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日本人がまだ知らない「e-BIKEの世界」<5>e-BIKEはトレンドアイテムになれるか

by 難波賢ニ / Kenji NANBA
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 e-BIKEへの関心が徐々に高まりつつありますが、これから先、トレンドアイテムになれるのでしょうか。連載最終回は、e-BIKEのポテンシャルについて触れつつ、普及に向けての現状をお伝えしたいと思います。

e-BIKEは日本の国土にマッチ

 日本は国土の約70%を山岳地帯に囲まれた世界有数の山岳国家です。そして山岳でないエリアも海沿いに行くとアップダウンのある入り組んだ海岸が並び、大都市圏から気軽に行ける離島が多数。そのほとんどは火山島で島というより海から突き出た山頂部です。一方でe-BIKEは、坂を走ってこそ楽しい乗り物で、その楽しさはオンロード、オフロードに限りません。

日本は海岸沿いでもアップダウンが多い Photo: Kenji NANBA

 さらに、山岳地帯でも水が豊富だったためか山に入っていくと、もはや人は住んでいないけれどかつては人が住んでいた跡や道がある国というのは実は他になく、例えば東南アジアに行くと山はたくさんあるけれど、その山の中はジャングルで道は幹線道路以外は切られていないというのが現実です。

 さて、そんな日本をe-BIKEで走って楽しいのかという話になると、これは楽しいの一言に尽きます。

 ロードバイクで走りに行くたびに100km走る人は普通にいますが、100km走って3000m登る人というのは稀でしょう。一方でe-BIKEならばバッテリーさえ持てば100km走って3000mは余裕です。バッテリー2本あれば3000mは登れるため、ルートを8の字に取る(一度スタート地点に戻ってきてバッテリーを交換して走る)などすれば普通に1500mの峠を2本走るルートを河川敷を走っている感覚で行えるのです。

 もちろん山の中に入れば自然は一杯ですし、景色は綺麗。多くの人は河川敷の人が多いところを走るより一度山岳地帯でのe-BIKEライドのほうが楽しいと思うことでしょう。

誰もが乗れる手軽さ

 このように既存のサイクリストに対しても大きなポテンシャルのあるe-BIKEですが、もう一つは、普通に歩けるぐらいの体力がある人ならば、およそ誰でも乗れるという手軽さもe-BIKEがトレンドアイテムとなれる鍵ではないでしょうか?

e-BIKEなら脚力差を気にせずに集団で走り切れる Photo: Masahiro OSAWA

 ロードバイクを始めてみたけどこんなに辛いスポーツだとは思わなかったと言って乗るのを辞めた人を100人以上知っていますが、e-BIKEなら多分大丈夫ですし、コミューターとしても再発進は驚くほどに楽だし、巡航スピードがロードバイクより遅いので安全、周辺の交通環境とも調和しやすいというメリットも考えられます。

普及のカギは価格が握る

 普及の鍵となるのは価格ですが、現状クロスバイクタイプで30万円程度、e-MTBタイプで35万円~という価格は、欧州でのe-BIKEの価格を考えると、実は日本仕様は相対的にお買い得なのですが、とはいえ30万円あると他にも色々出来るよねということや、30万円あったらスクーター買えるよねということを考えると絶対的には高いと言わざるを得ません。

 とはいえそこはメーカーもわかっているので、この先、価格は多様性を増していく、つまり20万円を切る安い仕様も多く出てくるし、一方で70万円を超えるようなモデルもどんどん出てくるというのが来年以降の流れでしょう。

 ただし、20万円を切るモデルが、今筆者が語っているようなe-BIKE体験を体験させてくれるモデルとなるのは未知数、個人的には懐疑的だと思っています。その点、現状発売されているモデルは、本来欧州では50万円を超えるようなモデルに付いてくるユニットが搭載されていたりするのでお買い得なモデルが多数あるということは書いておきたいと思います。

e-BIKEはまだイノベーター向けの商品

 前回、国内でのe-BIKEマーケットシェアは3%と書きましたが、ハイテク業界では、新製品・新技術が市場に爆発的に普及する目安として普及率16%を一つの目安とするキャズム理論(詳しくは検索してください)というものがありますが、この理論だと現状の国内でのe-BIKE普及率はまだ「イノベーター」市場の段階で、ここから時間をかけてシェア16%を目指す「アーリーアダプター」段階を経て爆発的な普及へと至ります。スマートフォンが出始めた頃の話を体験として覚えている人は、e-BIKEがスポーツサイクルカテゴリーでこの先どういう普及の仕方をするのかは想像しやすいかもしれません。

e-BIKEはまだイノベーター向けの商品。日本でも花開くかはこれから次第 Photo: Naoi HIRASAWA

 ここ10年で見るとロードバイク=スポーツサイクルという時代が続いてきましたが、ロードバイクの限界が見えるに従って、グラベルロード、バイクパッキングと枝分かれして多様化を目指して来たように思います。

 一方で振り返ると90年代はスポーツサイクルといえばMTBでしたし、さらに70年代に遡るとスポーツサイクル=ランドナー(ツーリング車)でした。次の10年がe-BIKEの時代になるのかどうかはわかりませんが、少なくともヨーロッパは既にe-BIKEの時代となっています。遠からず、国内にもその波はやってくるのではないでしょうか?

難波賢二難波賢二(なんば・けんじ)

自転車ジャーナリスト。1979年生まれ。国立大学在学中より自転車専門誌などに寄稿。e-BIKEの黎明期よりその動向を取材してきたジャーナリストとして知られ、日本で最初のe-BIKEオーナーとして知られる。MTBの始祖ゲイリー・フィッシャーの結婚式にアジアから唯一招待された人物として知られるなど、世界の自転車業界に強いコネクションを持っている。

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