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栗村修の“輪”生相談<154>60代男性「レースでの落車防止策を考えてみました」

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 栗村修さんが落車防止装置は発明されないのか、ということを言われてましたので、以下のように考えました。

・風圧よけと位置どりのために密集するが接触や進路変更などに起因する集団落車が多い。
・常に一定の距離を車間に確保することで接触などの危険を軽減する。
・落車事故防止に密集を回避するルールを作る。単発落車は防げないが集団でのもらい落車のけがを軽減する。

戦法が変わることになるが、安全と選手生命のことを考えると長期的にはより面白いレースになるのではないか? 落車を見たいわけではないです。

 実施にあたっては、

・各車両に高精度のGPSまたは互いの距離を感知するセンサーをを搭載して車間が一定時間以上、一定距離以下になった時にペナルティタイムを課する。
・常に前方の選手にアドバンテージがある。
・平均的なコースで横に4人を限度とする。
・横4人のところに5人目が割り込んで制限距離を超えた時はその5人目の選手のみにペナルティを課す(GPS判定なら可能)。
・ゴール後にペナルティタイムを即時に反映して着順とタイムを確定させる。
・選手には違反時に警報と累積ペナルティタイムが表示されるようにする。
・アシスト選手がペナルティタイムを苦にしないことを防止するために累積一定量でレースから退場とする。
・フラムルージュ通過で解除する(集団スプリントを排除しないために)。
・アクチュアルスタート前には適用しない。

以上です。

(60代男性)

 自転車の普及に携わる者として、興味深いご提案です。落車という問題の深刻さは増すばかりで、ホビーレースでも悲しい事故がたくさん起こっています。プロも例外ではなく、レースを台無しにするような落車が、例を挙げきれないほどたくさんありますね。

 推測される理由はいろいろです。機材の軽量化・エアロ化とそれらによるハイスピード化、パワーメーターやローラー台の普及によるスキル不足。更にプロの場合は、チーム戦略が高度化して組織的に戦うようになったことも理由でしょう。勝負どころでは100人以上の選手に「前に上がれ!」と、無線で監督からの指示が飛ぶわけです。10人くらいしか入れないスペースに100数十人が殺到するわけですから、落車が起きないほうが不思議です。

 プロ、ホビー問わず、選手たちのマナーの悪化もあるかもしれません。ロードレースは競技ではありますが、後続の選手に手信号を出したり声で危険物を知らせたりと、ライバルも含めて誰も転ばないように走るのが暗黙のルールでした。それが、自分の成績を第一に考えるようになってしまったのでしょうか。

近年のレースでは勝負どころを前に各チームの「位置取り」の隊列が道一杯に並走する場面が多く見られるように。もしここで誰か1人が転べば… Photo: Yuzuru SUNADA

 ともかく、落車は大変な問題です。ベテランほど「落車は付き物だから」と軽視する傾向にありますが、死亡リスクがあるスポーツが普及することがあるでしょうか。近年のメジャースポーツは選手の安全を重視するようになっており、たとえばラグビーでは「脳震盪の疑い」が認められた段階で試合に参加できないようです(IRBレギュレーション10.1.1)。落車して血だらけになりながら走る現在のロードレースは、外の世界からはどう思われているでしょうか。

 意識を変えるのは簡単ではないかもしれませんが、落車を減らさなければいけないのは間違いありません。そのための方策は、おそらく二つに分けられるでしょう。

 ひとつはご提案のように、エンジン&運転者である人間の動きを制御するものです。詳細はともかくとして、落車のケーススタディを研究してその要因を排除するルールを作ることは可能でしょう。

 もうひとつは、安全器具や落車防止技術を開発することです。エアバッグを装着したり、プロテクターをつけたり、やれることはまだまだたくさんあるはずです。ご指摘のようにGPSやセンサーを使うこともできるかもしれません。ある方はジャイロセンサーによって「転ばない自転車」が作れないかと言っていましたが、夢物語ではないでしょう。

 こう書くとヘルメット義務化のときのように現場の選手は反発すると思いますが、まさにヘルメットが義務化によって軽く、空力に優れ、快適になっていったように、落車防止機構もサイクリストの運動を妨げないように進化するはずです。そういう技術はシティサイクルに乗る一般人にも必ずプラスになります。

 ヘルメットが義務化された際には選手たちによるサボタージュもありましたが、あれから十数年でどれだけの人がヘルメットによって命を救われたでしょうか。命を救う技術の開発は急務だと考えます。

(編集 佐藤喬)

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまで、タイトルを「輪生相談質問」としてお寄せください。

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