シマノレーシング)
8 リカルド・スタキオッティ(イタリア、ジョッティ・ヴィクトリア) +51秒
9 オールイス・アウラール(ベネズエラ、マトリックスパワータグ)
10 中井唯晶(シマノレーシング)

個人総合時間賞
1 オールイス・アウラール(ベネズエラ、マトリックスパワータグ) 7時間32分49秒
2 岡篤志(宇都宮ブリッツェン) +9秒
3 ユーセフ・レグイグイ(アルジェリア、トレンガヌ.INC・TSGサイクリングチーム) +13秒
4 コービン・ストロング(ニュージーランド、セントジョージコンチネンタル) +15秒
5 サム・クローム(オーストラリア、チームUKYO)
6 平塚吉光(チーム ブリヂストンサイクリング) +16秒
7 ベンジャミ・プラデス(スペイン、チームUKYO)
8 マイケル・ヴィンク(ニュージーランド、セントジョージコンチネンタル) +18秒
9 フランシスコ・マンセボ(スペイン、マトリックスパワータグ)
10 ホセヴィセンテ・トリビオ(スペイン、マトリックスパワータグ) +27秒

ポイント賞
1 オールイス・アウラール(ベネズエラ、マトリックスパワータグ) 55pts
2 フェデリコ・ズルロ(イタリア、ジョッティ・ヴィクトリア) 42pts
3 トマ・ルバ(フランス、キナンサイクリングチーム) 37pts

山岳賞
1 マルコス・ガルシア(スペイン、キナンサイクリングチーム) 21pts
2 トマ・ルバ(フランス、キナンサイクリングチーム) 7pts
3 ベンジャミ・プラデス(スペイン、チームUKYO) 7pts

ヤングライダー賞
1 コービン・ストロング(ニュージーランド、セントジョージコンチネンタル) 7時間33分4秒
2 デニス・ヴァルカン(ルーマニア、ジョッティ・ヴィクトリア) +6分13秒
3 小出樹(西日本学連選抜) +7分47秒

チーム総合
1 マトリックスパワータグ 22時間39分26秒
2 ジョッティ・ヴィクトリア +1分54秒
3 チームUKYO +5分3秒

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